9月21日 2日目
北岳山荘テン場〜間ノ岳〜農鳥岳〜大門沢小屋テン場 約10時間
カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである
何度も目が覚めて外を眺めるが、風が強いにもかかわらず霧が益々濃くなり山荘の灯りさえも見えない。
辺りが明るくなり6時前に外を見ると、霧の合間に富士山が少し見えた。しかしこれも数分の事で又白い
世界となる。
この霧ではヘリコプターも飛ばないだろうが約束の06時30分までにテントを畳んで受付に行く。いかに
も北岳から富士山を見たかったのでザックを置いて農鳥岳をピストンする事に一旦決め、ザックを山荘に
預けてサブザックを無料で借りる。
07時30分出発しようと受付付近に行くと小屋のスタッフが天気図を眺めているので様子を聞く。「前線
が北から下がっているので明日はもっと風が強くなり天気が大荒れになるでしょう」との予報。
う〜〜ん それではここに舞い戻っても仕方がないではないか。07時50分迷った挙句、一旦借りたサブ
ザックを丁重にお礼を述べて返し、最初の予定通り農鳥岳から大門沢小屋へ縦走する事にする。「途中の
稜線では瞬間風速が20m近いから気をつけて下さい」と小屋の人からアドバイスを受けてブルーな気持ち
で出発する。
北岳山荘が一瞬見えた ハイマツの間でいい場所です お〜〜 うっすらと富士山が見えるぞ
ちょっと不満だけれど 一瞬姿を見せてくれた富士山
案の定、稜線は物凄い風と霧でよろけながら歩く。雨も降りそうな天気ではあるが、槍ヶ岳でザックカバー
を付けて強風で吹き飛ばされた苦い経験を活かして装着しない。冷たい強風が体に当たって相当寒く感じる。
これで雨にでも降られれば低体温症状になる可能性がある。標高のある山は危険性がつきまとうという事だ。
反対方向から歩いてくる人に出会うと北岳山荘から農鳥岳までピストンするつもりだったがあまりの強風と
寒さで諦めたと言う。 う〜ん やはりピストンしなくて正解だったかな。
地図を見ると途中で「中白根山」ってのがあるのだが、濃霧の為さっぱりわからない。所々にケルンに木の柱
を立てた目印があるので最初は標識を確認していたが、途中で面倒になって結局「中白根山」の標識は確認
出来なかった。
09時08分傾斜を上がると大きなケルンがあり、そこが間ノ岳かも知れないと思って記念写真を撮って
いると辺りが一瞬霧が晴れた。丁度反対側から来た単独の山ガールがあっさりとこの地点を通過するので
「ここが間ノ岳ではないのでしょうか?」と聞くとにっこり笑って「まだ中間点ですよ」と教えてくれた。
改装中の北岳山荘を出発 風が強いし視界も悪い
標識もどきがある度に表示がないか確認する 前日 沢で拾った銀マットを背負った私
草モミジ この美しさは何だ〜 ちょこっと晴れた場所のケルンで
09時08分傾斜を上がると大きなケルンがあり、そこが間ノ岳かも知れないと思って記念写真を撮って
いると辺りが一瞬霧が晴れた。丁度反対側から来た単独の山ガールがあっさりとこの地点を通過するので
「ここが間ノ岳ではないのでしょうか?」と聞くとにっこり笑って「まだ中間点ですよ」と教えてくれた。
そこから又岩尾根が続き、草モミジが霧の中に鮮やかに傾斜を彩っていた。
09時56分 日本の山標高第4位の「間ノ岳」(あいのだけ)山頂に到着。霧で辺りが見えないが前日
八本歯のコルから見た間ノ岳の雄姿からは想像出来ない実に平凡なピークだった。
途中で抜かれた「なにわの黒頭巾」と反対側から来られた登山者の二人だけがここに居た。少しの間情報
交換をして先を進む。
