通勤靴で行く槍ヶ岳

平成20年8月3日〜4日
1日目 新穂高ロープウェイ登山口ー槍平小屋ー千丈乗越ー槍ヶ岳
2日目 槍ヶ岳山荘ー大喰岳ー中岳ー南岳ー南岳新道(西尾根)−槍平小屋ー新穂高ロープウェイ


平成20年8月3日〜4日  憧れの槍ヶ岳へ

登山靴忘れた〜  一体どうなるの? 槍ヶ岳


カシミールソフトを利用した槍ヶ岳 GPSトラックログ図   国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

1日目 新穂高ロープウェイ登山口(0630h)−白出沢(0830h)ー槍平小屋(1130h)−千丈乗越分岐(1430h)
     −千丈乗越(1530h)−槍ヶ岳山荘(1710h)−槍ヶ岳山頂 1830h
2日目 槍ヶ岳山荘(0650h)−中岳(0820h)ー南岳(1000hー1200h)−槍平小屋(1530h)−登山口(1900h)


1日目 (8月3日)
新穂高温泉登山口ー槍ヶ岳 (約 11時間 )

剱岳から北海道・利尻・礼文島の疲れから暫く家でゴロゴロ過ごしその生活にも飽きてきたので、そろそろ念願の槍ヶ岳へ行く事に。
2〜3日前からザックに装備品をチェックしながら詰め込む。 むふっ これで準備万端・・・

前日の夕方自宅を出て夜中近くに東海北陸道を長良川に沿って進んでいる頃フト何かの不安が心に過(よ)ぎった。
う〜〜ん 財布も持ってきた、雨具も入れた、テントもOK・・・ あとは何やろ・・・う〜〜んと
むむっ  靴? くつ? クツ・・・ 登山靴や〜〜〜〜ぎょへ〜 エライもんを忘れてきた。 
以前マーシーやグランマー啓子さんが登山靴忘れた事があったと聞いていたがまさか〜と思っていた。それが自分の身に降りかかる
事になろうとは・・ オー ユア ゴッド (注:エントツ山は無神論者の為 オーマイゴッドとはならない)

武士の魂・刀を忘れてきた野武士は急いで足元を見る。そこにはかれこれ3〜4年も通勤に履いてきたクタビレ靴がアクセルを踏んでいた。
え? お前と一緒に剱岳? 今更しょうがない 野武士はタケミツで勝負か・・・
かくして8月3日 槍ヶ岳通勤靴登山は開始された・

      
                一応 ウォーキングシューズタイプの通勤靴 (槍ヶ岳にて)

8月3日02時過ぎに新穂高温泉近くまで到着。途中でテント場らしきものが道の横にあったのでその管理棟横の駐車場に
テントを張り仮眠。でもすぐにバスやら車やらが通り中々眠れなかった。

朝6時ごろ新穂高温泉ロープウェイ口に到着。すぐ西側の斜面上には残雪の岩峰が聳えていた。北アルプスに又舞い戻って
来たんだなあ。無料駐車場がよくわからないままロープウェイの有料駐車場に車を放り込む。登山靴を忘れたショックで気が
重く準備に手間取り6時半頃にいよいよ出発する事になった。

足元をスパッツで覆うもハイカットでないクツはスパッツがうまくかかとが納まらない事がわかった。(普段クツの踵を踏んで
スリッパ代わりにもしているのだ) 廻りにいる登山者の足元がヤケに立派そうで気後れする。

 
登山口から30分くらい手前にあったテント場       新穂高ロープウェイ乗り場 ここが登山口

ロープウェイ駐車場横から蒲田川上流の右俣谷に沿った「右俣林道」の広い道を歩く。車止めのゲートを越えて途中で夏道の
トラバース道で林道をショートカットすると穂高平避難小屋に出る。どうも夏場は臨時営業しているらしくカキ氷のノレンがかかって
いた。ここから又傾斜の緩やかな広い林道を歩く。

 
右俣林道を暫く進むと車通行止めのゲートあり      林道をショートカットする夏道の標識

 
      トラバース道の樹                              穂高平小屋

この林道沿いには色んな草花が咲いており単調な林道歩きにアクセントを与えてくれる。特にタマガワホトトギスやゴゼンタチバナ
などの群生は多少の盗掘など影響ない程に咲き誇っている。(逆に沢山あると珍しくもないので盗る気もしなくなるかも・・・)

