第2日目 北沢駒仙小屋(テン場)〜甲斐駒ヶ岳

平成24年8月25日(日)


北沢駒仙小屋〜仙水峠〜駒津峰〜甲斐駒ケ岳〜摩利支天〜駒津峰〜双児山〜北沢峠〜北沢駒仙小屋 (約9時間)


仙丈ヶ岳尾根から眺めた甲斐駒ヶ岳の勇姿

北沢峠より甲斐駒ヶ岳ルート 約9時間


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図  

北沢駒仙小屋(テン場)〜仙水峠  約 1時間30分

朝とんでもない時間からラジオを大きく付けているヤツがいる。一体どういう社会教育を受けてきたのだろうか。
05時頃出発と決めていたので04時過ぎに起きてお湯を沸かず。
食欲が無いが帰りの荷物を減らすためにお湯を
入れたら出来る鳥五目飯を作る。甘酒が結構おいしかった。


05時ほぼ予定通りに甲斐駒ケ岳に向かう。甲斐駒ヶ岳は標高2,967mで日本の山標高ランキング24位の山である。
もちろん深田久弥「日本百名山」に選定された山でその解説に「日本アルプスで一番代表的なピラミッドは、と問わ
れたら、私は真っ先にこの駒ヶ岳をあげよう。(中略)まさしく毅然という形容に値する威と品をそなえた山容で
ある。」と絶賛している。

今日のルートは北沢沿いに仙水峠へ出て、駒津峰を経由し甲斐駒ヶ岳を目指す。帰りは駒津峰から双児山を経由して
北沢峠に降りると言う最もポピュラーなコースである。


テン場を出発してすぐ右側へ橋を渡ると栗沢山登山道の分岐標識がある。こちらは沢沿いの仙水峠へ進む。辺りは
まだ薄暗いので写真を撮ってもほぼボケる。流木対策の高さのある鉄枠ダムが2箇所程見られた。何度か沢を折り
返し05時43分仙水小屋の横を通る。小屋にはロープを張って一般登山者を締め出している。公衆トイレはあり
ませんとこれまたつれない看板をかけている。

年配の登山者が女性用のザックの横にいるので話を伺うと連れの女性が体調が悪くロープを越えて小屋のトイレを
借りに行ったと言う。帰ってきた女性によると「お金を払えば使えるよ」と言われたそうだ。登山者も身勝手なの
だが、ここまで不親切な山小屋も珍しい。


 
北沢沿いに登山道が伸びている 鉄枠堰堤あり              渡渉ポイント

 
    何度かの渡渉ポイント                     仙水小屋のつれない注意書き

しばらく歩くと道はシラビソの美しい雰囲気となり、平らな地形であるが登山道は明瞭で歩き易い。

06時になると左手斜面にゴロゴロした岩が一面に広がっている。日本語ではこんな場所を「ゴーロ」と呼ぶら
しい。恐らく氷河期に形成されたモレーンの様なものだろう。太陽が山の斜面に差し込め明るくなった。後ろを
振り返ると昨日歩いた仙丈ヶ岳の尾根が既に朝日を浴びて今日も暑そうである。

ここから見る仙丈ヶ岳は周りの尾根と際立った高さが無いので比較的地味である。シャクナゲやハイマツと岩の
境が登山道となって峠まで続く。途中でヘッドランプを拾った。このお蔭で会う人毎に「ヘッドランプを落とし
ませんでした?」って聞く面倒な旅となる。


06時28分仙水峠(標高2,264m)に到着。数組の登山者が休憩中だ。雲海の向うに見えている山塊は恐らく
八ヶ岳に違いない。南側には鳳凰三山に続く栗沢山の緑が大きく構えている。



 
  シラビソの美しい登山道             左側から岩が押し出してきている

 

おっ ゴゼンタチバナの咲き残りだ                 明るい陽射しに照らされた仙丈ヶ岳が見える


       樹林地帯が多い山だが不思議とここには石屑の斜面が広がっている

 
   ありゃ あれが摩利支天かいな?               06時28分 遭難碑の立つ仙水峠に到着    

仙水峠〜駒津峰   約1時間45分  

これまでは比較的平坦な道だったが、ここから駒津峰まで標高差500mの急登となる。樹林帯なので日差しは遮られ
ているが登りで暑い。学生や登山者をここで追い抜く。(その度に「ヘッドランプは落としてないかえ〜」と声を
かける。「私のではありません。ありがとうございます」と殆どの登山者から(ありがとうございます)が付け加え
られる。


右手に水晶沢を挟んで摩利支天の岩山とその左に目指す甲斐駒ケ岳の白い岩壁が見える。う〜〜ん まだ相当高い所
まで登っていかなきゃならんなあ


 
        岩の登山道                             早川尾根と鳳凰三山


                                 甲斐駒ヶ岳     と       摩利支天

所で 「摩利支天(まりしてん)」 って何??