霧が一瞬晴れてピークから北岳方面を振り返る
行く手は岩の尾根 ハイマツの緑と草モミジの赤がいい色合いだ
又 霧が出てきた 間ノ岳山頂に着く 益々視界が悪い
間ノ岳三角点 霧に霞む岩峰
11時04分三国岳分岐に到着。 左手前方にうっすらと富士山が見えるが、デジカメでは恐らく写らない
だろう。左側のトラバースを進むと峠の前方に低いコル部があり農鳥小屋が見える。その向うには大きな山塊が
屏風の様に霧を被って構えている。
「え〜〜あそこまで降りて、又あれを登るんかい」強風で体力を消耗し少し弱気になる。眼下に見えた小屋まで
中々着かず、トーチカみたいな高い広場を抜けて11時17分やっと「農鳥小屋」に着いた。
農鳥小屋で食事でもと思っていたのだが、見る限りそんな雰囲気の場所ではなさそうだ。売店と看板がある
小さな窓口から大声で叫ぶが誰も居ない。小屋の玄関口がわからず右往左往しながら板戸を空けるとコタツの中で
ヘルメットを被ったおっさんがうつ伏せになって顔を上げた。「あの〜〜 ペットボトルを買いたいのですが・
・・」「ええよ」と言いながら売店小屋へ一緒に移動。くだんのオッサンは腕時計を見ながら「天気悪いんだから
早目に先を急がにゃ」と二人を急き立てる。ウワサ通りの変わった人やけど決して悪い人ではない。
岩場だがルートははっきりして歩きやすい 草モミジが美しい
相変わらず強風の中を進む 幾つものアップダウンを繰り返す
峠に出ると前方に農鳥小屋が見える その後ろに巨大な山塊が まるでマカロニウェスタンの世界や
峠から農鳥小屋へと下る 中々小屋が近づかない 三国岳分岐の標識
農鳥小屋のトーチカ台地に着いた 農鳥小屋を振り返る
さて、裏手に衝立の様に聳える「西農鳥岳」へ向って上昇する。何度も息が切れて後ろを振り返る。その度に
農鳥小屋が次第に低く小さくなっていく。
12時15分衝立を登りきると小屋は見えなくなり、前方にある更なる高みに向う。西農鳥岳ってのがある筈
なのだが、霧の為どれがそうなのか確認出来ない。 風が強くて近くのピークに確認に行く気にもなれない。
岩場が続く小さなアップダウンを繰り返すと13時30分串団子みたいな形をした標識が立つ「農鳥岳」に
着いた。でも北岳どころか間ノ岳も西農鳥岳も見えない山頂で記念写真を撮る。遅まきながら山頂横の窪地に
あるテン場(正式の場所ではない)付近で昼食を取る事にする。
そうするうちに霧がス〜〜と晴れて来てやがて北岳が姿を現した。農鳥岳の山頂に小さなナナカマドがありやはり
赤い実を付けていた。
この急な傾斜に会話も途切れて黙々と登る モンベルのハイキング用ローカット靴は快調だ
あそこが一番の高みだろうか ここから先は農鳥小屋が見えなくなる
ありゃ? まだ高いピークがあるじゃん 強風に吹かれながら岩場を上がる
快適な登山道 分岐標識
結構岩場を歩く事になる でも北アルプスの様な厳しさはない 尖った奇岩が並ぶ
結局 どれが西農鳥岳だったかわからず仕舞いだった 標識を取り付けに来た人とすれ違う
農鳥岳手前の岩峰
農鳥岳山頂 同じく農鳥岳山頂
農鳥岳山頂の東側にあるテン場(窪地)より間ノ岳、北岳を見る
休憩の後、天候が回復気味の3000mの標高を後にするのがちょっと残念な気持ちになるが、それを抑えて
出発する。山の天気はよくわからない。
ハエマツの斜面を大門沢分岐まで一気に下りる。14時50分海で見かける航路標識ブイみたいな鉄やぐらが
立つ分岐に到着する。なんでもこの分岐を見失い遭難した家族が寄付を募って設置したとの事。(研治よりの
情報)
左手に広がるハエマツの斜面に向って登山道がジグザグと刻まれている。南アルプスにはライチョウが多いと
