稲叢山東方見聞録
平成25年11月21日〜23日
土佐町・下中切〜能谷山〜東門山〜中門山〜西門山〜稲叢山


電動アシスト自転車を駆使した稲叢山東方見聞録 (稲叢山東方尾根縦走記)

大川村中切(なかぎり)〜能谷山(のうたにやま)〜東門山(ひがしかどやま)〜中門山(なかかどやま)
〜西門山(にしかどやま)〜稲叢山(いなむらやま)



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 大川村・中切〜能谷山〜東門山〜中門山〜西門山〜稲叢山
(注)東門山は「ひがしかどや」、西門山は「にしかどや」、中門山は「なかかどや」とも呼ばれています。


稲叢山東方見聞録

「縦走山域」
稲叢山東方尾根(能谷山〜東門山〜中門山〜西門山〜稲叢山)の位置は?

稲叢山(いなむらやま)は四国のほぼ中央部に位置する山で本川町の大橋ダムが出来るまではアクセスが容易ではなかった
らしい。現在では新百名山・オオヤマレンゲやアケボノツツジの咲く花の山として高知県を代表する人気の山となっている。

地図をじっと見つめると、稲叢山は吉野川最西部源流になる大森川の南側に沿って筒上山・手箱山から派生する山脈である。
この山脈は基部では仁淀川水系と吉野川水系の分水嶺となっており、戸中山より分水嶺から分かれて北側に稲叢山を主峰と
する尾根が更に東へ延びてやがて吉野川本流と支流・瀬戸川の合流部に落ちて消滅する。

今回はこの稲叢山系の東端から能谷山〜東門山〜中門山〜西門山〜稲叢山へと続く藪尾根を辿る2泊3日の山旅である。0

稲叢山東方尾根の位置

この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 

「縦走形態」

移動:稲叢山下山口(稲村トンネル付近)へ車を置き、電動アシスト自転車にて大橋発電所〜県道17号線を大川村役場まで下り、
大川橋を渡り吉野川・瀬戸川合流点の登山口で自転車をデポ。稲叢山東方稜線最終部より取り付き、稲叢山下山後車にて自転
車回収する。

この山域は藪が深く晩秋で日照時間が短い事、縦走数日前から寒波で積雪がある事などから夏場1泊2日の所だが今回は2泊
3日とする。この山域の情報が無く野営地は全く見当が付かない為、夜間歩行はせずに適当な場所にてビバークとする。

 
電動アシスト自転車を登山口までの移動に使用         ファイントラックのツエルトIIロングにてビバーク

「装備」



ツェルトはファイントラックのツェルトIIロングの実用使用試験、火気もアルコールストーブ(エバニュー・チタニウムストーブ)と固形
燃料(エスビット)、グランドシートはデュポン社のタイベック(住宅用)シートの使用試験を兼ねる。
水は補給地が無いものと考え2日半分3.5リッターを運ぶ。食料はアルファ米3食分、スープ類、パン・ビスケット類の行動食で
約4食分を用意した。

尾根が結構複雑な為、GPS、東経北緯線を入れて印刷した2万5千分の1地図分割4枚をそれぞれ予備2枚用意、方位磁石(予備
も含む)を携行。ライトは夜間移動はしないのでベツルのイーライトとペン型簡易ライトのみ

予備衣料は防寒用としてレインウェアとシャツ・ズボン下、濡れた場合の着替えとして下着、シャツ、靴下1組、手袋は3セットいずれも
藪用の粗末な物で今回の装備ザック重量合計は約12kgとなる

         




縦走第1日目
大川村・中切〜能谷山(のうたにやま)
 09時30分〜1600時:歩行時間 約6時間30分



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 


穏やかな気候の香川に住んでいると四国の主稜線がどんな状態なのか予想が付かない。平成25年11月20日高速道路を
新居浜に向かっていると愛媛の山が真っ白だった。翌日歩く稲叢山付近は高知県だからそんなに雪がないだろうと気楽に考
え、東京から帰省する兄貴を迎えに行き、翌日から山に篭る事を告げる。

