2006年05月12日
四国の山 アケボノ紀行 (パート2)  西赤石山 (愛媛県)
5月12日  アケボノツツジの 西赤石山 (愛媛県)  1,626.1m


東平ー銅山峰ヒュッテー尾根近道ー西赤石山ー兜岩  約3時間弱
兜岩ー上部鉄道ー 一本松ー東平            約2時間
カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図 東平から柳谷の一部が衛星捕捉できずデーターが飛んでいます)
  国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634) 

5月12日 週間天気予報がこの日だけ晴れに変わった。金曜日であったが心が騒ぐので代休を取って西赤石へ向かう。
東平(とうなる)線が平成18年4月1日から復旧したのでこちらから登る事に。新居浜新田橋から約20分で東平へ着いた。

7時40分くらいに東平駐車場に着くと松山から来られた二人連れの女性から西赤石への登山道を聞かれる。当初第三
(通洞)から直接兜岩へ登る予定だったが、彼女達がその急な登りが出来るかわからないのでオーソドックスなコースを
角石原
の銅山峰ヒュッテまでご一緒する事に。

 
     懐かしい東平(とうなる)      東平から新居浜を見下ろす

東平駐車場から谷筋の広い道を抜けて第三通洞広場に向かう。この所の長雨で水量が増え水の流れる音が一段と
朝のすがすがしさを高めてくれる、第三通洞広場には、(正面)坑口前を抜け柳谷を通って角石原へ向かう道、(左手、
変電所跡地方向)には上部鉄道跡、一本松へ上がって行く道、更にはその横から下に向かって遠登志(おとし)の鹿森
ダム近くに下る道などの分岐点がある。広場途中の新緑やヤマツツジが綺麗で爽やかな谷筋を歩く。

 
     第三通洞広場          坑口跡に進んで左手へ角石原の道がある

* 第三通洞 : 明治35年完成 構内から鉱石をこの通洞より搬出して東平から黒石、後に端出場(はでば)まで
索道で下ろしていた 昭和43年端出場第四通洞が完成してその役目を終えた

柳谷の道は一昔前までここを往来していた生活を偲ばせる様にゆったりとした傾斜で石組みなどもされている。沢沿
いの新緑やヤマツツジが綺麗で爽やかな気分で歩く。所々に木々の間から覗く谷川は透明な山水を集めて岩肌を勢
い良く飛ぶように流れていた。リスがすぐ近くに顔を出したがカメラの準備を待ってくれず、大きな木をするすると谷の
方に消えていった。

 
      往年の生活道              爽やかな清流

     
              ツツジ街道


銅山峰ヒュッテで峰地蔵ルートをお教えして、「兜岩で会いましょう」と再会を約束してこちらは急な尾根へのショートカット
ルートへ向かう。角石原から尾根へのショートカット道は結構急で普通は下りに使った方が良い。ここにもヤマツツジや
コヨウラクツツジが咲いていた。途中西赤石の北斜面が見える場所がありピンクに輝いている。ヤッタ〜〜 大き目の松の
木に登りその様子を撮影。

カラマツ林やガレ場を過ぎてほどなく尾根道に合流した。

 
    角石原の銅山峰ヒュッテ       折り返して右のショートカット・ルートへ

* 角石原 :明治26年から明治44年まで使用された上部鉄道の始発駅のあった場所 上部鉄道はこの角石原より
ドイツ製蒸気機関車で鉱石を石ヶ山丈駅まで約5.5kmを運んでいた日本最初の山岳鉄道であった。

    
      松の木によじ登って西赤石の斜面を撮る

 
花名表札にピントが合ってしまう僕のカメラ技術    カラマツ林
 
この時期の西赤石への尾根歩きは楽しみだ。アケボノツツジが見え出した頃後ろを振り返ると チチ山・笹ヶ峰と
沓掛・黒森山の稜線が吊り尾根となり、その向こうに御馴染の我等が石鎚山がデンと構える。手前の銅山峰から
西山にかけては不思議と一部緑が無い殺風景な風景だ。こんな所にもうすぐアカモノとツガザクラが一斉に咲き
誇るのだから自然とは不思議なものだ


