平成23年7月9日〜10日 イノシシ達のロングトレイル 奥物部紀行

第1日目:日和田〜石立山(1,707.7m)〜中東山(1,684.6m)〜石立分岐〜白髪避難小屋 (11時間)

第2日目:白髪避難小屋〜白髪山(1,769.7m)〜ふるさと林道登山口〜みやびの丘〜古敷谷山(1,468.7m)
     〜韮生(にろう)越
 〜口西山(1,570m)〜源氏ヶ森(1,529.1m)〜別府峡もみじ茶屋 (12時間)


イノシシ達 「奥物部」を歩くの巻


この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図
赤 : 第1日目  日和田〜石立山〜中東山〜高ノ瀬・石立分岐〜白髪避難小屋
青 : 第2日目  白髪避難小屋〜白髪山〜みやみの丘〜古敷谷山〜口西山〜源氏ヶ森〜別府峡



高知県には迫力のある長い流域を持った川が存在するが、その東部地域を代表するのが物部川である。
三嶺・西熊山・白髪山・綱附山などから流れ出した沢は西熊渓谷を形成し、これを集めて「上韮生(にろう)川
となる。

一方、石立山・中東山・白髪山・口西山などから流れ出した沢は美しい別府(べふ)峡谷をうがち、「槇山川(物部川)」
となる。

この二つの支流が大栃で合流し物部川として土佐湾に注いでいる。広義には大栃より奥側の流域を奥物部といわれ、
この高知の誇る自然豊かな物部川源流地域を「
奥物部の山々」と呼び親しまれている


今回の別府峡谷をぐるりと周回する長い苦難の道を歩く事になった発端はふるさと林道「西熊・別府林道」の土砂崩れ
であった。
当初、この林道の白髪登山口辺りに自転車を置いて日帰りで石立山〜中東山〜石立分岐(高ノ瀬付近)の
縦走を考えていた。所がこの林道が土砂崩れで通行止めとなり自転車利用計画がダメになり、地図を眺めながら周回を
検討する。


すると、ゆきねえが良く行っている「みやびの丘」から南側に向って尾根が延びている。尚も調べて見ると「古敷谷山
口西山」「源氏ヶ森」と言う名前のついた山があるし、ここを尾根沿いに辿れば別府峡もみじ茶屋付近に下山出来る
ではないか。
泉保さんのイメージをトレースする 山歩き地図1「剣山・三嶺」にもこの山名が載っているし・・・

高知の重鎮「山登の部屋」さんはふるさと林道から韮生(にろう)越経由古敷谷山まで歩きみやびの丘へと北上している。
マーシーさんが提案したこの古敷谷山から林道に下りる安全ルートは周回としていかにも中途半端である。


問題は尾根の南側「口西山」界隈は四国では屈指の大薮で周回の記録はほとんど無い。部分的にこの界隈に行った記録も
相当藪で苦戦を強いられている様だ。要するに高知県人でさえここを歩き、まともな登山記が無いのである


これは面白い! こういうルートこそ挑戦し甲斐があるもんだ。てな訳で藪の同志マーシーさんを誘ってここを歩く事に
した。

 

第1日目:日和田〜石立山(1,707.7m)〜中東山(1,684.6m)〜石立分岐〜白髪避難小屋 (11時間)

04時川之江インターを下りてマーシーさんを拾い高知道より別府峡を目指す。前日大栃観光タクシーに電話して別府峡
もみじ茶屋に06時予約をしている。予定より早めに別府峡へ近づくと前をタクシーが走っている。これが予約した車
だった。


もみじ茶屋でタクシーを待つ間ゆっくりと支度をするつもりが、先にタクシーが到着しちょっと焦らされる。案の定、
500mlの凍らせたペットボトル2本とウィダー2個を車に忘れる。


回送料金を含めて6千円をマーシーさんと折半して支払い、06時日和田登山口を出発する。 ザックの重さはペット
ボトル分1kgが無くなったので総重量は何とか目標の10kg以下になった様だ。マーシーさんはテントが無いのに
10キロをオーバーしているそうだった。(どうせ酒とチュウハイ用の氷、つまみやろ)


