平成24年2月25日〜26日 冬の石鎚
第1章
石鎚表参道を歩く 黒川道〜成就社〜今宮道
長崎から双子の兄「研治」が所属する長崎山の会「あゆみハイキングクラブ」の冬山訓練で石鎚遠征(7名)して
くると言う。最終的に日程が決まり25日は成就社の白石旅館に宿泊し、翌朝早くに石鎚へ登る事に。朝1番のロープ
ウェイでは合流出来ない為交流を兼ねて同宿となった。 う〜〜ん 石鎚へ登るのに成就へ泊まるという選択は我々
にはない。
そこで思いついたのがこの際「石鎚表参道」を歩くというものだった。
石鎚表参道とは
石鎚登拝道の表参道は瀬戸内海側から霊峰石鎚に到る参拝道で、小松や西条方面より横峰寺や前神寺・極楽寺を経て
虎杖(いたづり)、河口へ出て、そこから成就社に到る「黒川道」と「今宮道」などがある。
「黒川道」は沢沿いの斜面に沿って進む為、水場があるし夏は涼しいが、参道は荒れやすい。小松藩の横峰寺から
虎杖経由の石鎚表参道として賑わった。
「今宮道」は尾根筋に沿って進む為(植林の前は)景色も良いし参道が荒れている心配がない。西条藩の前神寺・
極楽寺から河口経由の石鎚表参道として賑わった
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
黒川道 : 虎杖(いたづり)〜黒川道〜成就社 登り 約3時間45分
今宮道 : 成就社〜今宮道〜河口(こうぐち) 下り 約2時間20分
2月25日12時に新居浜の自宅近くまでマーシーさんに迎えにきて貰い、西条の河口(こうぐち)に向う。
「河口」は石鎚登拝の中継地として栄え、昭和6年西条からここまでバス路線が開通してからは石鎚登山の入り口
として栄えた場所である。
なった。
西条の加茂川から国道194号線に入り、途中から右手の石鎚ロープウェイ方面へと進む。ダム湖を過ぎると三碧峡
という景勝地に入る。三碧峡(さんぺききょう)の名前は井上万寿蔵氏により、「渓谷を彩る緑色片岩、流れる水
の青、茂る木々の緑」の三つの碧から成ることにより名付けられたという。(伊予のこたろう博物学研究所による)
三碧橋を渡り、左が石鎚ロープウェイだがここから右手に進む。犬小屋が道路沿いにあり人懐っこい大きな犬が寝そ
べっている事があるので気をつけよう。
黒川谷橋を渡り、更に虎杖(いたづり)橋を渡ると周桑農協小松支所石鎚出張所の廃屋があり、傍の広い場所に車を
停める。すぐ横に六地蔵が祀られておりモエ坂を経由して「横峰寺への遍路道」があるが通行止めの看板が立てられて
いる。
昔の参拝道地図をみると今宮道も黒川道も上り口は同じ河口(こうぐち)となっているが、現在ある黒川道の入口は
虎杖橋を渡り返した場所となっており、そこにも通行禁止の看板が立っている。
13時45分 虎杖(いたづり)橋の近くにある黒川道入り口から入山する。
がある。まあここは自己責任と言う事で通らせて頂く。黒川道はこの沢沿いから東側にある黒川谷に沿って付けられて
いるのでルートは当然東側へと周り込む。
虎杖(いたづり)に車をデポする 虎杖橋を渡り返した山際にある黒川道登山道入り口
「通行禁止」看板あり 通行する場合は自己責任で
入り口付近の印象は広い快適な道だ。14時05分植林の中に石垣が現れ愛媛森林募金の「成就」への大きな標識が
立っている。直ぐに成就社へ5.0kmの白い標識があり、その下に「実測4,750m」のダメ出し表札が掛けら
れている。
実測ってどんな方法で測ったのだろう? 妥協を許さぬマニアックな性格の人はどこにも居るもんだ。でも4km、
3km、2km毎に機械的にマイナス250mの実測表札がご丁寧に掛けられている。それじゃちゃんと実測しなか
ったって証明じゃないのよ
まあ何てこと無い立派な道じゃ かつて人家があった事を物語る石垣
倒壊した民家 この標識が成就社まで誘ってくれる
14時16分三界地蔵の祠があった
看板が立っている。暫く集落跡地を進みそれを過ぎると14時48分黒川谷左岸のガレている斜面に出た。
山界地蔵の祠 (登山口からここまで約30分)