  尾根に出て振り返ると吊り尾根の向こうに石鎚山がお出ましになる

 
    西赤石の斜面が桃色吐息してるぞ うっひっひ

西赤石手前のピークに取り付くと、左手の北斜面がピンクに染まり、その向こうに新居浜の町が霞んでいる。北斜面
を覗く展望所には香川県の東讃から来た写真趣味の方が三脚を用意している。見ると結構立派なカメラだ。今期に
2回来るも時期を逸して3度目の正直でピッタシアケボノに会えたという。絶壁の下にはアケボノが広がるが、身を乗
り出すのがヤバく緊張する

 
ニセピークの絶壁横に据えられたカメラ   恐る恐る絶壁沿いに写真を撮る

   
     絶壁から見下ろしたアケボノ斜面と石ガ山丈 その向こうが新居浜

 
西から雲が迫ってきていた          吊り尾根の上には青空がなくなった

手前のニセピークまで登り詰めるとアケボノが一層視界のあちこちに広がり、尖った西赤石山の山頂から北斜面、
兜岩を望む光景は圧巻だ。

   
      兜岩がアケボノツツジの向こうに見えた

振り返ると南斜面のカラマツ林には緑の葉が出てきてアケボノツツジのピンクと柔らかい対比を見せる。その向こう
には平家平と冠山が銅山川を挟んで屏風の様に突っ立ている。

   
      平家平と冠山をバックにカラマツの林に点在するアケボノ

  
   銅山峰が眼下に遠ざかる          西赤石直下

最後の急坂を詰めると西赤石山頂だ。もうそのまま兜岩に直行〜
前日の雨でぬかるんだ急坂は滑りやすく、気持ちは兜岩にまっしぐらだがへっぴり腰で歩く。ここにもアケボノツツジ
が小振りではあるが見事な真紅に近い色を見せる。下から数人の登山者があがって来られたが西赤石山頂に荷物
を置いているのか空身だった。

 
兜岩へ下りる登山道にもアケボノが     兜岩が見えてきた

  
     兜岩の向こうに我が故郷 新居浜がある

曇ってきた空模様と追いかけっこをして兜岩に着くと既に青空はそこにはなかった。西赤石山の北斜面に群生する
アケボノツツジの迫力は青空の下に輝くのが理想的だが、その美しさはは曇り空でも人々の美的感覚を魅了するに
充分だった。

  
   毎年ここに帰って来る回遊魚の気持ち あ〜〜〜 ただ感嘆の声

       
        兜岩の赤石橄欖岩(かんらんがん)と西赤石の尾根

  
   陽が射したチャンスを狙う  赤石橄欖岩と蜜洞岩  

兜岩には一組の男性がおられただけで、その横を通って奥の「藪漕ぎ大将」の指定席まで進む。風が強いので此処で
咲くヒカゲツツジやアケボノツツジも小振りで風を避けるように岩陰に身を寄せている。イシヅチザクラは殆ど蕾だった。

まず兜岩の先端部から故郷新居浜を見下ろす。兜岩から続く石ガ山丈の稜線が北に向かって途中で枝分かれしながら
落ちていき、故郷角野地区でその緑が消える。その先には別子銅山とのかかわりで栄えてきた新居浜の町が白く霞ん
でいる。

  
             兜岩から 新居浜の町

東側には串ヶ峰から上兜、物住ノ頭へと続く「大女の肩」がその斜面を沢山のアメボノツツジでピンクに染まっている。
西側からは雲が迫ってきて、もう先ほどの抜ける展望はない。東平を挟んで黒森から辻が峰を経て角野地区への稜線
が下っている。

   
      左端が串ヶ峰   デベソが上兜  この藪尾根が物住ノ頭まで続く

 
兜岩から西側 角野地区へ下りる稜線 兜岩から東側 魔戸の滝、船木への稜線

おもむろに西赤石に目をやると未だ薄茶色い潅木と新緑の緑の斜面にアケボノツツジのダイパノラマが錦絵のように
西へと伸びている。地味な人間の人生にもここ一番輝く時があるに違いないが、ふだん全く地味〜な西赤石ではあるが
年に一度ここ一番の輝きを見せ続ける。