国道195号線の北側にある石段を上がって「石立山・日和田登山道」ルートへと進む。

タクシー代を払ってまで日和田へ回ったのは二人共このルートが初めてだったからである。少し歩くと上側に舗装道路が
交差してまた登山道に入る。いつもの如く遠くの民家より放し飼いの犬が吠えながら近づいてくるが、一定距離からは
遠吠えするだけの根性なしである。廃屋のある段々畑跡を抜けて植林地帯に入る。

右手には沢があり梅雨の水を集めて音を立てている。地図によるとこの沢の渡渉点が水場となっているが、ちょっと水場
としてはタイミングが早すぎる。06時40分に沢を渡るとケタニ草やミツマタが生えた一面開けた伐採地となり、向かい
の山が霧に霞んでいた。伐採地を抜け植林地帯の斜面を上側の尾根に向って登る。

07時25分標識が立つ尾根部に到着すると石灰岩質の岩が現れ、やっと石立山へ登る実感が湧いてくる瞬間だ。


 
     石立山 日和田登山口                        植林地帯に

 
   伐採地は一面ケタニグサに覆われている           稜線が近づくと岩が露出してくる

 
   尾根に到着  ここに標識あり                尾根部は石灰岩の河原みたい


尾根部からボロボロの避難小屋まで1時間は岩と急斜面の細尾根歩きとなる。ヤマボウシが丁度白い花を咲かせ
霧に霞んだ山間に浮かび上がる。

エゴノキの花は終盤で所々登山道を白い絨毯にしている。岩場にはヒメキリンソウやイワキンバイも見られる。避難小屋
近くになると登山道が広くなり背の高い笹が刈られて、丁度野根山街道の装束峠辺りを彷彿とさせた。

08時25分石立山避難小屋に到着し小屋前の広場で少し休憩をとる。トタン張りの小屋は相当荒れており避難小屋
としての機能は無い。虫は比較的少ないが休憩するとどこからともなくやって来て安息の邪魔をする。


そこから10分程歩くと登山道が尾根の合流切替し部となり、そこには標識が立っている。標識では「別府」方面と
なっているが恐らく四足トンネル上部からの直登ルートであろう。

この辺りからは樹木の皮が剥がれて、笹は枯れている。噂に聞く鹿の食害を目の当たりにする。最後の尾根を折り返す
とブナの樹があり、霧で視界が悪いが山頂部が近い事は感じ取れる。沢山の樹木が黒く枯れて立っており、ゴースト・
マウンティンの如くである。


これが石立山の変わり果てた姿なのか? 天候と同じく重苦しい風景の中09時05分「石立山」山頂に到着し、ここで
10分程休憩する。辺りには古ぼけ、朽ちかけた山頂標識が乱立し、一升瓶などを含むゴミが散乱している。

徳島・高知県屈指の名山「石立山」山頂の印象は残念な事にC級である。


 
一回転してまともに育った木 人間もこんな感じかな       尾根筋を振り返る

 
  ちょっと視界が開けてくる                     ヤマボウシが何本も咲いていた

 

 
        石灰岩の登山道                  足元の岩の間にはヒメキリンソウ

 
       カラマツソウかな                    エゴノキの花はあちこちに見られた


 
   刈り拡げられた登山道                    むむっ  これって避難小屋?

 
  別府峡コース(尾根コース)分岐                 大岩が出てきて山頂が近い

 
    山頂手前の平坦部                     幽霊が出てきそうな荒れた山頂付近

 
   石立山山頂  一見して荒れて汚いイメージだ           石立山三角点


石立山山頂から西峰まで歩くが、数年前に歩いた時の面影は全く無い。記憶では笹の大薮の中を歩いたが、今は笹は
無く、樹木は枯れ鹿が食べないバイケイソウだけが風に揺れている。暗く霧深い陰気な稜線を歩いているとドラキュラ
の森みたいで不気味な感じがする。

