寒風・大座礼西線を利用した縦走

平成24121日 冠山〜笹ヶ峰縦走


広域基幹林道・寒風・大座礼西線とは


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用した寒風・大座礼西線のGPSトラックログ図

林道「寒風・大座礼西線」は旧寒風山トンネル口の手前急カーブ地点から右手に伸びる広い未舗装林道を言う。未舗装
ではあるが四輪駆動車であれば得に問題のない路面状態であり、セダン車でもゆっくり走れば大丈夫の範囲と思われる。

この林道は寒風山〜笹ヶ峰〜チチ山〜チチ山の別れ〜冠山を結ぶ山塊の中腹を沢筋、尾根筋をグルグル回って続く。前回
利用した「寒風山東尾根登山口」は第一尾根部分となる。その後崩壊法面補修の工事現場を過ぎ、水量豊かな滝がある
長又橋」を越えると第二尾根部が「笹ヶ峰南尾根登山口」となっている。


その次にある沢は長又川支流の「栗ヶ谷橋」でチチ山方面へ伸びている。そこを過ぎて林道は一旦大きく右側(東)へ
振り、又沢筋へと至る。この3番目の大きな沢は一ノ谷で「一ノ谷橋」が架かっており一ノ谷登山道の標識がある。ここ
には一ノ谷館横から一ノ谷越えに至る登山道が伸びて来ている。最後に張り出す尾根筋は冠山から南へ延びた尾根で、
林道はこの手前でプッツリと切れている。そしてその先は全く手付かずのなだらかな自然林斜面となっている。


とすると、この林道終点地点から冠山へ這い上がる尾根さえ問題無ければ、冠山から寒風山までの日帰り縦走が可能とな
る。
理想的にはこの林道終点附近に車を置いて、チャリで林道起点まで約1時間かけてバック。旧寒風山トンネル口〜
桑瀬峠〜寒風山〜笹ヶ峰〜チチ山〜チチ山の別れ〜一ノ谷越え〜冠山〜林道最終地点 そこにデポした車で林道基点に置
いた自転車を回収って寸法である。


この為には林道終点から冠山へ上がる尾根を偵察しなければならない。
と言う事で121日、笹ヶ峰でのLNG船安全祈願を兼ねて冠山へ至る尾根偵察に出かけた。

 

寒風・大座礼西線を利用した冠山〜笹ヶ峰縦走


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソルトを利用した林道終点〜冠山〜チチ山の別れ〜笹ヶ峰〜南尾根〜林道ルートのGPSトラックログ図

 第一章:林道最終地点〜冠山 (約 3時間)


林道最終地点から冠山南尾根に這い上がり、南尾根伝いに冠山へ至る

06時過ぎに高松の自宅を出発、旧寒風山トンネル口手前で右の林道「寒風・大座礼西線」に入り0815分笹ヶ峰南尾根
登山口に駐車。ここから電動アシスト自転車にて林道終点まで進む。電動アシスト自転車を縦走に使うのは2回目だが
前回は落合峠からの下りだったのでその性能について実感する事が出来なかった。林道はほぼ平行に走っているが部分
的には相当登りと下りが存在する。

登りでは確かにアシスト感があるがイメージした様なスイスイ登れる程では無かった。でも普通の自転車だとこの林道
を全て走るには時間がかかるだろう。
0840分林道終点近くのガードレールに自転車をデポする。

この林道工事が続くであろう斜面には美しい自然林が広がり、あと何年か後にはこの木々が跡形も無く消え去るのかと
思うと複雑な気持ちだ。



 
   さあて 林道アシスト自転車の登場だ             何か 一見大げさなメカだ

   
  林道を自転車で進む                        林道終点近くに自転車をデポする


              この美しい自然林が失われてしまうと思うと心が痛い


林道工事終点の法(ノリ)面を越え水の無い沢筋に入る。何筋かの沢が入り乱れるが、左端の沢は少し急で険しそうな
ので選択から外すが、そこ以外は何処を歩いても大丈夫そうだ。
2番目と3番目の沢筋の間にある扇状地の様な場所を這
い上がる。次第に急斜面になるが問題なく上昇出来る環境だ。
0915分笹が少し現れるがその端を通って斜面を進む。