穂高平小屋から約1時間程歩くと広い林道が終わりそこに大きな沢が現れた。白出沢と呼ばれる場所でこの雪渓の彼方、白出の
コルに穂高岳山荘がある。この沢を渡る頃から上から登山者が下りてくるのと出会う様になった。 聞くとほとんどの方は槍ヶ岳で
はなく槍平のテント場で一泊しての朝帰りらしい。

白出沢を渡ると山道となりやっと登山をしている雰囲気となる。登山道の両脇には相変わらず夏の花々が咲き乱れている。

  
   タマガワホトトギス                ルリトラノオ                ゴゼンタチバナ

  
    ソバナ                      アオチドリ                   センジュガンピ


                   白出沢手前に立てられた登山道案内標識

 
     白出沢を渡る   水はほとんど無かった          やっと山道となる

白出沢を過ぎてから山道に入るのだが、登山道は歩きやすく良く整備されている。丁度石鎚の土小屋から筒上山へ行く岩黒山
トラバース道の様に平たい石を組んで歩きやすくしてくれている。本場日本アルプスの一般登山道となるとそこを歩く人の数も半
端じゃないのでこんなに整備が行き届いているのだろう。

ブドウの蔓が沢山ぶら下がった「ブドウ谷」を過ぎて「チビ谷」の沢を渡る。更に進むと「滝谷の出会い」では水場があり登山者の
良き休憩所となっていた。結構暑いのだがこの沢に来ると冷たい風が心地よくタオルを水で濡らして首に巻く。

 
   滝谷の出会い   水量が豊か           滝谷と言われる様に奥に滝がある その上に雪渓がり岩ドームが見える

  
     クルマユリ                 シモツケソウ                   オトギリソウ

歩いても歩いても中々目標の槍平小屋に着かない。途中すれ違う登山者に槍平小屋までの時間を聞くがみんなまちまちではっきり
しない。そうこうしているうちに道が次第に平らになり登山道の両脇の草が刈り払われて小屋が近い雰囲気が漂う。

登山道に清んだ山水が横切り豊富な水場の向こうに槍平小屋が現れた。新穂高温泉登山口から約5時間かかった計算になる。
行動食を摂るのも面倒なので山小屋で「冷やしうどん」を注文。 この際はうどんのコシについてのコメントは差し控えよう。

槍平小屋の東側には南岳への分岐があり、更に北側へ進むと水場とテント場があった。

            
                槍平が近づくと北穂高方面の展望が少し開ける


 
 槍平小屋のかわいい熊さんと                        小屋の北側にあるテン場

槍平小屋からは登山道の高度が上がり、いよいよ槍ヶ岳へ向かっての正念場となる。と同時に岩だらけの登山道の両側には
今までにも増して様々な高山植物が現れてとても興味深い山行となる。この頃から東京方面から来た10人程のメンバーと
後になり先になりと会話を交わしながら暫く歩く。

この辺りは大喰岳の西尾根と槍ヶ岳の西尾根に挟まれた窪地で樹林帯が消えて一面のお花畑となっている。

  
エゾシオガマ(リップさんに教えて貰う)        ミヤマカラマツ          オオバミゾホオヅキ(リップさんに教えて貰う)

  
  キヌガサソウ                   エンレイソウ                  サンカヨウ (実になっている)

 
ガレ場を斜めに横切り上方の登山道に合流する       樹木が次第に低くなり森林限界が近くなる

  
   サンリンソウ (?)             ミヤマキンポウゲ               マイズルソウ

  
ミヤマキスミレ(リップさんに添削)            オオヒョウタンボク         タニギキョウ(リップさんに教えて貰う)

やがて飛騨沢の上部に到達すると正面に千丈乗越から奥丸山へ伸びる尾根と平行に東へと進む。前面の視界が開けてきて正面には
ガスに包まれた槍ヶ岳の山塊、振り返るとボリューム溢れた笠ヶ岳の姿が現れる。

あ〜〜あれが憧れの槍ヶ岳か〜  もうすぐそこじゃん  (と思ったがちょっと甘かった・・・)
東京からの社員旅行グループは真っ直ぐ飛騨乗越に進むが、私は高御位山さんに勧められた千丈乗越へと分岐を左折する。
マトモな道があるのかちょっと不安だったが峠までしっかりとした登山道があった。

 
    千丈乗越の尾根が見え出す                 正面に槍ヶ岳が見える筈なんだがなあ・・

       
                 笠ヶ岳がデンと構える飛騨沢

  
       クロユリ                   ダイモンジソウ              ヨツバシオガマ(リップさん添削)