翌21日暗い内に新居浜を出て稲叢山・脇ノ山線を進むとギョヘ〜  路面が雪で凍結している。途中に自転車を置き車を稲村
トンネルの向こうにデポした後、ライトを点けて歩いて自転車へ戻る。

ザックを背負ったまま吉野川沿いの県道17号線を下る。寒い〜〜      この道は冠山・平家平への登山口がある高藪地区や
更に進むと白滝自然の里・野地峰への登山口分岐を通過する。初めての道はいつもワクワクするので寒いのだがキョロキョロ
景色を見ながら09時過ぎ少しだけ賑やかそうな山間部の町、大川村の役場付近に到着。平日にザックを背負って自転車で
通過する怪しげなオッサンは肩身が狭い。

大川橋を渡って尾根の突端部へと進む。コーナーに電波塔のフェンスがあったのでその金網に我が縦走の友、電動アシスト自転
車「パナソニックBE-ENZ033」をワイヤーで繋ぐ。付近の山際を捜すと偶然石段を見つけたのでそこから取り付く。

県道17号線を本川から大川村役場へと下る

 
   県道17号線を自転車で下る                むむっ 山が白いぞなもし

 
   中々凄い渓谷もあるでよ                       早明浦への道路標識がある

 
 折角だから紅葉見物も忘れない                 銚子滝、三ツ森山、平家平への分岐

 
      小金(こがね)滝入り口の子小金滝          三ッ石橋で記念撮影 (ここは渡らない)

 
電動自転車よ あれが大川村役場街にかわらんちや     白滝の里、野地峰、大座礼山、東光森山への分岐

 
大川橋を渡る  正面が今から歩く能谷山への尾根だ〜       待ってろよ きっと帰ってくるから・・・

第1ステージ
登山口(09:30h)〜共同アンテナ・地籍図根三角点(11時40分)


登山道:取り付き部に石段があり踏み跡が5分程続くが、そこで道が左右に分かれ尾根に向かう踏み跡は無い。
     11時30分より11時40分の間、共同アンテナへの整備道が100m程ピークまで続く他は登山道は全くなし
藪   :比較的薄い  登山口より1時間程で笹薮が少し出てくるが問題なし
境界杭:尾根に地籍調査の杭あり

 
ザックは中央アルプス縦走に使ったオスプレー・エクソス46      09時30分尾根突端部の少し左側にあった
ザック重量約1kg フロントにタイベック・シートと銀マットを収納    階段より取りつく
合計 約12kg

 
基本的にこの尾根は杉の植林山となっている          今回お世話になる境界杭 細い方には平成14年国土調査
                                      大きい杭には筆界基準と記されている

 
   植林地の為大木は極めて少ない               10時06分 少し岩も出てくる

 
10時20分 残っている自然林の黄葉は貴重な彩(いろどり)だ  10時30分ゆるやかで平らな下り地形で要注意

 
10時40分この赤い境界杭はこの一か所のみで見られた   11時10分 岩尾根の急登となりシャクナゲが出現

 
11時20分前方に小高いピークが見える           11時25分 右手(北側)が初めて開けて向かいの山が見える
                                      (三滝山から井野川山への山塊)


  11時26分右下に吉野川、向かいの三滝山から井野川山、この尾根は更に大座礼山へと続く

 
11時26分 岩場から前方のピークを見る           あれ? 11時30分右手に整備された道ががるぞ?
                                     ウレピ〜〜

 
11時40分 共同アンテナで整備道は終了〜 ケチ!    すぐ横に地籍図根(ずこん)三角点があった


ずこ〜〜ん ?! この「図根(ずこん)三角点」って一体何や ??

