中央アルプス縦走

平成24年9月22日(土)〜24日(月)


中央アルプスとは

中央アルプスはいわゆる木曽山脈の事で西に木曽川、東に天龍川で挟まれたコンパクトな花崗岩質の山域である。
標高は3000mを少し切る木曽駒ケ岳(日本百名山)が最高峰であり昭和42年駒ヶ岳ロープウェイの開設と
共に千畳敷カール花散策とセットで中央アルプス北部が人気の山となっている。テント泊指定地はこの地域に
一箇所のみ存在する。


一方、南部には空木(うつぎ)岳(日本百名山)があるが、こちらには山小屋がほどんど無く避難小屋が存在
するがテント泊指定地が無い事もあり登山者は少なく静かな山歩きを楽しめる。


中央アルプスの名称は飛騨山脈の北アルプス、赤石山脈の南アルプスの間にあるとの理由で付けられたらしい。
今まで北アルプスや南アルプスの山々は多少歩いて主な山の同定が可能であるが、手薄だった中央アルプスに
関してはからっきしである。


と言う訳で今回は休日出勤の代休を天気予報を見ながら設定し木曽駒ヶ岳から空木岳を2泊3日で縦走する事
にした。ネットで調べると各避難小屋の横でテントを張るスペースが有る様なので一応途中のビバークも考慮
してモンベルのツェルト、ドームシェルター2を持って行く事にした。ツェルト泊を考慮するとそれに付随して
シート、マット、寝袋、寝袋カバー(結露対策)、防寒着、水・食料などの装備が必要となるが今回総重量を
12kgに押さえる事にした。



今回の装備一式をオスプレーのエクソス46リッターザックに詰め込み総量約12kg程に納める

 

第1日目 平成24年9月22日(土)

駒ヶ岳ロープウェイ千畳敷駅〜乗越浄土〜中岳〜木曽駒ヶ岳〜宝剣岳〜三ノ沢岳(ピストン)
〜縦走路にてビバーク  (歩行約9時間)



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図


金曜日に仕事を終え19時半頃坂出北インターより瀬戸大橋を渡る。本来土曜日の朝出発しその夜現地に到着、ホテルに
泊まり翌日曜日から登山開始をすべきなのだが、少ない休暇を効率的に利用し、且つ移動だけの高速道路を昼に走るには
勿体無いという貧乏人根性のなせる不健康な旅である。


朝02時30分頃中央自動車道「駒ヶ根インター」を下りカーナビをセットした駒ヶ岳ロープウェイ方面に進む。辺りは
灯が消えているので目的の菅の平ロープウェイバス駐車場を通り過ぎてしまい、上側にあるPの標識に導かれ黒川平駐車
場に入り仮眠してしまった。


04時半頃駐車場入り口におばちゃんが来たので尋ねると菅の平はもっと下の方だと言う。げ〜〜っ。空木岳から下山し
た時に菅の平に下り付くのでここでは困る。おばちゃんに理由を言って外に出してもらい菅の平へと下がる。


目的の駐車場は04時半だと言うのにライトが煌々と照らされ大賑わいである。何とか駐車場のスペースがあり素早く
用意を済ませてロープウェイ専用バスの長い並ぶ。週末の混雑で臨時バスが増便されてはいるが、最後尾近くの出遅れと
なってしまった。 とほほ・・・


05時30分バス臨時便に乗り、その後ロープウェイ乗り場でも長蛇の列で順番が来て超満員の客となる。

駒ヶ岳ロープウェイは結構高速であっという間に千畳敷駅に06時30分到着。「登山者は登山計画書を提出して下さい」
とテントで山岳会の人が受付をしている。私を担当したのは若い山岳会の方で初日の予定を見て「三ノ沢へ寄ると相当
キツイですよ。」と心配してくれた。ビバークの事は触れずに「檜尾避難小屋まで頑張ります」と云って別れる。


千畳敷カールは以前親父やお袋さんと八ヶ岳の清里で一族旅行をした時に立ち寄った懐かしい思い出の地である。旅行好き
だった親父の事を思い出しながら遊歩道へ入る。名物のお花畑にはもう目だった花はなくタカネヨモギや毛になったチング
ルマなどを横目に見ながら遊歩道からジグザグを切られた急傾斜の登山道へ多くの登山者に紛れながら乗越浄土へと向う。
今回は総重量12キロに調整し、水は常時2キロを携行し足らない分は山小屋と水場で調達予定だ。


