穂高縦走 (西穂高岳〜奥穂高岳) 平成22年7月17日〜19日
2日目 西穂山荘〜丸山〜西穂独標〜ピラミッドピーク〜西穂高岳〜間ノ岳(あいのだけ)〜
天狗ノ頭〜コブ尾根ノ頭〜ジャンダルム〜ロバの耳コル〜奥穂高岳〜穂高山荘 (約10時間20分)
カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである
テン場の朝は無茶苦茶早い
山男や山女は朝の3時頃から起きて大きな声で食事の用意をしたりしてテンションが上がってうるさい。
早出早着と言って朝の暗い内からヘッドランプで出発する。何でやろ? どう計算しても10時間〜
12時間歩けば次の目的地へ明るい内に余裕を持って着ける。真っ暗い内からヘッドランプを照らし
ながら歩く様な危ない山行は果たして必要なのだろうか?
こちらは4時半過ぎに周りが明るくなってテントから這い出す。周りの樹林帯からは色んな鳥のさえずり
が澄み切った空気に木霊し耳からも高山に来た気分を盛り上げてくれる。太陽の出る東側は大きな山塊が
構えているので日の出は拝めないが、陽の光を浴びた周りの山々が晴天を予知する様に群青色の空を背景
に光っている。
夜が明けて来た 天気が良さそ 西穂山荘で朝の出発準備をする登山者
上高地の谷間には霧が立ち込め、赤茶けた焼岳の向うに鳥の頭の様な形をした乗鞍岳の緑豊かな柔らかい
姿が既に朝の太陽に照らされている。はやる心を抑えて西穂山荘のトイレに向うが、テン場専用なのか
あまり混んでいない。明るい南側を眺めるとず〜〜と遠くに南アルプスだろうか、名も知れぬ遠くの山々が雲海
の彼方に浮かんでいる。
テントに帰るとマーシーさんが寒いと言ってバーナーを焚いていた。彼はテントの重量をセーブする為
寝袋は持って来ず防寒具とシュラフカバーだけで寒さを凌ぐつもりが昨夜酒の勢いで寝てしまったらしい。
平湯でザック軽量化の為バーナーは持って行かないと言うので私もお湯をかけたら出来る優れものの食料
やコーヒーをわざわざ車に置いて来たのだ。「あれ? バーナーを持ってきたんかい」「それが・・・ザック
から出したつもりが入っていたのよ」まあ我々は常にこんな調子なのだ。
マーシーさんと濡れたテントの露を払いながら畳んで出発の準備をする。昨日雨に濡れたシャツは未だ乾いて
なかったのでザックに詰め、ウィンドブレーカーを羽織って05時30分いよいよ穂高縦走が始まる。
霞沢岳の間、上高地には霧が溜まっている 遥か南にも山並みが見える
西穂山荘の北側に小屋がありその近くの樹林帯の中を登山道が高みへと導いている。直ぐにハイマツの
低木となり、振り返ると南側が開けている。出発した西穂山荘が眼下にあり、そこから緑豊かな尾根が南に延び
その端に火山らしく赤茶けた台形をした焼岳が頭を出している。
霧に包まれた上高地の谷間を挟んで霞沢岳(2,645.6m)が黒っぽい姿でどっしり構え、焼岳の左奥には親しみのある
柔らかな曲線を持つ乗鞍岳が谷間に雪を少し抱えて座っている。
西穂山荘やテン場にはまだ日差しが無いが、南側に焼岳、奥には乗鞍岳が朝日を浴びている
行く手の左(西側)には形の良い笠ヶ岳(2,897.8m)から抜戸岳(2,812.8m)の山脈が鋭く切れ込んだ谷筋に白い
雪の線を長く残しながら屏風の様に並行して付いて来る。
シロツメクサ、コケモモ、シャクナゲ、ゴゼンタチバナなどの花が無粋な岩山の道端を飾利登山者の不必要な
気負いを和らげてくれる。
登山道が少し飛騨側に振り、ハイマツのなだらかな丸山の奥には逆光に黒ずんだ西穂独標の台形とその左手に
大きく稜線を三角形に広げたピラミッドピークが見える。
笠ヶ岳にも朝日が差している 西穂独標(丸い突起)とピラミッドピーク (左側の尖がり)
シロツメグサ ゴゼンタチバナ
コケモモ ハクサンシャクナゲ
05時54分大きなケルンが積まれた丸山らしきピークに到着。西側には旅のお供「笠ヶ岳」が天辺近くを
太陽に照らして挨拶をしてくれる。ハクサンシャクナゲが群生しておりここまで来るだけでもハイキングの
価値は十分だ。
そこからは石が沢山登山道に敷かれた急坂が続く。06時25分何気に振り返ると富士山が遠くに見える山並み
の左端から顔を出している。富士山と槍ヶ岳は自信を持って同定が出来る。(それだけかい!?)
