2005年(平成17年) 7月9日 エントツ山から北海道の山へ 富良野岳縦走
北の大地  花回廊を歩く
十勝岳温泉よりー富良野岳―三峰山―上富良野岳―上ホロカメットク山 縦走


富良野岳縦走経路略図  カシミール3Dソフトによる加工 歩行約8時間

富良野岳 花の山々を縦走してみました。どんな無粋な人でもこの残雪に咲く高山植物をみれば感動するでしょう。この体験を
皆様にも是非味わって頂きたいと思います。縦走した主な山は以下の4山です。

富良野岳(1912m)

     
      ウラジロナナカマドと富良野岳  上ホロ分岐手前付近より

三峰山(1866m)
     
   富良野岳トラバース登山道より眺める三峰山 (尾根の稜線が縦走路)

上富良野岳(1893m)
       
        三峰山沢のD尾根源流付近より上富良野岳を望む

上ホロカメットク山(1920m) (通称 上ホロ)
    

  安政火口の奥に聳える北西側に切れ落ちる斜面を持つ上ホロ (D尾根より)

四国より北の大地へ

我が劣等DNAを見事に受け継いだ不憫なる娘「カラミティ・ジューン」との独身最後の旅行を彼女の誕生日に合わせて
富良野へ行く事に
平成17年7月8日高松から直行便で千歳空港まで2時間かからない。高松発11時45分で13時30分には千歳空港だ。
千歳空港でレンタカーを借り、一路「富良野」へ(約2時間)。カーナビを生まれて初めて使う。なるほど便利な文明の利器
だが、人間の方向感覚がこういう便利な物によって次第に退化していくのだろう。
北の大地を走りながら、この広大な原野を切り開いた先駆者の苦労に思いをはせる。我々旅行者は果てしなく続くジャガ
イモ畑の美しさや薄暮のラベンダー畑に感嘆の声を挙げるが、冬も又ここで暮らす人々の厳しさを思いやる事は稀有で
ある。


               富良野のラベンダー畑

最近の家族旅行では一日自由行動日を貰って行った先々の山に登ることが恒例となっている。冬の湯布院旅行では由布岳、
清里旅行では八ヶ岳、バリ島ではバトゥール山という具合。 今回は山渓「花の百名山」に載っている「富良野岳」とする。

7月9日 午前4時に眼を覚ますともう日の出は近かった。ホテルの窓から見える富良野岳の山頂付近は厚い雲に覆われ
ていた。4時半頃に二人を起こし、十勝岳温泉登山口まで送ってもらう。

 
十勝岳温泉 登山口            ホンマもんの熊出没注意カンバン

6時過ぎに登山口に着くと結構たくさんの車があり、グループの登山客が準備をしていたが単独の登山者は見かけなかった。
駐車場の横に立派な登山口があり、ここから水蒸気を白く上げている安政火口までハエマツ林の間によく整備された遊歩道
が続いている。右手にはヌッカクシ富良野川の枯れ沢があり、覗くと雪がまるで氷河のように残っている。ここにはエゾイソツツジ
やゴゼンタチバナが咲いていた。

 
安政火口付近までは広い遊歩道     三段山への分岐 右へまっすぐ進む

安政火口手前から沢を渡り尾根筋へ向かうトラバース路に入ると道は一変細い登山道の様相となる。途中幾つかの沢を横切る
がまだ沢山の雪が残っていた。さすが北海道!! この道筋になるとウコンウツギ、エゾイチゲ、サンカヨウなどが見られた。一面
に広がるハエマツとウラジロナナカマド越しに秀麗な富良野岳が全容を現す。

     
    安政火口手前で枯れ沢を右に渡る。 右後ろが上ホロカメットク山 

     
          イソツツジと十勝岳温泉登山口

     
      雪渓の沢を渡ってトラバース登山道が富良野岳を目指す

     
    ウコンウツギと上富良野の原野を見下ろす

登山道は雪解けでぬかるんでいるが、超メジャーな山であるため標識もしっかりあり、逆に登山道の傷みが心配だ。もちろ
ん磁石は持っているが、こんな観光の山は山渓の5万5千分の1付録地図を拡大コピーし登山口の方向から見えるように
細工した物で十分。(こんな無責任な発言には黒酢の山説教が待っている)

