平成25年8月27日(火)  洋上のアルプス 宮之浦岳へ

新高塚小屋〜永田岳〜宮之浦岳〜栗生岳〜黒味岳〜淀川小屋 (約12時間半)


いよいよ 洋上のアルプス 屋久島・奥岳へ


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 (屋久島縦走ルート)


朝5時過ぎに目を覚ますとガスバーナーの音やいびきの音が聞こえる。山での睡眠は何度も目を覚ましながら朝を迎える事になる。
暫く寝袋の中でぐずぐずしていると、薄暗い窓の外から聞こえてくる小鳥のさえずりで天気が良さそうだと感じる。昨日濡れて紐に架け
てある衣類、テント類は全く乾いてはいなかった。

お湯を沸かして簡単な朝食をとり出発の準備にとりかかる。辺りに広げた道具や濡れた物をビニール袋に詰め込む。ズボンが濡れて
気持ちが悪いので、薄いレインズボンを履き体温で乾かす事にした。天気は良さそうなのでズボンはザックの後ろに括り付けて歩行中
に乾かし着替える作戦だ。

行程1) 新高塚小屋〜焼野三叉路(永田岳分岐) 約2時間50分

06時新高塚小屋を出る。下側にあるテン場では大き目のテントが張られており女性が出てきたので話をすると、昨日はほぼ一日中
中宮之浦岳や永田岳を歩いたが雨と霧で景色は何も見えなかったらしい。私は逆コースを選び正解だった。

ウッドデッキを右手に回り込むとトイレと宮之浦方面への標識があり、宮之浦岳へは3.5kmと書いてある。次第に明るくなり青空が嬉し
い登山道を上ると06時30分大岩が斜面に突出した第一展望所に着く。注意を払って岩の前面に出ると今から訪れる奥岳が現れてワ
クワクする。宮之浦岳が双耳峰の形に見え、その左に栗生岳の大岩があり、左端には山頂に岩が突き出た姿が印象的な翁岳が見える。

 
縄文杉へ1.9km、宮之浦岳へ3.5kmとある           大岩の横を快適な」登山道が伸びていく


 
        ヒメシャラ林を抜ける                  朝日が森に差し込んで気持ちがいい

 
お〜〜 あれが宮之浦岳に違いない(第一展望所)          特徴的なランドマークの翁岳


            第一展望所からは翁岳(左)と宮之浦岳(右)が見える

更にヒメシャラ林などがある岩の登り坂を進むと07時03分尾根部を越えた所に第二展望所があった。ここで昨日二階で騒がしかった
カップルに追いつく。この展望所は先ほどの展望所よりは開けているが見える景色は翁岳から宮之浦岳と同じような山並みだった。

丸くて大きな坊主岩がある場所がピークになっており、その近くになるとと今度は右手の永田岳が見える様になる。この山も角が2本生
えたように2つのピークを持ち、山肌や山頂部に白い大きな岩を沢山配置したこの山はとても魅力的である。永田岳の右手(北側)には
ネマチや小障子から障子岳への「障子尾根」が裏側に伸びている。

07時20分、平坦なピークに着くとビャクシンの樹があり、ヤクザサも見られる様になった。この辺りのヤクザサも鹿の食害だろうか笹枯
れ現象が見られた。下りになるとヤクザサも背丈が高く、シャクナゲ林の間をぬう登山道に水が出て深く掘れこんでおり木道も整備されて
いる。この辺りで初めてヤクシマ・ママコナの花を見る事が出来た。


          
     又 ヒメシャラ林がある                      大岩の横を抜ける

 
    第二展望所から前岳と東シナ海を眺める         第二展望所の岩場は太鼓岩の様で障害物がない

 
        写真をありがとう                      右手に丸く愛嬌のある坊主岩を見ながら通過

  
           永田岳、ネマチ、小障子               ヤクシマザサが涸れている


   07時20分ビャクシンと思われる樹がある庭園の様なピークに到着  前方は宮之浦岳


         ビャクシンの向こうに永田岳が見える  ヤクシカの獣道にて

 
    下りになると道が掘れ込んでくる               屋久島飯子菜(ヤクシマママコナ)

