冬の石鎚山 (成就社コース)
第2部 長崎「あゆみハイキングクラブ」と石鎚登山コラボ 2012年2月26日
長崎 「あゆみハイキングクラブ」と
平成24年2月25日(土)石鎚表参道「黒川道」を歩き、17時30分成就社の白石旅館に着く。入り口が何処かわからずマーシー
さんとウロウロした後スキー客が歓談する土間になった食堂へ入る。若い従業員が出てきて山小屋と同じような乾燥室に案内し
てくれたので濡れた靴、ストックやスパッツを置く。
ここ成就社には他に「玉屋旅館」と「日之出屋旅館」があるがたまたま長崎組が予約していたのがこの白石旅館であった。
二階に案内されると既に部屋には長崎組が到着しており、男性は同じ部屋に手配されていた。初対面ではあるが、山男はすぐに
打ち解けるものだ。インテリ風で山男の風格を漂わせるリーダー(柿木さん)、ゆるキャラで笑いが解るサブリーダー(木村さん )、
生真面目だがダジャレが得意らしい平山さん、エントツ山2号の4人とマーシーさんと私の6人相部屋である。
18時30分夕食の時間になり一階の食事部屋に下りる。長崎組は他に女性が3名来ていた。歳の割に肌が異様にツルツルして
若く見えるが度胸の座った本田さん、おっ それに珍しい長崎の山ガールが2人いる。聞けばこの若い二人宇木さん、松浦さんは
3ヶ月前に入会したあゆみHCのゴールデン・エッグズ(金の卵)である。
大きなお皿には鮮やかな赤い色をした肉と野菜が沢山置かれていた。どうも生まれて初めて食べるイノシシの肉らしい。マーシー
さんは共食いになるぞ。ちょっと硬くてクセがある味でどちらかと言えば牛や鶏肉、魚肉の方が自分には合っていると思った。
それでも楽しい会話をしながらビールも進んだ。隣で大勢のスキー組がうるさくて頭が痛くなりそうだったのでお開きにして部屋で
交流する事になった。
九州と四国、山の会とフリー、オーソドックス(正統派)とアウトロー(野武士流)、山歩きの環境が違っても山歩きに魅せられた
男たちや女性との会話は新鮮で大いに盛り上がった。
どこの山の会も高齢化が進んで若い仲間を募集しているが、その獲得には苦労している様だ。確かに若い人たちが居るだけで
周りが明るくなる。
21時までの予定が22時近くになりお開きとする。心配したイビキの合唱はほとんどなく平和な夜だった。
成就社 白石旅館にてカンパ〜〜イ 長崎「あゆみハイキングクラブ」の皆さんと合流
イノシシ鍋の夕食 2月26日06時朝食
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 石鎚成就社ルート
翌日は06時食事、06時30分出発のスケジュールだったので05時過ぎに起床して身支度を整える。外に出ると雪が少し
降っておりあまり天気が良くない様だった。朝食は生卵かけスタイルだったのでごはんを2杯食べれた。
朝食の後すぐ出発の準備をして外に出る。呑気そうに見える木村さんが一番手際良く準備完了していた。成就社にお参り
して山門付近でアイゼンを装着する。四国組が一応先頭を歩かせて頂き、その後柿木リーダーを先頭に長崎隊が八丁坂
を進む。
この辺りでは登山道の雪は意外と少なく締まっているので歩きやすい。辺りは次第に明るくなり頭上には霧氷の華が咲く。
こちらは見慣れた風景で、天気が優れなかったが長崎組の山ガールから感嘆の声が上がるのでちょっとホッとして嬉しい。
なだらかな八丁坂が終わると今度は前社森(ぜんしゃがもり)への急な登りとなる。ここは所々に木製の階段が敷設され
成就社コースで一番キツい場所である。ここの足場も雪が良く締まっており比較的歩き易かった。
八丁坂を過ぎ尾根道を進む キツイ登り坂が続く
しだれ桜の様な霧氷樹
しばし霧氷見物 その後 試練坂が続く
試し鎖のトラバース路に入る 前社森(ぜんしゃがもり)小屋への急登
天気の良い時は瓶ヶ森を背に小屋を目指す喘ぎ坂もガスで展望はない。08時18分前社森(ぜんしゃがもり)の小屋に到着し
しばらく休憩する。研治が四国で流行っているヒコーキをやろうと言い出し、ヒコーキ1号さんの特許侵害を気にしながら肩を組
んでもらう。やはりこのポーズを取ると自然に笑顔になる。
続いて08時38分夜明峠(よあかしとうげ)に着く。西条市の解説によるとロープウェイが無かった時代は石鎚弥山への難所を
残してここで夜明けを待ったという場所だ。又「みかんの国から」さんのブログで役行者が御塔石からこの尾根に直登した際、
この辺りで夜が明けたという説が紹介されていた。天気が良ければ石鎚北壁の威容をバックに美しいブナの風景になるのだが