丸山ケルンと笠ヶ岳 石を敷かれた登山道を更に進む
ピラミッド・ピーク 西穂独標 西穂独標が近づく
行く手を見上げると台形をした岩だらけの平たいピークの上に人が沢山いる。飛騨側を巻き気味に岩屑のルートを
進む。尾根筋に出るとピラミッドピーク、西穂高岳、間ノ岳、その奥に遥かなる目的地奥穂高の大きな山塊が姿を
見せている。
06時40分 西穂独標(2,701m) に到着。ここまでのハイキング客が多いのか結構沢山の人平たいピークの
上で朝の景色を満喫していた。
西穂独標
西穂独標 ピラミッドピークへのナイフリッジ
西穂独標から行く手を見上げる
左:霞沢岳 中央:西穂独標 奥:乗鞍岳 右:焼岳
ここからピラミッドピークへ向って「ナイフリッジ」と呼ばれる西側が垂直に鋭く切れ落ちた登山道となる。でも
東側がハイマツ帯なので見た目程危なくはない。岩にはイワキンバイ、ハクサンイチゲ、イワベンケイなどが厳し
い条件の中でしっかり根付いている。人類で言えばイヌイット族(以前はエスキモーと呼ばれたが差別用語の為現在
は使用不可)みたいなもんかなあ。損得勘定を意識から排除して厳しい環境の中に存在する事を宿命として受け入れ
ている訳だ。
飛騨側を巻いてピラミッドピーク直下の岩場を歩いていると上からマーシーさんが「雷鳥見た?」と言う。え?いた?
それを見逃す訳にはイカン! 登山道を少し引き返すと登りと下りに少し分岐した道端に親鳥がいた。目の周りを
真っ赤にしてのんびり散歩している。これじゃまるでニワトリじゃないか。いや我が家で昔飼っていたニワトリは
もっと危機感を持っていて、近づくとすぐ逃げたものだが・・・
雷鳥は天敵から見えない霧の時に活動する傾向があるので、この鳥が闊歩すると天気が悪くなると言う。え〜?
止めてよ〜
雷鳥の向うに富士山が見える。一瞬ライチョウと富士山のアングルが頭をよぎったがそんな悠長な事をしてたらマーシーさんが先に消えてしまうので諦める。
ピラミッドピークに向かって進む ベンケイソウ
飛騨側を巻きながらピラミッドピークへ向かう とぅ〜ととと〜 わたしゃニワトリじゃないちゅうの!
ピラミッドピーク付近から富士山
07時10分ピラミッドピークを通過。四角い大きな岩が沢山並んだ平坦な細尾根が更に続く。後で
他のHP登山記を見るとピラミッドピークと描かれた大きなポール標識が立っている。私もマーシーさんも
気付かなかったから無くなっていたんだろうか?
