平成17年9月29日
俺達の旅 同級生と歩く 「天狗塚ー牛ノ背ー亀尻峠」
9月29日 青春徘徊 同級生と歩く「天狗塚―牛ノ背―亀尻峠」


          (地図作成 国土地理院数値地図50000 承認番号 平15総使第634号)
天狗塚登山口ー天狗峠ー天狗塚ー牛ノ背ー亀尻峠ー西山林道  約7時間歩行


50歳も過ぎて同級生から連絡があるってロクなことがない。たいがいは誰かの訃報とか市会議員の投票依頼、保険や商品
の勧誘ってな具合だ。ところが「くろもじ」君と「グランマー啓子」さんは違っていた。 懐かしい「エントツ山」という言葉がキーワ
ードになってHPを知り、山仲間として連絡を頂いたのだ。

それ以来、一緒に山を歩こう!という話しになり、私が以前から気になっていた牛ノ背―亀尻峠に誘い出す。9月25日 念願の
同級生登山が実施の運びとなる。


          コメツツジの紅葉が始まった9月末の天狗塚

「くろもじ」さんは愛媛県新居郡角野町時代からの小・中学校の同級生。子供時代はクラスも9組あり面識は定かではない。
西赤石の兜岩で会って声をかけられた。丹波哲郎似の個性派で中々の役者だ。ちょっと見年配に見えるが、同級生相手
に気負う必要もなく、話しをするとけっこう味があってかわいい所もある。樹木にめっぽう強く彼の山歩きは木の幹や葉っぱ
や実などを眺めながらの故郷の山徘徊が主となる

一方「グランマー啓子」さんは小・中・高と一緒。キュートな女学生でその美貌には中々定評があった。大学のフィギアスケート
部で知り合ったダンディな「いぶし銀次グランパ」と絶妙コンビで精力的な山歩きを楽しんでいる明るいオバドルだ。

くろもじさんは川之江インターでグランマー、グランパと合流し、阿波池田を抜けて小歩危付近、「モン・ベル」横のコンビニで
待ち合わせ。ここから土地勘があるグランパをナビゲーターにして二人の氷上のロマンス物語を聞きながら車デポ地点へ向
かう。

久保蔭から西山林道に入り、車のデポ地点を地図を見ながらグランパと相談。ヘアピンカーブを過ぎて小さな沢近くに来ると
グランパは「このあたりでしょう」と低い声でつぶやく。その低音の迫力に圧倒されて惑わず車を停める。後続のくろもじさんの
「一応4WD車」に乗り込んで天狗塚登山口までへ進む。 目指す山々は濃い霧に覆われ未知との遭遇「亀尻峠」への歩きが
不安になる。そんな気分を払拭するように「大丈夫! 昼過ぎから霧はきっと晴れる 間違いない!」と永井秀和風に断言する
グランパ。頼りになる〜〜〜

 
車デポ地点                    天狗塚 登山口

天狗塚登山口には7時に着く予定だったのだが、途中阿波池田近くで待ち合わせの失敗が響いて既に8時近くになっていた。
先着はオートバイと車が一台だけ。各自に用意していた登山コース図を渡す。グランパは別な地図をHPからコピーして持って
いた。くろもじさんは同級生と歩く事ができれば遭難しても本望とばかりにロクに見もしない。

いざ 出発〜 最初から急坂が続く。結構早いペースで歩いているのだが、グランマーの楽しげなおしゃべりはとめどなく続く。
たぶん身体と口は連携していないのに違いない。こんな底抜けの明るさにグランパが惚れたんじゃろうか?
くろもじさんと言えば木ばっかり眺めながら上を向いて歩いている。たまにこの木はなんでしょう?なんてクイズを繰り出してくる。
全部「クロモジの木じゃろ」って適当に受け流す。見るとグランパは最後部を遅れて着いてくる。あれ? 最年長だからなあ・・・ 

 
最初から急坂 でも笑いが絶えない    植林と自然林の境界を歩く

 
グランパがしんがり                  私設撮影隊

上から一組の男女が下りて来た。「えらい早いですね」と声をかけると「もう霧で展望がなくあきらめました」って。そこで「今から
晴れますよ もう一度行きませんか?」ってグランパ。 凄い自信が言葉にみなぎっており、その催眠術にかかった女性が「もう
一度登る?」って連れの男性に本気で相談している。 はは〜〜ん これがグランパの啓子攻略の手口だったのか。 暗示に
かかりにくい男性がこんな甘い言葉に乗せられたらイカンと同行者を急かすように下山していった。