  
雪渓に出ると立派な標識がある     雪渓を登るとトラバース道への岩道となる

     
       雪渓を渡る  セッケイかな

上ホロ分岐から岩がゴロゴロした沢を上がり、相変わらずハエマツとナナカマドの上に聳える富良野岳に感動を覚える。
先ほどからハエマツの辺りでしきりに鳥が鳴いている。よっしゃ〜 北海道の野鳥をANちゃんに見せるために10倍デジ
カメをタスキ掛けにしてきたんじゃ〜  何とか撮れた ああ北海道の野鳥だ〜


 富良野岳のノゴマ オス (喉が赤いので日の丸って呼ばれるらしい

      
     東を振り返るとチシマキンバイソウ越しに安政火口が遠のいていた

       
        あれが富良野岳ですがな  まだ元気ですがな

富良野岳に咲く主な花

 
       イソツツジ            ゴゼンタチバナ

 
    エゾイチゲ              キバナコマノツメ

 
     コケモモ                シナノキンバイ

  
イワブクロ  つぼみ                エゾヒメクワガタ

 
  ミツバオウレン                オオバスノキ

 
      ウコンウツギ            ショウジョウバカマ

     
           アオノツガザクラ

     
          エゾノツガザクラ

     
    コエゾノツガザクラ (アオノツガザクラとエゾノツガザクラの混血)

     
               イワヒゲ

     
               サンカヨウ

  
    緩やかなトラバース路から見ると上富良野が眼下に広がる

傾斜が急になり敷設された木道を通り縦走路分岐の尾根に上がる。それまでの急な坂にもエゾノツガザクラ、チングルマ、
エゾノハクサンイチゲ、イワヒゲなどが次々と現れ元気が出る。この辺りに来ると登山者も多くなりあちこちで景色を見ながら
休憩している。

この縦走路展望所から東を見やると手前の雪が残る火山性の赤茶けた稜線越しに、大雪山系の高山が雪を被って雲間
に浮いている。

         
トラバース路から次第に尾根へ上がる   縦走尾根から富良野岳への登山道      


縦走路の左手には残雪の大雪山系の山々が浮かび上がっている

      
       急な尾根道を上がると南斜面にお花畑が広がる
    
さてここから富良野岳までの登山道は原始ガ原に向かって残雪の南斜面に広がるお花畑が楽しみとなる。チングルマ、
エゾノハクサンイチゲ、エゾツガザクラ、鮮やかなピンクのエゾコザクラが素晴らしい。その中にハクサンチドリやエゾヒメ
クワガタも見える。

             
           エゾノハクサンイチゲと原始ヶ原

     
           エゾコザクラが富良野岳を彩る

     
         雪渓の残る富良野岳 南斜面

     
         エゾノハクサンイチゲとチングルマの群生

     
           チングルマとエゾノツガザクラ

 
     ミヤマアズマギク          エゾノハクサンイチゲ
 
     ハクサンチドリ           ウズラバハクサンチドリ

 
    チシマキンバイ              メアカンキンバイ

 
  ホソバイワベンケイ              シラタマノキ

 
    ミヤマリンドウ                ヨツバシオガマ
   
富良野岳山頂には既に大勢の登山客で溢れており、特に女性の大笑い声が富良野の町まで届かんとするくらいかしま
しい。喧騒をさけて西の稜線までハエマツの中を下る。

     
         来ちゃったよ 富良野岳 山頂 1,912m

山頂から西に歩きにくいハエマツの間を下ると、細尾根の北側は断崖絶壁となり、西手には前富良野岳への稜線が
続く。この稜線から南側の原始ガ原の原生林に向かって登山道が下っている。ハエマツに囲まれた細尾根にはイワ
ウメやエゾツガザクラの群生が色取りを添える。

 
富良野岳 山頂から原始ガ原     西に下ったコルから富良野岳を振り返る

 
   原始ガ原を見下ろす         ハエマツで覆われた西側尾根


     
       富良野岳 北西側の絶壁と支尾根 イワウメも咲いている

     
                 イワウメ
     
しばらく北海道の2千メートル弱の高地から雄大な北の大地を見下ろし、例の紙に包まれた鮭おにぎりを頬張る。今自分
は北海道の山の天辺にいる。時空を超えた夢うつつを楽しんだ後、又山頂のオバサンの大笑い声の中に引き返す。
さあ、縦走に入ろう!