 

 
 花崗岩に守られていない登山道には木道が整備されている    う〜〜ん デカい

 
北アルプスの燕岳への登山道の様に花崗岩で守られている登山道   ブッシュを抜けると明るくなる 正面は翁岳

07時45分頃になるとブッシュを抜けて周りが明るくなる。前方には平石と呼ばれる丸く大きな岩を持ったピークがありそこに向かって登山
道が伸びている。左手にも太吉ヶ峰と呼ばれる大岩をピークに載せた山が見える。ゆるかな登り道には穏やかな岩場がありロープが敷設
されていた。左下には屋久島の海岸線を取り巻く前岳や東シナ海が光っている。

08時00分巨大なおはぎの様な丸い岩に覆われた「平石」(標高 1,707m)に到着。なだらかで大岩に囲まれている為、ここが標高がそ
んなに高い場所とは思えない。警戒心の欠如したヤクシカが左手から現れて私の前を一緒に進んで行った。う〜〜ん 何とも平和な島だ。
祠が置かれている大岩を抜けると翁岳、宮之浦岳の全容が見渡せる。すこし前に進むと今度は永田岳が姿を現す。ここは奥岳の展望所
と言える。


          「平石」を目指してシャクナゲとヤクササの登山道を進む


 
いつも気になるプチ・グランドキャニオン「翁岳」          ここは東シナ海に浮かぶ島なのだ

 
      おじょものおはぎ岩が並ぶ                宮之浦岳の北斜面は谷が刻まれている 

 
   ヤクシカの後をついていく ここが平石岩屋?                左手に祠が祀られていた


             目指す宮之浦岳のスロープを眺める


     焼野三叉路付近    永田岳前の丘                永田岳              ネマチ岩峰

08時47分平石を少し下ると花崗岩の足元に綺麗な水が流れている。ヤクザサの登山道は宮之浦岳北側の裾野をすこし右手に
回り込むと、08時47分「焼野三叉路」と呼ばれる永田岳分岐に到着。ここにはテント1張程の平地があった。

 
永田岳の北側にあるネマチって猫の横顔みたいなにゃ〜            前岳と東シナ海

   
   花崗岩が風化した場所が水場になっている            登山道は燕岳の様な花崗岩の溝

 
    宮之浦岳の北側尾根を少し回り込む          08時47分 「焼野三叉路」=永田岳分岐  右奥が永田岳

行程2) 焼野三叉路(分岐)〜永田岳往復  約3時間

少し永田岳へ進んだ岩場にザックを下ろし、濡れた中身を全て広げる。ズボンは既に乾いていたので履き替え、必要な物だけを持
って永田岳へと進む。すると左手にも平らなビバーク地があった。天気が良い時にはここにビバークする人もいるだろう。

背丈が小ぶりで葉が四国の笹より細いヤクザザの間に深く刻まれた登山道がのどかに続く。永田岳への間には小高い丘があり、そこ
で数頭のヤクシカがのんびりとと草を食んでいる。この丘は風衝地の様になっており平たい岩で覆われている。ここでビバークする事も
可能な地形である。

大きな花崗岩を過ぎると沢に向かって下降し、少し崖状に掘れ込んだ場所が2箇所ほどある。宮之浦岳と永田岳を結ぶ最下点は綺麗
な水が流れる小さな湿地帯の様になっており、登山道はここを時計方向に回り込んでコル部へと出る。

永田岳は横に長くそこに至る登山道は比較的なだらかに中央部の山頂へ向かっている。山肌に飛び出た白い花崗岩の上には青空が
広がり、大きな月が浮かんでいる。屋久島石楠花(ヤクシマシャクナゲ)が所々に固まって茂っているので花の季節は楽しみな風景に
なるのだろう。永田岳への上り道から振り返ると宮之浦岳の北西斜面が雄大に聳えている。