石垣にはびっしり植林されている 比較的状態の良い民家跡
斜面はザレ易い地質である 水が出る沢の場所ではガレ場になっている
小沢を渡ると14時53分成就社まで3.5kmの標識
からは植林地帯が終わり自然林となる。
15時11分平らな場所に出ると成就まで3.0kmとなり服を1枚脱ぐ
しさを募らせる。
涸れ沢を少し上がり登山道が続く 成就社まで3.0kmの平地で服を1枚脱ぐ
そこから斜面の道に入ると15時19分第一崩壊地に出くわした。お決まりの登山道が沢筋で崩壊してロープで通行路
が通せんぼされ、沢下に誘う。構わずロープを潜り様子を見ると登山道は見事にきれ落ちている。ここから一旦沢に下
り向いに見える登山道へ復帰するのだが、高低差はそんなに無いのでここはそう問題ない。
第一崩壊地 一旦沢に下りて向かいの石垣に這い上がる (ここまで登山口から約1時間30分)
15時23分正面右に岩が現れ、正面の沢筋に向って立派な登山道が続いているのだが、不思議な事にここから
少しザレた右上に向って愛媛森林募金の立派な標識が進路を指している。ツララが垂れ下がる岩場に向って少し
這い上がるとはっきりとした踏み跡が続いてテープなども見られた。
まっすぐ道は続いているのだが、標識はここから右上に上がって行く様になっている
ここは標識に従って右上に進もう
15時32分又ザレた崩壊気味の谷部に入りここには進路に沿って長いロープが敷設されている。向いに見える桂の
大木辺りまで進むと綺麗な登山道に復帰した。ここもそう落差はなく問題はない。ここを越えると例の距離標識があり
成就社まで2.5kmとある。
右手に登っていくと右手の岩場にもツララが沢山見られた 長いお助けロープが敷設された広いガレ場
左上のカツラの樹に向かって進むと明確な登山道に復帰する
ガレ場を上がるマーシーさん 成就社まで2.5kmのターニングポイント
(登山口からここまで約2時間弱)
黒川道最大の崩壊地
枯れた沢を少し遡り左上の石積みの残った登山道へ復帰する。その支尾根部を越えると15時45分前方にこのルート
で最大の崩壊地が現れた。ここは斜面がスッパリと切れ落ち岩が露出しており当然こんな場所は直接突破しようも無く、
迂回路を通る事になる。なすび平から一ノ谷越の間にもこんな崩壊地があるがスケールがこちらの方が数段小さく、
崩壊地の上辺に近いので迂回路も明瞭だ。細尾根に沿って少し這い上がり崩壊地を左に眺めながら若い植林の中を進み
登山道に復帰する。
同じ様なガレ場が出現 往年の黒川道を彷彿とさせる石組みの道
登山口から丁度2時間でこの崩壊地に至る。 ここは上側を簡単に迂回出来る
崩壊地の上側は安定しているので迂回路になっている その後もテープやルート表示ロープがある
行者堂 (黒川道女人結界の地)から沢沿いの道に
この崩壊地を抜けると又平和な登山道となり雪が現れた。15時55分 成就まで2.0kmの標識あり。
すると正面に立派な石垣が現れ右手に大岩が見える。ここが「行者堂」で昔はお堂があったと言われているが今は
岩の前に蔵王権現の石像が安置されているだけだ。ここからルートはいよいよ沢沿いとなる。
16時12分先ほどから霧が出て視界が悪くなり左下に水量豊かな滝があるのだが霞んでよく見えない。この辺りは
沢筋に近いが広い道筋がつけられており、テープやロープなども結構あり気をつけると迷う事もなさそうである。
沢筋は渡渉せずずっと向って右側(左岸)に沿って参拝道が続く。時々沢に向ってテープがあったりするがひたすら
左岸を進む事だ。
雪が少し現れてきた 2.0km標識 立派な石垣が現れる
岩の横に倒壊した行者堂跡が残されていた ユーモラスで迫力のない蔵王権現の石碑
行者堂を過ぎると黒川道は沢沿いをすすむ
沢沿いの道になるとルートに沿ってロープが多くなる 石鎚登山道の標識が樹に掛けられていた
沢には滝が見える ルート指示のトラロープ (振り返った図)
渡渉ポイント
16時20分 左手に大きな滝が見えると正面に岩壁が構えた広場となっており、そこに捩れた鉄製の細い橋が左手
