平成18年5月21日 御用だ〜 「逆さ天狗!」 紫雲さんと歩く西熊山北西尾根から天狗塚、牛ノ背
5月21日 紫雲さんと逆さ天狗を見物に (西熊北西尾根から天狗塚、牛ノ背へ)


カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ   歩行時間 約8時間
西山林道土砂置場ー西熊北西尾根ー西熊山ー天狗塚ー牛ノ背ー西山林道堰堤
国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634) 

紫雲さんから5月に徳島の山歩きのお誘いがあった。マーシーはいつでも暇だから私の休みが確定してから連絡すると町内会の
草引き作業があり珍しく都合がつかない。仕方なく堅物(かたぶつ)紫雲さんと二人だけの山歩きを覚悟する。直前になり紫雲さん
の奥方「乙姫様」より雨後の「逆さ天狗」を見に行きましょうと提案があり3人で歩く事に。


         天狗の池にて  左下に紫雲さんと乙姫様

待ち合わせは祖谷のトンネルを越えた道の駅。遅れそうになり必死で一般道を飛ばして06時30分にやっと間に合った。既に
待っていたお二人と簡単な打ち合わせをして車のデポ地点までレーサー紫雲の後を追う。前回は鈍足マーシーの4WDが一緒
だったので見失ったが、今度はエンジン全開でピッタリと付いていく。祖谷の曲がりくねった道を疾風の如く走る紫雲さんを必死
で追うのでもう車の中では先ほど買ったコンビニ弁当、お茶、その他のゴミ類が暴れまわっている。

デポ地の西山林道堰堤に着くともう運転に疲れてへとへとだった。ここから紫雲さんの車に便乗して西熊北西峰作業道入り口
まで行くつもりが土砂捨て場の広場で進むと工事中のユンボが停められて通行止め。仕方なくそこから林道を歩く。

 
  出発地点は土砂捨て場            このユンボで通せんぼ

この林道は「ふるさと林道阿佐名頃線」という名前らしく「いやしの温泉郷」まで続いている事は趣深山TAKAさんのHPで知っていた。
西熊の北西尾根が眼前に見えるが、乙姫様ご同伴の紫雲さんはあまり無茶をせずに正規の作業道へと進む。

林道には大雨のため大小の石が転がっている。イザリ峠登山口を過ぎ、更に良く歩き作業道に入るとますます石がゴロゴロした
様子で長いジグザグと効率の悪い上昇を続ける。両側の植林は枝打ちがよくなされていて思わぬ直線美を見せている。北側の
矢筈山あたりが見え日差しが強くもう夏のようだ。


   枝打ちされてすっきりした植林地帯をダラダラと登っていく

 
作業道には大きな石や倒木が       植林地帯の割には明るく見通しが良い

ようやく待望の西熊尾根への取り付き部に到着。小休止のあと適当に尾根部に入っていく。
植林はすぐ幕を閉じ気持のよい緑豊かな世界が始まった。暫くすると苔むした岩がごろごろした急坂が出現しいままでの緩やかさ
に慣れている心臓が音を上げる。

 
   尾根の取り付き部            直ぐにブナ林の急坂になる

    
             雰囲気のよいブナ林


坂は急だが小ぶりのブナや広葉樹の間に時々モミの木が現れる。若葉の淡い緑を透して陽の光が柔らかくあたりの空気を包む
。美しさと厳しさが同居する尾根道だ。乙姫様を見ると紫雲さんの後をきっちり追っている。結構早いスピードなんだけど引け目を
感じさせない軽快さだ。こりゃ普段から相当鍛えられているな? 

 
軽快に飛ばす紫雲・乙姫コンビ       モミの大木もある

     
           ブナはいつも美しい 特に新緑の季節は

気がつくと次第に笹が増えてきて足元に広がっている。典型的な四国の広葉樹林帯の風景だ。冬に被さった雪の重みで下方に
しなだれているのでとても歩きにくい。

 
   笹が深く歩きにくい場所も            明るいブナ林と笹

常に先行する紫雲さんが立ち止まった前方をみると景色が開けている。ゼイゼイ言いながら追いつくと前方にたおやかで見慣れ
ない山塊が現れた。左側に三角錐の天狗塚がないので牛ノ背ではない。 徳島の山は丸っこいので良く似ているが、頭に描いた
地図から判断すると地蔵の頭から天狗峠あたりの稜線だろう。

   
          紫雲さんも同じ風景を撮っていた

モミの木と大岩を迂回すると風の通る広場に着いた。この場所だけ笹原となり、そこに降り立つと左手に三嶺が見えた。初めて
この角度から見る三嶺の傾いた姿に見入っていると「ここが讃岐富士さんの昼寝の場所ですわ」と紫雲さんから声がかかる。へ〜
 カモシカも人間も昼寝をしたい場所はだいたいこう云う所なんだ〜と妙に納得する。

 
岩とモミの場所に来ると西側が開ける     ほどなく笹原に下り付く

紫雲さんは近くの池に三嶺が映らないか角度をチェックしている。でも「逆さ三嶺」の可能性はゼロだった。まあ今日の目的は
「逆さ天狗」ですから。ここで初めて携帯食をとり休憩らしいゆったりとした時間を楽しむ。

 
    ここの野生動物は三嶺を見物しながら水を飲む 贅沢!