基本三角点」って言うのは一等三角点、二等三角点、三等三角点の3種類で、「基準三角点」は四等三角点の事だよね
当然この三角点の位置精度は抜群で信頼がおけるのだが、土地の境界などを決める際にはこれだけでは足りないので
更に補助的な目的で国土調査の作業機関により設置されるのがこの「図根三角点」って事みたい。
これは何でも500mから800m毎に設置されているらしいのだが、そんなに頻繁に山で見た事ないぞ。

「図根点は三角測量のあとの細部の測量につかい標石の埋設はせず、その位置が測量によりはっきりすると、すぐ測板上の
図面に移してしまいます。標石として設置されるのは重要な場所や再現が必要な場所に限られます。」という説明があるから
残ってない場合が多いのかも

山の尾根を歩いているとそれ以外に境界杭が埋設されているのだが、それが「図根多角点」でしょうかねえ

第2ステージ
共同アンテナピーク(11時40分)〜鉄塔(13時00分)


登山道:なし
藪   :藪が濃くなる
       植林地帯に笹薮、 植林地帯と自然林と笹薮が混在
地形  :見通しが利かないので次のピークへの方向が細かく変わりわかりにくい
     コンパスを駆使する
     鉄塔付近のみ展望が良い

 
11時52分 これが図根多角点の埋設杭か           11時56分 細尾根を通過

 
   12時『07分笹薮となる                    平たい地形の植林地帯はルートが分かり辛い

 
12時25分 GPSで位置を確認し、進路方角を決める    12時32分 コルを抜けて左:植林、右:自然林の尾根へ

 
12時56分 藪尾根のランドマーク 鉄塔に着く         鉄塔付近だけ藪から解放される


手前が三滝山から左へ延びる井野川山〜大座礼山への稜線、 正面奥が東光森山〜野地峰の県境尾根


 東光森山から野地峰〜黒岩山〜大登岐山への県境尾根、黒岩山から手前には早天山〜加茂次郎山が続く
 吉野川に架かっている赤い橋は三ッ石橋だろうか


第3ステージ
鉄塔(13時00分)〜ピーク変針点(13時40分)〜能谷山。ビバーク地 (16時00分)


登山道:なし
     14時00分から約30分程深い笹薮の中に境界割り出しの刈り払い道あり
藪   :深い
地形  :非常に複雑 
     能谷山の前ある変針ピークの地形が平で笹薮が深い為注意が必要
     一番地形的に難しい1153m藪ピーク付近に境界割り出しの作業道があり大いに助かる

補足 :14時50分それまで時々見えていた地籍調査の杭が能谷山直前で消え潅木と深い笹薮となる
     能谷山の山域は大藪の為、歩行が妨げられる場所が多い
     能谷山は北西に向かってなだらかな尾根が続くので、その西端で南西方角に下る細尾根ルートを注意深く見つけな
     ければならない

 
鉄塔を過ぎると直ぐに藪尾根が始まる            13時20分シャバの赤い橋が見えると嬉しい (ズ〜ムで撮る)

 
   日陰に雪がチラホラ現れる                  13時36分 こんな藪の中で南西へ変針を地図上で迫られる

 
13時45分西北西の進路を確認 赤テープがある?     13時57分境界出しの刈り払い道が現れる
                                     直前にあった赤テープはこの作業の人たちが付けたのだろう

 
境界杭さま あんたが頼りでっせ                 14時20分 いきなり雪を被った笹薮となる

 
  14時26分 ブッシュ大統領さま ご勘弁下さいまし     14時45分 境界割り出し作業もここまでか〜 ケチ

 
14時50分 これが最後に見た境界杭さま              15時05分 助けて〜〜

 
15時22分 藪尾根を耐え忍んで進む               15時43分 左への尾根を探しながら変針する

 
15時52分 南西の方角に尾根を確認             16時00分かろうじてツエルトを張れる細尾根でビバーク

 
あんりゃ アルコール燃料が切れちゃった (沸騰に至らず)   翌日の地図を確認しながら寝よっと 
                                       狭いながらも ♪ 寂しい我が家〜 ♪


笹薮なので地面が柔らかくペグが全く利かないので倒木でテントの幅を作る。
タイベックスシートは非常に強く、スズタケの茎が下から突き上げているいるのだが、上側に敷いた銀マットが破れていても、下側
のタイベックシートは無事だった。 あっぱれデュポンのタイベックシート! Kazashi さん ありがとうよ