その後、左手の谷筋が急だが最短距離なのでそちらに進む。でも岩棚が凍っているので直近の樹木や足がかりのある崖
を伝って上に這い上がる。右手には安全な尾根が存在するが、訓練の為なるべくギリギリまで厳しい地形を選択する訳だ。
木の根や枝を頼りに上に出ると支尾根部に至る笹スロープとなった。
0940支尾根のコル部に到着し、先ほどの安全
な尾根部を偵察に大岩を越えて尾根を少し下る。


 
    林道最終地点はこんなになっている             最終地点を乗り越えると、なだらかな涸沢が広がる

 
      どこでも道状態で歩ける                       少し低い笹が現れる

 
    お〜〜 高度が上がったぞ                   左手は絶壁の岩となっている


 
沢筋へ行こうとするがツララの下面が凍結していたので引き返す     右手はイージー過ぎてスリルに欠ける

 
    折り合いを付けたルートを選ぶ           これだけ手がかり足がかりがあれば崖でも這い上がれるやろ

 
      大きいツララが下がっている                これを過ぎると傾斜がなだらかになる

 
    やっと稜線のコルに着いたぞ                  這い上がったコルの風景


そこはお馴染みの笹とブナの心が落ち着く風景だ。右手にシャクナゲ林がありここに這い上がれば安全だろう。偵察を終え
て元のコルに帰る。すぐ前の小ピークに向ってスズタケの様な笹薮が続くが、獣道があり比較的歩き易い。次のピークに向
っては倒木が重なっており多少歩きにくそうだ。その小ピークを乗り越えると更に前方に大きなピークがある。

この大ピークは林道終点の手前に長く見えた支尾根の頭だろう。相変わらずスズタケの様な笹が深いので稜線部に続く獣道
を辿って歩く。ブナの樹が豊富でなだらかな尾根を進む。山を歩いて感じる事はこの足元に広がる笹尾根とブナのコンビが
多い事だ。陰樹のブナと明るい場所を好む笹であるが妙に山の風景としてセットで定着している。

陰樹にしてもブナの発芽には光が必要なので笹丈より高く育つには色んな条件が必要だろう。一旦成長に成功したブナは
今度は笹が広葉樹の葉っぱをその間に定着させ保水力をアップさせブナを育てていると言っても過言ではなかろう。

右手の奥に木々の間から平家平とそれに続く主尾根が見えるが霧氷は少ない様だ。広いブナ林を進むと赤テープが現れた。
この類の赤テープは明らかなルートにだけ存在し、ややこしくて助けが欲しい場所には現れ無い傾向が強い。



 
南尾根を少し下がってみるとブナ林があった              このシャクナゲ林へ這い上がってくれば楽チン

 
    尾根に這い上がったコルに帰る              コルから小ピークへと進む

 
      獣道が尾根歩きを誘う                  平家平方面が見える


             地衣類がブナの幹模様となり独特の美しさがある

 
  次のピークへは倒木が立ちはだかる                  ブナ林の傾斜を進む


        藪を歩いていてなお癒しの風景が存在する

 
         獣道の尾根を振り返る                             岩場近くのブナ

 
                 藪を歩いていてなお癒しの風景が存在する

 
      タコ足ブナもあるぞ                   枯木にはサルノコシカケ、向こうのブナには霧氷が・・・


1040分細尾根になってそれを越えると前方にピラミダルな形をした冠山が現れた。北側から冷たい風が流れ込んで南側
も霧氷が沢山付いている。
手前のコルには枝を広げた大きなブナの樹があり、その向こう左手は霧氷となった樹林帯が山
頂まで続き、右手には冠山の付け根まで笹のスロープとなり平家平への尾根が続く。