相変わらず左手は切れ落ちた断崖絶壁、右手はハイマツ樹林帯のパターンが続く。行く手を見上げると小さな
岩ピークの向うに薄い岩峰があり、その奥に西穂高岳らしき尖がりが見える。更にその奥には奥穂高の山塊が
聳えている図だ。
派手なヨツバシオガマの濃いピンクと清楚なハクサンイチゲの白い花があちこちに現れる。
横に薄く広がった岩峰を過ぎるとルートは飛騨側に巻きながら西穂高へと向う。左手にはず〜っと笠ヶ岳が
見飽きる位同じ姿で着いて来る。
ピラミッドピークの上は意外に平坦 ヨツバシオガマ
相変わらず鋭い尾根を西穂高岳(右奥)へと進む 「マ〜シ〜 手を振れ〜〜」
西穂高岳手前から這い上がって来た細尾根ピーク群を眺める (左下のピークがピラミッドピーク、右下に西穂独標)
尾根筋に出て右手の信州側に出ると大きな雪渓が現れる。07時40分イワカガミが咲いた岩稜となり、最後は
飛騨側を巻きガレ場を上り詰めると08時02分 西穂高岳(2,909m) の比較的狭い山頂に着いた。
西穂高岳から前方を見上げると、右手には奥穂高岳から吊尾根が前穂高岳へと延び、左手には涸沢岳から南岳
方面の岩尾根を経て槍ヶ岳へと景色は続いている。
西穂高岳の北側は物凄く切れ落ちており、下から見上げると一体そこをどんなにして下りたのか不思議になる程
垂直の壁である。それでも石鎚東稜基部でも言える事だが、近づくと何とかルートがあるものだ。
信州側には分厚い雪渓が残っている ハクサンイチゲと笠ヶ岳
イワカガミもさいているでよ ミヤマキンバイ
西穂高岳直下から縦走路を眺める 正面はいつも乗鞍岳
ヘルメットをぶら下げたエントツ山とヘルメットを忘れたマーシー 西穂山荘を出発して2時間半で西穂高岳に着いた
槍ヶ岳 南岳 涸沢岳 ジャンダルムと奥穂高岳
北アルプスのランドマーク 槍ヶ岳 ぐひょ〜 これを下りてきたの? 西穂高岳を振り返る
西穂高岳までは沢山の登山者が来る んがっ そこから進む人は少ない
08時30分 P1とペンキで書かれた四角い大きな岩の塊が散在する尾根を通過し、比較的平坦な岩尾根を
次のピーク「間ノ岳」へと進む。
信州側の傾斜はお花畑となっており、アオノツガザクラ、ヨツバシオガマ、ハクサンイチゲなどが咲き誇り短い
穂高の夏を謳歌している。
斜め後ろを振り返ると富士山が相変わらず顔を見せる。何処にいてもひょっとして見えないかと気になる山だ。
この頃から前を歩いていたヘルメット姿の男女のペアに追いつく。男性は相当の山ヤらしいいでたちでザイル
を持ち、ハーネスを装着した若い女性のガイドをしている様に見えた。
P1とペンキで書かれたピーク ここで滑ったらどうなるの?
正面下側の赤茶けた間ノ岳に向かう 富士山が又見える
岩歩き装備の男女ペアが居た 時間待ちの風景
08時41分お地蔵様の上に「南無」と書かれた鉄のプレートが鎖に繋がれている岩場に出る。狭い岩場や
鎖場の為前の2人組を追い抜けず先を行くマーシーさんが賽の河原の様な岩尾根へと進んでいる。あせっても
仕方がないのでイワウメやツガザクラなどの写真を撮りながらゆっくりと歩く。
垂直に10m位信州側を下りる鎖の崖で女性が相当手間取っているので上で更に待たされる。二人は下に降り
付いても装備をいじってそこをどかない。たまらず「上から石が落ちるかも知れないので早く横に進んでよ〜」と
注意する。ちょっとイラついたので08時58分ボロボロの岩屑を控えた鎖のコルで前に抜かして貰う。
「ガイドしているんですか?」と声をかけると「いいえ知り合いです」と男性が答える。
南無地蔵 鎖場でちょっとモタついている
槍ヶ岳の見える風景
下りたピークを振り返る 登っている人が写っている ミヤマダイコンソウとツガザクラ
イワウメ ツガザクラ
これぞ岩から顔を出すイワカガミ う〜〜ん 遅い この下で先に出させて頂く
09時05分 まるで岩屑を積み上げた様な危なっかしい印象の間ノ岳が眼前に迫る。イワカガミやツガザクラ
が咲いた大きな角ばった岩肌のルートを這い上がっていく。
一旦大きな岩がゴロゴロ並ぶ傾斜をコル部に下りて右手の大岩の下に沿って飛騨側(左手)をトラバースしガレ場
を這い上がっていくと09時39分 大きな岩が散乱する 間ノ岳 ( 2,907 m)山頂に着いた。
奥穂高方面から歩いて来た男性に「まだだいぶありますかねえ」と聞くと「ここが縦走の中間地点ですから」と
言う。確かに・・・それも我々は今から登り一辺倒が残っているのだ。岩だらけの山頂で少し休憩していると
単独の男性がいる事に気がつく。聞けば埼玉から来た谷津(やつ)さんで、奥さんが高松の人だと聞いて急に
親近感を覚えた。
又奥穂方面から身軽な女性がやって来た。マーシーさんは「去年キレットか北穂付近で会いましたね」と言うと
「確かにそこにおりました」と答える。そう言えば私も岩の上でタバコを吸っている彼女が印象的だったので覚え
があった。この方は京都から来て「ヘルメットなどしてても岩が落ちてきたらおんなじよ」何て気楽な性格らしい。
次は間ノ岳を目指す 浮石がゴロゴロする下りをコルへと下りる
ぎょへ〜〜 これを這い上がるんかい〜〜! 天辺は間ノ岳
左手には縦走の友 笠ヶ岳が一緒に伴走してくれる ハクサンイチゲよ 元気を分けておくれ
行く手はまるで崖やんけ 振り返ると こんな所から下りてきたのかい!