細尾根は傾斜があるのでシュラフと寝袋のナイロン地が銀マットの上を滑ってツエルト内のコーナーへ追いやられて寝心地が悪
かった。床に敷く銀マットの表側を下にして摩擦を付けるべきだった。
初めて屋外でアルコールストーブなる物を使用するが、風に炎が揺らいで大きく燃え、手持ちのアルコール50mlでは水を沸騰寸前
で無くなってしまった。う〜〜ん これは思ったより燃費が悪いぞ

予定ではもう少し進む筈だったが日没が早い時期なのと、この先のビバーク地が藪で保証されないので仕方がなかった。翌日の
東門山付近の地形を頭に入れながら眠りにつく。



縦走第2日目 
能谷山〜東門山〜ビバーク地
 07時00分〜15時00分 歩行時間 約8時間



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 能谷山〜東門山付近


第1ステージ
能谷山ビバーク地(07時00分)〜ターニングピーク(10時30分)


登山道:当然なし
藪   :非常に深い
地形  :非常に複雑
     特に、このルート上で北に張り出した1,220mターニングピークへの最下点コル部までが右へ左へと小ピークが
     めまぐるしく位置を変えるので、深い藪で進路が見通せず神経を使う
   

日の出前の空が藪を通して左手より見えてくる。片付けて出発準備をしていると朝日が昇ってきた。やはりご来迎は樹林帯
より上の藪が無い場所で迎えたいものだ。

 
     06時過ぎから片づけにかかる               07時藪の向こうから朝日が昇る 

 
      ここが野営第一泊の地だ               出発早々倒木の嵐

 
朝日に焼ける藪   ヤブだって美しく!焼けるんだい     雪が現れる 結局あそこでビバークしたのは正解だった

 
07時33分 前方に尾根ピークが見える              07時40分 岩場の展望所があった
それに向かって細尾根を下る


手前に三滝山〜井野川山  奥に先日歩いた予土県境尾根 : 東光森山〜野地峰〜黒岩山〜大登岐山が見える


吉野川の谷を挟んで井野川山から大座礼山  奥に東光森山

 
07時50分 藪尾根から前方のピークを確認            辿ってきた尾根を振り返る

 
助けて〜(エントツ山)  自己責任ちゅう事で・・・・(神の声)    色んなタイプの藪があるのね

 
08時32分 シャクナゲ尾根の前方にピークが見える      08時52分 この植林帯の下りは平らな地形を四方に向か
                                      って下り、笹薮が深いのでどちらに進めば良いのか分からん!

能谷山から次の北にせりあがった1,220mターニングピークへのコルまでが小さなコブ尾根がジグザグと連なって背の高い藪
が視界を妨げるのでルート取りに注意が必要だ。特に08時30分 1,186m小ピークを越えての下りは地形が平らでどちらへ
向かっても同じ笹薮と植林景色が続く。笹薮の背丈は2mをゆうに越える、

ここでは進行方向の西南西に向かって暫く下り、左右を見渡して標高が現在地よりも高そうな尾根へ向かう作戦を取るしかない。
それでも右へ下れば左に高い支尾根が現れ、左に振れば今度は右手に高い支尾根が現れるといった具合に翻弄された。

 
09時28分 沢の上部に尾根が渡っているのを発見     09時32分 ルート上である事を確認 

何とか沢っぽい場所を這い上がると09時30分 樹林帯藪の細尾根コルに出てホッとする。ピン芸人はこの喜びを分かち
合うハイタッチ相手も無く自分自身でしみじみと味わう事になるのが宿命だ。09時50分 ルート最下部を通過する。

 
10時17分 同じような景色の植林帯、獣道を辿って這い上がる  10時30分 1,220mターニングピークに着く


1,220m ターニングピーク ここで気持ちを落ち着け、磁石を信じて西南西に向かう事が肝心だ。

第2ステージ
ターニングピーク(10時30分)〜東門山・三角点(13時10分)


登山道:当然なし
藪   :非常に深い  この山域全般に言える事だが植林地帯のくせに藪が深いのが気に入らん。
     今回は笹や灌木の上に積もった雪で悩まされたが、これは季節的な現象なので仕方がなかった。
地形  :やや複雑