 讃岐富士さんの「朝食後昼寝場所」から三嶺と西熊東尾根のスロープを見る

その後、西熊の稜線に向けて最後の歩きをスタートしたが、いくら長く休憩をしたからと言ってもそれからも続く急坂に何の
効果も無かった。ヘロヘロになった頃急に視界が開けて尾根部にやっと到達。

 
まだまだ続くよ 急な坂            やっと緩やかな笹原が現れる


地蔵の頭からイザリ峠への稜線が見え天狗塚が頭を覗かせる(右奥に牛ノ背)

西側を見るとお亀岩の峠まで下がったあと、地蔵の頭まで相当の登り坂が見える。ひぇ〜これだけ苦労して登ってきたのに
まだあんな坂を這い上がらなければならないの〜 
西熊山の標識まで逆の東方向に暫く進み、数年前にTAKAさんと遭った西熊山に着く。

  
     西熊山山頂          西熊山から三嶺をバックに紫雲さんご夫婦

東側の三嶺方面を見渡した後、いよいよ逆さ天狗に向かっての行進が始まる。なだらかな下り坂を下りきると懐かしい
お亀岩
に着いた。ここは風が相当強いのか銅山峰の様に少し砂礫地となっていて、左手下方に以前お世話になった
お亀避難小屋の赤い屋根が見える。


折角喘いで登ってきたのにまたお亀岩まで下がって、それであれを又登るの〜?
 (中央に天狗塚の頭が覗いている)

   
お亀岩まで一気に下がる  左手が高知、カンカケ谷、光石登山口への分岐となる

   
                お亀岩分岐

 
   懐かしいお亀避難小屋         紫雲さんは はやトラバース路に

お亀岩をしげしげと眺めていると紫雲さんはもう前方のツツジが咲いているトラバース道に消えようとしていた。「忙しい人
ですねえ」と乙姫様に話しかけ、その同意のうなずきを待ってからあわてて追いかける。ここから綱附森分岐まで細尾根
の急坂が続く。岩場には近頃どこの山でもよく見かけだしたワチガイソウが咲き誇り、オオカメノキの白い花も見える。右手
の沢からは常に風の音に混じって水の音が聞こえる。でもいくら沢部を眺めても水は見えない。

 
  ワチガイソウの咲く岩場             オオカメノキ

 
  左側が切り立っている          綱附森分岐、地蔵の頭へ続く尾根道

   
    今歩いて来たお亀岩の鞍部と西熊山を振り返る  バックには三嶺

そんな風景を楽しみながら坂をあえぐと紫雲さん達が分岐で待っていてくれた。「地蔵を見にいきますか?」と聞かれるが
「早く逆さ天狗を見にいきましょう」と先を急ぐ。そこからも「カモシカ夫婦」があっという間に前方へすっ飛んで行き豆粒に
なるが、乙姫様の赤いザックやスパッツが黄金の笹原に鮮やかに移動するのが分かる。女性は山では赤が似合う。
(街では知らんよ)

 
   もう 二人とも早すぎる〜       お〜〜 天狗塚が現れたぞ


              豆粒になったカモシカ夫婦

天狗峠(イザリ峠)を過ぎて天狗塚への窪地を見やると先行していたカモシカ夫婦が立ち止まって誰かと話をしている。亀が
うさぎに追いつくと、お相手は紫雲さんより更に真面目そうで腕に腕章を巻き立派なカメラを提げたお知り合いだった。大自然
の憲兵隊の方だろうか?

 
知り合いと立ち話の紫雲さん         気になる牛ノ背方面


            牛ノ背

大自然憲兵隊員のお陰でやっと二人に追いついたと思ったのも束の間、話が終わるとまた天狗塚の山頂に向かって
糸の切れた凧のようにペアで舞い上がっていった。なんじゃ この夫婦は! ひたすら目的地に向かってまっしぐらに突き
進む紫雲家スタイル。私の寄り道、道草行脚家風と根本的に違うようだわい。

 
これを登ればもう後は下り坂だけなのね   お〜〜 池には水があるぞ

首が痛くなるほど周りの景色をグルグル見ながら山頂に着くと先着2名様は昼食の用意。こちらは暑気と飛び交う虫の為
珍しく食欲が無い。コーヒーやラーメン用に重い水をはるばる持ってきたがこの暑さは誤算だった。