イワカガミよ 元気を分けておくれ 飛騨側を巻いて岩屑の斜面を這い上がる
もう少しで間ノ岳や う〜〜 最後がキツイ〜
西穂山荘を出発して約4時間で間ノ岳に着いた 京都から来られた女性と
暫く雑談の後、間天のコルへと下りて行く。小さな尖った岩のピークが沢山あり、正面には間ノ岳と同じく岩屑を
積み上げた様なボロボロに見える天狗ノ頭があり、その上に奥穂高の山塊、見上げる岩壁の左手には槍ヶ岳の
尖がりが見える。細い岩尾根を慎重に下ると、正面に魚の鱗みたいな模様をした岩壁がある。は〜〜ん これが
良く山の写真で紹介される「逆層スラブ」って所か〜
上から鎖を使って下りて来るグループがあったのでマーシーさんをその辺りに待たせて写真を撮る。
10時14分間ノ岳と天狗ノ頭の中間、すなわち 「間天のコル」に下りつく。
間ノ岳から次の天狗ノ頭(あたま)へと向かう 正面のピークが天狗ノ頭 (天狗岳とも呼ばれる)
逆層スラブが近づいてくる 飛騨側には逆層の為岩屑が上から落ちてズリとなっている。
これが俺達の墓標とならん事を祈る おいわさん流 逆層スラブ写真のオンパレ〜ドや
槍ヶ岳 天狗ノ頭 ジャンダルム
確かに右手の岩壁は逆層スラブの岩が落下して結構ヤバそうな様子ではあるが、登山道はほぼ1枚岩盤で思った程
危険ではない。と言うかこの縦走路の中では一番安全ではなかろうかと思う程快適だった。マーシーさんは一気に
ここを登ったので息が切れたと言う。但し雨の日は滑りやすいので要注意との事。
間ノ岳を振り返るとこれまた鋭い岩山でこんな場所を下った自分を褒めてやりたい気分になる。この自己満足、
達成感が穂高縦走の目玉ではなかろうか。
コルまで下りていく 上からグループが下りてくる それを待つマーシーさん
鎖を伝って恐竜のウロコ 逆層スラブを這い上がる
途中の風景 やはり西側には笠ヶ岳が・・・ 上からの落石を避けて待たなければならない
岩場にはイワヒバリが2羽仲良くじゃれ合っている。う〜〜ん 高嶺の恋か ロマンチックやのう。
このイワヒバリは穂高山系に沢山生息しているらしく、雪渓の上を忙しく動き回る姿を何度も見ている。
最後は右手の信州側を巻いて10時45分天狗ノ頭(あたま)に到着。
間ノ岳を振り返る 写真の女性の様に普通は軽装備だ イワヒバリがダンスを相方の近くで踊る
岩を回り込む谷津さん 前穂高と明神岳
天狗ノ頭から間ノ岳を振り返る
天狗ノ頭 マーシーさんが靴を脱いで足を休める 谷津さんに撮ってもらう 天狗ノ頭
岳沢(左手前) 中央に梓川と河童橋付近 その向うが霞沢岳 右奥が乗鞍岳
アオノツガザクラとイワカガミ ゴツゴツピークを振り返る
親しくなった埼玉の谷津さんと仕事や奥さんとの馴れ初めなど山と関係ない話題に花が咲く。ヘリコプターが
南側から青空高く飛んできて奥穂高の向うへ消えていった。
上高地の河童橋付近を見下ろす事が出来る。私は目が悪いので肉眼では良く見えないがマーシーさんは橋まで
はっきり見えると言う。 と言う事は逆に河童橋から見上げた風景に我々が立っているのだ。
これも又穂高縦走の目玉だろう。
天狗ノ頭から天狗のコルへはアオノツガザクラやイワカガミを鑑賞しながら主に飛騨側を巻いて鎖を使ったり
しながら降下し、11時15分「天狗のコル」に下りついた。
分岐標識が立っており、ここから上高地へのエスケープルートがあるらしい。まあここまで来たら相当の悪天候