(注)縦走尾根の最北端にある標高約1,220mターニングポイント・ピークは山頂が平らで四方八方が藪だらけである。今まで
北西の方角に磁石を合わせていたのだが、ここで南西方面に進まなければならない。南側の急傾斜に沿って慎重に進むと次の
コルに向けて歪(いびつ)な形で南から西へと尾根を乗り換え更に南西へと上って行かなければならない。

 
10時38分 左手に尾根を見つけてそれを下る         10時50分 大岩のある場所で支尾根が右へ向かうが
                                      左の樹林帯と自然林に沿って主稜線が確認出来た

この辺りはすぐ近くまで林道が延びてきているのか、右手の斜面よりチェーンソーの作業音が聞こえる。大岩から細い支尾根が
一本右手に延びているが、これはその先で次第に高度を下げているので間違いだと気付く。ここは植林の笹薮を左へ下がって
その後又高度を上げる植林と笹の主稜線へと進む。この辺りの笹薮も相当深くて難儀な喘ぎ場所だ。

 
10時56分 左手が植林、右手が雑木の尾根を進む     イノシシの巣(ミステリーサークル)や足跡が沢山ある

 
11時20分〜11時30分にかけて、この上り斜面にはブナやヒメシャラが残されていた  笹薮は深い

 
グランマー啓子さん この地域には大ブナはありまっしぇん  11時32分 刈り払い場所があったが尾根には続かず

 
12時10分 笹や灌木に雪が残り我が身は水も滴る爺さんに・・・   かわいい かわいい イノシシちゃん ♪
                                           けもの道をありがとう

ブナやヒメシャラが生えた笹薮を抜けると11時30分難しいコル部を交わして東門山への山塊に入る。相変わらず潅木と
猛烈な笹薮の上に雪が積もり上から全身に落ちてくる。足元は雪で覆われているのでイノシシの足跡を追ったりしながら鼻
唄を歌いながらも気を抜けない歩きが続く。

 
ササダニの心配が無いのが唯一のとりえかな?         地形的に東門山は ほぼ のっぺらピークだね


        ワレ 十三ジ零七フンヲモッテ ニシカドヤ サンチョウニ ブジ トウチャクス

東門山(ひがしかどやま・ひがしかどや) 標高 1,382.00m 三角点名:伸谷

東門山は「ひがしかどや」とも呼ばれているこれ又複雑な地形の藪山ピークで三角点が設置されている。予想を遥かにオーバー
して13時10分東門山三角点に到着。出来れば今日中に西門山に着き、平たい場所でビバーク出来たらと目論んでいたがこの
時点で諦める。

第3ステージ
東門山(13時10分)〜東門山・西端ビバーク地(15時00分)


登山道:有るかい! 
藪   :深いわい!  
地形  :平らな山頂部より北西部に続く岩尾根までが注意を要するが、それに乗ると一本尾根なので気楽に歩ける

(注)東門山は南側に張り出したピークを持っているが、西側に続く尾根は北側に大岩壁を持っているので地形的にはわかり易い。
しかしながらその尾根に乗るまでが地形が複雑で南側の林道からアプローチするルートと思われる赤テープなどが貼られており紛ら
わしい。ここも一旦西側に少し下り、そこから見える北西部の尾根に乗り換える作戦を取る。

 
   東門山でシェ〜の後 13時15分 出発          最初は西に向かい少し下りて、右手に森が見える尾根へ
                                     15分程で移動


植林の尾根をドンドン進むと 13時43分 前方に岩尾根が続いているのが確認出来た あの突端から左へ下りるのね

岩尾根に移っても最初は雪を被った笹薮に苦労させられるが13時40分前方に岩尾根を確認する。14時10分右手(北側)に
最初の絶壁が現れ、それに沿って西へと進む。14時50分4番目の絶壁を眺めながら進むと、15時13分前方に崖と次の岩
ピークが現れ進路を遮られるので、左手(南側)へ崖を下りる。