  
      ツマトリソウ              シラネニンジン                    モミジカラマツ

         
                      コイワカガミ    チングルマ

  
    アオノツガザクラ             キバナシャクナゲ                 ベニバナミネヅオウ

 
   千丈乗越分岐 (槍ヶ岳はガスの中)              千丈乗越 (正面ピークの右)

 
          ハクサンイチゲと槍ヶ岳                     ミヤマダイコンソウと笠ヶ岳

  
イワギキョウ (リップさん添削)           ハクサンフウロ、ミヤマキンバイ          タカネミミナグサ

千丈乗越に上がると猛烈な風が吹いており帽子が飛ばされそうになるのでクールネックを頭から回して首元でくくり固定する。
ここ千丈乗越は北側の黒部五郎岳や水晶岳、鷲羽岳が三俣蓮華岳で合流し双六岳を経て槍ヶ岳へと向かう「裏銀座」と呼ば
れる縦走路上にある標高2,734mの峠である。

猛烈な風に体を揺らしながら数名の登山者が西鎌尾根からやって来た。中年女性は相当バテている様子。ここから同じ槍ヶ岳
山荘へ行くと言う。そこに槍ヶ岳山荘の建物が見えるのだが中々近づかない。その女性は高山病にかかっているらしくて頭が
痛い、気分が悪いと言いながら本隊と遅れて少し歩いては休んでいる。

励ましながら岩だらけの尾根道に付けらられた白ペンキのマークを頼りにジグザクを切りながら槍へ槍へとトボトボ歩く。


  千丈乗越   正面に子槍と槍ヶ岳(3,180m)  右に大喰岳(3,101m)

    
千丈乗越の尾根から飛騨沢、 笠ヶ岳方面          裏銀座ルート  西鎌尾根

 
      岩だらけの尾根道                           孫槍(?)


   振り返ると登って来た飛騨沢から千丈乗越が眼下に遠ざかる

槍ヶ岳手前にある岩ピークの為槍ヶ岳が見えない。その存在の雰囲気だけは感じながら喘いでいると突然
眼の前に白く巨大な岩峰が現れた。あれ? 着いてしまったの?

右上に大勢の人だかり。左の絶壁には芥川竜之介「雲の糸」の如く大勢の人間が天に向かって岩にへばり付いている。
あ〜〜 ここがリップさんが言っていた槍の肩か〜   感慨深く近くの人に頼んで記念写真を撮ってもらう


                       子槍と槍ヶ岳

 
   槍ヶ岳に着いた〜                        槍ヶ岳山荘にチェックイン

槍ヶ岳山荘の前ではやけにハングルっぽい雰囲気がする。槍ヶ岳に登る前に落ち着かないので先にチェックインする事に。
山荘内は大混雑でカードに氏名や住所を記入して受付に出す。聞くと今日は500人の宿泊客だと言う。そのうち200人が
韓国からのツアー客だとの事。

韓国の人は声が大きいがとても明るく和気藹々の雰囲気。受付カードを持って案内係りに見せると「岩つばめ」という部屋に
案内された。そこは両側に2段ベッドが並び一列に20名くらいの雑魚寝で布団は2人に一つ。「靴は靴箱に、ザックは部屋の
中に入れて下さい」って言われてもどっちも既に置く場所が無い。

夕食は19時30分のグループなので、仕方なくザックを廊下に置いて槍ヶ岳へ登る。靴は入り口に置いたままだが間違いよう
がない。

外に出ると天気はまずまずだが強風が吹き荒れてとても寒い。夕方も遅くなったので槍ヶ岳への道も先ほどの混雑は無い様だ。
石鎚東稜の最後も遠めに一体どこをどう登るんだ?って思うがこの槍ヶ岳も「へ〜〜 こんな岩場登れるの?」って印象だった。

でもいざ登ってみるとルートがちゃんとあり、要所は登りと下りに分かれている。播隆上人が1823年に初めて槍ヶ岳に登り、この
霊山に縄や鎖を架ける活動をしたらしいが、時代が下った今はより安全な鉄の梯子がかかっている。

落日直前に山頂に登り付いた。山頂には若者が5〜6人夕日を眺めていた。北アルプスには若者が似合う・・・
先ほどから急にガスが出て視界を遮る。雲上の落日は実に荘厳で確かに神(絶対者)の畏敬を感じる。

 
太陽が西に傾き槍ヶ岳の影が東の峰に伸びる       槍ヶ岳に登る人もまばらになった時間帯を狙う

       
                   槍の肩と笠ヶ岳

       
                 槍ヶ岳から東側を見る



         あ〜〜 お日様が地平線へ沈んでいく (槍ヶ岳山頂)