でもない限り縦走を全うするだろう。
天狗岩ってこの右手の岩かいな? 天狗のコルに下りる谷津さん
上から見るとこんなに垂直よ 真下にコルの標識が見える
さあいよいよここからが最後の苦しい登り一辺倒の正念場となる。
朝西穂山荘を出てからここまでおよそ6時間半、重たいザックを背負ってこの岩尾根と格闘して来た。
これまでのアップダウンで相当足に負担が来ている上に、更にここからコブ尾根ノ頭を経由してジャンダルム
基部までの約2時間弱ひたすら岩場を這い上がって行く事になる
天狗のコルからも飛騨側を巻いて畳尾根の頭に向って這い上がっていく。今までの茶色い岩屑の塊みたいな
間ノ岳や天狗ノ頭と違って土台の岩は白っぽくしっかりしている。
山塊が大きいと風化も少ないのだろうか。但し登山道には浮石が相変わらず多いので登山者の落石には気を付け
なければならない。12時30分 南側からガスが急に湧いて来た。カミナリを心配したが雷雲ではなさそう
なのでちょっと安心。
え〜〜 いきなりこんな登りなの? これからジャンダルム基部まで地獄の上昇が続く
急だが岩はしっかりしている 鋭い尾根を飛騨側に迂回してルートが付けられている
少し赤茶けた凹み部を進む事になる 今まで通過して来た尾根が眼下に見える
歩いても歩いても終わりが来ないような長さだ。傾斜が急なのと高度3、000mの為 5〜6歩歩くと息が切れ
少し休んでは又歩く。ルートはほぼ白いペンキでマークがあるので相当の霧でなければ何とかなる。又危険と言わ
れる落石も大キレットや北穂高〜奥穂高の縦走路に比べて極端に登山者が少ないのでヘルメットもすっと被っている
必要がない位だ。 あくまでも自己責任だけど・・・
あちゃぱ〜〜 ガスが湧いてきたぞ ハクサンイチゲが咲く尾根筋
信州側には雪渓が残る ジャンダルムの手前の細尾根
12時50分前方の霧の中から大勢のオバサンらしい声が聞こえる。一体何事じゃ
ス〜〜と一瞬霧が晴れると何と穏やかな形をした岩尾根が現れ、その天辺に何十人という団体登山者が歓声を
上げて騒いでいるのだ。え〜〜?? あれがジャンダルムなの・・・・・
待っている間、何度も霧の中からガラガラと岩が落ちる音と人間の「ラク〜」と叫ぶ声がする。
早くジャンダルムに行きたい気持ちを抑えて団体さんが去るのを行動食を食べながら待つことに。朝、山荘で
高い飲料を買うのが躊躇(ためら)われ1.5リッターしか水を携行しなかったのでここでほぼ水が底をつき、
舐める様に少ない水で口を潤すハメになる。
集団の移動が始まったので、こちらもスタンバイする。
あんりゃ このタコ入道が「ジャンダルム」なの? ちょっとイメージ狂っちゃうなあ
団体さんが下りてくるのをひたすら待つ よっしゃ〜 集団移動が始まったぞ
一旦コル部に下り、岩盤を伝ってジャンダルムに這い上がる。南側からのルートは簡単だった。13時23分
「ジャンダルム」(3,163m ) に上がる。
霧で辺りが見えずちょっと残念だが、確かにここには「ジャンダルム」と書かれた分厚い板と高御位山さんが
掲示板で貼ってくれた鉄の風見鶏棒がある。暫く霧の晴れるのを待ったが、期待が持てないので奥穂高へ進む事に
する。
ジャンダルムへのルートは問題なし 四国のイノシシ・コンビ ジャンダルムに這い上がる
谷津さん 一緒にジャンダルムを踏めて良かったね ここジャンダルムでシェーをする事が私の目的だった