 
永田岳へ少し入った登山道脇の岩場に濡れた道具を干す   ヤクシカが牛の様にゆったりと草を食んでいた


 目指すは永田岳 山塊に4つピークが見える左から3番目が永田岳標識ピーク  右がネマチ


     緑の絨毯に風化した花崗岩が散らばる   大岩にも白い長方形の石が貫入している

 
宮之浦岳の北西谷筋から流れ出る水がここで溜まる            赤い苔が生えている

      
        雄大な屋久島の主峰 宮之浦岳北斜面

 
                       永田岳直下

 
     登山道に転がる丸い花崗岩                最後は右手にトラバースして山頂へ向かう



10時20分巨大な花崗岩を這い上がり右側に回り込むと永田岳の山頂標識が窮屈そうに立っていた。海岸線に集落が見えるので恐ら
く永田集落だろう。山頂を覆う大岩の上は爽快で岩の亀裂を越えて東側に出ると大パノラマ展望所である。北側にはネマチと言うピーク
がありその間には絶壁があり、東側で見たのどかな印象とは対照的である。存分に屋久島奥岳を楽しみ11時になったので分岐へと帰
る事にする。

 
  10時20分永田岳山頂標識に到着                  北側は厳しい岩壁の姿だ


             永田岳南側のメルヘンチックな風景


           永田岳の北側は鋭く切れ落ちている


         セルフタイマー10秒ギリギリの妙技   バックは宮之浦岳

 
  フツーの人が行けない場所で咲くヤクシマリンドウ      撮影中、この花から恩恵を受ける大蟻の攻撃を受ける

斜面を下っているとコル部にある数個の大岩にヤクザルの群れが陣取っていた。急に天日干しにした山道具が心配になり急ぐ。ザックを
干した場所に帰るとサルに遊ばれた様子もなくテントも良く乾いており気持ちの良い手触りだった。太陽エネルギーの恩恵って凄いとつく
づく思う。

片付けをしていると中年のご夫婦が来た。「ここでビバークをしていたのですか?」と聞かれたので「昨日濡れた物を乾かしていました」と
答える。この人たちは淀川小屋から今朝早く出発して来たと言う。「今日は最高の天気ですね」お互い同じ思いである。12時00分焼野
三叉路に帰りいよいよ宮之浦岳へと向かう。

 
   ヤクシマシャクナゲの繁みが点在する登山道          ヤクザルが岩の上で日向ぼっこをしている

 
ビバークが可能な笹の少ない平たい場所もある        12時00分焼野三叉路に復帰


行程3) 焼野三叉路〜宮之浦岳〜栗生岳〜黒味岳〜淀川小屋 約6時間30分

宮之浦への北側からの上りはほぼ一直線ではあるがそんなにキツい程の事もなくほど無く山頂付近へ到達する。山頂直下では
ぐるっと回り込む形になるが、近くの岩場でダンスを踊る家族連れや岩の間に安置されている祠を掃除する人がいた。

この祠の祭神は一品宝珠大権現というあまり馴染みの無い神様だ。竜宮信仰で言う山幸彦、(彦火火出見尊ひこほほでみのみこと)
が仏教の本地垂迹思想によって一品法壽大権現と呼ばれる様になったらしい。まあ兎に角、屋久島集落の御嶽(みたけ)信仰の
神様って事みたい。ちなみに一品法壽(一品宝珠)とは山幸彦が竜宮から持ち帰った宝物の事で、法壽は法華経で使われる言葉
なので法華経の神仏習合と関連があるのだろう

笹薮を少しだけ這い上がり12時37分宮之浦岳(標高1,936m)山頂部へ出る。平らな山頂部には大きな岩があるので少し窮屈
な感じがする。日本百名山と書いた紙を持ったおじさんが山ガールに記念写真を頼んでいた。ついでに私の写真もお願いする。
山登りには似つかわしくない若い外国人と日本人女性も来て賑やかになる。この時間になると永田岳が逆光に光っている。すると
これから進むべき栗尾岳の尾根方面にガスがかかり出したので13時10分、宮之浦岳を後にする事にした。