                       槍ヶ岳でしぇ〜〜〜

しじまの中を槍ヶ岳山荘に帰る。
一旦寝床の「岩つばめ」の巣に帰るが何も荷物を置かなかったので他の誰かが既に巣箱に入っていた。ベッドの番号札を
見せ恐縮しながら場所を空けてもうら。

19時30分に館内放送があったので大食堂にて夕食。廻りを見渡すと槍平小屋から一緒に歩いた東京からのメンバーや
千丈乗越からのメンバーが近くにいたので話をしながら夕食を頂く。

玄関口に2つしかない水道の順番を待ってタオルを濡らして体を拭きベッドに潜り込み睡眠導入剤を飲む。夜中に息苦しくなり
頭痛がするので玄関口へ出て新鮮な空気を吸いながらシュラフカバーに包まるが今度は寒くて寝られない。
仕方なく又鳥の巣に帰って朝を迎える。

 
     カラスが啼くからか〜えろ                槍ヶ岳山荘の大食堂にて夕食


2日目 (8月4日)
槍ヶ岳山荘ー中岳ー南岳ー南岳新道ー槍平小屋ー新穂高温泉登山口 (約12時間 )

朝起きるとどうも天気が悪そうだ。朝食は05時からなので取りあえず時間に食堂へ行く。途中小屋の玄関を覗くともう沢山の登山者が
出発の準備をしている。前回の剱岳でも思ったのだが山登りをする人って朝が異常に早い。前世が新聞配達人だったのだろうか?
だが全員雨具を装着しているではないか・・・・ 外を覗くと一面のガス  ショック

力なく朝食を済ませて混雑する部屋や玄関口でイライラしながら出発の準備にかかるが天気が悪いのでファイトが沸いてこない。
天候の回復を期待して出発を少し遅らせてみる。06時50分 これ以上待っても回復の兆しが無いので小屋を出発する事に。
天気が悪い場合のエスケープルートは南岳から槍平へ下ると決めていたので取りあえず南岳までは行って様子を見てみよう。

 
   みんな雨具を装着している              うわ〜 何も見えない  槍は何処や?

 
     韓国隊も出発                             飛騨乗越

四国の山ならこの霧は問題だ。でも北アルプスは心配ない。何故かと言うと岩に白ペンキで→や○や× 印が登山道に延々と
記されているのだ。辺りは何も見えないからただただ無心に稜線を外さすにこのマークを追っていくのだ。

同宿の韓国隊が先を行くのが見えた。この天気の中を大きなザックを抱えて奥穂高まで行くのだから相当のベテランツアーに
違いない。全員を追い越す事も出来ないので時間をずらして歩く。

大喰岳は知らない間に通過してしまった。稜線まで雪渓が残って晴天ならどんなに素晴らしい景色だろうか・・・
岩だらけの尾根を又暫く歩くと中岳(3,084m)に着いた。 霧に包まれた尾根は北アルプスを歩いているスケールを全く感じら
れない。 やっぱ 山歩きの楽しさや醍醐味にとってガスは致命傷となる。

 
      雪渓が多く残っている               女性登山者1対ガイド1のマン・ツー・ウーマン登山

 
ハハコグサとヨツバシオガマ (上は雪渓)         一応中岳 (3,084m)

中岳を過ぎても一向にガスは治まらず雨が次第に強くなり我が通勤登山靴の甲は布なのでスパッツや雨具から落ちる雨しずくが
浸み込みグチュグチュ状態になった。次第に北アルプスの稜線歩きへの意欲が薄れていく。

南岳山頂手前で岐阜県警の山岳警備隊の人と合う。天気の情報を聞くと「これから夕方にかけて雷雨となり、明日も雨は少しマシ
になるが霧が出るとの事。 ショック

南岳小屋に下がる場所で初めてヒゲ状態になったチングルマにお眼にかかる。なるほど あの白い花がこんな状態になるんだなあ
と感心する。

 
       中岳・南岳中間地点                  ミヤマダイコウンソウ

 
 靴に雨が浸み込みグチュグチュ状態           指だし手袋が裏目に出てチビタ〜〜イ

 
槍ヶ岳を池面に映す天狗の池への分岐             南岳山頂 (3,032m)

 
   初めて見るヒゲになったチングルマ             南岳小屋に到着

10時に南岳小屋に着いた。小屋は小石を敷いた土間があり、中の受付玄関にも一面小石が敷き詰められている。これは濡れた登山客
には非常に助かる。乾燥室もあったので着ている物を脱いで干しカレーを注文。