少し天候が回復しそうだったので暫くブナを見ながら待機するが無駄だった。諦めて笹のスロープに入る。冠山の稜線に
人影が見えて平家平方面に移動している。朝、一の谷館横で準備をしている単独登山者を見かけたがその人だろう。冠山
直下では樹林帯と岩のゴーロ斜面で適当に這い上がると
1120冠山標識に飛び出した。

 
       細尾根が出現                    木々の間から冠山が姿を現す

  
   平家平方面には霧氷はあまりない様だ                  寒風・大座礼林道が見える

 
  リョウブの皮は鹿の大好物の様だ                 一旦笹原に出て右手の平家平方面へ回り道


        西風を受ける場所なので枝が東に流れている   奥に冠山がそびえる


         部分的に陽が差して冠山の斜面を一瞬照らした  美しさに見とれる

 
    ウラジロモミの葉の裏はやっぱり白かった          少し樹林帯の間を抜ける

 
  冠山の懐に南側から入って行く                  直前の霧氷が素晴らしい

 
   山頂直下はこんな場所を登ります              正面の藪空間に山頂標識が見えたぞ


右手、平家平方面に進み縦走路を見ると先ほどの登山者がやはり歩いていた。心の中でエールを送って山頂に帰る。
山頂に帰るとそこから道が
2本ある。左側を進むと大岩展望台に出て絶壁の上で行き止まりとなっていた。笹ヶ峰への
縦走路を見るがガスに包まれてチチ山の別れさえ見えない。しかし左下に寒風・大座礼林道が見えたのでそれが笹ヶ峰
への縦走路だと確信出来た。


 
    ここから山頂に這い上がって来た                 冠山山頂


    歩いてきた冠山南尾根  二つ見えるピークの間に林道終点部から這い上がって来た


        平家平への縦走路   一人の単独者が歩いていたのでエールを送る

 
   左が展望岩 、 右手が笹ヶ峰への縦走路             寒風・大座礼線を見下ろす

 
     冠山の岩展望所から見る絶壁                  南尾根に別れを告げる


            冠山岩展望所より笹ヶ峰縦走路を見下ろす


第二部 冠山〜笹ヶ峰  (2時間30分)

先ほど歩いて来た支尾根方面の2ピークを眺めた後、笹ヶ峰への縦走部へと下る。雪か霧氷の残骸が登山道に積もり滑り
やすいので恐々歩く。ここで本日の忘れ物はストックと簡易アイゼンだった事を知る。あまり見慣れない風景なので少し
心配になるが、右手にかすかに兜岩の形が見えるのでこの縦走路で間違いが無いと再度確信する。勿論地図、コンパス、
GPSは持っているがザックから出す程の事も無い。


どんどん下って11時50分見覚えのある一ノ谷越に着いた。ここから北側にはなすび平を経由して中七番への登山道が
伸びている。反対側にも道があり、地図にはこの破線が一ノ谷登山道となっているが未だ歩いた事は無い。


この辺りを歩きながらストック代わりの枯れ枝を捜す。杉の枝は湾曲している上にすぐ折れる。ネジキの様な枯れ枝があ
り、強く力を入れると折れそうであるが取り敢えず仮の杖としてあまり体重を掛けずに歩く。


1210もう1つの一ノ谷越に到着。こちらにはちゃんと登山道標識が置かれている。以前 kyoさん、reikoさん、 kazasih
さん達と寒風山へ登った後、単独で笹ヶ峰を経由してここから一ノ谷館まで下りた事がある。

一ノ谷越からチチ山の別れまでの稜線は以前低い笹薮であったが、今は明確な登山道となっていた。霧が非常に濃くなり
チチ山の別れに
1225着く頃には辺りは良く見えなくなった。