    
宮之浦岳への登山道も掘れこんでいてヤクシマダケが斜面を支える  宮之浦岳も大岩が点在する 


    宮之浦北斜面から永田岳〜ネマチの山塊を眺める  永田岳への登山道は手前の丘を抜けているのがわかる

 
     宮之浦岳の双耳峰が次第に近づいて来る        山頂直下では家族連れの子供がダンスを踊っていた

 
    祭神は一品法壽大権現という                  宮之浦岳三角点山頂

 
   屋久島の盟主 宮之浦岳に着いた〜            日本百名山を目指すおじさん 頑張ってね


     むむっ  永田岳が私の腕で隠れている・・・


                     これから進む南側の山並み

宮之浦岳は北側から登るべきで、南側ときたらおよそ日本百名山らしからぬ尾根の続きである。緩やかな尾根のスロープが栗生岳
まで続く。大岩が鎮座する標高1,867mの栗生岳を13時30分通過。登ったというより通過したという方が正しい表現である。奥岳
であるがイメージとしては単なる尾根のピークでしかない。この栗生岳の大岩にも祠が置かれている。

屋久島集落の人々による岳参りとしての信仰の山は御岳(みたけ)と呼ばれ「宮之浦岳」「永田岳」「栗生岳」「黒味(くろみ)岳」の4峰
である。又 屋久島三岳と言えば「永田岳」「宮之浦岳」そしてこの「栗生岳」を言う。




 
      愛嬌のある岩が転がっている               目指す栗生岳の縦走尾根小ピーク

 
    巨人の脳に見える                             栗生岳に到着

 
      栗生岳標識                        岳参りの祠が岩の奥にある


栗生岳を過ぎると翁岳(1,860m)、安房岳(1,847m)、投石岳(1,830m)を左手に見ながらトラバース登山道を歩く。この辺りは
笹原から樹林帯となり登山道には水が溢れている。ここに来る前、飲料水の心配をしていたのだが、伊予の鈍亀さんから「屋久島は
水の島ですから水の心配はありません」と言われていたがその通りだった。

14時00分左手の山筋より綺麗な水が流れているので給水する。その後も木道が敷設された沢があり関東から飛行機で来られたと言
う単独男性が休憩していた。淀川登山口に車を置いていると聞いて一緒に歩けば今日中に安房まで帰れると思ったが、それでは黒味岳
に行けなくなるのできっぱりと諦める。



        翁岳                                        安房岳                    

 
   翁岳の天辺はこんなに岩だらけ〜〜              野外現代アートの会場か?

 
    登山道には綺麗な水が流れている               地図に水場と記されていた場所



             歩いて来た栗生岳へのスロープを振り返る

 
   綺麗な水が流れている ここも水場と記されている    今から歩いて行く投石岳とその向こうに黒味岳


14時25分ビャクシンか天然檜が生えた岩場があり、ここから数か所ロープの敷設された岩場の下りとなる。ずっとトラバース道を歩いて
いるのだが右や左の山には巨石が相変わらず点在し、その上にヤクシカがいたりする。何気なく登山道の斜面を見ていると久しぶりに
彩りがあるヤクシマシオガマにお目にかかった。こんな穏やかな場所にも左手に遭難碑があり、どんな山にも油断がならない季節と天候
がある事を物語っている。

15時00分になり小さな峠部を越えたのか前方に黒味岳(くろみだけ)の岩場が見える。しばらくすると標識があり花之江河1.3km、淀
川小屋4.0kmとある。まあ日本の西の方だから日没は遅く、明るいうちには小屋に着くだろう。


 
     ビャクシンか天然檜か                    登山道は変化があり面白い

 
  右手の大岩にヤクシカがいる                  笹の中からヤクシマシオガマが顔を出す


          宮之浦岳から2.0km歩いて来て、淀川小屋まであと 4.5km

 
どこの山にもおじょもに投げられた大岩が散在する       花崗岩の岩道に水が流れる

 
     岩場にロープが架けられている                      投石岩屋か?