に向って架けられている。ここが黒川道唯一の渡渉ポイントだ。
来るともう安心である
水量が多い滝が霧で霞んで見える ねじれた鉄橋が沢広場に現れる (渡渉ポイント)
16時20分(登山口から 約2時間30分強)でこの不安定な鉄の橋を渡る
16時25分右手に給水槽がありそこから細いホースが2本延びている。
れたがその使用目的は定かではない。
16時30分 成就まで1.5kmの標識がある。道が広くてしっかりして雪の量が増えているので何か既に成就
付近に到達しているのかと思うがまだ距離がある様だ。
いきなり正面にリフトが見えた。
広い道に出ると右側に給水施設の様なものがあった ここまで来ると結構気温が低いみたい
成就社まで1.5km これが我々が最後に見た標識だった 雪が急に多くなった登山道
道の左手に大きなコンクリートの給水設備(?) スキー場のリフト施設にぶち当たる
スキー場リフト施設に突き当たる
広い道はここで左右に分かれている。ここに標識が絶対欲しいのだがどこにも見られない。
が寸断しているのでこういう場所に標識が無いのが不思議だ。
仕方なくリフトに乗って下がっている女性に大声で「成就社はどっちですか〜」と聞くと右手の上り坂を指差す。
次のリフト客も同じだった。
へ行った記憶があったので右へ進もうと決めた。
地図を見るとリフトの下を潜って破線が成就社へと伸びている。このルートか左のスキー場入り口方面に進むのが
正解だった様だ。
さて三択問題で最悪のルートを選んでしまった二人のその後は・・・
5分程進むと右側に四角い箱型の機械が並んでおり、左手にリフト駅の様な物が見える。
ト駅に着くと従業員がおり、この紛れ込んだ珍客に当惑している。もうスキー場の営業は終わっているのでリフトは
動いているが上には誰もいないので行けないと言う。
今更下に向かって下がる訳にも行かず「成就社へはどう行けば良いのでしょう?」と聞くとどうもスキーのゲレンデ
に沿って這い上がっていくしか無く、他に迂回路はないと言う。
結局ホワイトアウトした急なスキー場のゲレンデAコースをトボトボと歩く。これが結構長い。
石鎚スキー場Aコースゲレンデを逆に歩く やっとスキー場の最上部に着いた
17時15分ゲレンデ最上部に着き、折角だからここにある成就山(標高1,414m)を訪問する。そこには展望台
があるが何も見えない。ここから雪の遊歩道を歩き17時30分成就社に到着し白石旅館で長崎から遠征された「あゆみ
ハイキングクラブ」の皆さんと合流した。
成就山展望所へ上がってみる 17時30分 やっと成就社に到着〜〜
虎杖(いたずり)登山口から成就山まで標高差約1,150m、4時間弱の「黒川道」歩きだった。
平成24年2月26日、長崎「あゆみハイキングクラブ」と一緒に冬の石鎚へ登頂した後
さんと成就社まで帰り、13時20分成就社を出発。13時38分奥前神寺で皆さんとお別れし左手のスキー場に向う道
に沿って進む
スノボー客で賑わう初心者様のゲレンデ上部を横切り左下に見える「今宮道」の標識へ向う。
13時38分 スキー場のリフト乗り場に着く 奥に今宮道の標識がある ここを真っ直ぐに進む
ゲレンデを横切る リフト施設の向こう側に標識が見えたので横切って下りていく
グランマー啓子さんから今宮道は「高速道路みたいなもんよ」と聞いていたが確かに広くて快適な道だ。雪深いジグ
ザグな道を下りると13時52分第17王子社である「女人返王子社」に出会う。昔はこんな中途半端な場所で女性は
引き返さなければならなかった様だ。更に同じような道を下ると14時05分第15王子社「矢倉王子社」を通過
広い今宮道を進む ちょっと雪が深いけどね ヘアピンを切ながら斜面を下る道
第17「女人返王子社」 13時52分
急な尾根筋を下る 向かいの黒川道がある黒川谷川を挟んだ尾根
あれ? ここは何か昔栄えていた雰囲気があるぞ
14時05分 「第15矢倉王子社」 傍に廃屋が倒壊したまま放置されていいる