     
            さらば 富良野岳 一期一会の花達よ

     
            富良野岳から東に向かう未知の縦走路

尾根縦走路分岐まで下って、そこからなだらかな尾根へと進む。尾根の北側は切れ落ちているが、南側の緩やかな
斜面がお花畑を形成している。30分くらい歩くと岩場の小尾根が現れ、それを越えると次第に急な石ころの登りとなる。
この尾根道もヨツバシオガマやエゾツガザクラ、チングルマが咲き誇る花回廊だ。

     
     富良野岳より縦走路に下りる (チングルマとエゾノツガザクラ)

     
       なだらかな前半の縦走路はお花畑 エゾノツガザクラ

     
        チングルマの咲く縦走路から富良野岳を振り返る

     
       緩やかな南斜面のお花畑には雪がたくさん残っている

     
         次第に縦走路の高度が上がってくる

     
        安政火口のある峰に次第に近づく

      
              エゾコザクラの群生地

      
             ベニバナミネズオウの群落

三峰山と呼ばれるのは恐らく三つの岩峰ピークから来ているのだろう。確かにこのピークの上り下りは小さな岩が
ゴロゴロしているので歩きにくい。三峰山手前のケルンで札幌からの御夫婦がおられたので写真を撮ってもらう。
更に急な岩峰を登ると三峰山の標識があった。

      
       三峰山の一つ手前のピークまで到達! ケルンがあるぞ

      
               三峰山へ岩の急登

      
            三峰山 1,866m

   
 ガスが北側斜面より吹き上がる縦走路 火山性の岩山にもイワウメが咲いている


ここから更に1時間くらい同じような石ころの多い岩尾根を歩くと目指す上富良野岳に着いた。ここは十勝岳温泉への
下山口となる要所である。ここから上ホロを経由して十勝岳への縦走路は東へと伸びている。行きてえよ〜。でも人生
我慢が大事。

     
             上富良野岳 1,893m

上富良野岳(かみふらのだけ)から東を見ると霧の中に鋭い不毛の岩峰が聳えている。これが何度口に出しても覚える
ことが出来ない「上ホロカメットク山」だ (だから皆、通称「上ホロ」と呼んでいる)アイヌ語で「山に向かって流れる川向
こうに聳える奥深く高い山」の意味らしい。

上富良野岳を下りて月面の様な不毛の大地をひたすら登る。左手は爆裂火口(安政火口)でほぼ垂直に切れ落ちている。
最下地点から約20分で思ったより平べったい山頂に着いた。

 
 上ホロカメットク山の断崖絶壁       上ホロ    1,920m

ここから十勝岳方面への展望がとても良いらしいのだが、あいにくガスが濃く発生して全く見えない。十勝岳から縦走して
来られた札幌の山キチとしばらくおにぎりを頬張りながら話し込む。知らない同士でも楽しい会話が出きるのがお山の良い
ところ。東側の三段山経由での縦走路に心が揺れるが、娑婆で待っている母子の顔が浮かんでまともな下山をする事に。

       
            上ホロから上富良野岳を見る

上富良野岳からの下山道は少しわかりにくい。え?こんな断崖を下るの?って場所だ。道はジグザグにうまく石ころ
だらけの斜面を下っていく。ここはもう完全に火山の山だ。赤茶けた岩の間を下りていくと、沢の源流に着いた。ここ
から見上げると上ホロと上富良野岳が眼前に壁のようにそそり立っている。沢には7月だというのに雪が沢山残りさながら
氷河のごときである。

      
         雪渓に向かって下山する

      
           沢に下り付く  爆裂火口の横だ

      
        まさに氷河、向こうに縦走してきた富良野岳が見える

 
    延々と続く木道            沢伝いの雪渓を下りて合流

急なD尾根を左に雪渓、右に安政火口の断崖を見ながら下りていくと、やがて沢の雪を下りトラバース道と「上ホロ分岐」
で合流する。あとは今日の素晴らしい花回廊の登山をかみ締めながら沢を渡り返し、十勝岳温泉登山口に下りていった。
いつもの行き当たりバッタリに近い縦走ではあったが、こんなに充実した楽しい歩きはかつて無かったような気がする。

   
              富良野岳のチングルマ

「エントツ山から北海道の山へ」は花回廊の縦走という新たな山歩きのパターンを私に与えてくれた。



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