平成18年12月3日 中川峠からカガマシ山への尾根歩き、更に藪尾根を下る周回
復活ヤブコギ三銃士 紫雲さん、マーシー エントツ山
カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図 (マーシー提供) 中之川―中川峠―三つ足山−ガガマシ山―北西尾根―中之川 約7時間
(国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
藪漕ぎ三銃士 マーシー 紫雲 エントツ山
「藪に入ると先祖の血が騒ぐんです ブヒブヒブッヒ〜〜」(ブッシュマン・マーシー) 「仕事のストレス解消はやっぱ車の暴走か藪歩きに限りますわなあ」(ウルフ・紫雲) 「藪歩きは人生そのものじゃ〜 道を失い七転び八起き」(達磨大師・エントツ山)
色んな山仲間がいる。普段の付き合いがあるわけでもなく、どういう生活をしているかもよく知らない。本名さえも知らない
場合もある。それがどうだ! 山歩きという些細な趣味で30年来の友の如く打ち解けて時間や空間を共有する。
特に紫雲さん、マーシーさんとは四国でも指折りのヤブ尾根「大登岐山・黒岩山・野地峰」で壮絶なヤブ歩きを共有し気心
のしれた仲となった。
12月3日川之江インターを出た所で06時半集合。私のラッシュで窮屈な移動となる。
川之江から阿波池田へいく国道192線途中から右へ分かれ堀切トンネルを抜けてすぐに又右に折れる。ナビゲーター・
マーシーの指示で中之川へと入っていく。
美しい清流が次第に狭まり山間部を上がっていく。思わぬ所に学校跡があったりして往時の面影を残す。更に川沿いを
進むと数軒の民家があり、そこを過ぎた辺りから舗装道路が切れる。小さいが四駆の威力を発揮して未舗装道路を詰め
て「中之川登山口」へ到着。 マニアックな山歩きの成功の鍵は登山口までの案内人の存在だ。
中之川 登山口 そこから斜面を上がる
紫雲さんは道が怪しい北西尾根側からカガマシ山へ詰めて、帰りに中川峠から下山のルートを考えていた様だ。だが、
やはり最後でドラマを見たいって私の趣味やマーシーの案で中川峠から尾根歩きを先にする事に決める。登山口で準備
をして作業道の様な植林地帯を歩く。
登山口の谷を挟んで左手上方の山の斜面には伐採地が見える。ここを目標に下りてくる事になるはずだが・・・果たして
どんな結末が待っているのか・・・。マーシーと紫雲さんが一緒なのでさしたる不安もなく歩いていると沢に出会いこのワサビ
谷という名の沢沿いに道が続く。ここを詰めると急な斜面になり、雪が現れた。今季初めての雪景色を三人で楽しむ。
ワサビ谷っていうらしい 植林地を登る
急な斜面には雪が積もっていた ブナが現れ笹が出てくる
やがて傾斜が緩やかになり、北側が開けて法皇山脈の向こうに瀬戸内海と庄内半島が見える。登山口で紫雲さんから
頂いた「乙姫おやつセット」を頬張る。糖尿病患者にとって山登りは唯一おやつを楽しめる瞬間でもある。そうこうしている
うちに先頭は中川峠に着いた様だ。ここは佐々連尾(さざれお)山への分岐でもあり尾根道に標識がある。西側がずんと
開けていて兵庫山から大登岐山が見渡せる。
瀬戸内海が見渡せるぞ ブナと笹がいい風景を作っている
中川峠 左はカガマシ山への尾根へ、 右は佐々連尾山へ
中川峠のお地蔵さん 佐々連尾山への尾根分岐
懐かしい大登岐山のキューピー頭が見える (中川峠より西を見る)
西側に広がる展望と大登岐山を眺めながら、あの壮絶な藪歩きが3人の脳裏に同時に蘇る。その強烈な体験以来、
どんな藪にもビックリしない体質になった。ありがたい事なのかどうか・・・
さて、カガマシ山方面への尾根道だが・・・無い。お地蔵さんまで少し引き返して藪の中へ入る。所々に断続的に赤テー