 
 駒ヶ岳ロープウェイ 8分 1,180円                 千畳敷駅 登山届の受付所

 
   ロープウェイ駅にある駒ヶ岳神社              チングルマの毛がメインの千畳敷カール


           千畳敷カールを乗越浄土へ向かう登山道

 
   乗越浄土近くからホテル千畳敷が見える           千畳敷カールを取り巻く壁の様な岩山


         次第に乗越浄土が近くなる


07時25分乗越浄土の台地に着くと大勢の登山者がおり、腕章を付けた登山指導員もいる。ここでGPSのスイッチを
入れ忘れた事に気がつきスイッチを入れる。観光地に来た気分で辺りを見回し、木曽駒ヶ岳の手前に小高い中岳の目星を
付ける。そこに一番近い宝剣山荘裏の岩場にザックを置き、先日南アルプス山行時に使ったサブザックで中岳〜木曽駒ヶ岳
をピストンする。 ピストンと云っても殆ど高低差が無く標高
2,900m超の山頂部とはとても思えない穏やかなスロープで
ある。右手にテント指定地があり2張見える。この時期に2張とはいかにテン場として魅力に欠けた指定地だという事を
証明している。


反対側の縦走路を見やるとその右手に三ノ沢岳の立派な三角形の姿とそれに至る長い支尾根が見える。宝剣岳の尖がりの
遥か向うに見える山塊は空木岳の様だ。


標高2,925m中岳は木曽駒ヶ岳に包括されていて国土地理院には単独の山としての地位は無い。山頂の大岩にある祠も
駒ケ岳神社となっている。裏手に廻り岩だらけの斜面を下り、続いて同じ様な斜面を上がる。風景ものどかだが空の雲も
実にのどかである。信仰の山「木曽駒ヶ岳」には08時25分着き山頂を少しうろついてみる。晴れてはいるものの遠く
の山々には雲がかかり良く見えない。
Kyoさんが以前ここに来た時は強風と雨で静御前さんのレインポンチョが風でめくり
上がりチューリップの様になったというレポを思い出した。


 
      乗越浄土に到着                           山ガールも多い


                  小高い丘って感じの中岳 (2,925m )

  
中岳から振り返ると宝剣岳が見える 赤い屋根が天狗荘          中岳山頂 駒ヶ岳神社


       中岳から木曽駒ヶ岳 (2,956m )   水色の屋根が 駒ヶ岳頂上山荘  テン場が見える


     中岳のトラバース路    右に見える三ノ沢岳へと支尾根が続いている

 
   木曽駒ヶ岳山頂  伊那側駒ヶ岳神社                 山頂はこの様に平たい

 
      奥が木曽側駒ヶ岳神社                  木曽前岳 (左下の赤い屋根が頂上木曽小屋)

木曽駒から帰りは右手の中岳トラバース路を通る。09時10分ザックを置いた場所に帰り宝剣山荘で木曽駒ヶ岳と宝剣岳の
ピンバッジを買う。水は1L幾らですか?と言うとトイレの近くに飲料水が出てますので自由にお使い下さい、トイレも無料
ですって気前がいい。(儲かってるのかな)


ここで水を1L補給して宝剣岳へと進む。所が山頂手前でストップがかかり行列が出来ている。ここは狭くて登りと下りに
道を分離出来ないので登山指導員が2人出て無線で交信しながら交通整理をしている。こちらは先の事を考えると待っている
僅かな時間も長く感じられる。上から来るレギンズと巻きスカートの女性が悪戦苦闘している。スカートだとあられもない恰好
なのだが中がレギンズだから色気も何も無い。指導員が手取り足取り指導するから余計に遅くなる。

やっと順番が来て前のこじゃんととろくさいオッサンに覆いかぶさるようにして山頂へ廻りこむ。大混雑の原因がわかった。
狭い山頂の岩に山ギャルがきゃーきゃー言いながら一人づつ上がってポーズを取っているのだ。まあ気持ちはわかるけど・・・