 
森を見上げながら歩くくろもじ・グランマ   早くも徳島から来られた下山者と会う

あっという間に1,476mコルに着いた。グランパによると普段より30分くらい早いという。私は以前この道を歩いているが、一面
雪の為ヒイヒイ言いながら歩いたので登山道の周りの景色を味わう余裕がなかった。美しい自然林の風景が道の両側に広がり
小鳥の声が木霊する。その辺りから笹が深くなりやっと高山の趣を呈してきた。辺りの風景が開けてくると、ジグザグの道が一直線
に天狗峠を目指す。幾年を経た登山道は流れ下る雨水で掘れ込んでおり、周りの笹が高いのでストックが使えない。

 
くろもじさんは木ばっかり見ている     わたし達 角野中学 同級生

見るとグランマーが身じろぎ一つせず登山道にうずくまっている。癪(しゃく)でもおこしたか? いや、登山道の脇に咲いていた
ヤマラッキョウをデジカメで撮影しているのだった。彼女の写真撮影は手ぶれを防ぐ為に息を止めるらしい。この日は風が出て
きてヤマラッキョウが揺れているもんだから、もう窒息寸前で頑張っている。この撮影方はどうも命がけで他人には到底勧めら
れそうにない。

 
樹林帯を抜けると道は直線に       コメツツジも赤く紅葉している物もある

 
くろもじさんはヤケにあっさり写真を撮る   グランマーは無酸素撮影法

懐かしい天狗峠が近づいているのが笹原の緩やかな傾斜によって容易に想像できる。
両側に点在するコメツツジは少し紅葉しかかって、笹の緑にそのダークブラウンが霧によって溶け込んでいる。しかし天空と
笹原をなめつくす雲と霧のため、右手に聳えているであろう天狗塚はその存在の気配もない。

峠に着いて、風が冷たいので少し南斜面側で小ぶりなヤマラッキョウを踏みつけない様に場所を見つけてゆっくりと休憩と軽食
を取る。あたり一面香りのしない牛乳石鹸の泡の中。

 
峠でしばしの休憩               稜線は霧に覆われている

    
               綱付森分岐

しばし休憩の後、どんな状況でも底抜けに明るい100ワット・グランマーとそれに感化された80ワット・くろもじさんが天狗塚
を目指して坂を下りていく。私も二人を追って行きかけて、ふと後ろを振り返るとグランパがなにやら空を見上げて呪文を唱
えている。すると急に青空が現れた。霧が一瞬さ〜〜と引いてまず牛ノ背の背中が現れ、次に天狗塚が眼前に現れる。この
ニクイ自然の演出に大声で先行の二人に「牛ノ背が見えたぞ〜〜」って叫ぶ。良かった〜 ここで俄然元気が出てきて小走り
で大岩まで進む。去年も雪の中、嬉しくてこの傾斜を走り下がり、牛ノ背で太ももが攣って難儀をしたはずだった。

 
霧の中に下っていくグランマーとくろもじ  あれ? 天狗塚がうっすらと現れた

    
        牛ノ背が姿を見せる


        うひょ〜 大岩へ近づく二人がはっきり見え出した


             牛ノ背もほぼ全容を現す

     
       木がなくても雄大な景色に満足のくろもじさん

       
             下界も少し垣間見る事が出来た


   あれまあ 昔はもっとおしとやかだったんだけど  大岩と天狗塚


ブルータスしんちゃん  現る!!

また少し霧が出てきた。グランパの念力もこれまでか?と天狗峠方面を振り返ると、今度は何やら別な人影が現れグランパ
と話をしている。その影が近づくき「原ちゃ〜〜ん」と叫ぶ。 え? 何?「ブルータス・しんちゃん」だった。

      
        いらっしゃ〜〜い  ブルータス・しんちゃん現る

実は当日朝、阿波池田から山城町を走っているときブルータスから電話が入り「いまどこか山へ行こうと家を出たんだけど、
どこへ行ったらええやろか?」と電話が入った。行き先も決めないで取り敢えず山の支度をして家を出る、これ以上の行き
当たりバッタリ夫婦ってあるだろうか? 「行き先くらい決めて家を出ろ〜、こっちは天狗塚へ向かっているけど亀尻峠へ行く
から会えないよ」とつれない返事をしていたのだ。

それが、こっちが待ち合わせ場所でロスなどがあった為何と天狗塚山頂手前で追いついてきたのだった。香川からはるばる
初めての天狗塚へ良く道を間違いもせず追ってきたなあ。
今は又霧に包まれ寒い風が吹く天狗塚であったが、思わぬ仲間の加入で嬉しくなって心が温かくなった。山頂で賑やかな昼食
タイム。