無理とわかっていてもここで暫く天候の回復を待つ事にする。外の土間には韓国の登山者が3人程地図を出して何やら相談をしている。
どでかいザックの中には大きなビニール袋で雨対策をしている。顔つきも体型も精悍で相当の登山者と見うけられた。

12時になり雨脚が一段と激しくなり決断を迫られる。この状態で先に進む事は諦めた。南岳小屋でもう一泊して明日の天候回復を待つか
それとも下山するか・・・・・
先ほどの山岳警備隊の一人が小屋に居たのでもう一度天気予報を確認。やはり期待は持てないとの返事。

南岳新道から下山する事に決める。

 
        南岳小屋                     南岳小屋の西にあるテン場横から下山

南岳新道は南岳から西北西に伸びる「西尾根」を使って槍平まで下りるルートで従来の沢筋から尾根筋に新しくルートを作られたらしい。
出来れば下山道としてはもう少し南に振って滝沢辺りへ出て欲しいのだけれど贅沢は言えない。

前半は岩場とお花畑の中を例の白ペンキを頼りにジグザグと下っていく。登山道は整備されており危険な場所は特になかった。ただ前半
のガレ場は落石などの危険性があり足早に渡る方が無難でしょう

 
    整備された南新道                        雪渓が多く残っている

 
        イワウメ                              ホオジロ科のクロジ

2箇所の雪渓を渡ると左側の尾根へと新道が続く。相変わらず霧で視界が悪いが登山道の目印は明瞭なので安心だ。
尾根はハイマツのブッシュがあり、をれを木の板で道を作っている。昔から色んな人達の努力によって安全な登山ルート
が開拓されているんだなあ・・・と思う。

 
     キバナシャクナゲ                         雪渓を恐る恐る渡る
 
 
  ハイマツの細尾根に敷設された木道           ここから登山道は急降下

標高2700mの標識を過ぎると登山道はその注意書きどおり急降下する。前半は岩尾根が続きやがて樹林帯に入るとそこは
明け方からの雨で地獄の泥沼状態となる。
この森林限界付近で今日初めての登山者に出会う。どこかのワンゲル部らしく若さが弾けている。こんなに若い時代から山の
厳しさや美しさに出会えるなんて何て幸せな奴らだろう・・・



 
           人面岩                      救急箱なんかも置かれている  

        
                 トウヤクリンドウの咲く尾根道

 
チョウジコメツツジ (ホツツジと思って撮った)        学生さんが下から登って来たのに出会う

              
                          ニッコウキスゲの群落

樹林帯に入ると雨の為滑りやすく、特に底の擦り切れた通勤靴はもうスケート状態。ここで相当スピードダウンせざるを
得なかった。右手に雪渓が見え下の方にやっと槍平小屋が見えた。でも見えてから小屋に到着するまで更に小1時間も
かかってしまった。

南沢の雪渓を渡り左岸から槍平小屋に到着。 雨がほぼ止んだのでテント場の水場に直行して泥まみれの雨具やスパッツを
脱ぐ。 どう計算しても登山口まで明るい内に着きかねるので槍平小屋で休憩したかったが先を急ぐ

 
        樹林帯に入る                 後半 小屋に近づくに従って登山道は整備されていた


      南沢の雪渓を渡り、右岸を槍平小屋まで下りる

槍平小屋を午後4時過ぎに出発してからは昨日歩いて来たと同じ道をひたすら歩く。行きも結構長かったが帰りも又飽きる程
長い行程だった。 それでも前半は槍平小屋に泊まる登山者とすれ違う。

穂高平の牧場を通る頃には辺りは薄暗くなり狭いトラバース道を進むか、広い林道を遠回りするか一瞬悩んだがショートカット
で下りる。
もう暗くなった新穂高温泉ロープウェイ駐車場に帰り料金3千円を自動支払機に入れてゲートをくぐる。温泉!温泉と念仏を唱え
ながら運転していると落石防止トンネルの間に大露天風呂「深山荘」という看板がありそこで風呂に入る。

南岳であと一泊すれば良かったかなあ・・・と湯船に浸かりながらちょっと後悔の念が沸き起こる。
何よりの反省点は「登山靴」を忘れた事だ。自己責任の足の痛さを湯船で揉み解すエントツ山であった。
皆さん 登山の前に「車に靴を積む事をお忘れなく」  いらぬお世話 ?

かくしてエントツ山の通勤靴で行く槍ヶ岳山行は無事敢行されたのであった

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