聞いていたが結局見る事が出来なかった。非常に残念
タカネヨモギが群生している東斜面 ちょっとした岩場を通過
南の広河内岳方面へ進む 農鳥岳を振り返る
山の地主企業の標識 グングン高度を下げる
大門沢分岐の標識 東側に向かってハイマツの中をジグザグに下りる
15時20分一度ダケカンバが生えたコル状の窪地に下り、そこから又樹林帯を下る。この辺りのハイマツは
風の影響が少ない為か背丈が2m近い。お花畑っぽい場所を抜けると、今度は針葉樹の樹林帯に入る。
そこからの斜面が急な事。モミかシラビソかよくわからないが、そんな樹が沢山生える岩だらけの急な登山道を
下る。しかし行けども歩けども一向に沢部に到着しない。相当の標高差はあるものの、道はしっかりしている
ので間違う心配は無いのだがいかにも遠い。こんな単調な場所を逆からこの急斜面を登る気がしない。
ハイマツの生える登山道を下りて行く 平坦地まで下がる
ダケカンバが現れる ここから樹林帯となる 風が当たらないのでハイマツの背が高い
ダケカンバの美しい樹林帯
針葉樹林帯に入る 大きな岩がゴロゴロ転がる急斜面を下る
16時40分沢の音が次第に大きくなりやっと主谷部まで降りた様だ。リンドウの咲く岩場から左手の山手を
見ると、傾斜がきつい沢が山肌を削ってこちらに広がって来ている。やっと沢近くまで下ると今度は沢伝いに
右岸を大門沢小屋を目指す。
この登山道は整備が行き届いており快適に歩く事が出来た。それでも距離はそこそこあり大門沢小屋到着まで
更に50分を要した。
17時30分薄暗い森の向うに小屋が見えてホッとする。結局今日は強風に煽られ10時間弱ひたすら歩いた
事になる。大門沢小屋付近の標高は1,600m位だから3,000mの縦走路から標高差1,400mを下
った事になる。
小屋のご主人にテン場を申し込むとじっと時計を見て「もう少し早く着けないの?」って言葉を発した。
「ええ ええ 僕達ももっと早く着きたかったです」と答える。早出早着は私の山歩きスタイルではないのだ
から・・・という言葉を呑んだ。
18時までにシャワーを使って下さいと言うので大急ぎでテントを張り、シャワー室に向う。二つある簡易
シャワー室にはそれぞれ先客のご夫婦が使っていたので少し待って暖かいお湯をかぶる。4分500円は安い
と言える。ここは石鹸も使えるので助かるが、果たしてこの排水の処理はどうしているんだろうか
テントを張った上の段に、農鳥岳で会った「なにわの黒頭巾」が既に到着しており、親切にも上側にあった
テント用の石を運んでくれた。我々より数時間も早く着いたとの事だった。シャワーを浴びてさっぱりしたので
川の音も余り気にならず寝る事が出来た。
やっと沢筋に着いた〜 厳しそうな沢が山肌を削って大門沢源流に続く
大門沢 登山道は整備されている
やっと大門沢小屋に到着 ちょっとボケてますけど・・・ 月がとても明るかった
第3日目 大門沢小屋〜南アルプス林道・第一発電所前〜奈良田〜広河原〜芦安
大門沢小屋まで下りてしまえば主たる山行の楽しみはなく後はもう帰るだけだ。
早朝に目を覚ますと、テン場から見える谷間の向うに富士山がくっきり見える。手前の尾根で裾野までは
見る事が出来ないが、U字形をした谷間の向うに姿を現す朝焼けのシルエットは感動するに十分の姿だった。
小屋のご主人に聞くと小屋から奈良田まで約3時間かかると言う事だったので、10時10分奈良田発のバス
に間に合う様06時30分早めに出発。
小屋の前を抜けて右側の沢に下る道がある。藪っぽい右岸を進むと直ぐに丸木橋があり左岸に渡るが、直ぐに
