2004年10月30日
宿命の山「石立山」に登らざれば四国の山キチに非(あら)ず
10月24日 修験の山 石立山」(1,708m) 別府峡コース


石立山 別府峡登山ルート (5万分の1地図使用 承認番号 平15総使、第634号)
登り 別府峡ー石立山  約 4時間半
下り 石立山ー別府峡  約 3時間


石立山 別府峡登山ルート  カシミールソフトによるアバウトな加工ルート図

四国で一番厳しい山という噂の「石立山」、この山には秋に登ろうと決めていた。

当初の計画では徳島側の日和田に自転車を置いて高知側の別府峡から登って日和田におりて自転車で車へ帰るというものだったが、
自転車が高潮被害でぶっ壊れた事が前日車に積み込む時にわかり予定を変更せざるを得なかった。がっくり

7時過ぎに別府峡の「錦帯橋」(どうせ赤い色からしてもみじ橋って名前くらいだろうって思ってたらもっとスゴイ名前だった・・・)登山口から
登り始める。別府峡の紅葉は暖冬の為か10月下旬というのに全く始まっておらず誰もいなかった。駐車場前の妙見滝は轟々(ごうごう)
たる音を立てて水が荒くれるように落ちてきていた。橋を渡ると最初は階段の遊歩道となっていて自然林の中に杉の植林地帯などもあり
結構きつい登りだ。急斜面の谷側に鉄柵のある遊歩道が終わるといきなり枯れ沢のガレ場があり台風の為に道が崩壊していた。ここが
今回の登山で最も危険な場所だった。

       
別府峡駐車場 奥の小高い山へ向かう  いざ出発〜 あれ?傾いちゃった

    
  鉄柵のある登山道            百間滝への分岐点

 
危ないガレ場崩壊場所(道が無い!)       最初の尾根に着く

そこを注意を払ってやり過ごすと植林や自然林のフィードバック坂が続く。最初の尾根に出て杉林の植林地帯を少し上がると、今度は
右手の沢に向かってゆっくりと下りる。

この沢は龍頭谷(りゅうずだに)と呼ばれる枯れ沢らしいが、折からの台風で水量が結構あり張られたロープを掴み靴を濡らしながら
渡る。そばに大きな木がありそこから石灰岩が砕けた砂利の急坂を登るっていく。水分を含んでいるのかズルズルとすべりながら登る
と、道の脇にはジンジソウやマツカゼソウなどの花が咲いて月面から地球に帰還。

    
こんなことしてるから歩みがのろい  龍頭谷 結構水量が多かった 水が無い
最初の尾根で              時期はこの沢を登っていくルートがある

 
   ジンジソウ (ユキノシタ科)       マツカゼソウ (ミカン科)

ここを上りきると石立山の西峰に続く尾根筋に入り、木々の間から西側にいい形で聳える口西山の東ピーク(1,429m)が見え、
南の眼下に別府峡の谷と駐車場が見える。この高度間が石立山登山のたまらない楽しみでもある。

     
ムーンウォーカーの様に後ずさりしながら登る  駐車場をズームイン!


またここからはもだえるような曲線美をした「ミヤマビャクシン」の古木や杉の天然木などと石の調和が素晴しいハーモニーをかもし
出すので退屈する暇が無い。
 
向かいのお山は♪口西山じゃ〜♪   天然林と岩が続く

     
           双子でも性格が違う木じゃなあ

  
天然木と石灰岩の飽きない登山道 山登さんの登山記にも出演のガメラ石

 
    古い倒木が横たわる         見飽きない景色

視界が開けて岩場に出た。石灰岩の大きめの岩が細尾根をなして何処までも続く。でも石鎚東稜のような岩盤ではなく適当に足場
があり滑落などの危険性は感じられなかった。

  
      岩場を登る            西側の視界が開ける
 
ここでは逆に包むものが無い開放感を楽しみながら高度を稼いでいく。この崖を登りきるとさらに上りは続くものの、木々に覆われた
道、岩をミニ・トラバースする細尾根など退屈しない登山道が東へ東へと上がっていく。

   
 細尾根には木があるので安全         白髪山が現れた

モミの木はその高さの割に根の張りが小さく沢山の倒木が見られた。信じられないような大きい木が途中でボキっと折れていたり
していて尋常ではない今年の風の強さを物語っていた。

しばらく進むと登山道が塞がれていた。よく見るとモミの木が倒れて土を持ったまま4mくらいの根っこが道の真ん中にあるのだった。
どちらから通り抜けたら良いかわからないので無難に倒れた幹のある右手に進むがスズタケと枝に阻まれて苦戦した。裏側に回って
みるとその倒木のスケールの大きさがわかった。この木が倒れる断末魔を想像してちょっと悲しくなる。

 
 倒木にも程があるスケール       苦労して前に出るとこんな姿に

この辺りから紅葉が目立つようになってくる。例年に比べると今年はどこもパッとしないらしいが、それでも、それなりに紅葉を楽しむ
事が出来るものだ。

石立山の紅葉

     

     

     

     


                  

          
          

イシヅチウスバアザミの写真を撮っていると、後ろから松山から来られた林さんが追いついてきた。林さんは63歳の写真に興味が
ある人と見えて大きなカメラを抱えてフウフウ息をきらせていた。故伊藤玉夫さんの憧山会(どうざんかい)などの話をしんみりと語
り合った。