摩利支天とは光(太陽や月)、陽炎(かげろう)の現象を神格化した古代インドの民間信仰の神 マリーチ(MARICI)に由来
する女神で、自分の姿をひたすら隠して災難を除きご利益を与えるって事から仏教に取り入れられた。その仏教での立ち
位置は「如来」「菩薩」「天部」「明王」のうち仏法を守護する役割を持つ「天部」に組み入れられた。

ちなみにこの「天部」に属する摩利支天の兄弟分、姉妹分としては梵天・帝釈天・四天王・大黒天・吉祥天・韋駄天などが
ある。
摩利支天思想は日本へは密教と共に伝わり「これを念ずれば危険災難から身を隠す」事から武士の守護神、守り本尊と
なった。陽炎(かげろう)の様に見えないんだから戦場で刀で切られず、槍に刺されず、矢に射抜かれる事はないってこんな
ご利益は武士にとって願ってもない。

NHKの大河ドラマ「風林火山」で内野聖陽演じる山本勘助がこの摩利支天像を確か修行中の高野山辺りで入手して持っ
ていた様な・・・・ でも目に見えない神様をどうやって仏像に出来るんじゃろう? 摩利支天像(画)としてはイノシシに乗った
三面六臂(顔が3つで肘が6つ・・・ 怖い〜)の女神が多いらしいぞ。三面六臂(さんめんろっぴ)の意味は一人で何人分も
の働きをする例えだから忙しい神様じゃぞ。要はイノシシにまたがり素早く行動し姿が小さく実体が見えない(かげろうの様な)
=傷つきにくい事から戦いにご利益がありそうだ。

                   
          豊川市牛久保町の長谷寺(ちょうこくじ)には山本勘助が住職に預けて行ったとされる
          摩利支天像が収められている。このお守りを持って行かなかった山本勘助は川中島の
          合戦で討ち死にする。(62歳)  この像は5.5センチと非常に小さな物だ。

山本勘助のほかにも楠木正成、前田利家、毛利元就、はたまた当然とは言え忍者ハットリくんなども信仰したらしい。

山自体を信仰の対象、神と崇める日本では修験道などと結びつき「木曽駒ヶ岳」「乗鞍岳」「甲斐駒ケ岳」「八海山」など
を摩利支天として崇められてきたのである


こんな事を思いながら摩利支天を眺めていると水晶沢から涼しい風が吹き上がって来た。ダケカンバの林が
揺れて光と風の摩利支天を肌で感じながらで少し休憩する。先ほど追い抜いた広島から来られたご夫婦が休憩
に加わる。ちょっとした登山者同士の会話が山歩きの魅力でもある。


07時を過ぎると少し後方が開けた場所があり、仙丈ヶ岳が緑に覆われた尾根にカールの茶色を伴って存在をアピー
ルしているのが見える。すると栗沢山の右手に日本第2の高峰「北岳」の尖がりが現れえた。ハイマツの急な坂道
が続くが、ソバナがハイマツの中に背伸びをする様に顔を出している。



                   ものすごいボリュームの女王仙丈ヶ岳

 
          あそこが駒津峰か                 お〜〜 日本の第二高峰「北岳」現れた

 
         ソバナですかい                     コバノコゴメグサ

 
         登山道は総じてこんな感じです           甲斐駒ヶ岳が木々の間から姿を現す



0750分鳳凰三山の右手に頭の両端に角を持った富士山がやっと顔を出した。やはり日本人たるものどこに居て
も富士山が見えたら嬉しいものだ。何度も何度も振り返っては写真を撮る。


0806分やっと尾根筋に飛び出すと今度は雲が多いものの北側の中央アルプス方面が見えてくる。0815分仙水峠
・北沢峠・甲斐駒分岐を過ぎると「駒津峰」
(標高2,750m)に着いた。鋸岳の尖がりピークが甲斐駒から伸びる尾根に
デンと構えている。あの向こう側に鋸岳の核心部の岩尾根があるのだろう。