14時10分 大木の横から水が湧き出ておりここだけ雪が解けている。そこから少し下がると第14王子社「花取
王子社」があった。
14時10分 大木の横から湧水が流れている 植林の道が長〜〜く続く
14時13分 「第14花取王子社」 通過
14時35分大きな杉の木が生えた広場があり横に「今宮の大杉」樹齢800年周囲4.6m 高さ30mの説明
書きが立てられている。根元から二つに分かれて大きい杉は乳杉と呼ばれおっぱいの形をしたコブがあるそうだが
枯死寸前の状態である。隣の小さい男杉は元気そうであった。男が後に残されたらさぞかし困るだろうなと身につま
される。ここで衣服調整の為少し休憩を取る。昼ごはんを食べていなかったのでチョコレートを割って頬張る。
今宮の大杉 左側の杉がもう枯れる寸前だ 丁寧に積まれた石積みに長年この樹を慈しんだ
今宮先人の心が見える
14時45分未舗装の林道を横切ると石組みされた平地が沢山あり民家跡が現れた。
未舗装林道を横切る。ここは少し林道を下りて左手に今宮道の標識がある。この辺りは今宮の集落らしく往年の
居住区であった名残が沢山残っていた。
14時58分こんどは更に広い舗装に居りつく。傍に軽トラが止まった民家があった。
に見える鉄塔電線を見ながら下る。
一本目の林道に下り、そこを横切る すると廃屋が出現した 今宮集落の始まりか
石積みや廃屋が沢山見られる 2本目の林道に下り20m程下がった所から又横道に入る
今宮部落の廃屋の横を抜けてい行く
14時58分 3本目の林道は舗装されていた 向かいに虎杖(いたづり)の尾根が見える
以前、鞍瀬の頭北方稜線を下りた最終ポイントだ
15時04分標識に従い今宮道に入る。正面の曲がり角には「今宮道」の大きな看板が掛けられていた。ここから
退屈な植林地帯に入り歩きにくい石ころだらけの道をどんどん下る。
15時13分新しい丸木橋を渡り更に進むと左側に石段が上に向ってある。どちらも今宮道に見えるのでまず左上の
道に入ってみる。崩れた住居跡の向うに大きなお堂があり、更にその奥にすこし小さめのお堂がある。「三光坊不動堂」
らしく、外壁には昔の数え歌の様な歌詞がかかれていた。
その裏手が広場になっており第7王子社「今宮王子社」と第8王子社「黒川王子社」が並んでいる。どうもこの辺りは
「四手坂」と呼ばれる所で尾根筋に向って別な参道がある様で踏み跡が上に延びていた。
しばらく舗装道路を進むと左手に参道分岐があった デカい今宮道の標識が正面に見える
植林の中に整備された道が続く 木橋を渡る
雰囲気がとても良い古道 15時20分 左側へ石段が伸びているので見に行く
お堂が見える
石灯籠が落ちている荒れ放題のお堂 更に進むと下側に別のお堂が どちらかが三光坊不動尊だろう
裏の広場には 「第7今宮王子社」 奥にもう一つ祠が見える
奥には 第8黒川王子社 その向こうは崖になっている
元の道に帰って登山道を進むと沢の音が次第に大きくなり道路が見える。
40分三碧橋と下山口の鳥居に下り付いた。
「今宮道」は実にあっけなく王子社がなければ印象の薄い道であった。
先ほどからしきりに犬が吠えている。以前この辺りに老犬がいて車で通っても道に寝そべって避けてくれなかった
事がある。旅館跡の建物を通ると犬が道路に出て吠えている。どうも代替わりしている様で以前より若く見える。
人恋しい様で寄って撫でてやると体中で喜んでいる。
右側の加茂川上流にデンと構える「天狗のサイコロ岩」や「天狗の屏風岩」を見ながら黒川道登山道入り口を通り
デポした車に1600時無事帰り着いた。
15時40分 三碧橋の袂に帰り着いた
虎杖に出る道にいるワン公 車に気をつけるんだよ〜 デカい天狗のサイコロ岩
天狗の屏風岩 黒川道の入り口を通過
1600時 虎杖にデポしたマーシーさんの車に帰る
長崎あゆみハイキングクラブと成就で合流したおかげで長年気になっていた石鎚表参道「黒川道」と「今宮道」
を歩く事が出来た。と同時に「石鎚36王子社」を巡る次の目標が芽生えた。
グランマー啓子さんの石鎚表参道 黒川道・今宮道は ここ