09時36分中東山分岐に到着。

イシダテクサタチバナは日和田登山道には見られなかったので別府峡登山道へ少し下りなければならない。マーシーさん
は行かないと言うのでGPSとカメラのみ持って下がる。どの辺りまで下がえば花と対面出来るのか不安だったが、5分
位で最初のイシダテクサタチバナに遭遇し、写真を撮りまた分岐まで息を切らせて駆け上がる。


 
枯れた樹木の尾根に鹿が食べないバイケイソウだけが風に揺れる    石立山・西峰分岐

 
     イシダテクサタチバナ                  まあ固有種だけに一見の価値はある

09時50分マーシーさんと合流しいよいよ第一目標である「石立山〜中東山〜高ノ瀬縦走路」までのルートを
歩く事になった。尾根を少し進むと踏み跡が二手に別れ、左側に「別府峡登山道ではありません」という意味の
大きな看板がかかっていたが、右手には何も標識はない。こういうのを片手落ちと呼ぶのだろうか 

石立山・西峰〜中東山〜高ノ瀬・石立縦走路分岐  5時間

霧で視界が利かない中、右手の踏み跡を岩場を下って進むと崖を乗っ越した向うに岩山がぼ〜〜と霧に浮かんでいる。
「あれ?これって捨身ヶ嶽じゃないの?」どうも早速入り口を間違った様である。先ほどの分岐まで引き返し、
10時00分仕切りなおして左側の踏み跡を尾根に沿って下る。


5分程で尾根が切れて左手に鹿防止のネットが現れた。一旦右手から岩をトラバースして1段下がり、今度は
ネット方向の左手へとザレ場を慎重に下っていく。右手の岩には植物が生えているのでマーシーさんに「ムシトリ
スミレはどの辺りにあったの?」と聞くが「記憶にありません」と下から返事が返ってくる。岩場をざっと見渡す
がイワキンバイ、シモツケソウ、ウスユキソウ位で残念ながらお目当ての植物は見る事が出来なかった。

マーシーさんは既に大きなザレ場の向こう側=縦走尾根の続きに出ている様なので急いで先を急ぐ。何せマーシー
さんは写真もそう撮らず、歩くのが早いのでコンビを組むと全てが忙しいのだ。


10時18分岩場のトラバースとザレ場を抜けて縦走尾根に復帰する。

 
高ノ瀬分岐まで7時間とある。結構遠いじゃん       イワキンバイの向こうに捨身ヶ嶽がぼ〜〜っと現れた

 
尾根に引き返して、左側の踏み跡を進む            鹿の防護ネットが尾根に現れる

 
    一旦 右手に少しトラバースする            今度は防護ネットのある左手のザレ場を下る

 
             右手の岩場                    足元
    
 
   ザレ場が尾根の左手に流れ落ちている        ザレ場を右手下側向かってに渡ると縦走尾根に復帰出来る

最初は岩の多い細尾根であるが、その内にブナやゴヨウツツジの立派な樹が現れる。背丈が50cm程の笹も
あるがほぼ枯れており、縦走路は黄色い境界杭が随所にあり藪も無く快適な尾根道と言える。

かつて四国でも指折りの難コースと言われたこの縦走路もフツーの尾根道となっている。ホッとする気持ちと
がっかりする気持ちが複雑に心の中を交錯する。最近境界の割り出し作業があったのか笹深い尾根部分は幅3m
程の街道が出来上がっていた。


10時50分地形が平坦な場所で道が不明瞭になり、私は右の尾根っぽい獣道を進み、マーシーさんは左手の
踏み跡を辿る。二人で歩くとこういう時に便利だ。結局左手にはっきりした登山道が現れてマーシーさんに合流
して坂を下る。この縦走尾根道を通して進路がはっきりしなかった場所は唯一ここだけだった。


11時頃一旦細尾根となるが暫く歩くと又ブナを配置した枯れ笹の刈り上げ道になる。

 
  縦走路に上がると意外とおとなしい尾根だった        細尾根もスペースがあってストレスが無い

 
  けもの道プラス登山道で快適な尾根だ           時々岩場も現れるが危険はない

  
 ブナの巨木が沢山ある 黄色い境界杭が目印       こんな縦走路でいいの? って思える快適さ

 