投石岳をやり過ごすと巨大な岩が平たく広がった気持ちの良い場所があり、ツアー客が休憩していた。こちらのコースは縄文杉コースの
ツアーと違って小数の女性登山者をツアーガイドが引率するタイプが多い。やはり登山ツアーは10名までの少人数がいいのだが、割高
になるんだろう。投石平を過ぎると黒味岳の山域に入り岩場が多く薄暗い樹林帯となる。



    正面に黒味(くろみ)岳が現れた    手前には投石平という岩場がありここで休憩をする登山者が多い






 
        投石平から黒味岳を見る                花崗岩の登山道を下る

 
おっ  今回最初で最後の岩場が現れた                まあ 花崗岩はフリクションが利くのでロープは使わないが・・・

 
     これは人為的に並べられた飛び石でしょう              黒味岳分岐付近

黒味(くろみ)岳へ

15時50分「黒味岳分岐」標識に従い三叉路を右へ上がる。細い登山道は少し荒れてはいるがしっかりした登りの登山道を喘ぐと手前ピーク
と黒味岳の中間点へ着く。さらにそこから次のピークへとトラバース道が続く。最後は岩の裏側から回り込み16時15分黒味岳の巨大な岩の
上に立つ。ここからの眺めも永田岳や宮之浦岳と遜色がない。前岳のモッチョム岳らしき岩山も見られた。先がまだ長いので足早に下り16時
40分に縦走路分岐まで帰る。

 
     岩場には黒いロープが設置されている            手前のピークを左からトラバースして一旦尾根部に上がり
                                         更に又左手からトラバース道を黒味岳本峰に至る


   黒味(くろみ)岳からの眺め   永田岳〜宮之浦岳〜翁岳

 
  恐らくあれがモッチョム岳だろう                 西側に西黒味岳への稜線が続く

 
  巨大な大砲の様な岩が麓を狙う                 トーフ岩かと思って撮ったが・・・どうも違った様だ

 
   岩の裏側を又伝って下山 (振り返りの図)         ほとんど走り下りる

さて16時40分に縦走尾根に復帰して、日没が19時としてまだ2時間余りある。ここから花之江河まで木道が敷設された快適な
下りが続く。10分程で最初の高層湿原に到着するとこの水場にもヤクシカが何頭かたむろしている。

木道を進むと2か所に標識があり、2つ目の分岐標識には宮之浦岳 3.8km、石塚小屋 1.2km、淀川小屋 2.7kmと表示
されている。もしもう少し遅くこの場所に着くと近くにある石塚小屋へ行くつもりだったが、淀川小屋へもまだ明るい内に着けるので
そちらに進む事にした。(石塚小屋から花之江河登山道を経由して屋久杉ランドへ行くルートも魅力があったのだが・・・)

17時05分花之江河の湿原に到着。湿原の向こうには途中で写真を撮り忘れた「トーフ岩」がある高盤岳(こうばんだけ)が見える。
豆腐というより食パンの切目を入れた形に見えた。

 
    木道が設置された快適な登山道を下っていく             最初の高層湿原に到着

 
  ヤクシカがここにも居る                            花之江河分岐 

 
      栗生登山道分岐                        木道は更に続く

 
 ビャクシンの白骨手前だろうか                 花之江河の高層湿原 正面はトーフ岩のある高盤岳(こうばんだけ)


         高盤(こうばん)岳のトーフ岩をアップすると・・・ 

花之江河から淀川小屋へ向かってはなだらかに下る。この辺りの標高は1,500m程なのでもう完全に樹林帯となっている。比較的
四国でも見られる様な小さな樹が多い。でも花崗岩地質の為あらゆる植物は根を長く這わせている。天気が良いので夕方でも日差し
が森に差し込んで明るい。

18時25分前方に鉄製の橋があり淀川の清流がその下を流れている。橋を渡っていると人の声が聞こえて淀川小屋が近い事がわか
った。小屋に着くとテント場には学生の大型テントが張られて若い男女が騒いでいる。小屋の玄関口にいる男性達は翌日のヘリコプタ
ー作業でここに泊まっていると言う。