 
  宝剣山荘裏に置いてあったザックまで帰る        サブザックを仕舞うのが面倒なのでこれも背負って行く


 宝剣岳中腹から宝剣山荘(水色)と天狗荘(赤屋根)   山岳指導員が交通整理をしている

 
  まあ どうって事のない岩場                  一人に時間がかかるので渋滞する

 
    こら〜〜 早う下りんかい!! 渋滞の元        カメラを渡して記念写真を撮ってもらったらこれだわ

こちらは下側で順番待ちの人に記念写真を撮って貰い混雑する山頂を「通して下さい」とお願いしながら縦走路へ下る。そこ
はどうだ・・・宝剣岳を境に南側は別天地の様な静けさで極端に人が少ない。岩場を三ノ沢岳分岐へと進む。岩尾根には要所
に鎖が取り付けられているので問題は無い。


10時20分三ノ沢岳分岐に着くと標識近くには大きなザックが数個置かれている。やはりここからピストンするにはザック
が軽い方が良いに決まっている。見ると100円ショップの自転車鍵を柵に取り付けたザックがある。ここまで来てザックを
盗む人はおらんやろ〜 もしそうだとしてもここまでやって来る努力を考えると進呈しても良いくらいだ。


 
   宝剣岳の南側へ入ると急に静かになる                おじょも的アングル


      宝剣岳から南に続く縦走路へ向かう   ロープウェイ駅が見える

 
  登山ルートはここを潜る                      縦走路手前にちょっとした鎖場がある

 
    左手が切れ落ちている                     宝剣岳を振り返る


                 宝剣岳から 中岳、木曽駒岳の揃い踏み

 
        三ノ沢分岐から縦走路                  三ノ沢岳分岐    奥が三ノ沢岳

こちらも重たいザックをその辺りに置いて貴重品と昼ごはんをサブザックに詰めて出発する。三ノ沢岳は中央アルプスの主稜線
から離れて伸びる支尾根上にありその整った形が存在感を高めている。標高は
2,846m で日本の山標高ランキング第46位だ。

主稜線側から見ると最後は相当な急傾斜に見える。又その間にも2〜3のピークが存在するのが見える。最初は緩やかな傾斜を
下りて最初の岩ピークを越える。緑のハイマツに一面覆われた尾根には少し掘れ込んだ登山道が続き張り出したハイマツが少し
邪魔になるがザックが軽い事もあり軽快に下る。前方から男性の単独者がゆっくりと上がってくる。木曽駒の山荘に一泊して早
朝三ノ沢岳に行って来たと言う。その後もこの様な登山者に数組遭遇した。前方の少し広いコル部に子供連れの家族が休んでお
られた。親子、孫三代でこんな場所に来られるなんて幸せな事だ。



                最初の岩ピークを越えた場所から見る三ノ沢岳

 
    あいや〜 ちびちゃんも来てたのか〜                  コケモモじゃろね

尾根には紅葉しかかったナナカマドや黄葉しかかったダテカンバ等があり風も爽やかである。遠めには緑一色に見えた尾根も花
崗岩が露出して風景や歩きにアクセントを与えてくれる。所々にピークから後ろを眺めると木曽駒ヶ岳から宝剣岳にかけては西
面にはあまりハイマツが見られず白っぽい岩肌の尾根となっている。


左手には伊那川源流部の沢が音を立て、なだらかな斜面が陽の光で黄色に輝きハイマツの深い緑色と対照的な秋の風景を作って
いる。


何度目かのピークを過ぎるとやっと三ノ沢岳に至る広いハイマツの登山道となる。三ノ沢岳の山頂と思った三角形の山は実は隣
のピークで、右手の丸い形のピークへと登山道が誘う。ウラシマツツジが裸地に広がって鮮やかである。右手には石鎚の墓場尾
根を彷彿とさせる柱状節理岩が並ぶ。

 
     途中にある岩ピーク             そのピークを越すと次のピークが現れる

 
 紅葉越しに見る木曽駒方面             三ノ沢岳が近づくと南面が黄葉していた


      美しい風景    木曽駒方面を振り返る


中々 三ノ沢岳が近づかないけど南面の黄葉に癒される

 
北面が切り立っており南面がなだらかな支尾根       岩場もちょっと出現


三ノ沢岳への尾根から中央アルプス縦走路を見る  くびれの向こうが濁沢大峰 その奥が檜尾岳

 
    やっと三ノ沢岳の懐に入る          花崗岩が墓場尾根の様に散在する

やっと山頂近くに到着と思ったら、登山道はそれを乗越して裏側のトラバース路へと続いている。トウヤクリンドウや時期遅れ
のお花畑を歩き12時15分標識のある山頂部へと廻りこんだ。そこで団体登山者の写真撮影に協力の後、主稜線が見渡せる岩
テラスに寝そべって昼食とする。大賑わいの木曽駒ヶ岳、中岳、宝剣岳を静かな展望所からのんびりと眺める。昼ごはんは高速
サービスエリアで買ったおにぎり弁当で、その時一緒に買った筈の鱒寿司おにぎりは車の中で袋から落下して帰宅後に発見され
た。


