LSD(Long Slow Distance で行く北アルプス・涸沢カールを囲む山々周回の旅

1日目:上高地〜パノラマコース〜涸沢   (テント泊)

2日目:涸沢〜北穂高岳~涸沢岳〜穂高山荘 (テント泊)

3日目:穂高山荘〜奥穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳〜前穂高岳〜紀美子平(テント泊)

4日目:紀美子平〜岳沢コース〜岳沢ヒュッテ〜明神〜上高地


 北アルプス・涸沢カールを囲む山々周回の旅


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPS トラックログ図 (一部は電池切れの為補正)


プロローグ

2週間前にマーシーさんと北アルプスの北鎌尾根、東鎌尾根を走り去った。それはハードだったがとても充実
した
山歩きであった。定年前に転職した会社は体制的にはとても恵まれていて9連休の後4連休を取れた。今度は
ハードでは無いが充実した山歩きを目指しゆったりとマイペースで北アルプスを歩いてみようと考えた。


家族からは常々「もう若くないんだから歳相応の山歩きをしたら?」って言われている身なのだ。自分自身も
そろそろ山歩きスタイルを変えなければあかんやろな・・・と思っている。



今回の目的を大雑把にパノラマコース、ジャンダルム、前穂高岳、岳沢コースを標準タイム・プラス1時間位
のペースで歩く事に置いた。


パノラマコース」は以前おじょもさんに勧められたが去年マーシーさんと西穂〜奥穂縦走の帰りに歩こうと
して涸沢小屋まで下がったら、雪の為不通になっており断念したコースである。


ジャンダルム」は同じく去年、西穂高岳から奥穂高岳に縦走時、午後から出る霧で展望がなかった。ここを
再び天気が良く高度感がある時に馬の背やロバの耳トラバース路を歩いてみたかった場所である。


前穂高岳」はこの辺りで唯一残された標高3千メートルを越える山で、ついでに岳沢コースとセットで歩く
事にした。

 第1日目

10月8日(土) 上高地〜新村橋〜パノラマコース〜涸沢 ( 約9時間 )

上高地に入る

出発直前に伊予の鈍亀さん達が丁度この辺りを歩き、涸沢の紅葉が芳しくないと報告があったが、まあこの
時期に雰囲気だけでも味わってみようと10月7日(金)夜自宅を出発し平湯を目指す。朝方霧が出て「飛騨
清見」の高速の下り口をうっかり通り過ぎてしまった。すると長いトンネルが続き一体何処まで行けば引き返せ
るのかと思っていると次のインターは白川郷だった。あの雪を被った集落はこんな所まで来ないと見られない
のか。

目的は上高地なので一旦高速を下りて折り返す。高山道にはいり平湯へ04時30分頃着くとアカンダナ駐車
場への道は既に大渋滞となっていた。


紅葉の上高地や北アルプスを求めて全国から押し寄せる訳だから覚悟はしていた。そこで以前2度ほどお世話に
なった宝タクシーの営業所へ飛び込む。予約客が大勢いるので1時間程かかるというのでちょうどゆっくり準備
出来ると思っていた。ところが、いきなりタクシーの運転者がやってきて予約客が1組未だ来ないから先に送る
のですぐ出発して下さいと言う。


急かされると異常に慌てるのが私の多くある欠点の一つである。案の定携帯電話やストックなどを車に忘れる。
タクシー(6千円)は相乗りで折半し05時40分上高地バスターミナルへ着いた。


暗い内からターミナル付近は多くの登山者でごったがえし、全ての登山者からの気合と英気が辺りに漂っている。
其々に色んな条件をクリアしてここまでやってきたのだ。


06時20分頃上高地を出発、河童橋辺りに出ると梓川を挟んで見上げる穂高の山々は奥穂高の山塊を正面に
据え、右に前穂高への吊尾根、左に天狗の頭から西穂高への稜線が続き、天辺は晴天の旭日を浴びて輝いている。


その後は明神岳を左手に眺めながら梓川沿いを多くの登山者の列に紛れ込みながら歩く。明神館前からはそれまで
2本の角に見えた岩山お姿は鋭い形の明神岳となり、その右奥に見えるギザギザは前穂高続く北尾根のピーク群と
思われる。

新村橋を渡りパノラマコースに向かう

08時30分頃見事な程の清流が森の中に配された徳沢園を通り、そこから20分程で新村橋に到着。以前から
この新村橋を渡っていく登山者を見て、とても気になっていたルートだった。


 
  登山者で賑わう上高地バスターミナル            前方に河童橋が見える


河童橋付近から見る穂高            正面が奥穂高岳

 
   水がゆっくり流れていい感じ                    右手の林もいい感じ

 
             最初は二本角に見える   右側が明神岳か


       梓川から見る前穂高岳方面    何がなにやらわからん

 
   明神館前から見えるのだからこれが明神岳〜?               新村橋を渡る


吊橋はしっかりしており、前方には相変わらず明神岳付近の岩稜が聳える。2名の登山者が前方から現れ、すれ違い
ざまに挨拶を交わし少しパノラマコースについての情報を頂く。