又右岸に渡り返す。
横板で補強した危なっかしい丸木橋が随所にあり、Reiko
さんが緊張したのもよくわかる。
大門沢小屋のテン場から見る朝焼けの富士山
確かに富士山じゃ〜 大門沢小屋
お先に〜 (難波の怪傑黒頭巾に挨拶をして出発) 沢筋を下る
確かに女性は怖がりそうな丸木橋だわい 登山道に谷水が流れる
沢沿いの気持ちの良い自然林を歩き、07時10分ブナ林がある平坦地に着く。暗い谷間の向うに明るい日差し
が木々の間から差し込み美しい。ここを過ぎると急降下となり更にドンドン下ると07時45分左下に長い
吊橋が見えた。
これを左岸に渡って手摺のある整備された崖道を下りると又吊橋に出る。
木漏れ陽が差し込む自然林の平地 ここから又急な、傾斜を下がる
横木を打った丸木橋 横木のステップが飛んでいるので慎重に渡る
大岩の間を抜ける 第1吊橋が左手下にに見えてこれを渡る
08時00分ダムを左に見ながら歩くと3番目の吊橋を渡る。すると直ぐ下側に広い林道が現れそこに下り着く。
未舗装ではあるが車の走行には何の支障もない路面状態だ。
途中の登山者と話をしながらそれを追い抜き、08時30分今度は舗装された南アルプス林道の第一発電所トン
ネル前に着いた。予想より早く着いてしまった様だ。
鉄パイプの手すりが付けられた斜面を下る 第2吊橋を渡る
ダムを左手に見ながら通過 第3吊橋を渡る
第3吊橋を渡ると広い林道に下りる 未舗装だが綺麗な道だ
奈良田題1発電所前(トンネル入り口)に到着 時間があるので奈良田まで車道を歩く
トンネル入り口にいる警備員が「ここにバスが止まるから奈良田温泉は休日だし、この辺りで待ちなさい」と言う。
でもバスが来るまでまだ2時間もあるので奈良田まで歩く事にする。
舗装道路を歩いてもモンベルのローカット靴は快適だ。09時10分広い川原をもつ奈良田バス停に着いた。
奈良田には南側(静岡寄り)に見延(みのべ)という駅があり、この方面より車の乗り入れが出来るのでマイカー
登山者が多い。
ここで例の「なにわの怪傑黒頭巾」が後から着いて、研治が落としたザックカバーを拾ってくれていた。彼は大阪
から静岡経由で奈良田まで車で来たと言う。
芦安まで送りましょうと申し出てくれたが、相当遠回りになるので好意だけ受け取り辞退する。山男はいい人が
多い。登山者は午前中10時10分発広河原行きを利用しておらず、奈良田発は我々2人だけだった。
奈良田の温泉は休みだった 奈良田のバス亭が見える (手前に自家用車の駐車場)
難波の怪傑黒頭巾がやって来た 研治のザックカバーを拾ってくれていた
ここから50分バスに揺られて広河原まで帰る。次の芦安行きのバスまで時間があったが、乗り合いタクシーが
客集めをしていたので100円だけ多目に支払って12時頃芦安まで帰る。
バスに揺られて山間を広河原へと向かう 広河原バスターミナル
乗り合いタクシーで芦安に帰る あ〜〜風呂に入りたかった〜〜
この案内図 何か変! 甲斐駒ケ岳が立派で北岳が低く見える
ここにある温泉に浸かって昼食を摂り運転を交代しながら京都まで帰る。駅近くのコンビニでザックに荷物を
詰めて家に送る。そこから身軽になりJRで坂出に帰る事に。
駅前で研治が世話になったなと握手を求めていたのでテレながら握手を返す。
お互い我が強く衝突もするが、まあ兄弟なんだから先も長くないし仲良くしようと素直に思う瞬間だった。
還暦双子兄弟の南アルプス縦走はここに目出度く完了した。
HP仲間で 北岳に登られた登山記
グランマー啓子さんの北岳は ここ
Reikoさんの 北岳〜間ノ岳〜農鳥岳縦走記は ここ