 
14時06分雪と笹が深い尾根を右側の崖に沿って西へ進む  14時11分 最初の絶壁が右手に現れる

 
14時25分 2番目の絶壁横に出る           雪と藪で今日のとビバーク場所が心配になる 前方に岩尾根が見える


                 14時52分 次第に岩尾根の様相になる  右側(北)は絶壁だ

 
     15時11分前方に岩峰が見える            15時16分 一旦左手に下りて岩を巻いて進む

 
西門山への乗り換える向かいの尾根が見える          これ以上進んでも笹薮が深くて平らな場所が無い

その後も上り返しをトライするが危険な為、そのまま岩に沿って進む。どうせ這い上がってもすぐにちょっと先で下りなければ
ならないのだから・・・

南側には乗り換えるべき西門山への尾根が谷を挟んで見えるが、谷部にはおぞましい程の猛烈なスズ竹の密林が続いている。
う〜ん  こんな場所じゃビバークを出来る場所が無いぞ・・・ 少し今宵の寝床が心配になってくる。

15時30分西陽が当たり落ち葉を被った岩場が左手下に見えた。まるで砂漠の中に現れたオアシスの様な別天地だった。頭の
中では少しでも先に進まなければと考えるのだが、一方ここを逃せば一夜を過ごせる場所が無いとおっしゃる別の理性が働く。
もうここで寝ようっと・・・・・



15時30分 左下に絶好のビバーク場所を見つける  時間が少し早いけどあそこで泊まろや 

豆腐の様な四角い岩にコケが生えているのでペグは全く利かない。風もそう無いので立ち木や倒木に細引きを噛まして適当に
ツエルトを張る。

岩の上に溜まった落ち葉を払ってエスビット固形燃料を4個でお湯を沸かす。昨夜はアルコール燃料が切れて沸騰に至らなかっ
たので面倒だからアルファ米の食事をせずコーヒーとビスケットで済ませた。今日はピラフ系とスープでごちそうだ。

明日のスケジュールが気になるが、やはりゆったりとした時間を過ごす余裕がテント泊の基本だと思う。


 
  向かいのピークをバックにツエルトを張る          エスビットの固形燃料4個を使ってお湯を沸かす
                                     お湯を入れると出来るアルファ米のピラフとビーフシチュー
                                     を作る


雪で濡れた山道具や衣類をあちこちに干す 全てが私のスペースだ〜  (翌日 みんなカチンカチンに凍っていた )


夜中にツエルトから顔を出して明るい月と星を眺める。近頃は山に入った時でないと宇宙を身近に感じる事さえ少なくなった。
平らに思えた岩も多少傾斜があり、又もやナイロン地の寝袋カバーが銀マットを滑って何度も隅に追いやられて寝床を作り直さ
なければならなかった。 この懲りない性格を何とかしなければ・・・・もう遅いか〜〜


月と星が綺麗な夜だった  ワォ〜〜〜〜ン



縦走第3日目
東門山・ビバーク地〜中門山〜西門山〜稲叢山
稲村調整池
〜稲村トンネル口
 07時05分〜16時30分 歩行時間 約 9時間30分




第1ステージ
東門山・西端ビバーク地(07時00分)〜中門山付近[09時35分)〜西門山(11時20分)


登山道:当然全くなし
藪   :深すぎる〜  
地形  :東門山から西へ延びる岩尾根はやがて南側の瀬戸川支流、南川源頭部で標高を下げて、西門山への尾根へと繋がって
     行く。 一見してこの平坦地は藪が凄い事は覚悟しなければならないが、地形的には南へ進んで目の前に見えるピークへと
     這い上がれば良い訳だから単純とも言える。
     向かいのピーク、中門山(なかかどや)と呼ばれる四等三角点「上小南川」(標高 1,423.88m) からはひたすら西へ西へと辛抱
     強く藪歩きを続ければ西門山が待っている。


前日に向かいの尾根までは這い上がる予定であったが、陽だまりの誘惑に勝てなかった。藪の中に唯一ある岩場の別天地は去り難
いものがあったが自転車の回収などを考えるとあまり余裕が無かった。意を決して07時05分又藪へ突入する。