目を凝らすと槍ヶ岳が見え、その左側に奥穂高の山塊、それから特徴のある乗鞍岳が雲に浮いている。ランドマー
クを基点にわかりにくい山を位置関係から同定する事が出来るのだ。でも中央アルプスだけは千畳敷カールしか行
った事がないので良く判らない。

ここ駒津峰は何の変哲もない尾根ピークであるが、富士山、北岳、仙丈ヶ岳、中央アルプス、北アルプス、八ヶ岳
など、眺めは最高の場所である。


 
ハイマツ越しに見る甲斐駒ヶ岳と摩利支天          鳳凰三山、富士山、栗沢山から早川尾根   北岳


  オベリスク           鳳 凰 三 山                         富士山

 
富士や フジや 富士山や                        向かいの中央アルプスか

 
駒津峰からの下山尾根         鋸岳              穂高    槍ヶ岳 が見える〜

 
     又 富士山を見る                           駒津峰   08時15分


駒津峰〜甲斐駒ヶ岳  約 1時間30分

さて、目的地の甲斐駒ヶ岳であるが、その前にまだ長い尾根が横たわっている。平坦な岩尾根を過ぎると一気に下り
斜面となる。標高3000m近い山へ登っているのに尾根道はドンドン下がっていくのがいかにも辛い。


0835分コルからは次第に大きな岩が多くなり、六方石というデカい岩も現れるが標識が風雪で「六万石」となっ
ており「ほ〜この辺りに
6万も岩が転がっているのか〜 さすが」って・・・勘違いも甚だしい。

この六方石を過ぎると岩にペンキで分岐表示があり、右へはトラバース登山道、真っ直ぐは尾根直登コースに分かれ
る。まどわず「直登コース」を取る。確かに岩を這い上がったり乗り越えたりする事はあるが、北アルプスの岩尾根
に比べたら容易(たやす)いものだ。背後には南アルプスの女王「仙丈ヶ岳」がいつも応援してくれるのだ。


0920分見る見るうちにガスが南側から這い上がってくる。解説書には昼からはガスが発生するので午前中に山頂を
目指そうとあるがこんな早くからガスが出てくるなんて聞いてないよ〜〜。もう富士山も北岳も見えないし、摩利支
天さえも怪しいもんだ。

山頂近くの花崗岩は風化しており丁度北アルプスの燕岳を彷彿とさせる雰囲気だった。でも燕岳の様な岩の芸術品に
はお目にかからなかった。
0945分登山者で賑わう甲斐駒ヶ岳山頂に到着した。記念写真を登山者にお願いして撮影
後、日差しが強いので人混みの山頂から鋸岳方面へ少し移動して石柱の陰で休憩する。


 
    富士山をバックにしぇ〜〜                 目指す甲斐駒ヶ岳の前にはまだ凸凹があるのだ

  
北アルプスを彷彿とさせる岩山だ                 ハイマツが岩山にへばりついている

 
       これが六方石かいな                   六方石の標高は未だ駒津峰より低い

 
   いよいよ尾根直登コースに入る               ルートはちゃんとある


甲斐駒ヶ岳の西面には裂け目がある    鋸岳への尾根が見える


    花崗岩の岩山  これがピラミッドと言わずして何と呼ぼう

 
   花崗岩の岩を縫うように這い上がる             岩は濡れていなければ滑りにくい

 
尾根直登ルートも終盤になる  後ろは常に仙丈ヶ岳     トウヤクリンドウは四国にない花なので見ると嬉しい


         尾根直登コースも最後はなだらかになる

 
      甲斐駒ヶ岳山頂                       甲斐駒ヶ岳の三角点と祠


甲斐駒ヶ岳〜摩利支天〜駒津峰〜双児山〜北沢峠〜北沢駒仙小屋   約4時間30分


途中で出会った地元の単独登山者と会話をしながら行動食を取る。山においてはほぼ100%他の登山者と親しく
なれる。黒戸尾根はもう霧でよく見えない。
1015分山頂を後にして「摩利支天」へと向う。本当に燕岳とそっく
りな砂地のトラバース道を所々にある岩を通って南側の尾根へと下りて行く。そこに登山道を少し外れた駒ヶ嶽神社
・本社の石殿があった。

尾根伝いに摩利支天へ行けそうだがロープが張ってあり登山道がトラバースしている。次第に摩利支天が遠ざかり
訪問するのがたいそうになるが、「ここにはもう一生来ないかも知れない」といつもの様に自分に言い聞かせなが
ら遠回りをする。


