平成18年2月末 一ノ森・槍戸山 富士の池コース
カシミールソフトによるGPSトラック・ログ図 富士の池登山口ー 追分 一の森 − 槍戸山 国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
槍戸山より見る 一の森
2月25日、26日「一ノ森ヒュッテ」の内田さんより冬季山小屋点検の登山に同行のお誘いがあった。 ラッセル要員として
お役に立てればと参加する事にした。(結局 ラッセルの場面はなかったのだが・・) 朝8時集合場所は木屋平(こやだいら)大桜の湯。同じくお誘いを受けた紫雲さんの都合がつかず、一人寂しく穴吹から
しだれ桜見物で覚えのある川井へ向かった。一ノ森へは内田さんの山仲間 小川さん、山本さんと私の4人で行くことにな
った。
集合場所 川井 大桜の湯 登山口から東宮山の綺麗な姿が見える
「富士の池コース」は初めてなのでここを歩けるのが楽しみだった。小川さんのレガシーに乗せてもらって、コリトリ(垢離取)
から未舗装の作業道へ入り富士の池登山口へ到着。ここはかつて剣山修験者や登山者で賑わった龍光寺がある。左側の
富士池谷が大規模な崩壊で痛々しい姿をさらしていた。
富士の池登山口 内田さん 山本さん 小川さん
谷間を通して来た方向を眺めると東宮山が綺麗な姿を現している。雪はほどんどなく道の脇に積み上げられている程度。
龍光寺はかつて見せた賑わいはなく杉の中で静寂に包まれていた。本堂も柱があちこちで朽ちかけているのを気の毒な
くらい恰好の悪い応急修理の姿をさらしている有様が時代の流れというものの残酷さを物語っている。まずそこで参拝をして
その上にある崩壊しかかった登山口を上がると広場に小ぶりな剣神社があった。こことて今は見ノ越に主役を奪われている。
初めて60リットルザックを背負う 藤ノ池八大竜神王の池は凍っている
龍光寺 境内の石段 寺の左手に周り込み崩れている登山口を上がる
剣神社にも参拝 登山道に入る
しばらく急坂を上がると作業道路を横切る。そこからの登山道は多くの尾根道がそうであるように左側に植林地帯、
右手に自然林と左右対照的な道をしばらく進む。そのうち次第に雪が現れ気持ちの良い自然林の中を登っていく。
中々雰囲気のある林や窪地があり、時々巨木も現れ自然豊な山歩きを楽しむことが出来る。内田さんによれば新緑
の季節がこれまた良いそうだ。
作業道路を横切る 石灰岩の大岩もある登山道
次第に雪が増えてくる 左が植林 右が自然林
大樹も現れ
とても良い雰囲気の登山道だ やがて大きなブナが目の前に現れ、それを過ぎて左手に上がっていくと「追分」という分岐についた。ここから左へは一ノ森、
右へはお花畑、行場を通って剣山へと二手に別れる。一気に急坂を登ってきたのでザックを下ろしてしばらく此処で休憩を
取る。
森の主の横を失礼して進む このブナを越えると追分だ
ブナの枝越しに剣山のヒュッテ付近が見える。ここで内田さんの指示で全員アイゼンを付ける。私のだけは6本アイゼンで
他の人たちは前に爪がある。う〜〜ん差がついた。4本爪簡易アイゼンからこの6本爪に変えた時には立派に見えたのだが・・
・特に小川さんのはワンタッチアイゼンってやつだ。靴やピッケル、アイゼン、ザック・・・どれをとっても年季の差が歴然。
追分 (おいわけ) 追分から見える剣山
小川さんのワンタッチ12本爪アイゼン 追分から剣山
休憩のあと内田さんは何故か右の行場へ向かう道へ向かう。そして途中から左の急傾斜を上がって行く「内田スペシャル・ルート」
だ。う〜〜ん この道は大樹のある場所を通りキツイ雪の傾斜を這い上がって、途中から一ノ森登山道に合流するのだが、高度感
がありとても見晴らしが良い場所を通るルートでその素晴らしさに感激した。
追分から行場方面へ進む ブナの樹 いつもの大好きなアングル
ハリギリの大木を横目に急坂を登る
寄らば大樹の陰
雪の急斜面を這い上がる
次第に雪が増えて、ダケカンバの大木があり、雪を被った矢筈山・黒笠山が見渡せる場所まで来るともう一ノ森山頂は近い。
モミの木が多くなり最後の樹林帯を越えると急に前が開けて、一ノ森から天神丸へと伸びる稜線が姿を現す。右手にはダケカンバ
帯を通して先ほどの矢筈山、黒笠山が見え、剣山の北側がそのなだらかな傾斜を覗かせる。
所々にとんでもない大樹が迎えてくれる
ダケカンバの大木
森を通して二ノ森と剣山が見えてくる
肉淵分岐 樹林帯を抜ける
一ノ森の北斜面は樹林帯を抜ける頃から独特のゴヨウマツや白骨樹も姿をみせて情緒のある風景を作り出している。普段なら
熊笹に覆われているに違いない斜面は一面雪に覆われて穴吹川の谷間を挟んで赤帽子山から中尾山へ東に落ちて行く稜線と
、その向こうに平行して東に伸びる綱付山から杖立峠、正善山がまるで鳥になったように見渡せる。
雪原に出る
矢筈山、黒笠山が見ノ越の向こうに見える
一ノ森 北斜面の眺望を楽しみながら最後の坂を登る
形の良い五葉松や白骨樹がバックの風景に映える
ダケカンバの並木の向こうに丸笹山と赤帽子山
一ノ森の風景
ゴヨウマツの向こうに青い「一ノ森ヒュッテ」が見えた。皿ヶ嶺の愛大小屋も自然にマッチしているが、この一ノ森ヒュッテの
青い屋根姿もうまくこの森に溶け込んでいる。まず内田さんがヒュッテの中を点検。異常は無いようだ。そのあと中に導か
れて懐かしいヒュッテのダイニングルームで各自弁当を出して昼食を摂る。
一ノ森ヒュッテの屋根が姿を現す
食事の後 内田さんの指導で裏の斜面を使ってピッケルでの滑落防止訓練。わたしは「ピッケルとは山頂に突き刺して
記念写真を撮る小道具」と定義していたのでもちろん始めての体験。色々指導をして頂き基本動作は一応身に付いた。
でも実践でどれだけ咄嗟に使えるやら・・・ そのあと思い出した様に一ノ森山頂へ上がり次郎笈や剣山を見渡すと天気
が崩れかけている様子。
ヒュッテ前で 内田さん 小川さん 山本さん
ヒュッテの中で昼食 シェパードをつれた登山者が中庭に
ピッケルによる滑落防止訓練 雪壁をピッケルで這い上がる
雪洞堀り 雪洞の中から
槍戸山から次郎笈や一ノ森を視界の利く間に見たかったので急いで内田さんに了解を貰って槍戸山へ下る。槍戸山の
白骨樹の素晴らしさを知ってちょっとここを訪れるのがクセになってしまったようだ。地味な山だが味があるんだなあ これが!