岩場を外れると3m程のスズ竹の密林となる。地形的にこの平らな場所は無事で済まない覚悟はしていた。基本的には南側に高く見
える尾根へ這い上がれば良いので気楽ではある。出来るだけ岩尾根に沿って西端まで進もうとするが面倒になり南西方面へ藪を進
む。

すると07時35分窪地の崖になっている。成程・・・ここは瀬戸川の支流・南川の源流地なのだ。下り易い崖を沢に下りて西へ進むと
次第に両面が低くなって来る。


07時岩場のビバーク地から出発前に見る向かいの尾根、西門山手前ピーク

 
ビバーク地を片づけて07時05分出発                 岩尾根基部へと進む

 
   07時18分 もうこれは密林と呼ぶしかない        いくら覚悟の上とは言え藪にも節度というものが無いんかい!

 
07時35分 崖の下に沢がある (源頭部なので水はない)  沢に下りて上流部へと少し進む


正式なルートは良くわからないが、左手(南)斜面の藪が薄い場所があり、惑わずこれを選択する。基本的には植林地帯で枝打ち
の木が散乱しているからそれを避けながら進んで行く。
07時50分斜面を這い上がっていると立派な岩屋を発見!  う〜〜ん ここでビバーク出来たよ〜な。 どうも近くの林業関係者も
利用している形跡があった。

 
藪の薄そうな場所から南へ斜面を這い上がって行く       思ったよりゆるやかな植林地帯だった

 
07時50分 大きな岩が左手にあったので近寄って見る    オ〜〜 ここは理想的なビバーク地じゃおまへんか〜

08時17分  潅木の急な傾斜を這い上がり振り返ると北側の東門山・岩尾根が目の高さより低くなっていた。西側には寒風山
から笹ヶ峰、チチ山、冠山、平家平が雪を被って見える。

 
08時00分 テキトーに藪の薄い場所を選んで歩く      08時17分更に高く登ると、岩尾根の北側まで見える様になった


08時18分ピーク近くに這い上がると雪を被った寒風山〜笹ヶ峰〜チチ山〜冠山〜平家平が見えるぞ

 
08時30分 右手の藪を避けて左手の植林地帯を進む    08時45分尾根部に上がると雪だらけだった

08時45分  雪を被った笹薮を苦労しながら西門山の尾根部に這い上がる。このピークは「中門山」(なかかどや)とも呼ばれて
三角点「上小南川」(1,423.88m)があるのだが気に留めてなかったので雪の中に見逃した様だ。

ここから西門山まで2時間半余りは次から次へと現れる小ピークを越えながら、倒木と雪を被って倒れた笹薮をひたすら西へ西へ
と進む事になる。辛抱がいる歩きだが目標が先に見えているので頑張れる。ただ、昨日から私の向う脛は藪のムチに打たれて傷
で赤くなっている。相変わらず雪で倒れた笹の茎や灌木が向う脛を攻撃してくる。

  
08時57分 こんな尾根をひたすら進むのだ            足元はと言えばこんな状態ですわ


  09時12分 ブナなども多少ありまして・・・・・   前方は西門山の張り出し尾根だが右からグルっと回るので遠い〜

 
09時25分 笹薮だけじゃないのがいいね          09時45分 尾根筋にある樹木を目標に登り坂を進む

 
09時50分 ヒメシャラの柔肌をセクハラしちゃったわ        笹薮が深いが尾根は比較的わかり易い

 
前方に西門山の尾根が見えるが下り場所が見えない     10時10分 リョウブの樹に登って尾根筋を確認する


10時20分 西門山のピークを確認する  う〜〜ん 右から回り込むのでまだ時間がかかりそうだ

 
10時25分 次第に上り坂になり一歩一歩しか進めない  10時48分 尾根が先で左へ回り込んでいる


   10時55分 西門山のゴールが近づくと木々が祝福してくれる様に踊っている


     11時10分 ついに西門山への分岐=登山道に出た〜〜〜  

 
    広い登山道がまっすぐ下っている              左へは西門山・三角点への道が延びる


11時20分 西門山(にしかどやま)山頂に到着〜 締めくくりはもちろんシェーでんがな

最終ステージ
西門山(11時30分)〜稲叢山(13時40分)〜稲村調整池下山口(15時20分)〜
稲村トンネル口(16時30分) 約5時間
 その後電動自転車の回収に


