2004年03月14日
雪割り桜の桑田山ー蟠蛇森(ばんだがもり) 高知県須崎市
高知県須崎市 蟠蛇森(ばんだがもり) 769m 出張登山
   
    
      カシミール3Dによる蟠蛇森 登山ルート図

蟠蛇森(ばんだがもり)見たのは30年前高知県の須崎に出張した時だった。須崎港から見るどっしりした山の名を「あれは桑田山
(そうだやま)にかわらん」と地元の人から聞いていた。蟠蛇森という奇妙な山名を知ったのは四国100名山の本からだった。「蛇
(へび)がとぐろを巻く山」なんてよくもまあおぞましい名前を付けたものだ。

      
         雪割り桜の桑田山から見上げる蟠蛇森

3月14日(日)高知の出張先で昼から夕方までフリーとなる。2年前の正月、出張中に雪が積もったこの山へ登った。今回は桑田山
の「雪割り桜」花見を兼ねての登山となった。
登山口は須崎市の東側、吾桑(あそう)地区で国道56号線から県道・須崎ー佐川線へ入ったすぐ左側にある。ここには駐車場が
なく、桜川沿いの果樹集荷場所にかろうじて一台のスペースがありここに車を止める。

 
  須崎港から見る蟠蛇森         蟠蛇森登山口 県道沿い

桑田山温泉への狭い車道横に登山道の標識があり、車道を横切っていく登山道の図が掲げられている。ここから桑田山神社まで
深く掘れ込んだ古道(昔の参道だろう)を歩く。左手には高知名産の「小夏」畑が続き「立ち入り禁止」の立て札がふとどきな侵略者
に対して無為な抵抗を試みている。高知なのだから「入っちゃいかんぜよ」とか「盗ったらいかんきねえ」とか土佐人の洒落が欲しい。

    
  桑田山神社までの古道          桑田山神社の駐車場に出る

味のある鞍部の道を進むと15分くらいで突然広い駐車場に出た。おそらく登山者はここに車を止めて歩くのだろう。静かな桑田山神社
を抜けると集落があり、果物や野菜を売る露天が道端に出ている。家の横には犬が座布団の上で気持ちよい春眠をむさぼっている。
近寄ってもピクリともしない。人間との長〜い共生生活の為、野生のかけらさえも彼のDNAには残っていないようだ。

右手の斜面がピンクに染まっている。これが有名な桑田山の「雪割り桜」だ。この
雪割り桜はカンヒザクラ群の「ツバキカンザクラ」という品種でカンヒザクラ(ピンクの花色)と中国産シナミザクラ=カラミザクラ 
(花の形)の交配種らしく、原木は愛媛県松山の「伊予豆比古命(いよずひこのみこと)神社」=椿神社にある。高知新聞社刊の
「四国百山」によると40数年前に地元の大崎さんが椿神社から枝を分けて貰い、接木を重ねて80本に増やしたとの事。

 
 登山道が雪割り桜園を横切る          雪割り桜

 
  桑田山 「雪割り桜」園       私の友人の娘に捧げる「雪割り桜」写真

        
           桑田山 雪割り桜

雪割り桜の花時期は2月中旬から下旬で、勢いのある時期は過ぎ去っていたが、何とかその片鱗を味わう事が出来た。

この時期遅れの桃色吐息地帯を過ぎ、車道を横ぎると登山道の案内板がある。ここからは背の高い段々畑のあぜ道をひたすら上を
目指す。大体標識に従い進むが、あぜ道が縦横に走っているので間違っても大過はない。途中で登山道横の犬小屋が騒然と震え、
中からビーグル犬が飛び出してきて吼えたてられてびっくりした。このビーグル犬には野生の血が残っている。

 
 道端には古い神社がある         小夏畑から蟠蛇森を見上げる 

 
 小夏などが栽培されている段々畑    第四鉄塔がある登山道

この辺りは太平洋からの潮風と日当たりの良い条件からか柑橘類の栽培が多く、段々畑も水田の棚田と違って段がひときわ高い。
石灰岩が豊富なので石垣の材料には事欠かず立派な段々畑となっている。小夏畑のモノレールを横切り車道に出ると、その前に
大きな鉄塔(第四鉄塔)がそびえている。菜の花の柔らかい黄色が気持ちを和らげる。