  
    終始こんな境界杭が立っている                   歩き易そうな道でしょ

11時20分右手が切れ落ちた崩壊地があり、高ノ瀬峡を挟んだ東側(徳島方面)の見通しが開ける。新九郎山から
杉生山にかけての尾根が並行して走っているが、その向うにも馴染みが薄い権田山や天神丸界隈だろう山並みも見え
天候も次第に回復してきた様だ。


今歩いている尾根は高知と徳島の県境であり分水嶺でもある。左手、高知県側に降った雨は物部川を形成し流域の香美
地方を潤し土佐湾に流れ込む。方や右手徳島県側に降った雨は那賀川となり木頭、上那賀、相生を経由して紀伊水道へ
と流れていく。


尾根の樹林帯は所々で鹿が剥いだ無残な物もあるが総じて立派に林立している。特に所々にあるシロヤシオの樹は立派
で5月には見事な花を咲かせているに違いない。


数々のアップダウンを繰り返しながら次第に中東山へと進んでいく。11時30分頃になるとなだらかな尾根
となり倒木広場を通過する。相変わらず境界は刈り払われ、黄色い杭が続いているのでルートがはっきりしている。


 
   ブナやシロヤシオの樹が沢山ある                   土台が大事やで

 
高ノ瀬峡を挟んで連なる徳島の山々                   崩壊地は東側に多い  11時20分

 
おじょも風に言えば 「どんどん進みます」            微妙に尾根の風景も違う


           11時30分 倒木広場


進行方向の向うに高い尾根が見えるが中々そこに到達しない。ここが藪で覆われていた頃は長くて退屈する縦走
だった事だろう。


ブナやモミの大木に慰められながら歩き、12時になったのでブナの大木の下で休憩を取る。虫が居るのでネット
を被ったままである。左手全方に形の良い山が見えるが、きっと白髪山だろう。


12時20分位から次第に登り傾斜になってくる。やっと中東山の基部に近づいた様だ。すると右手前方に大崩壊
地が見えた。なるほどあれが噂に聞く中東山の崩壊地か。


登山道は岩が出現し、傾斜もきつくなる。喘ぎながら坂を上がっているとヒメシャラかナツツバキの花が樹に
咲いているのが見えた。この手の花は登山道に散っているのを見て気が付き、上を見上げても中々咲いている花を
見る事が出来ない。


細尾根をダブルストックに身体を預けながら一歩一歩登っていく。人間の感動ほどアテにならないものは無い。美しい
ブナや樹林の風景がずっと続くとそれが当たり前になり、苦しい急登になると足元だけ見つめながら歩いている。


 
   ブナの巨木に会うのが楽しみになる       根本近くで大きく枝分かれしていると歳を取った時が心配だ

 
   1200時にブナの根本で休憩する              ツルアジサイをまとっているのか

  
  ブナがどれだけ多いかを知って貰う為においわさん風、同じような写真のオンパレードを

 
  靴の紐を締め直すマーシーさん                 いよいよ中東山の基部に入ったようです

 
   中東山の崩壊地が見えてきた                 上りになると岩場が多くなる


 
  あ〜しんど  急な斜面だこと               まだまだ急な上りが続く

 
    でもルートははっきりしている                    モスクのようなコブ幹

13時10分前方が開けて「中東山」(なかひがしやま)の平らなピークに到達した。どこかで見た山頂に
似ている・・・・そうだ、宇和島の三本杭にかわらん。そう言えばあそこも鹿の被害で有名な山だった。


兎に角、本日の縦走目標通過点に到達した事でホッとする。天気が回復して急に暑くなって来たので木陰に移動して
昼食タイムとする。青空も少し顔を出し、剣山・次郎笈がはっきりと見えるが、石立山は8合目付近から上がまだ雲
に隠れている。