                
                      松山の林さん

      
                西峰ピーク前の広場 

分岐で休憩中の林さんに挨拶して先に石立山山頂を目指す。ここから約25分だが一番ひどいヤブコギ道だった。途中、北側の木々
の間から捨身嶽やその向こうに続く三嶺―剣山までの山系が龍の背中のように続いているのが見える。

   
 西峰ピークの標識 奥が石立山山頂    石立山へは笹薮がひどい

     
             山頂への尾根道

ダケカンバと笹に覆われた山頂近くをよろけながら進むと、石立山山頂の祠に出た。やっと着いたよ〜ここは南側の展望は開け
ているものの知っている山も無い。肝心の北側はダケカンバに覆われ展望はほとんどない。山頂部分だけは笹が刈り払われて
いて小さな広場になっている。ここにも登山者の安全を守ってくれる大権現様の祠(ほこら)があった。

 
まともなポーズはとれんのかい?!   尾根道から山頂を振り返る

     
      尾根道から次郎笈・剣方面 スーパー林道が山肌を刻む


同志ダフさん」に遭遇
不思議な事に徳島側日和田に下りる登山道の笹は綺麗に刈り込まれている。この差は何だ?西峰へ帰って捨身嶽に下りる
準備をしていると若者が登ってきた。「どこからですか?」と聞くと「徳島からです」と答える。「え?それじゃ 日和田からでは?
」「こちらの方が踏み跡がはっきりしているので」と精悍そうで好感の持てる若者と人生に疲れた中年との会話
後から掲示板で連絡を頂き、この若者は「ダフさん」という方でREIKOさんとも徳島の山で会っている人でした。山のホームページ
もまんざらではないワイ。もう少し続けよっと!

         
                     捨身嶽

捨身嶽(すてみがたけ)は確かに石立山の目玉には違いなかったが期待したよりはスケールが小さく、石鎚の弥山(みせん)から
南尖峰までの岩場に比ぶれば迫力には欠けていた。でも、それまで何処から見ても中途半端にしか見えなかった石立山の全貌が
ここからは遮蔽物がなく良く見る事ができ、また北側の剣山系パノラマ風景が一望できる場所だった。

       
              捨身嶽(すてみがたけ)より石立山

   
 捨身嶽より 左奥が三嶺 正面が中東山(なかひがしやま)、 剣山方面

しばらくここでぼ〜っとしたあと、石立山から中東山(なかひがしやま)をへて高ノ瀬までの尾根縦走路を眺める。これは遠い、
感じとしては八ヶ岳の赤岳より硫黄岳まではゆうにありそうだ。中東山の東側に張り出したピークには大規模な斜面崩壊が見られた。

  
 捨身嶽  いい天気です〜〜     捨身嶽から西峰へ帰る

 
さあ〜〜 撤退〜〜            早速道を間違えて沢に下りるガレ場へ

さて西峰に帰り下山開始。この西峰は木が沢山生えているものの広場みたいで下山道を見失った。赤いテープから踏み跡があった
のでそれを追って下りていくと沢へ向かってしまった。獣道だったらしく途中から足元が崩れたりしてヤバくなったので元に引き返し、
太陽の輝く西側方向へ進むと下山道が見つかった。

あとはどんどん下りるだけ。傾斜が急すぎるので下りといってもヒザへの負担を考えるとそんなにスピードは上がらない。西日があたっ
て綺麗に輝く紅葉を写真撮りながらゆっくりと下山。 例の倒木の根っこに着いて今度は反対側を通るとなんて事はなかった。

      

       

           

           

岩場の急坂も慎重に下りる。龍頭谷へのこぶ尾根が眼前に現れ、別府峡の谷が見え隠れする。この山は足元の石が転げやすい
ので集団で登る山ではないようだ。普通に歩いていても結構大きめの石が下に転げ落ちたりするのだ。石灰岩の砂利坂を滑り落
ちるように下りて沢を渡る。西日が届かず秋の寂しげな風景を感じながら別府峡の赤い橋「錦帯橋」に下り立った。

  
西日を浴びた岩尾根の急坂        まるでお地蔵様の様に並んだ岩

  
 ビャクシンの岩尾根            龍頭谷の沢に着いた

上流には昔紅葉見物に来た時の大岩「屏風岩」が左岸にそそり立ち、そのときの素晴らしい紅葉に思いをはせる。今年も一面の
紅葉を見せて欲しいものだ。ここから白髪山への峯越し林道は落石のため通行止めとなっていた。

駐車場にて帰り支度をしていると松山の「林さん」が茶店から下りて来られたのでお互いの健闘を称えあう。「同志ダフさん」の
ジープが淋しそうに主(あるじ)の帰りを待っていた。
橋の欄干に立ちつくして吼えている善玉ツキノワグマに挨拶して再会を期する。

  
別府峡に今年も素晴しい紅葉がやってくるのだろうか   クマよさらば

ちょこっと石立山の花  (マツカゼソウ、ジンジソウ以外に見られた花)

 
      ツルカンギク             リュウノウギク

  
     リンドウ       ヤクシソウ         シロヨメナ
  
イシヅチウスバアザミ     コシオガマ       テンニンソウ

石立山・・・四国で最もタフだといわれる山。登ってみれば恐るるに足らず。東温アルプスの方がキツかった。この山は展望が
ない日にはひたすら苦難の末に何の成果も楽しみも与えてくれない修験の山となる。




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