中は2段になっており既に階下は満席となっていたので右側2階に上がる。暫くすると隣に荷物を置いたご夫婦が帰って来たのだが、
何と永田岳の麓でお会いした方だった。この人たちは外にテントを張ると言って出て行ったのでスペースが広くなった。

夕食を外で食べながらこのご夫婦と話をすると、神奈川県からサーフィンをする為に宮崎へ移住され、屋久島へ来てその魅力に取り
つかれ良く来る様になったと言う。自分たちの趣味の為に移住するってテレビのストーリーを聞いている様だった。ここの水場は何と
先程渡った淀川の流れから直接採水するのにびっくりした。



   根っこに覆われた登山道を淀川小屋に向かう

 

 
     石畳が敷設された登山道                 淀川小屋に向かって緩やかに下る

 
 小屋のすぐ上流にかかる橋                      淀川の清流

 
  淀川小屋のテン場                             淀川小屋の様子


屋久島最後の夜を過ごす。長かった今日1日の記憶を辿りながら眠りにつく。


エピローグ

平成25年8月28日(水)
淀川小屋〜淀川登山口〜紀元杉  (バスにて紀元杉〜屋久杉ランド〜安房〜宮之浦港


淀川小屋は便利な場所なので宿泊者も多い。暗い内から宮之浦への日帰り登山に出かける人の物音で目が覚める。こちらは紀元杉
発10時39分の路線バスで安房へ行く予定だからそんなに急がない。

淀川の水を汲みお湯を沸かす。以前、北アルプスの紀美子平でビバークした時は食料が切れて切ない思いをしたが、今回は余裕だ。
鮭茶漬け(ごはん入り)を作ってコーヒーも飲む。いままでお湯をかけたら出来る色んな山食を試食してきたが、きなこ餅とちらし寿司
以外は中々の味で満足している。普段食欲が旺盛なのだが山に入ると不思議と食欲が無く食料が余ってしまう。

さて、路線バスは1日2便しかないので午前中の便に間に合う様に荷物をまとめて07時00分小屋を出発する。
淀川小屋から淀川登山口までの登山道が予想外にすばらしい自然林だった。小花ノ江河から淀川小屋のそれより数段良いと感じた。

 
   06時過ぎに起きる (淀川小屋)                     淀川小屋の水場

 
     07時小屋を出ると木道を歩く                すぐにワイルドな登山道となる


         ここも花崗岩の痩せた地質に根っこが這う

 
07時25分 根っこだらけの場所を通る                見事に幹がパックリ割れている

 
    モンベル靴仲間とご挨拶                    07時50分 着飾った杉に遭遇

   
       屋久島でこんな杉の枝ぶりは珍しい                 苔を纏(まと)った杉


                08時05分 根っこ通りを抜ける    

 
       08時15分ここを抜けると登山口だ             08時16分 淀川登山口へ下り付く

08時16分、眼下に道路が見えて沢山の自動車が並んでいる。淀川登山口に着いた様だ。先ほどから前後して歩いて来た男性二人組と
ここで話をする。二人は種子島で教師をしている仲間で時々一緒に海や山に出かけるらしい。一人はここから歩いて海岸線まで行くと言う。

こちらは舗装道路(林道安房線)を紀元杉まで歩く。途中「川上杉」という立派な屋久杉(樹齢約2千年、胴回り8.9m)があり、その説明書
きを読むと何でも安房林道を造る時にこの杉が建設の邪魔になり切り倒す計画があった。当時営林署にいた川上さんという人がこれに
反対し道路のルートを変えてこの樹が保存されたとある。