霧のジャンダルム山頂とロバの耳
谷津さんが山頂に忘れ物をしたらしくそれを待っていたらもうマーシーさんは霧の彼方に消えていた。13時
50分ジャンダルムを信州側に巻き前に出る。そこからはロバの耳を飛騨側に巻いて下りるルートとなる。
向うの尾根筋で声がするが、霧で辺りが全く見えずルートが不明になる。ロバの耳は稜線を歩く事は不可能なので
飛騨側、すなわち西側=左側を下るルートになるのだが、霧がかかると分かりにくい。谷津さんと二人で進む
べきルートを探しながら崖を下るので結構ここで時間を使った。最後は鎖場を回り込んで更に岩場を下がると
14時45分「馬の背」取付きに出た。
岩が突き出した細尾根なのでこれは馬の背ではなく「竜の背」じゃないの? 10分位馬の背稜線を4点確保で
這うと奥穂高岳の付け根に入る。ここまで来ると岩幅が広がってどこでも歩けるのでホッとする。
10分位馬の背稜線を4点確保で這い、奥穂高岳の付け根を経由して15時09分奥穂高岳に到着した。
ジャンダルムの基部を信州側(右)に巻く そこからロバの耳を飛騨側(左)へ巻いて下りる
下側にある支尾根侵入禁止の×マークまで下りる そこからロバの耳の飛騨側ルートが続く
この辺りは危険だが鎖がある 鎖で安全を確保しながらロバの耳をトラバース
ロバの耳(トラバースルート)とジャンダルムを振り返る
ここから馬の背に這い上がるのね え? こんな場所がルートなの?
しょーがない 行くしかないわい 谷津さん 落ちないでよ!
馬の背から落ちるとそこは上高地??
クワバラ くわばら 馬の背の最後を通過
奥穂高岳への最後のアプローチ
15時09分奥穂高岳にヘロヘロになりながら到着。3人で仲良く記念写真を撮り、白出コルの穂高山荘
に向う。水分が体から消え去り口の中が乾いて言葉を話しにくい。脱水症状に近いのでゆっくりと山荘向かう。
もうすぐ水や〜^ 水やで〜〜とつぶやきながら15時45分白出コルの鉄梯子を下り、山荘で1本400円の
ポカリスエット500mlを一気に飲み干す。プフェ〜〜 生き返った。
白出コルの立体テン場は予想通り一杯でここでもヘリポートが臨時テン場となっていた。周囲の写真を撮りなが
らヘリポートへ上がるとマーシーさんは既に場所を確保してテントを張っていた。
奥穂高岳に到着 いや〜この疲労感と満足感
奥穂高岳から涸沢カール 雪渓が多く残る白出コル 穂高山荘
白出コルの夕暮れ ヘリポートに設置したテント (オレンジ)
ジャンダルムの上に月が出る 夕暮れのジャンダルム
谷津さんがお湯をかけると出来る夕食を二人にプレゼントしてくれたので早速山荘に水を買いに行きお湯を沸か
す。ついでに谷津さんにビールを奢ると約束してたのでマーシーさんと谷津さんに缶ビールを調達。
天気は夕暮れからガスが晴れ美しい風景となり、奥穂高岳の上には月が出ていた。
夕方になり山荘の部屋を確保した谷津さんが缶ビールを抱えてテントにやってきた。
谷津さんは翌日は奥穂から吊尾根〜前赤石〜岳沢へ下ると言う。ちょっと心が動いたが我々はおじょもさんが
去年勧めてくれた涸沢〜屏風岩のパノラマコースを下る事にする。1時間程楽しいひと時を過ごす。去年の雨の
槍ヶ岳でも東京の人に会い親しくなった。
一期一会の出会いではあるが山の記憶と共に人との出会いも又懐かしい記憶となって心に留まる事だろう。
第3日目 涸沢カールに続く