橋を渡り切ると広い未舗装林道が通っておりそれを右手に進む。20分程歩くと林道は緩く右にカーブしており、
そこに段差を埋める石垣があって少し狭目の山道が真っ直ぐに進んでいる。これがパノラマコースへの入り口と
なり、この分岐を林道と別れ進むと後は奥又白谷の右岸に沿った一本道の登山道になる。


未知の場所に足を踏み入れる不安と緊張感は結構好きで、高校生時代は色んな道を通って帰宅していたし、社会人
になっても見知らぬ場所に出張するのが好きだった。今はその延長上で山歩きを楽しんでいるのかも知れない。

奥又白谷の沢沿いに出ると石をコンクリートで固めた遭難慰霊碑が設置されていた。山で死んで周りに迷惑をかけ
てもなお、こんな立派な慰霊碑を建ててくれる人って余程高名な登山家か山仲間に恵まれた方だったのだろう。


更に進むと今度は二つの石組みがあり例の氷壁「ナイロンザイル事件原点の地」プレートがあった。良く踏まれた
登山道の周りには雑木林が色づいた葉を揺らせている。09時50分前方が開けて明るい川原に出ると草枯れの広場
で大勢の人が休憩している。


 
   新村橋を渡り未舗装の林道を歩く              登山道(正面)と林道分岐(林道が右側にカーブしていく)

 
     奥又白谷沿いに歩く (右に遭難碑がある)          ナイロンザイル事件原点の地       

 
       森の中へ入る                      開けた場所に着く (正面の小山が奥又白池への分岐)


ヘルメット・ザイル組はすぐ上側にある厳しそうな支尾根へと向っている。これが以前グランマー啓子さんが紹介
していた「奥又白池」へのルートだ。 ちょっと気をそそられたが、涸沢のテン場混雑が気になり、そちらは今度
マーシーさんと「奥又白池〜五六のコルから前穂高岳」の為に取っておこうと思う。


屏風のコルへはこの分岐から右手に進みゴーロの広い沢を渡り岩が沢山ある急な登りへと進む事になる。更に20分
程上から下りてくる登山者に道を譲りながら登っていくと、又小さめのガレ沢を渡る。見晴らしのよいガレ沢から
は梓川が眼下に白く光って見える。


このガレ沢を越すと紅葉に彩られた山腹を上がっていくが、左手の沢上には雪渓が残っていた。登山道の傾斜はすこ
ぶる急である。今回は自分の実年齢を鑑みて「決して心臓がバクバクしないスピード」でゆっくり歩くと決めている
ので、早い登山者には道を譲る。

一種の気高さを持った山の気というものがそこを歩く人間をして善なる要素をより多く醸し出すのか譲る側と譲ら
れる側の挨拶は実に心地よい。

11時40分木の階段を越えるとちょっとした峠部となり、前方が開けてモミの木の間から屏風のコルらしきピーク
が見える。でもそこまではまだまだ先の様で登山者が遥か上の方を歩く姿が小さく見える。

ガレ場にあるこの背の高い茶色く枯れた草はタデ科の植物なのかよく判らないが、それが沢山ある斜面をジグザグに
ゆっくりと歩いていく。


峠部より小一時間ほど歩いただろうか、屏風の頭手前に聳える岩壁が近づきいよいよ急坂となる。横尾登山道より
見る屏風岩は凄い迫力があるが、裏側もその片鱗を見せている。
岩壁の上にはハイマツとダケカンバが良い風景を
作り出していた。


13時10分やっと屏風のコルに到着すると、細長いコル部では適当に散らばって多くの登山者が休憩している。
一睡もせずにここまでやって来たが、超スローペースのお蔭で身体は楽だった。



  奥又白池分岐では沢山の登山者が休憩していた  奥又白池へは正面の小山へ進む

 
      奥又白谷のガレ沢を渡る                    岩が多い登山道

 
     更にもう一つ小さ目のガレ沢を渡る           正面には前穂高へ続く岩尾根と雪渓が見える

 
   急な登山道をテント泊のザックが歩く          山襞(ひだ)を超すと屏風のコルが見える
 

 
ガレ場には枯れて褐色の草が生えている              屏風のコルへの急登が続く


                  屏風岩の反対側はジャバラ岩だった

 
     屏風のコルが近づいてきたぞ              屏風のコル  (新村橋から4キロもひたすら登ってきた)


パノラマコースを歩く
ザックをデポしてカメラと貴重品だけ持って屏風の頭へと向う。途中の斜面で左手にぎっしりと生えているハイマツ
から身を乗り出すと槍ヶ岳が綺麗に見えた。と同時に涸沢方面が見えた。

「ぎょ ギョギョ〜」涸沢テン場の光景を見ていきなり「さかなクン」に変身してしまった。「ぎょぎょ〜 物凄い
数のテントで涸沢が覆われてまるで竜宮城の様でございます。うぉ〜!こりゃ大変です。屏風の頭どころではありませ
〜ん」
  さかなクンから我に返ってコルに下り涸沢へと向う。