生憎ガスで何も見えない。しかしながら霧に浮かぶ樹氷もムードたっぷりで長崎組も美しいと喜んでくれた。
前社森の休憩所にて
夜明峠にて マーシーさんと長崎あゆみハイキングクラブの皆さん
長崎の山ガール にこにこして可愛い華達 第34夜明し峠王子社
夜明峠を過ぎると尾根筋〜トラバース道を経て土小屋分岐の鳥居が一つの目印となる。この鳥居の埋まり方で雪の量が
分かる。八丁坂付近ではあまり多くなかった雪だが、この辺りになると根雪が融けず量が多い。上の鎖場にあった小屋が
撤収され、新たにこの鳥居付近に避難小屋が敷設されている。
石鎚冬登山はここからが正念場になるので気合を入れて鳥居を通過する。
さていよいよ雪が深くなる 滑りやすい斜面を進む長崎組
土小屋分岐の鳥居 正月に来た時より雪で埋まっていた
鳥居を過ぎるといよいよ冬の石鎚正念場となる。四国の冬山に於いて登山道でピッケルが本当に必要になる場所はあまり無い。
「ピッケルとは冬、四国の山頂に突き刺して記念写真を撮る為の小道具である」というエントツ山語録を作っている位だ。つまり
四国の冬山登山道ではピッケルは返って邪魔で、ストックの方が数段安全で歩きやすいのだ。
だが石鎚の鉄階段付近は唯一の例外場所である。
長崎山ガールのピッケルは柄が長くなる様に調節出来る。これは普通の雪山ではグッドアイデアと思う。見ると体の前でピッケル
の柄を両手で雪に突き立てながら一歩一歩登ってくる。まるでホッピングをしている様でかわゆい。
斜面に対して縦に敷設された鉄階段は案の定雪に隠れており、その上で急斜面をトラバースする場所が難所の一つである。
ここをヘマすると谷に向かって滑り落ちる事になるのだ。山ガールの一人が少し滑らしていたがグループでアシストし無事クリア
した様だ。安心して進んでいると上からピッケルとアイゼン装備の男性登山者が3名空身で下りて来た。 え? 我々より先に登山
者? 恐らく前日天気が悪く鳥居近くの避難小屋で一泊した方達だろう。
「早いですねえ」と声をかけるとどうも山頂直下で行き詰り、帰りの下りが危険と判断して撤退してきた様だ。山は自己責任、危険と
感じたら撤退する事が肝心。まあ ここら辺りは冬場に何度も来ているので我々は何とかなるだろう。
09時22分トイレのあるコルから最後の鉄階段街道が始まる。石鎚山は周囲が岩の絶壁から出来ており参道が付いている細い
西岩壁部は昔からの難所でその為江戸時代から鎖が三か所も置かれている。 近年木道を通して巻道が出来たが雪で崩れやすく
今では上りと下りに分かれた丈夫な鉄階段となっている。
最初は鉄部がそこそこ出ているが、問題は上の方で、時々雪崩れた雪が凍結しアイゼンを跳ね返す場合がある。マーシーさんと私
が先に進みピッケルを使ってステップを作りながら最後の折り返し鉄階段を登る。ここにはイシヅチザクラの枝が張り出しているので
思ったより安全なのだ。
10時06分 石鎚弥山に到着。天狗岳は全く姿を現してくれなかった。
鉄階段には所何処雪が上から雪崩れている トラバース路もこの辺りでは新雪があり滑りやすい
尾根を折り返すシラベ坂 この辺りも集中力が必要
鉄階段が雪崩で消え去った場所 最後の鉄階段部は手すりが少し出ているだけ
山頂横の崖にはツララが下がっていた この樹氷トンネルを抜けると山頂へ向かう階段となる
石鎚弥山山頂にて 石鎚頂上社 今日は我々が一番乗りだよ
さて、後続が少し遅れている様だし、山頂避難小屋で食事をされる筈だからその時間を利用して天狗岳まで行って見る事に
する。マーシーさんを誘ったが全く乗って来ない。天狗岳への下り口は冬になるとここにある鎖が雪に埋まって危険になる。
持ってきたスリングを岩に架けて慎重に鎖が出ている場所まで下りる。
あとは普段とそう変わらない。岩にアイゼンを利かせて岩場を進み10時33分 「第36天狗岳王子社」が祀られた西日本最高
峰「天狗岳」標高1,982mに立つ。見晴しが良ければ南尖峰まで行って東稜の様子も見たいと思っていたが全く視界が利か
ないので弥山へ帰る。
弥山から天狗岳へと下りる
弥山を振り返っても良く見えない 北壁は氷の世界
この下から以前ガクちゃんが這い上がってきたのだ 冬の天狗岳
静寂の世界 石鎚天狗岳
石鎚第36天狗岳王子社 南斜面も霧氷の世界
ここは絶壁に沿ってアイゼンを頼りに進む
グランパ・グランマー啓子さんと合流
弥山へ向かっていると研治の「お〜〜い」と呼ぶ声がする。「もう下山するぞ〜」って言うので「先に行って〜」と答える。