地図には10分とあったがどうだろう。コルまで10分ほどかかり甲斐駒ヶ岳を見上げると鋭く大岩壁がそそり立って
おり到底尾根越しに来る事は不可能だった。
岩道を登って11時丁度に石柱や剣などで賑やかな摩利支天に着いた。

その頃にはもう全てが霧に覆われて展望は無かった。少し霧の晴れるのを待ったが変化が無かったのでコルへと下
る。すると途中で少し晴れ間が出たので慌てて写真を撮る。


 
    霧に覆われる黒戸尾根                        甲斐駒ヶ岳が遠ざかる

 
        山頂直下にある駒ヶ岳神社                燕岳とよく似た花崗岩の砂地


                    摩利支天〜〜   近いけど直接逝けない

 
なんか 殺風景な摩利支天へのルートを振り返る       お〜〜  摩利支天が近づいてきたぞ


            摩利支天コルに着く  こりゃ直接尾根伝いには来れないわ

 
  摩利支天山頂   ガスで甲斐駒が見えないのが残念   色んな石柱が乱立している

 
   コル近くまで下りると甲斐駒が見えた           風化から残った岩が線の様に残されている

     
滑りやすい道を分岐に帰って、今度はトラバース道を通って尾根登山道へと向う。狭くて行き会いに時間を浪費
しながら
1145分直登コース分岐まで帰る。六方石で少し休憩の後、駒津峰へと登り返す。1225分やっとの事で
駒津峰・仙水峠分岐まで帰り着く。


    
         狭い登山道                         混み合うトラバース道

 
   六方石は丁度良い休憩所になっている           駒津峰を過ぎて右手の尾根に進む

駒津峰からは尾根道を北沢峠までのルートを歩く事にする。ガスに覆われた右手のハイマツ尾根に進み、そこから
前面に見えるピークに向ってハイマツの平たい斜面を下りる。近くで雷鳥の啼き声が聞こえるがハイマツが深くて
姿は見えなかった。

1310分大岩の横に立てられた「双児山」(標高2,649m)に到着。ここは展望は無いが休憩がてら休憩中の登山者
に研治と双子写真を記念に撮って貰う。


 
   比較的平坦な登山道が続く                 ハイマツに覆われた駒津峰を振り返る

 
     シャクナゲとハイマツと岩の登山道           双子が双児山(2,649m)で記念撮影

ここからは北沢峠を目指して樹林帯をドンドン下って行く。昨日向いの仙丈ヶ岳尾根から見た傾斜は物凄い角度で
あったが、登山道はジグザグを切られているのでそんなに急な印象はなかった。
2箇所位細尾根を次の傾斜へと移動
しながら高度を下げていく。モミの木の様な樹林帯であるが樹が驚くほど細い。


14時35分やっと北沢峠におり付く。最終バスは16時なので急いでテン場に帰り荷物の片付けをする。テントは張っ
たままだったのでよく乾いていたが、荷物はそんなに減っていない。重たいザックを背負って北沢峠に
1536分帰る。

 
良く似た登山道風景  どんどん下る                こんな細尾根が2か所あった

 
    細い樹林が立ち並ぶ登山道                 北沢峠 「長衛荘」 人気の宿だ

仙流荘行きのバス待合所は雨避け用のテントが張られて椅子が置かれてある。沢山の登山者が並んでいるので時間
より早めに臨時便を出す様だ。一台目がほぼ満席になり又補助席地獄かとドキドキしていたが、運よく2台目の先
頭近くになり運転手の後ろに鎮座する。


17時前に仙流荘へ着き車を駐車場からここに移動して温泉に入る。温泉にはさほど興味がないが、登山後の風呂は
天国だ。
カーナビを「自宅に帰る」へセットして高速道路へと進む。

途中渋滞に巻き込まれて夜中過ぎに吉備インターで長崎に帰る研治と別れる。途中仮眠をした後自宅に帰る。

高速代は休日・深夜割引で往復約1万円程、ガソリン代も往復約1万円程に納まった。二人で割って交通費約1万円也
バス代は南アルプス林道バス往復 2,200円 プラス荷物料 400円。、テント場所代 一人500円 
(一泊なので500円で済む)


北沢駒仙小屋のテント泊はベースキャンプとしてバス停から15分位の場所にあり、仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳にはサブ
ザックでアタック出来るのでテント泊入門者にもお勧めだ。



第1日目  仙丈ヶ岳は ここ

グランマー啓子さんの甲斐駒ヶ岳は  ここ

Reiko さんの 甲斐駒ヶ岳は       ここ



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