  

バーナーを出してお湯を沸かしていると、あれ?どこかで見たオッサン? やっぱり「くろもじ」さんだった。掲示板に「天気が
いいぞ うふっ 休みがとれた うふっ」と昨夜書き込みをしていたのを鋭く察知してやってきたのだ。ちょっと色気の無い兜岩
の再会だがまあいいだろう。暖かいラーメンを進呈する。

 
ラーメンの準備をしていると・・・・・・        クロモジさん現る

 
クロモジさんがラーメンを食べていると・・・・・  本田さんも現れた

先ほどから寂しげな中年登山者がまた兜岩にやって来て中ほどの岩場で食事をしている様子。帰りがけに近づくとなんと
「沓掛山で会った新居浜の本田さん」だった。そういえばシロウトっぽいジャージのズボンを相変わらず履いている。ここで
また四方山話を再会。

  
兜岩で西赤石をバックにシェ〜    来年までこの美しい光景を記憶に留めよう

そのうちに角石原で別れた松山からのIさんたち二人が遅まきながらやって来た。相当な時間が経っていたのであきらめた
のかと思ったが、西赤石山頂でボケ〜とした後、約束通り兜岩まで下りてきてくれたのだ。

慣れない岩場をおっかなびっくり歩きながらも、ここから見る西赤石の輝きを堪能している様子。しこたま兜岩に居続けたの
で風が強く寒くなり退散することに。北側の岩で寝転んでいるお二人に「帰りますよ〜」と声をかけるが余裕で手を振っている。
「あの二人だいじょうぶやろか?」と言いながら上部鉄道へ向かって歩く。

   
     松山から来られた I さん撮影の西赤石下山口風景
   
      下山道から西赤石を何度も振り返る

左手のピンクの山肌に気を取られながらも尾根を下がっていく。次第に植林の為に視界が悪くなり残念な歩きとなる。
皮肉にも土砂崩れで木がなぎ倒されている沢筋のみ見通しが良い。

 
沢の崩壊部からアケボノを見る        カラマツ越しのアケボノ斜面

 
   兜岩コース 下山道         兜岩コース下道 ほどんど植林地帯

上部鉄道跡に折りつくと標識があるが右手に行く道には「登山口」と記されているが東平の地名がない。「あの二人
わかるやろか?」と皆で心配するが、まあどっちに行っても東平に帰れるからいいか・・・

 
上部鉄道跡に下り右に進む            裏谷鉄橋跡

懐かしい上部鉄道跡を久しぶりに歩く。不思議とこの道は日当たりが悪いのか藪化していないので歩きやすい。アセビ
の並木道や沢にかかる鉄橋跡を通る。所々にとんでもない大岩が落ちていたりしてよくもまあ明治時代に蒸気機関車な
どをこんな山の中で動かしていたもんだと感心する。

 
   結構広い上部鉄道跡           大岩があちこちに見られる

 
七釜谷鉄橋跡 通行不能          ここは谷に迂回する

一本松停車場の分岐から左へ下がり急な坂道を下りていく。所々」で薄いピンクに染まった西赤石山の西側稜線が見える。
いつも事ながらあんな遠くて高い所から自分の足で歩き下って来たのかと人間の歩行能力に驚かされる。鉄塔を過ぎてなお
も下がると第三広場に帰り着いた。兜岩からクロモジさんのリードで約2時間で登山口に帰る事ができた。

 
    一本松分岐                 鉄塔横を抜ける

 
 社宅跡などを過ぎてなおも下る         第三広場に下り付く

東平駐車場に着いて帰り支度をしていると例の松山二人組が帰ってきた。結構すぐ後ろを歩いていた感じだったので「誘った
のにどうして一緒に下りなかったのですか?」と聞くと「岩場で足がすくんで下りられなくて待たせては気の毒と思って手を振っ
ちゃった」っておっしゃる。なんと・・まあ 無事で下山できて良かった

   

今年も念願の西赤石山アケボノツツジを気のあった仲間と共に歩けて大満足でした。西赤石のアケボノよ永遠なれ




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