プも現れるがそれが道しるべとして何の意味もなく価値も無い。単なるゴミだ。そこを抜けると薄いブッシュの斜面に巨木
が散在してその空間の素晴らしさに感動しながら歩く。
この景色は紫雲さんが好きそうな場所だろう。案の定大き目のカメラを出して風景を切り取っている。
大木がここかしこに現れる
もうこの景色に出会えれば今日は満足ね
ここで恒例の エントツ山替え歌登場〜
題は 「お山はブッシュサイド」
原曲は井上陽水のリバーサイドホテル(サングラスをかけて高音で歌って下さい)
誰も行かないヤブ山歩くとき ♪ 視界の中には ステキなブナがある
ヤブ山歩きは 夢中になれるから ♪ ラッシュに乗り込み仲間を誘う
最初のうちは何度もヘマをして ♪ 行くてのヤブに 疲れ果て
日暮れになっても 出口は見つからず♪ そこではじめて怖さを思い知る
お山はブッシュ・サイド 歩くなら ブッシュ・サイド 行くなら ブッシュ・サイド ♪
シャバでは昼行灯(あんどん)と呼ばれているけど♪ ヤブに入ればオイラの世界さ
マーシーの歩みは ますます早くなり♪ 紫雲の目つきは ますます悪くなる
エントツ山のズボンはずり落ちて ♪ 待ってくれよと 涙で叫ぶ
尾根の木々には 霧氷が咲き誇り ♪ もっと奥へと お山が誘う
ヤブならマーシー ブッシュなら紫雲 お供ならエントツ山 ♪
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尾根部にあがると四国の標高1200m〜1,300m級尾根特有の風景となる。笹が稜線部を覆いつくし両側にやや細めの
ブナや雑木が立ち、時々岩も現れる。笹の葉に雪が積もって、分け歩くとズボンが次第に濡れる。
やっと 尾根部に到着
奥工石山への分岐かと思ったが甘かった まだまだ先
方向転換が難しい地形に遭遇。そのまま小尾根に這い上がるとそこで行き詰まった。手前の窪地に一旦下がって次の
ピークへと進む。笹が深く雪が積もって圧力を感じる。
一旦窪地へ下りて、そこからまた次のピークを目指す
笹が雪を被って重い それを押し分けながら歩く
その窪地はとても雰囲気のよい場所だった。天気が良いと展望も望めるだろう。獣道が縦横に走り鹿のフンが沢山見
られた。ここからの登りが本日の歩きで一番苦しい場所だった。笹が強くておまけに雪を被って重い。それを掻き分け
ながらヘロヘロになりながら進む。
奥工石山への分岐となる1,452m峰までが登りで笹も深くアップダウンもあり遠かった。あとから紫雲さんから教えて
もらった泉保さんの本にこの1,452m峰には「三つ足山」という名前があった。奥工石山への分岐点である重要な山
なのだから地図にも山名が欲しい。
三つ足山と思われる
霧氷が美しく時を忘れる
先ほどから雪の笹原歩きでズボンが濡れて冷たくなり雨具を持って来なかったヘマを悔やんだ。マーシーがレインズボン
を提供してくれたが、ゴアテックスの高そうなやつだったので辞退した。このヤブ歩きではおそらくどこかに穴を開けるに
決まっている。
しかし暫く歩いて、ますます笹藪が酷くなり寒くなってきたので意地も張れなくなり結局借りてしまった。マーシーありがとう。
スパッツと軍手は私が貸したのよね。 先ほどからマーシーの軍手が濡れて使い物にならなくなっている。紫雲さんの毛糸
の手袋も雪で濡れているようだ。雪の笹を掴むのに素手では冷たい。左手の手袋をマーシーに渡し、ここからは片手で笹
や樹を掴みながら歩く。
手袋が一個なので片方の手を息で暖めるマーシー
カガマシ山が奥に見えてきた
東側が開けて目指すカガマシ山が見渡せるピークに到着。眼下に広がる霧氷が美しく遥かなる山塊を飾る。ここまで
来ると踏み跡がはっきりしてきた。比較的笹も小さくなり歩きやすい。尾根には県境調査か測量の為かピンクの大きく
異常に長いテープが沢山はためいている。これって調査のあとこのまま放たらかすんだろうか?