 
   淀川登山口  ここから宮之浦岳方面へ登る         携帯トイレブースとトイレが設置されている

 
  08時45分前方に大きな杉が見える                樹齢約二千年の川上杉

道路が右へカーブする広い場所に「紀元杉」のバス亭があった。時簡に余裕があったのでザックをバス停近くに置き紀元杉(樹齢約三千
年、胸高周囲8.1m)を訪問する事に。少し道路を下がると左手に大きな杉があり表札も掲げられている。道路から木の階段が紀元杉
へと下がっている。

近づくと上から見るより相当迫力があった。縄文杉は近くまで行けないのでその迫力を感じる事が出来ず消化不良気味だったが、紀元杉
は根っこ近くまで木道が付けられているので縄文杉と対話する事が出来る。

 
    09時紀元杉路線バス亭に着く              すぐ近くに紀元杉がある  上の方は落雷だろうか折れている


               紀元杉は間近に木肌を感じる事が出来る

 
え〜っと この角度じゃ幹から腕が外れているんだけど・・・     これもヤマグルマらしき樹がコラボしている


道路へ上がると丁度ツアーバスが着いて大勢の見物客が下りてくる。路線バス停へ帰って休んでいると外国人が一人やって来た。退屈な
ので「どこから来たの?」と質問するとドイツからだと言う。この人も学校の教師をしており夏季休暇を利用して世界遺産の屋久島へやって
来たのだ。「山小屋に泊まったの?」と聞くとテント泊だったと答える。

英文のガイドブックを持っているので見せて貰いながら、日本の登山は明治時代に医学を初めとする近代化をドイツに学んだのでその
影響を受け、登山用語はドイツ語が多いと言うと「へ〜〜  ドイツはあんまり高い山が無いのでピクニックが主流だよ」って不思議がる。
確かにそう言えばそうだなあ

ザイルとかカラビナ、アイゼン、ピッケル、ストック、ツエルト、シュラフ、コッヘル、ハーケン、モルゲンロート、ワンダーフォーゲルなど思い
つくドイツ語っぽい山道具用語を連発すると少し発音が違う物もあったが概ね理解出来ビックリしていた。又、ドイツでは教師の夏季休暇
は4週間あると聞き、くだんの種子島教師に伝えると大いに羨ましがっていた。

バスはほぼ時間通りやってきたがほとんどがツアーバスのお客さんなので路線バスには6〜7名しか乗らなかった。


   ドイツ人の教師 テントは大きい                 種子島の教師

 
        屋久杉ランドを通過                   島の周囲を囲む前山の峰々

約1時間で安房に着き、今度は宮之浦港行きのバスに乗り換える。宮之浦港に着いて日帰り入浴が出来る場所を探すが不思議とどこに
も無かった。丘の上にあるホテルが最近日帰り入浴をし始めたと聞いたのでそこへ行くが時間が早くてまだ入れないと言われた。う〜〜ん
事前調査不足だった。

仕方なく港に帰り近くの食堂で「とびうお定食」と「タンカン・カキ氷」を食べて寒くなる。16時20分宮之浦港発、鹿児島着18時55分の高速艇
で鹿児島へ帰り、サラダバー付きの焼肉屋へ飛び込み野菜をたらふく食べる。山で3泊すると野菜と風呂を渇望する。焼肉屋で聞いた日帰り
温泉に入り、仮眠を取りながら四国に帰る。


 
12時10分 安房港をバスで宮之浦港へ向かう         13時30分 宮之浦港のレストランでとびうお定食を食べる

 
ボリュームたっぷりのタンカンかき氷                 屋久島へ来る前に登った開聞岳が見えた

 
    焼肉屋の取り放題サラダバーが嬉しかった         翌日13時過ぎ佐賀関からフェリーに乗り込む


今回の屋久島は比較的観光客が少ないと思われる8月終盤に出かけたが、縄文杉コースには人が溢れており天気も悪かった事もありじっ
くりと楽しめなかった。その分、白谷雲水峡と屋久島の奥岳縦走(永田岳・宮之浦岳・栗生岳・黒味岳)はとても思い出深く満足の出来る旅
であった。




屋久島第1日目 白谷雲水峡 は  ここ

屋久島第2日目 縄文杉ルートは  ここ

   


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