   
                  天狗塚山頂

食事が終わると紫雲さんはあっという間に山頂を滑り降り、くだんの池の向こうに陣取っている。こちらは下から上がってくる
登山者に挨拶をしながら、尻餅をついたりよろけたりしながら季節限定池に向かう。

    
      池に陣取る紫雲さんと 池に映る逆さ紫雲

この大雨による季節限定池は大小二つあり、角度的に小さな方には何となく逆三角形の黒い影が映っている。けっこう
風が強いので常に水面は揺れていて想像していた鏡のような天狗塚とは程遠い姿だ。 が・・・この程度が上出来らしい
ので納得しながら、今度は大きい方の池に向かう。


 小さな池の「逆さ天狗」  鏡のように映し出されないけどまあしゃあないわ  

う〜〜ん こちらは大きいクセに前にコブがあり角度が悪いのかそのままでは逆さ天狗は現れない。前へ進むと足元が水浸し
になる。仕方ないから後方の小高い岩場に駆け上がる。一番高い岩によじ登ると何とか「ちょっと苦しい逆さ鞍馬天狗」が現れた。

 
  大きな池の「逆さ天狗」 う〜〜ん 映っていると言えばまあそうとも云える

まあそんなに何時までも眺め続ける光景でもないので牛ノ背から堰堤に下る事に。実は今日の歩きでこのルートが一番私が
楽しみにしていた場所なのだ。牛ノ背界隈の愛好者が西山栗園とか堰堤とか話題になっていたのが気になっていたのだ。
砂漠の様な牛ノ背をあちこち移動しながら天狗塚を振り返り歩いていると「カモシカ夫婦」が見えなくなった。遠めにはなだらか
に見える牛の背も実際歩いてみると起伏が結構あり、置いてきぼりをくった小象のように必死で二人を追う。

     
               遠ざかるカモシカ夫婦

ここで紫雲さんを追いながら恒例 エントツ山の替え歌が出てくる

題 :カモシカ夫婦を追ゆる唄    原曲は堀内孝雄の「愛しき日々」

  
西熊尾根の きびしさは ♪   ブナの光に 揺れ惑う ♪

      かたくなまでの 藪の坂   B級登山者だと 笑いますか〜 ♪

             もう少し 傾斜が 緩やかだったなら〜 ♪


綱附分岐へ 喘ぎ登れば ♪    天狗の姿が 顔を出す  ♪

      たおやかな尾根を  池を目指して 急ぐ我らを 笑いますか〜 ♪
  
             もう少し風が  穏やかに吹いてくれたなら ♪

逆さ天狗の はかなさは  池の水面(みなも)に  揺れる影  ♪

     牛ノ背の道  先行く二人 ♪  軟弱者と  笑いますか〜 ♪
           
              もう少し 緩やかに歩いてくれたなら

   カモシカ夫婦は 軽やかで ♪  一人笹原に 取り残される  ♪


紫雲さん 待って〜〜〜〜〜

隊列を崩さず先を行く二人に牛ノ背三角点で追いつき、最後のスロープを下がりきって樹林帯に入るが一向に斜面へ下がる
様子がない。イメージとしては堰堤には牛ノ背のスロープから直接斜面に降りていくと思っていた。紫雲さんを先頭にどんどん
尾根を亀尻峠に向かい下っていく。

 
    牛ノ背三角点               樹林帯の尾根に向かう


以前間違って直進した曲がり角に着いた。なるほど大き目の木で通せんぼをしている。ここから道なりに右の支尾根を下っ
ていくのだが、初めて歩く人にはビックリするような荒れた登山道だ。ここを下りきると大岩があって亀尻峠へ向かう尾根と
植林地帯を堰堤に下りていく道の分岐となっている。

 
    ブナが残る尾根道             次第に植林も現れる尾根道

 
  尾根を直角に曲がる分岐       亀尻峠へ向かう尾根と堰堤へ下りる分岐

この界隈について紫雲さんの解説を聞いた後、訳の無からぬ植林地帯を下っていく。何か一定の法則のようなものが見え
るのか紫雲さんは迷うことなく枝打ちされて無法地帯になった暗い植林の間を下る。程なく小さな沢をまたぎ、植林と自然林
の境目まで折りつくと堰堤は近い。近道を通って堰堤手前の沢に降りる。

 
     ヤマシャクヤク              エンンレイソウ

 
 樹林帯を下り切ると明るく開けてくる       堰堤へ近道を降りる

 
      堰堤に下り付く           紫雲さんと堰堤にて

今回は乙姫様の提案で珍しい「逆さ天狗」を見る事が出来たし、紫雲さんの案内で西熊北西尾根の素晴らしさを堪能し、
牛ノ背からあこがれの堰堤へ下りる道も歩く事が出来た。四国の山ネットで知り合った紫雲さんとの縁が私にとってとても
有意義な山歩きをもたらしてくれました。お二人さん、ありがとうございました




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