笹が枯れて根がまるで麦ワラの様に地表に散乱し、先の尖った草と柔らかいコケの生えた裸地になっている。

13時35分休憩を切り上げて高ノ瀬縦走路分岐に向う。折角喘ぎながら登って来たのに今度は鞍部に向って相当下る
事になる。目指す縦走路はもっと高い場所にあるのでこの差額分は又登りで帳尻を合わす訳だ。一旦細尾根となり、
それを進むと13時48分又「ジル沢」と書かれた標識の立つ分岐があった。ここはふるさと林道・西熊別府林道
からの中東山登山道分岐である。


日が差さず薄暗い尾根近くには鹿の骨が散乱している。右手前方に崩壊地が見え、上り坂となった。大岩の手前から
相当大規模に崩壊が起こっている。鹿の食害との因果関係は無いのだろうか


ヤマツツジが綺麗に咲くピークを越えると、又視界が開けて次郎笈がどてっぱらを大きくして競りあがっている。
剣山から見る次郎笈は美形だが薄っぺらい印象であったが、こちらから見る次郎笈は大きな山塊の斜面を持って
どっしりと構えている。その風景を望む足元の斜面にはシダで一面が覆われている。シダは鹿の好物では無いようだ


更に10分程進むと尾根が二重になっており、その間の窪地が池となっている。ここが動物の水のみ場になっている
のは間違いない。


 
        中東山直前の図                       青空が出てきた中東山

 
      一応 しぇ〜〜姿をば                            中東山を北に進む尾根

 
      相変わらずブナは多い                                笹の葉が無い

 
       ジル沢分岐 (南口)                     大岩がある

 
      大規模な崩壊地  (東斜面)               唯一鮮やかな色の山ツツジ


次郎笈をこちらから眺める機会はあまり無い   でも手前の尾根の荒れ方は尋常ではない

 
2重尾根の大きな窪地があり水が沢山溜まっている        ハゲ地の向こうにある緑はシダだ


開けた尾根に出ると前方に目指す高ノ瀬縦走路尾根が見える。あ〜 一旦下がって又あそこまで這い上がるのか・・
確かにこの縦走路は北側から南側へと(石立山へ向って)歩くのが早そうだ。


丸い尾根は因幡の白兎の如く丸裸で痛々しい。でもお蔭で何だか見通しがすこぶる良い。世の中には良い事と悪い事が
大まかに分かれそうだが、悪い事の中にも何かしら救いがあるものだ。


ドンドン下がって行くと14時33分又標識がありここも「ジル沢」分岐だった。この辺りも全く藪は無く一旦広い場所
に出た後、細尾根の急な登り坂となり 15時04分高ノ瀬縦走路分岐に這い上がった。




 
  正面に高ノ瀬付近の縦走主尾根が見える            ハゲ山で対照的な緑のシダ原

 
       一旦下がって又上る         斜面を振り返る  笹の根が浮いて麦わらの様に地表に散乱している

 
    ここにもジル沢分岐(北口)があった            遠くからはわからなかった細尾根もある

 
  表銀座縦走路に向かってひたすら登る            15時15時04分 石立山縦走路分岐に到着〜

この辺りにオオヤマレンゲの群生地があるのだが、これ又興味を示さないマーシーさんを待たせて反対側へ少し
行って見るが下り坂となり時間がかかりそうなので諦める。石立分岐まで帰って先に進むとマーシーさんは岩の
上で辺りの風景を眺めながら休んでいた。


三嶺への縦走路を外して尾根伝いを歩くが、笹が枯れて荒地となり皮肉にも問題なく歩く事が出来た。

早朝、日和田から3時間かけて登り、そこから6時間かけて歩いて来た石立山からここまでの縦走路は天気が回復
した今眺めやる事が出来る。確かに遠いとも近いとも言える。中東山は緑に覆われているが、その手前のピークは
禿山となっているのが良くわかる。その向うに横たわる石立山は右手に西峰があり、そこにも崩壊を見る事が出来る。