見れば次郎笈、剣山に雲がかかってきた 一ノ森ヒュッテ
一ノ森から槍戸山へ降りる斜面風景
一ノ森から槍戸山へは半時間で行けるので是非足を伸ばして欲しいとおもう。
「剣山から次郎笈の稜線」は遮るものがない展望の笹原であるが、逆に「剣山から一の森」の稜線に進むと対照的に樹林
地帯となりや奥ゆかしさ、風情豊かな山域となる。当然ここに来ると小鳥の鳴き声がする。
一ノ森三角点を越して槍戸山へ 一ノ森南斜面より 槍戸山
剣山から見る一ノ森は手前の二ノ森の陰になり地味な存在だが、槍戸山へ下って見る一ノ森は多くの白骨樹とゴヨウマツに
飾られた一つの秀麗な山としての存在を感じる事ができる。 槍戸山からは次郎笈の展望所としてそれと対峙している。もちろん
剣山も同時に見ることが出来るがその姿に美はあまり感じない。
槍戸山
槍戸山への稜線から一の森を振り返る
槍戸山から次郎笈 やっぱこれだね
槍戸山山頂 槍戸山の五葉松
槍戸山から剣山
槍戸山の南端まで出ると、槍戸川を挟んで次郎笈の奥、左手から新九郎山(1,695m)、折宇谷山(1,652m)、
権田山の山々が衝立の様に広がる。名前のわからないピークがそのむこうにもたくさんひしめいている。
倒木が先か ? 白骨樹が先か う〜〜ん いつも悩む風景
一ノ森へ引き返している途中から天気が急に悪くなり、南方面から黒い雲が走り突風が吹きあれ出した。 一ノ森へ
帰りつき、のんびりと雪洞や避難小屋を見てヒュッテに入ると、天気の急激な下り坂に皆さんが心配してくれていた。
一ノ森避難小屋 避難小屋内部 立派の一言
さあ それからは天気も悪いのでヒュッテの中で「シェフ山本」男の手料理、得意の「キムチ鍋」と酒盛りとなった。小川さん
は元々岩登り専門家で山歴も長い。ひょんな事から翻訳などのお手伝いをした「徳島・ネパール友好協会」に属している人
とわかった。何と中古の救急車を苦労の末ネパールまで運転して届けたのはこの人だった。山本さんは一番年下だが、とても
味がある方で一番堂々としていた。気の許せる山の仲間って歳の差なんて超越している。
内田さんを中心に山の話しなどを語らいながら大いに良き時間を過ごしました。 その後、トタン屋根に打ち付ける激しい雨音
と共に我が同胞の鋭いイビキの中で一ノ森山頂の夜は更けていった。
一の森ヒュッテで夕食 山本さん得意のキムチ鍋
一の森 雨とともに去りぬ
朝 目覚めるともう大雨で日の出を楽しむどころではなかった。朝早く起き出して恨めしそうに外を眺めながら、やっぱり山
は天気の良い日に限るなあと痛感。朝食をみんなで食べてとっとと下山することに。雨が激しいのでみんな避難小屋でアイゼン
を装着、雨の降りしきる中 一ノ森を後にした。
避難小屋でアイゼンを装着 さらば 一ノ森
帰りは天気が悪く集中力もないので内田さんと色々山の事を話しながら歩いたのでちっとも退屈はしなかった。
登りがスローだった小川、山本コンビは下りは快調で追分でアイゼンを外してからは姿が見えなくなり、登山口に
帰り着いて再会した。
雨の一ノ森北斜面を下りる カメラも雨がかかり使用不能に
富士の池からコリトリまでの作業道は昨夜からの大雨で小規模の土砂崩れが起き、結構ヤバイ場面にも遭遇したが、
索道の点検の後、無事集合場所 大桜の湯まで帰り着き風呂と昼食を共にして昼過ぎに解散した。
今回、二日目は生憎の天気でしたが、内田さん、小川さん、山本さんら味のある山男達と共に一つの時代を謳歌した
富士の池コースを堪能する事が出来ました。
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