2005年12月25日
スノーシューが通用する冬山 三ッ森峠から平家平
平成17年12月25日 素晴らしき稜線スノーシュー歩き 三ッ森峠―平家平


三ッ森峠ー平家平 稜線コース カシミールソフトによるGPSトラック図
                                 (地図作成 国土地理院数値地図50000 承認番号 平15総使第634号)

往路  6時間
登山口ー三ッ森峠(2時間) 三ッ森峠ー鉄塔分岐(2時間)、鉄塔分岐ー平家平(2時間)
復路  2時間半
平家平ー鉄塔分岐(1時間) 鉄塔分岐ー中七番ー登山口(1時間半)


平家平山頂 左奥から 寒風山、冠山、笹ヶ峰(正面奥)、チチ山、沓掛山、黒森山


マーシーさんから平家平へのお誘いがありこのシーズン初めてのスノーシューを使った稜線歩きを楽しむ。
車2台で川之江から法皇山トンネル経由で旧別子山村へ入る。

筏津までは雪があるものの急な坂が無いのでタイヤチェーンを付けることなく、朝日を浴びた二ツ岳と
豊受山を見ながら進む事が出来た。

富郷(ともさと)の橋から見る豊受山は伊予のマッターホルンと呼ぶにふさわしい鋭い稜線を見せている。

 
     二ツ岳                 豊受山 ここから見た姿が一番!

別子山村の繁華街(?)を過ぎたあたりから急に雪が増え、登り坂でタイヤがスリップして進めなくなってしまった。
バックして広い場所を探すが雪が深い為車を行き会う場所が無見当たらない。仕方なく車が来ないことを祈って
道の真ん中でチェーンを装着。イタリア製のタイヤチェーンは思ったより簡単で5分くらいで装着完成。
 こんな事ならバックする必要がなかったわい・・・

元の場所に戻ってみるとマーシーさんが鈍足四駆の後輪を溝に落として四苦八苦している。私を待つ為に広い場所
までバックしていたのだ。 マーシーさんの運転技術のせいでもあるが、大局的には私に原因があった。すまん!!

FF二駆が鈍足四駆をレスキューして三ッ森山登山口へ着く。くろもじさんの報告によるとこの日、このあたりの山へ
入ったのは我々だけだったらしい。それほどの大雪が四国の山を覆ったのだ。

 
FFが四駆をレスキューの図         三ッ森峠、三ッ森山登山口

登山口でもう既に疲れ切った二人の中年はやっと登山の準備をする。スノーシューを並べてみると同じデナリの
アッセントだが色が違う。マーシーさんのが黒くて精悍そうに見える。値段も私のより高いと自慢する。チクショ〜〜

 
クロスポイントで買ったスノーシュー    この赤い橋を渡る

三ッ森山登山口から赤い橋を渡って林道を2時間かけて三森峠までひたすら歩く。スノーシューは何とか歩けるくらい
浮力があり、マーシーさんと先頭を交代しながら歩く。最初は景色も良くないがやがて北側の赤石山系が杉林の間から
見え隠れするようになると歩くのが幾分楽しくなる。でも峠までクネクネと長い道のりだ。

 
北側の赤石山系(前赤石付近)が時々顔を出す   林道をひたすら歩く

三ッ森峠に着くと、この場所だけ強い風が吹き抜けるので雪が吹き飛ばされて地面が顔出している。ここでしばしの
休憩。北側正面は植林の為あまり見通しが効かないが、西側にはチチ山がいい形で聳えている。

   
   三ッ森峠  正面はチチ山 風が)強いので雪が吹き飛ばされている

ここからいよいよ平家平攻略の尾根道に入る。ストックで計ると約1mの積雪だが風が強い為雪がある程度締まって
いるらしくスノーシューの威力を実感する。最初は潅木が多いので、いつもなら頭上にある枝が丁度通行の障害に
なってくる。通りやすいところを選ぶと雪を踏み抜き下半身が埋まって脱出に体力を消耗する。