進行方向の白髪山方面も手前にまだピークが幾つか点在して遠い道のりだ。笹原のあちこちには鹿の食べないアザミ
が咲き誇っているが、笹は枯れ、木々は山火事の跡の様に葉を持たずに虚しく林立していた。


15時30分尾根部が岩場になっている場所を通過する。珍しい白色のアザミや冬枯れの様に風に揺れる笹原を
写真に撮っているとマーシーさんはもう先の方へ行っている。次のピークはマーシーさんに追いつく為に登山道を
歩く。


16時18分「平和丸」と呼ばれる三角点を通過し、次第に三嶺の形がそれらしくなってくる荒れた樹林帯を
下がると16時44分大規模なネットが左手を囲っている。その向うにやっと今日の最終目標「白髪避難小屋」が
見えた。


 
剣山系表銀座縦走路に上がってちょっと東側へ歩く     咲き誇るアザミの向こうに中東山と禿山尾根が見える


   5時間かけて歩いてきた石立山までの縦走路を眺める  石立山だけ山頂に雲がかかっていた


 
         尾根部の岩場付近                やはり石立山方面が気にかかる

 
    石立山縦走路の最終地点尾根を眺める          笹が無残な色をしている


     一見美しい風景なんだが、笹の上側に葉っぱが無い

 
さすがアザミは鹿も遠慮する様だ  白いアザミ           シコクフウロと黄色いニガナ

 
   平和丸三角点    立ち枯れの樹木が多い             ツイン・イナバウワー樹

 
    鹿侵入防止ネットが張り巡らされている           白髪避難小屋が見えた

もし、これまでの縦走路が藪で時間がかかった場合は途中でテント泊を覚悟してモンベルのウルトラ・ライト「ドーム
シェルターII」を持って来ている。避難小屋まで到達出来るのがわかっていればマットと寝袋だけで済んだのであるが・・・

小屋に入ると強烈にカビ臭い。長い梅雨の間窓を閉め切っていたのでカビが生えたのだろう。窓を開けると虫が沢山入る
ので私はカビ臭いのに慣れる方が虫よりマシだと思っていた。だが、マーシーさんは窓を開け放ち、土間で煙を焚いて入って
来た虫を追い出す作戦だ。今度はカビ臭いのは解消されたが猛烈に煙たい。

まあ考えて見ると山の上なんだからそうそう快適さを求めるのにも限度があるって事だ。


小屋に荷物を下ろして一休みした後、水場へいく。ここの水場は南側の沢にあり、そこへ行く道を示す古びた標識もまだ
立っていた。急斜面を下りて沢を流れ落ちる冷たい水で顔や全身を拭く。水浴びをして着替えをしようとしたが、テジロ
が大挙して攻撃して来るのでウォーターバッグやペットボトルに冷たい水を入れて退散する。


いくら冷たくて新鮮そうな水でもこの鹿に溢れた沢の水を生で飲むのは抵抗がある。小屋に帰って寝る前に沢水を沸騰させ
明日の大切な飲み水を作る事にする。


先ずは手持ちの残り水を使ってお湯を沸かし夕食を作る。お湯を入れたら出来る「かやくごはん」に「フカヒレスープ」が
メインだ。マーシーさんは魔法瓶から氷を出してチュウハイをやっている。私も少しお相伴に預かりながら夜を過ごす。


寝る時は虫が嫌なのでモンベルのドームシェルターを小屋の中に張って二人で入る。普通のテントと変わらず快適な空間
である。但し野外で張った場合の風や雨の具合を検証する必要がある。


 
避難小屋の窓を開け、空気を入れ替え煙で虫を燻し出す   水場で補給と水をかぶる  冷たい〜気持ちいい〜

 
今晩の豪華な(?)夕食 ゆ〜ちゃんとこには負けるけど・・  この一瞬の為にマーシーさんは氷を魔法瓶に入れて
                                      持ってきた

今日一日、11時間の歩きが意外にも楽勝だった事を思い出しながら、明日もそうあって欲しいと期待しながら
眠りにつく



第2日目いよいよ 口西山〜源氏ヶ森に続く  続きは ここ

      
      

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