カガマシ山を眺めるマーシーとエントツ山 (紫雲さん提供)
尾根をあるく紫雲さんとマーシー
カガマシ山の山塊は大きい。マーシーと紫雲さんは先ほどから下るべき北側の稜線を気にしながら歩いている。「ここです」
とマーシーが下山地点を宣言する。登山口で確認した伐採地が眼下に確かに見えるが、道などは全く見当たらない。
北西尾根への下降地点を確認
尾根の並木道 このあたりからアップダウンが少なくなる
そこからしばらく行くと辺りは平坦な広い場所となりどこが山頂やらわからない。紫雲さんがこの辺りでしょうと右側の
ヤブへ入っていくとそこに山頂標識と三角点があった。ザックを卸して休憩して記念写真を撮る。ちょっと東側へ歩い
てみたい気がしたが、帰りの道の無い尾根歩きが気になってそそくさと引き上げる。
カガマシ山 山頂
霧氷の尾根を下降地点まで引き返す
尾根を歩いていると一瞬太陽と青空が顔を出し、辺りの樹氷に明るい表情を与えた後すぐに引っ込んだ。先ほどマーシー
さんが指摘した一見何の変哲も無い緩やかな傾斜に向かって降りていく。潅木がびっしりと行く手を塞ぐがかまわず進むと
辺りが開けてブナとヒメシャラの幻想的な巨木の風景が現れた。
主尾根から北西への支尾根へ下りる 潅木がびっしり行く手を遮る
ブナとヒメシャラの大木 ここも素晴らしい風景だった
そこを過ぎると植林帯の尾根に入る。赤く塗られた境界石が点在する尾根を進むと突然四角い大岩が現れた。石堂山の
ミニチュア版で薄く剥がれそうな板が重なって一つの岩を形成していた。
植林地帯の尾根を下る 何じゃ? この石は
狭い尾根に切り餅の様な大岩がある
いくら歩いても尾根部は植林で覆われていて見通しが利かない。それまでもあの目印となる伐採地への下降点が
気になっていた。マーシーさんが又GPSと地図で位置を確認しながら、満を持したかのように「ここから降りましょう」と
言うや植林の暗い谷へ下っていった。
マーシーの逃げ足の速さは天下一 ここら一帯がマーシーの縄張りみたい
急な傾斜をどんどん降りていくと先に下りたマーシーさんは伐採地の上に立っていた。そこからの展望は中々のもので
出発点と思しき谷筋や佐々連尾山が見渡せる。ススキが生え茂った伐採地の右側を更に植林地帯に沿って下っていくと
谷近くで林道と出会う。林道を少しだけ歩くと沢には鉄の橋がかかっていた。
登山口から見えた伐採地に着いた 更に急な植林地帯を降下する
沢に鉄製の橋が架かっていた 後ろ側の小道を谷から上がってゴール
これを渡って少し登ると何と朝出発したラッシュが見えた。マーシーさんの正確無比な案内で最後のドラマは起こら
なかった。ヤブ歩きの楽しみは何と言っても道を失ってうろたえる自分と、道と出合ってホッとする自分を体験する
事だ。また今回のようにドンピシャ読みが当たるパズル解きの痛快さもある。
人間にも地味だが味のあるヤツがいる。このカガマシ山の尾根も石鎚や剣山のそれと比べればとても地味だが、実
に味わい深い山域だった。同じ様に紫雲さんもマーシーさんも一緒に山を歩いてとても味のある男達だと思った。
紫雲さんのカガマシ山は ここ
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