ここからが蟠蛇森の「登山道」に入ると言ってよいだろう。先人がこの日当たりが良い斜面を上へ上へと開墾して行ったのだが、
割の合わない上部の土地利用が次第に捨て置かれ荒れてくる。特に東側に続く段々畑の荒廃がひどいようだ。登山道はこの荒
れた段々畑を通り、明るい雑木林となり、さらにしっかりした段々畑に杉が植えられている場所を抜ける。この風景はさながら愛媛
の旧別子を歩いている錯覚すら覚える。 

そのうち立派な竹林の中を抜ける。いろんな竹林を見たが、こんなに太くて色艶の良い竹林は初めてだ。 このあたりから石灰岩
がごろごろ現れてくる。山系としては四国カルストを含む「不入山」系に入るらしい。

 
   竹林と岩              明るい岩の登山道を抜けると車道に出る

暗い杉林と竹林を抜けると道が明るい雑木と岩の登山道となる。すると電柱が2本ある車道に出た。次の登山道がわからず少
し車道を下がるとベンチが用意された展望所があり、おじいさんが一人軽四輪できて双眼鏡で景色を眺めている。ほう 須崎湾
が一望できるいい場所だ。「登山道へはどこから入るか知りませんか?」と聞くが知らないとの返事なので上に向かって車道を歩
き出す。 

結局ここが一番長い車道歩きの場所で、西側に向かってだらだらと歩く。10分以上歩いてヘヤピンカーブを右に折れるとすぐ最後
の登山道標識があった。

 
 車道展望所から須崎湾、太平洋    展望所から歩いてきた桑田山集落  

     
 石灰岩の裂け目          最後の登山道標識

頂上は見えないが、先ほど展望所からの高度から見て最後の登山道だろう事は容易に予想出来た。再び暗い杉林に入る。すぐ、
細い枝に黄色の花をつけた木があちこちに見られる。ミツマタだ。自生しているのか栽培していたものの名残かわからないが、日当
たりの良くない場所に結構花を付けている。しばらく登ると車道に出た。

 
 ミツマタの咲く登山道           登山道から頂上に続く車道へ出る

未舗装の車道を歩いていると、初めて登山者に会った。中年男性一人に中年女性が七人くらい。ご苦労な事だ。(男性にすこし同情
する気持ちは何故だろう?)
見覚えのあるT字路から左の山頂へ向かう。ここまで車で来た3人連れが上から下りてきた。徒歩と車組が頂上近くで遭遇。なにかお
互い気まずい思いをする。

蟠蛇森 山頂

 
  蟠蛇森頂上への道          蟠蛇森(ばんだがもり) 頂上

 
須崎湾をバックに自動シャッター         頂上のアセビ

 
 マイクロウェーブの鉄塔          蟠蛇森頂上 アセビの木

 
 山頂のはずれにある三角点            ふきのとう

蟠蛇森山頂には高さ10mの鉄筋製展望台があり、360度の展望を提供する。この展望台はちょっと異様な風景で、こんなのが
山頂にあるとベテラン登山家の批判の矢面に立たされる運命なのだが、近くにマイクロウェーブのドデカイ鉄塔があるのでこの際
は許される雰囲気に胸を張っている。石鎚山さえも見えるらしいが生憎の春霞で白っぽい影が地平線を覆っているだけだ。

これでは360度見えても意味が無い。おまけに歳を取ると高い所に登ると何かの拍子に足がすくむ。

風が強くすこし寒くなってくる。さあ夕方から又仕事があるので山を下りるとしよう。
鉄塔までは快調に下りる。段々畑になると下りの標識が少ないので間違いながら、それでも民家の横や路地を通りながら雪割り桜
のピンクを目指して下りていく。

 
 石の下山道                  鉄塔を下りると荒れた段々畑に

 
 小夏の植わっている段々畑      小夏の出来が悪いと嘆くおばちゃん

 
  春を告げる水仙              ず〜〜〜と寝ていた犬 zzzzz

途中、小夏畑のおばあちゃんに声をかけ、ビーグル犬に又吼えられながら、雪割り桜公園のアベックに当てられながら桑田山
神社まで下りる。登る時寝ていた無防備極まりない犬は同じ格好で下山時も安らか悠久の春眠をむさぼっていた。

 
    桑田山神社              下山道に咲くスミレ

桑田山神社ではしびれた足をもぞもぞさせた一族が御祓いを受けていた。無事の帰還に一礼をして石段を下りる。駐車場には
もう1台しか車がなく、そこを抜けてスミレの咲いた春の土佐路古道を登山口まで帰り着いた。
登り 約2時間、 下り 約1時間半
雪割り桜に会えた楽しい山登りでした。



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