10時50分弥山に這い上がると誰も居ない。ザックを取りに避難小屋へ入るとマーシーさんがカップ麺にお湯を入れて
待っていた。今からこちらも昼食の準備をすると更に遅れるので非常食に持ってきた孫の「アンパンマンせんべい」を
まとめて口に放り込みバリバリかじってポカリで流し込む。何と豪華な昼食だこと。
マーシーさんと弥山を後にすると風力発電のプロペラ付近に数人の登山者が居られたので会釈をして長崎組を追う。
雪の階段を下りていくと下から男性登山者一人と犬が見えた。下側にもう一匹犬がウロウロしている。男の人と話を
すると、どうも北九州から犬2匹を連れて面河から前日登って来たという。下側の難所で一匹犬が斜面を滑り落ちた為
怖がって鉄階段を上がって来ないらしい。
「犬も雪山歩けば滑り落ちる」 気の毒なこっちゃ。 肉球から出た彼らの爪アイゼンではこの雪斜面は大変だわ。それに
高い所が苦手の筈だ。犬好きの九州男児はその辺りに相棒達を繋いで山頂を目指すと言う。
11時15分土小屋分岐の鳥居上で長崎組に追いつく。 視界は相変わらず悪いが、鳥居から下の尾根まで何とか見える。
あれ? どこかで見た事がある人がいる。何とグランパさんだった。始発のロープウェイで我々に合流してくれたのだ。
グランマー啓子さんを探すと眼下にピンク系の登山服の女性が長崎隊に加わって明るい声が聞こえてくる。彼女は新居浜
市立角野小学校、同角野中学校、愛媛県立新居浜西高等学校を通じての同級生だ。メールで研治達のスケジュール照会が
あったのだが、成就泊りだから一緒に行けないと返事していた。 山頂まで一緒に行けなくても出会った場所を折り返し地点
と決めてわざわざ来てくれたのだった。
長崎組はここまで安全訓練を兼ねて女性をアンザイレンしていたがこの辺りでザイルを解除する。夜明峠手前のトラバース
路斜面に出るとグランマー啓子さんが尻セードの実演をしてくれた。成程! 呆れて眺める長崎組を尻目に負けずにこちら
も木にぶつかりながら滑る。う〜〜ん 確かに楽しくてクセになるわ
夜明峠は相変わらず霧に包まれていたが、返ってその間を歩く登山者のウェアがモノトーンの世界に映えて美しい風景を
演出していた。
犬ころが2匹 ウロウロしていた 土小屋分岐手前で追いついた あれ?誰かいるぞ
アンザイレンして下山中の長崎組 マーシーさんとグランマー啓子さん
尾根筋から少しトラバース 又 尾根に出る
夜明峠手前のブナ
小、中、高の同級生 グランパの撮影風景を撮影する
結構いいアングルやと思わない?
夜明峠を歩く長崎「あゆみハイキングクラブ」石鎚アタック隊
夜明峠から前社森へと進む長崎「あゆみHC」隊
前社森(ぜんしゃがもり)小屋に11時57分到着し休憩。ここの裏にある前社ガ森の岩峰天辺には「第29前社森
王子社」の祠が置かれている。
すると後ろからデカイ荷物を背負った男性2人組が下りて来た。良く見るとその内の一人が山岳ガイドの松本さん
だった。何でもNHKの取材道具をボッカ下ろしの途中と言う。先日起こった石鎚の滑落事故の際現場近くに居合わ
せて救助活動もされたらしい。
試し鎖への巻き道八丁坂への下りを歩き、しつこく霧の晴れない八丁坂を歩く。この辺りでは四国組4人が後続し、
途中でアイゼンを外したので余計に遅れる。
白石旅館前で預けていた荷物を引き取っている長崎組に合流した。
雪の斜面を下る 前社森(ぜんしゃがもり)へと下る
ピッケル対決 古い物には味がある
大きな荷物を運ぶ松本さん達 霧氷のシャンデリアを歩く
マーシーさんと歩荷隊 八丁坂の上りも頭上の景色を見ながら苦にならない
成就までの八丁坂
このコブコブの名前、グランマー啓子さんに教えて貰ったが忘れた 成就社に到着
ここから暫く奥前神寺までみんなで一緒に歩き、13時38分マーシーさんと石鎚表参道「今宮道」を下りるのでここでお別れする。
長崎に住む双子の兄弟「研治」の縁で長崎「あゆみハイキングクラブ」の皆さんと四国の石鎚冬山体験を共有する事が出来た。
成就社に一泊してくれたお蔭でこちらも思わぬ「石鎚表参道」を歩く機会を得て、又フランマー啓子さんの友情にも触れて実に
有意義な2日間となった。
白石旅館前で長崎あゆみHC隊と合流 みんな ロープウェイで下るのね さようなら〜
長崎「あゆみハイキングクラブ」石鎚遠征隊の皆様、 グランパ・グランマー啓子さん
ありがとうございました。
エントツ山の東京にいる長兄「修一」のブログ「時空散歩」 2010年元旦 石鎚三人兄弟登山記 は ここ
第1部 石鎚表参道 「黒川道」「今宮道」レポは こちら