西門山の三等三角点名は 「東加駄山」 (1,496.74m)と言うらしい。しばらく西門山で記念写真を撮ったりして休憩の後、快適な
稲叢山への凱旋道を進む。

途中4人の若者とすれ違う。12時10分三角図根点を訪問の後12時35分 鉄塔通過し稲叢山へのトラバース道を歩いていると
前方より高校生を先生が引率したグループに会う。山頂直下では単独登山者とすれ違う。やはり日曜日の登山道には登山者が
居るもんだ。

13時40分 稲叢山へ着いた。しばらく石鎚山系を眺め、次回の目標である戸中山への尾根をしげしげと観察する。

 
11時30分西門山を出発し稲叢山へ向かう              登山道は楽やなあ〜〜

 
11時55分 崖部を下りる                      12時20分 ここにも図根三角点があった

 
12時35分 鉄塔から稲叢山を見る                                寒風山


鉄塔から見える 石鎚山        瓶ヶ森・西黒森 伊予富士         寒風山     笹ヶ峰    チチ山


 13時35分 最終目標「稲叢山」に到達〜   二等三角点名は 「稲村ヶ台」 1,506.17m だって

 
  岩黒山   二ノ森       石鎚山                     瓶ヶ森     西黒森     伊予富士

下山は戸中山への尾根を利用する稲村調整池へのルートを歩く。14時03分、登山道が尾根を外したので、右手の藪尾根へ進
んで様子を見る事に。すると岩の絶壁が出てきて苦労しながらそれを下ると、今度はもっと厳しい絶壁が現れる。

意を決して10m程の崖を慎重に下りると、14時17分あれ?  何とそこには先ほどの登山道が続いているでは無いか!
登山道は14時43分今度は本当に尾根を外して左下へと続く。この尾根部ときたらまあビッシリとスズ竹が生えた凄い藪尾根だ
った。くわばらくわばら・・


 
  13時40分 稲叢ダム湖コースへ               尾根に続くダム湖コースへの登山道

  
藪尾根を偵察  ダム湖が左手に見える       14時17分 ワイルドな崖を下りると何と登山道がここまで続いていた

 
14時42分 尾根と登山道の別れ道                戸中山への尾根はぎっちり笹薮が生えちゅうにかわらん

 
ロックフィルダム「稲村調整池」                     稲叢山登山口 ダム湖からは先ほど下りたルートや
下池の大橋ダムからここに水を揚水し、この上池から流す     洞窟コース、鉄塔尾根コースなどがある
水で大橋発電所で最大61万5000キロワットの発電を
行っている

15時00分沢部へ下り付き、15時20分稲村調整池に着く。ここから林道を1時間半程歩いてトンネル口手前にデポした車に帰る。

まあこんな場所を歩いた所で誰の参考になる訳でもなく、強いて言うならば山歩きの基本である「自己満足」って事で折り合いをつけ、
このまともな人間が行く場所ではない藪山歩きを自己責任で全う出来た満足感に浸りながら凍結した林道をゆっくりと下りる。

 
西陽に照らされた西門山を見ながら林道を歩く          林道はと言えば2日前の凍結が改善されてなかった


翌日 新居浜の実家で山道具を干す   何処を歩いたのか誰に聞かれても何とも説明のしようが無い尾根歩きだった

一体藪歩きを大好きな人間っているだろうか? 道の無い山を冒険心を持って縦横無尽に歩くって頭で考える程現実は甘くは
無い。藪も含めて色んな難題が降りかかる。このイージーな考えと実践とのギャップを思い知るのも山歩きの摩訶不思議な面白
さだと思う。単独行は楽天的な性格とそれと真逆な慎重さをもって山を歩く事が要求される。。

成果としてはファイントラックのツエルトIIロングを実用使用出来た事と、ガス以外のストーブを使う契機となった事くらいだろうか。
今後も退職の強みを生かして面白い縦走を頭で考え、それを少しでも実践していけたらと思う


    
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