     天狗峠を振り返る この丸っこいたおやかさが剣山系の特徴だ 

    
             天狗塚の南側風景
       

 
山頂まであと一息             天狗塚山頂でくろもじさんの山道具一式

  
    みなさん すみません ヘンなポーズで載せちゃって・・・

「しんちゃん 熱いコーヒー飲みたいんだけど」と皮肉たっぷりに言うと「任せといて!」とニヤニヤ笑っている。実は以前、真冬の
塔の丸でブルータスのガスストーブは熱いお湯を沸かすことが出来なかったのだ。その時ブルータスの妻、天然ボケ「クレオパトラ」
がそのぬるいお湯に指をつけて「ちょっと指でもあっためましょうよ」って真面目に言ったのでずっこけて大笑いした経緯があったのだ
。コーヒーカップが足らないのでみんなで回し飲みをする。これが全員仲間の儀式になり、そろって牛の背から亀尻峠まで行くことに
なった。

 
今回は成功したしんちゃんのコーヒー  いつものくろもじHP写真撮影風景

 
ボクたち同級生 一緒に55歳になっちゃった 日傘を差した初老の男性がやって来た 

登山道を振り返ると、小雨が降りそうな霧の中を日傘を差した人を先頭に数人の登山者が登ってきた。何と日傘を差した人は
年配の男性だった。この強風で霧の中、日傘を差して天狗塚に登ってくる意義と理由がいまひとつわからなかった。

牛の背は泉保さんがその本の中でその茫洋さを「航空母艦」とか「高天原(たかまがはら)」と表現されていたが、天狗塚から
見るその山塊は巨大な鯨の背中のようだった。しかしそこに下り立つと隆々とした起伏が西に向かって続いており、以前同じ
ような霧の中でTAKAさんに会ったあの西熊山から三嶺の縦走路を思い出される風景だった。やっぱりここも剣山山系の風景
なのだ

牛の背を歩く

 
牛ノ背へ向けて下がる            天狗塚から下りる


               巨大な丸っこさ  牛の背

天狗峠から天狗塚、牛ノ背と、ここには低木のコメツツジ以外に目立つ木々もなく、さすがのくろもじさんも手持ち無沙汰だ。
天狗の池は水が干上がっておりかすかに残った湿り気がその場所を暗示していた。ヤマラッキョウのピングが風に揺れるただっ
広い草原を二手に分かれて歩いてみる。牛の背の西端三角点に向かって南側が少し低くなっており、北側を歩く本隊はまるで
砂漠の丘の上を行進しているように見える。振り返ると天狗塚が顔を見せ、そこから伸びる支尾根が右側にまるで肩の様に北側
に下がっている。

 
天狗の池は干上がっていた            霧が地を這う

    
 
最初はコメツツジが沢山生えている    牛ノ背を歩く

    
     牛ノ背には結構起伏があり 三嶺縦走路を彷彿とさせる

     
      起伏のある牛ノ背の両端を歩いてみる

 
本隊が米粒の様に遠ざかる            牛ノ背 三角点方面

  
          牛ノ背より天狗塚を振り返る 

牛の背三角点のある標高1,757・1m地点は北側にあり、皆が手招きする三角点に向かって丘を上がる。 あった! こ
れが サイト仲間の讃岐富士さん、TAKAさん、紫雲さん達の登山記にあった三角点だ。 

 
牛ノ背三角点に到達           これがサイト仲間のHPに登場する三角点か〜

亀尻峠に向かう

ここからが未踏の地 亀尻峠までの稜線歩きが始まると思うと冷たい秋風の中快い緊張感が体を突き抜ける。まさかこんなに
大勢でここにこれるとは思ってもみなかったのでとても心強く不安は全くない。
牛の背三角点から西に続く稜線はスキー場のスロープの様に樹林帯に向かって急に切れ落ちていく。大きく2段に分かれる
スロープの最後がススキの穂が立ち並ぶ最後の展望台だ。ここから雲に覆われた向かいの山についてグランパが丁寧に解説
してくれる。頼もしい保護者を連れてきて良かったと胸を張るグランマー。くろもじさんも負けてはいない。「あそこの植林の形が
登山口から見えたのであの尾根を登って来た」なるほど、よく山を見ている。こちらはただ二人の説得力にただウンウンと信者
のようにうなずくだけだ。

 
天狗塚を名残惜しそうに振り返る     牛ノ背エッジからの雄大なスロープ

 
下りになり、グランパの独走態勢の兆候が現れる  スロープを振り返る

   
    三角点部から北西に落ちていくスキー場の様な牛ノ背のスロープ

ここで今まで最後尾に甘んじていたグランパが急にトップに踊り出る。ほ〜頼れるリーダーだなあと思ったとたん、特急暴走機関車
の様にぐんぐんスピードを上げ林の中に消えていった。何じゃこりゃ? リーダーの暴走一人旅に慣れきったグランマー啓子はあい
かわらず乙女に帰ってピーチクパーチク嬉しそうにさえずる。