私が雪に落ち込んでもがいているとマーシーさんが笑う。今度はマーシーさんが雪を踏み抜きもがくと私が大笑いする。
その単純な繰り返しが続く。

 
   峠から尾根に取り付く         雪が強風で波打つ尾根道

 
振り返ると三ッ森山が見える          雪が深い尾根道

しばらく歩くと小型の雪屁(せっぴ)が現れ、尾根道部分が波打って押し寄せるのでスノーシューでは上り坂で苦戦する。
右へ左へとコースを探しながら稜線を歩く。振り返ると大座礼山が形の良い姿で構えている。冬の山は空気が澄んで山の
稜線の襞(ひだ)までよく見えて写実的な絵画のようだ。

 
早くもミニ雪屁(せっぴ)が現れる        何処が沈まないか祈りながら歩く

    
     木々はアイスキャンディの様に雪がへばりついている

あいかわらずマーシーさんと前になり後ろになりラッセルもどきを交代で繰り返す。息を切らせながらも山の話、サイト
仲間の話などをしながら進む。鉄塔までの2時間はほぼ同じ様な潅木地帯の雪道での傾斜と風景が延々と続く。

 
    水分補給に丁度良い         油断すると腰まで埋まるのよね

 
平家平が見えてきた まだ遠いよ〜     やっと鉄塔に着いた

鉄塔を越したあたりから山頂付近にかけて雪屁のうねりが稜線の南側に美しく影を刻む。鉄塔が見えて「山頂はもうすぐや〜」
と喜んだものだったが、ここから夏の景色と全く違う平家平の稜線、延々と続く雪屁攻撃が続く。でも気温が低いので襞(ひだ)
の上に乗らない限り危険な事は無かった。雪の南斜面に出て歩いてみるが、雪が崩れたり滑落する心配も無かった。

我々の前には無数の動物の足跡があり、不思議とその足跡をたどれば雪を踏み抜く確立が低かった。この厳しい冬山でエサを
求めて生きる戦いが繰り広げられていることを少し実感する。

 
      銅山越ー      西赤石    物住ノ頭 前赤石            チチ山       沓掛山  黒森山

 
        振り返って   大座礼山                          厳しい尾根歩きが続く


鉄塔を過ぎて平家平までの2時間は、このスノーシュー歩きで最も苦しく、最も楽しい行程だった。銅山峰から西赤石、物住ノ頭、前赤石、
八巻山、東赤石、権現越、黒岩山、エビラ山、二つ岳と、それらの山々がそこを歩いた記憶とともにパノラマになって現れる。

大座礼山の遥か向こうには一段と白い雪を被った剣山系の山が見られる。しかしながら山頂までの行程は長く、いくら歩いても
次の雪の波が行く手に現れる。


             平家平が現れる   無数の動物の足跡しかない

 
いくら登っても次の雪の波が待っていた。 美しさと厳しさを味わう尾根歩き


綺麗だ〜〜 でもあそこを登って行くのか〜〜 でも 綺麗や〜


振り返ると歩いてきた尾根が一望でき、その向こうには赤石山系、峨蔵山が並ぶ


        風による芸術 氷紋越しに見る大座礼山

 
今回の雪屁(せっぴ)の曲線美には参ってしまった  あと少し・・・頑張ろう
 
あの向こうが山頂や〜            平家平 (12,693m) 山頂

最後の力を振り絞り山頂へと向かう。体はきついが、とてもすがすがしい気持ちになる風景だった。大自然の中を闊歩する爽快さは
この厳しい尾根を登った者に与えられる創造主からの小さな贈り物。
チチ山や黒森山が右手に現れ、急な雪坂をあえぐと山頂部に着いた。ここはいつも風が強いが、なおいっそう冷たい北西の風が
ブリザードの様に吹き荒れ体が吹き飛ばされそうだ。