 
 冠山から縦走路を下る                               快適な縦走路

 
右奥に銅山峰が見える (西山や兜岩) 西赤石は霧の中       快適な縦走路 パート2

 
  中七番〜なすび平への分岐 (右)                   冠山方面はガスに覆われる

 
  ダンスを踊っている様な樹だ                   ここが一ノ谷越として利用されている分岐

 
    ススキに霧氷がついて揺れていた                   チチ山の別れ


お蔭でチチ山トラバース路は折角の霧氷風景にも拘らず視界が悪く楽しみが薄く退屈なものとなった。後半の霧氷樹林帯
を抜けモミジ谷へ着くと霧氷が更に厚くなっている。
二重尾根の間から北側斜面の登山道をヘロヘロと登る。時々突風が
吹き体が吹っ飛ばされそうになる。こんな日にLNG船が入港しなくて良かったものだ。


笹ヶ峰の山頂へ至る稜線に出るとコメツツジの霧氷はまるで珊瑚の様に足元に広がる。風が強く冷たいのでレインウェア
の帽子を被って歩くが山頂まで結構遠く感じた。
1340やっと笹ヶ峰山頂に着き、先ず南尾根登山口の方角をまだ見え
る内にコンパスで確認。笹ヶ峰で視界が悪くなった時の恐ろしさは以前経験済みなのだ。


 
   チチ山トラバース道の霧氷も凄い状態だ             トラバースの霧氷樹林帯

 
               モミジ谷                      笹ヶ峰の尾根に上がる


             白いサンゴ礁〜〜 ♪

    
     中々笹ヶ峰の山頂まで遠い                    山頂手前の霧氷林

山頂ポールにはエビの尻尾は付いていないが、祠は霧氷で真っ白である。手袋を脱いで安全航行、作業安全祈願の
お祈りをする。ここまでの厳しい歩きと悪い気候の中を歩き、冷たい素手で拝むと何かご加護が有りそうな気にな
ってくる。


予定では笹ヶ峰山頂で昼食を摂るつもりで山専ボトルにお湯を入れて来た。早朝自宅のオール電化キッチンでやかん
に水を入れて沸かすためにスイッチを入れ、その間に出発の用意をしていた。ところがボタンを押したのが隣のレン
ジで、その上に置かれていたシチューの残り鍋が熱せられ続けていたのだった。火の無い所に煙は立たないと言うが、
火が見えない所から一階を煙に包み鍋とプラスチックのおたまじゃくしを犠牲にしてしまった。サマンサに懺悔の書
き置きを残し用意した山専ボトルのお湯であったが、あまりの寒さにそのまま南尾根へ下山した。嗚呼 今朝の出来
事が虚しい・・・・・


 
13時40分 笹ヶ峰山頂に到着 林道終点から5時間の歩き    今日の目的はLNG船の安全祈願 頼んます〜


    右手に大日大聖不動明王がおわします  金剛笹ヶ峰蔵王権現は祠の中に祀られているのか

ブナ斜面まで下っておにぎりを一個ペットボトルの液体で口に押し込む。ここでも山専ボトルのお湯は使わず、1452
林道に下山し置いてあったラッシュで林道終点へ自転車を回収に行く。林道を走る頃になると青空が顔を出し、歩いた稜線
が見える。



                         笹ヶ峰南尾根


              笹ヶ峰 南尾根

 
    う〜〜ん これもウラジロモミやろねえ           寒風山は霧の中  伊予富士北面は真っ白


               ブナ斜面は緑の世界

 
   14時50分 南尾根登山口に下山する            寒風・大座礼西線の一番橋 「長又橋」

 
寒風・大座礼西線の二番橋 「栗ヶ谷橋」               寒風・大座礼西線の三番橋 「一ノ谷橋」

林道終点から冠山まで約3時間、冠山から笹ヶ峰まで約2時間半、南登山口まで約1時間合計6時間半〜7時間弱である。
この実績から林道終点〜冠山〜笹ヶ峰〜寒風山の縦走は十分可能であるとの結論に達した。


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