が・・・・ 涸沢への下り口まで細尾根を進む訳であるが、ここから見る槍ヶ岳や北穂高岳の景色はさすがパノラマ
コースの目玉だけあって感動に値する風景だった。
好きなアングルを探して写真を撮りながら歩くものだから、なか
なか前に進めない。


その風景は手前に横尾尾根が走っているものの、槍ヶ岳まで競り上がる堂々とした姿でシビれる。

細尾根を歩いていると14時15分 涸沢への分岐があり、そこを右手に下りていると屏風の頭がまるでコッペパン
の様に突き出ているのが見えた。テントを担いだ登山者に道を譲る度に少々焦りながらも涸沢の敵に塩を気前よく贈る
気持ちだ。


狭いトラバース道には要所にロープが敷設されている。ここに雪が斜めに積もってそれが凍ったら相当厳しい難所に
なるだろう。去年、雪の為通行禁止になったのもうなづける。雪のあまり無いこの時期ですら午前中にここを通った
登山者からしきりに気をつけなさいとアドバイスがあった。今はもう雪や氷は解けておりツララだけが残っていた。


 
  お〜  槍のトンガリが木の向こうに見えた〜           坊主のコル方面を振り返る

 
     涸沢が見えた  ギョヘ〜〜 凄い数のテントやんけ


      北穂高岳                  横尾尾根の向こうに槍ヶ岳


                  奥穂高岳         涸沢岳                北穂高岳


           涸沢をアップにするとこんな感じです

 
       屏風ノ頭を見る                      前穂高北尾根方面へと稜線を少し進む

 
  涸沢の谷間の向こうに梓川                     パノラマコース 涸沢への分岐


                      槍ヶ岳を望む雄大な風景 (左は北穂高岳)

 
  パノラマコースには雪が残る                      コッペパンの様な屏風ノ頭

 
   ロープが敷設してある (雪の季節用だろう)         稜線を一つ乗越す

 
         奥の細道が続く                     ここに雪が積もったら厳しい道になるだろう

 
            ガレ場を通過                 要所にはロープが付けられていた


14時30分 ガレ場を抜けると又忘れていた涸沢のテン場が見えて少しアセる。伊予の鈍亀さんから事前に
掲示板へ写真を頂いていたので涸沢の紅葉は期待していなかったが、色あせた涸沢を見るのはちょっと寂しい。


14時50分ちょっとした岩場を下がり木の橋を越えると又ロープを張られた細道が続く。涸沢からテント装備
の登山者が上がって来るので「今頃から何処へ行かれるんですか?」と聞くと「涸沢のテン場が混んでいるので
屏風の頭でテントを張ります」と言う。
おっと ヤバイ情報を又入手してしまった様だ。

数人の写真愛好家が高くて重そうなカメラを三脚にセットして冴えない涸沢を気休めに撮っている。彼らにとって
は実に気の毒な秋となってしまったようだ。
15時20分涸沢ヒュッテの下側で横尾登山道と合流して石段を上が
っていく。


 
           次第に涸沢が近づく                前も後ろも沢山の登山者が涸沢を目指す

 
    この辺りでは紅葉が綺麗だった                   涸沢に近づくにつれ道の状態が良くなる

    
       小さなガレ場が見える                      登山道は整備されている


                   いよいよ涸沢が近づいた

 
        最後のロープ場所                     涸沢ヒュッテ直下に到着

ヒュッテを抜けると涸沢の全容が目の前に現れる。凄い数のテントによって殆どのスペースが埋め尽くされていた。
テン場の申し込み場には既に長蛇の行列が出来ているが、先に何とか場所を確保しなければならない。 

パッと見、テントだらけでどこにも平たい場所がない。下側のナナカマド近くにテントの密度が少し低い場所があり
運を天に任せて下りていく。下は石ころだらけだが、ネットで見たテン場のパネル貸し出しを受けたら何とかなる
だろう。周囲の登山者に会釈をし、取り敢えずテントを組み立ててザックを中に放りこみテン場申し込み行列に並ぶ。

風が冷たく防寒着を取りに帰りたいが又順番が最後尾になるのも嫌で我慢して30分程でやっと順番が来た。
「パネルも貸して下さい」と言うと「今はパネルはありません」と言う。 それからもテントを担いだ登山者がドン
ドンやってきて今更テントの移動も無理なのでヒュッテ・ナナカマドに帰り大きな石だけ退ける。テントに潜り込め
ば狭いながらも楽しい我が家。この床がデコボコで足元に向ってズレ落ちる敷地ではあるが、涸沢でたった500円
にて獲得した自分だけの空間である。




   まあ それなりに良い景色じゃありませんか    涸沢カールの秋

 
  一体どこにテント張れば良いの〜?              テン場申し込みに並ぶ登山者

 
   隙間なくテントがびっしり並んでいるじょ〜         ナナカマドの横にテンバ見っけ〜

さっそくバーナーでお湯を沸かし小型カップ麺とお茶漬けの夕食である。

風が冷たく寒い夜であったが、今回はシュラフも冬用でシュラフカバーやホッカイロも万全である。居心地がなる
べく良い場所を選びながら寝返りを繰り返し涸沢テン場の夜が更けていった。

 
第2日目 北穂高岳〜穂高山荘 は ここ


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