 
石鎚をバックにマーシーのシェー     大座礼山をバックにエントツ山のシェー

山頂の雪が吹き飛ばされて笹の先が雪の上に野菜畑のように葉っぱを見せる。「360度のパノラマ」って言い古されている表現だけど、
料理番組の「絶品!」という言葉と同じ様に眺めの良い山ではこれに勝る日本語は見当たらない。

西側の風景がまたスゴイ。冠山と父山がまるで門のように構えて、その間に笹ヶ峰の一際白い山塊が鎮座している。 左手奥にはお馴染み
の石鎚山が控えて、筒上山、手箱、伊予富士、寒風山などの山々を見据えている。右手には沓掛山からギザギザの黒森山、それに連なる
長い稜線が西条・新居浜方面に落ちていく。


 山頂から西を向くと 笹ヶ峰が冠山(左)とチチ山(右)の向こうに白く光っていた


手箱山 筒上山     伊予富士  石鎚  瓶ヶ森  寒風山    冠山

赤石山系・峨蔵山の山々は北側からは呼指する事は困難だが、平家平の南側からだと一連の山が同定できる。私の弱点 高知の山々は
残念ながら名前がわからない。やはり一通り登ってみないことには核となる数座が同定できない。


ここまで見せるか!! 銅山越から二ツ岳までの山々

とにかく寒くて手が凍えデジカメを押す指の感覚が無くなる。マーシーが二人で記念写真を撮るため標識の上にカメラをセットするが、
敢え無く風に吹き飛ばされて諦めた。道すがら帰りのルートを相談しながら歩いて来たが、結局登山口までのトラブルもあって山頂で
15時になってしまった。この時点でもう鉄塔コースで下山は決まったようなもの。

名残惜しい風景をゆっくりと目に焼き付けた後、眼下に伸びた白い稜線を引き返す事に。

 
  沓掛山  黒森山から新居浜へ落ちる稜線
            手前正面 獅子舞の鼻    土山越えを経てツナクリ山へ

     
      さあ 下山〜  去りがたい風景にしばしたたずむマーシー

登りにあれだけ苦戦した雪深い稜線も、下りは走るがごとき快調さ。スノーシューの威力と醍醐味を如何なく発揮して鉄塔分岐まで下り付く。
ここから中七番に下るのだが雪の為道がはっきりしない。

 
    下山ポイント              あっという間に下っていくマーシー

 
第一目印の鉄塔               尾根筋を下る 正面は獅子舞の鼻

 
第二目印の鉄塔               沢部に下りつく (階段は雪で見えない)

マーシーは一度この雪道を歩いているのでガンガン下っていく。山の経験が少ない割には動物的な勘が鋭いヤツだわ。要するにこの道は
下に見える鉄塔二つを目印に尾根を下れば良い訳で、鉄塔を越えれば、左手に電線が伸びた谷を見ながら沢部まで下る事に。

下りきった所から左の橋(鉄塔巡回路へ行く)を渡らず、一旦右手に進み、沢を少し下ったあと左手(右岸)の沢沿いの道をひたすら下って
行けば、フォレスターハウス近くの橋にたどり着く按配になっている。

薄暗くなったが雪明りでライトを使わずフォレスターハウスまでたどり着く。スノーシューのジャリジャリいう音に管理人さんが出てきたので
「三森峠から平家平へ行ってました」というと「それはご苦労様でした」と優しい言葉が返ってきた。
銅山川沿いの道をスノーシューのまま歩いて車に帰りついた。

 

記録的な大雪のため四国の主だった山への撤退ニュースが多い中、このマーシーさんと歩いた三ッ森峠から平家平への線歩きは
天気さえ良くて、スノーシューを持っていれば何とか山頂まで行き着く事の可能性が高い山歩きだと言える。

マーシーさん 誘ってくれてありがとうよ



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