 
尾根を東側に乗越すとアオノツガザクラなどのお花畑が    三ノ沢岳 山頂岩テラスに寝転び宝剣岳を眺める


             木曽駒ヶ岳   中岳       宝剣岳

 
      三ノ沢岳で恒例のシェ〜                      三ノ沢岳三角点



寝不足の為このまま昼寝をしたい衝動に駆られるが山歩きは始まったばかりである。よっしゃ!と気合を入れて来た道を主稜線
まで戻る。右手の沢からの水の音が涼しげで、先程は左手に見た黄色かかった斜面を今度は右手に見ながら秋の風情を楽しむ。
しかし先ほどからガスが出てきて西側の視界を遮ってきた。前方の主稜線を見ると沢山の登山者が檜尾岳避難小屋方面へと向っ
ている。ロープウェイ駅で山岳会の方から「天気の良い連休ですから檜尾岳避難小屋は混みますよ」と言われた事を思い出した。
どうせ小屋の外にツェルトを張る予定だからあせりもしない。



              中央アルプスの主稜線へ向かう


             三ノ沢岳は寄ってよかった〜

 
          あちゃ〜  ガスが出て来た              主稜線が次第に近づく


なだらかだと思った主稜線への登りは最後の岩ピークまでは結構厳しく、14時20分やっとの事でメインザックの元に帰りつ
いた。行きと帰りで4時間の三ノ沢岳ピストンであった。あ〜今から又この重たいザックを担いで行くのか・・・と言っても必
死で12キロに収めたものではあるが・・・


 
  ウラシマツツジの紅葉とハイマツの緑               最後の岩ピークを登る

 
  主稜線には沢山の人影が南へと向かっている       主稜線に帰ると駒ヶ根の町が見えた

宝剣岳を越した主稜線はなだらかになりとても歩き易い。所々の稜線からロープウェイ駅の建物が眼下に見える。14時50分
「極楽平」と言われる分岐に着き、そこから数組の登山者がロープウェイ駅へと下りて行った。ヒメウスユキソウと言われる小
さなエーデルワイズがあちこちに咲き残っている。往時の産毛はほとんど無くなっているものの、四国のウスユキソウよりは断
然エーデルワイズに近い。


 
   縦走路にはロープが張られている              ロープウェイ駅が左後ろになる

 
  極楽平 (ここからロープウェイ駅への道が下りている)  おっ  ヒメウスユキソウが咲き残っているぞ


その後も島田娘と地図に書かれた平坦な登山道が続く。花崗岩の砂礫地の両側にハイマツが広がる尾根で、絶好のライチョウ生
息地に見えるが残念ながら中央アルプスでは昭和30年代に雷鳥は絶滅してしまったらしい。その代わりにホシガラスが沢山生
息していた。


濁沢大峰という高いピークの手前で登山道の脇に土が固まった平地があった。中央アルプスの縦走路にはテント泊地は建前とし
て存在しない。でもこの一角だけは高山植物も生えておらず明らかにテント泊派が使っている場所である。ここから避難小屋の
ある檜尾岳までは1時間半以上かかる。ルール違反ではあるが三ノ沢岳が見えるこの場所で「ビバーク」させて貰う事にする。

 
縦走路から三ノ沢岳とそれに続く尾根を振り返る     ヒメウスユキソウが沢山ある


              ここも小規模なカールだろうか

 
なだらかな島田娘を過ぎるとアップダウンが現れる      軽装の若者に追い抜かれた


        濁沢大峰   この真東(左側)に車を置いたしらび平がある

近くに生えているイワツメグサの廻りを石で囲い誤って踏み込まない様にしてツェルトを張る。作業に思ったより時間がかかり
檜尾岳まで行かなくて正解だったかもしれない。ゆったりとストーブでお湯を沸かしてカップ麺とコーヒーをすすりツェルトの
中に潜り込むとあっと言う間に睡魔に襲われた。


 
   左手に駒ヶ根の町が見え隠れしている          ビバーク地にモンベルのドームシェルターでビバーク


  2日目  空木岳(うつぎだけ) は  ここ




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