 
稜線が細り、森林限界が近づいた    ここから樹林地帯に入る

 
樹林帯の尾根道                境界礎石

やがて植林地帯の稜線はどんどん下り始め、こりゃ逆に登るのが大変だと感じる。道が荒れている場所ではグランパが現れて
うまく先導しては又姿を消す。まるでコマンチ族の斥候みたいだ。 サイト仲間の登山記に出てくる121番指標の曲がり角に着いた。

 
急坂をドンドン下りていく           しばしの休憩

 
また樹林地帯をドンドン下がる       121番指標の曲がり角

さて、道は右の支尾根伝い、東方向に下がっていき赤いテープも確認。でも地図で見ると亀尻峠へはまだ北の方向に進まなければ
ならない。地図には東へ下って西山林道へ行く破線があるので、ここは「通せんぼの木」を乗り越えて尾根筋の植林伐採地を赤い
境界杭に沿って下る事に。約10分道の無い伐採地を下ると平坦となり、すぐ東側(右手)に尾根筋が現れた。グランパと偵察に
駆け上がるが、あとからみんなも着いてきて尾根道に合流。

 
赤い境界杭に沿って下る          尾根には間違いない

 
荒れた伐採地をなおも下ると右側が上がってきた  尾根道に合流

そこからスズタケなどが現れる道を更に下がっていくと突然広い峠に出た。やった〜亀尻峠に着いた。後続のみんなに大声で
知らせる。いままでの狭い尾根道と違い急に開放感溢れる気分になり、先が見えた安心感でここで休憩をとる。
阿佐方面へ少し下ると2体のお地蔵さん(太子像)があり、峠には「あごなし地蔵」さんが鎮座している。そこには堂々たるアカマツ
が聳えていて、その足元にはサイト仲間のHPに出てくる「背負子(しょいこ)」が立てかけられていた。

 
スズタケが現れる                あごなし地蔵さん

 
ちょっと下にある太子像             亀尻峠だ イェ〜〜イ

 
亀尻峠 グランパとグランマー いいコンビじゃのう ブルータス・しんちゃん

「あごなし地蔵」は小野小町の祖父 「小野篁」(おののたかむら)が流された隠岐の国で彫った地蔵尊がそのルーツで
歯痛にご利益があるとされて西日本に広まったものらしい。

 
おごなし地蔵を拝む歯が弱い(?)グランマー   歯が丈夫なエントツ山

地図の破線にある昔の登山道らしき細い道があったが、相当藪いていて実用的ではなかった。広すぎる作業道が西山林道
まで綴れ折りに下がっていくが、これは車道の名残でとても下降効率が悪い。といってもショートカットは女性には無理そうな
のでダラダラと落ちている栗の毬(いが)や木の実、木々の間から見える景色を楽しみながら歩く。相変わらず下り特急便の
グランパの姿は見えないが、展望の良いところでは気まぐれに待ってくれて解説してくれる。くろもじさんはあいかわらず雑木
やミツマタの小さな花を気にしながらマイペースだ。

 
広いが石ころだらけのジグザグ道      沢筋は崩壊している

   
         作業道から西熊山、三嶺方面を見る

  
西山林道に近づくと比較的良い道に      でも最後に大きな崩壊地が

この作業道は広いだけで崩壊が激しくいまはガレ場と化している。最後の崩壊現場を乗り越えて西山林道に下り付くと
ピッタシ私のナディアをデポした地点だった。ここから天狗塚登山口へくろもじさん、ブルータスらの運転手だけを乗せて
車を回収。グランマー夫婦の提案で「そば道場」により辛口スープの祖谷そばをすすって解散となる。

 
西山林道に下りつく               ソバ道場で名残りを惜しむ

どんな山歩きもそれぞれに楽しいものであるが、思いもよらぬ同級生山仲間の出現でまた新たな山歩きのパターンが
はじまった。

 
      アキノキリンソウ              ウメバチソウ

 
      オタカラコウ                ギンリョウソウ

    
    テンニンソウ               テンナンショウの実(?)

 
     ヤマラッキョウ                リンドウ

この山域については以下の諸先輩方の本やHPを参考にさせて頂きました。ありがとうございます。
泉保さんの「イメージをトレースする わたしの山歩き」(続)、讃岐富士さん、紫雲さん、SAIさんなどの登山記 
(皆さんが指摘されていた121番指標の曲がり角ですが、敢えて同じ間違いをしてしまいました。でもこれで納得!) 




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