乗鞍岳(3,026m) 平成25年8月7日


乗鞍岳(剣ヶ峰) 日本百名山 、超3千メートル峰

平成25年7月末に一応会社を退職した記念にサマンサから信州旅行を提案された。日本の3千メートルを越える21山
踏破を目指す私であるが、乗鞍岳に関しては山頂近くまでバスが乗り入れられて余りにもお手軽なイメージがある為今ま
であまり興味が湧かなかった。

今回旅行の延長でその「乗鞍岳」(剣ヶ峰)に登るチャンスが到来した。サマンサと旅行する時は少しリッチな旅となるので
ホテルの予約はお任せだ。但しこの場合、山登りに工夫を要する。

乗鞍岳はジャンル的には北アルプスに包括されている様だが、この山は焼岳の南側に少し離れて横たわっている。なだら
かな曲線が馬の鞍の様に見える所から江戸時代に名付けられた。それ以前は日岳(ひだけ)、朝日岳とか呼ばれて、その
後「位山」とか「愛宝山」と呼ばれていたらしい。


   西穂高岳登山口(西穂山荘)付近から見た乗鞍岳 (焼岳の奥に雪を抱いて見える)

今回の穂高岳登山ルート図 

肩ノ小屋口〜室堂ヶ原(肩ノ小屋)〜剣ヶ峰〜室堂ヶ原〜富士見岳〜畳平 

乗鞍岳へのアクセス道 (2003年からマイカー規制の為バスかタクシー利用となる)
@岐阜県側(平湯・朴ノ木平))からは乗鞍スカイライン経由、畳平へ
A長野県側(乗鞍高原)からは乗鞍エコーライン経由、畳平へ


平成25年8月6日朝高松を出て瀬戸大橋を渡る。飛騨高山、平湯までは北アルプスへの御馴染みのルートを辿る。平湯か
沢渡(さわんど)へ安房トンネルを越えて初めて車で走る。前川渡(まえかわど)という場所でトンネルとトンネルの短い間
に右手に乗鞍高原への分岐があるのだが、対向車との関係が危険な為直接右折が出来ない。ここは一旦トンネルを抜けて
回転指定場所に従いUターンする。

今度は東京側から来る方向となり、又トンネルを抜け左折して乗鞍高原へと進む。道は広いので運転には問題ないが、上高
地や軽井沢の様な賑わいはない。ペンションや土産物屋が並ぶ観光センター界隈まで来たので先に予約しているペンション
の場所を確認する。

「グリンデルワルド」と言うスイス、ユングフラウの登山村から取った名前のペンションは中々感じが良さそうだった。場所を確
認後チェックインまでの時間を利用してマイカーで行ける最終地点の三本滝(日本の滝百選)へ向う。ここまでは道幅も広くて
一般車両規制がされていない訳がわかる。

「三本滝レストハウス」近くの道路にマイカー規制の監視員がいたので三本滝への道を聞く。レストハウスの奥に遊歩道があり
素晴らしい滝を見物する事が出来た。


ペンションに帰ってチェックイン。温泉風呂があり早速湯につかった後、オーナーシェフの肉料理に舌鼓を打つ。さて、翌日の
作戦を練る。


                 三本滝の一番右側にある美しい大滝

 
   左端にある比較的小振りな滝                   真ん中の滝は垂直に水を落とす迫力満点の滝

 
            タケシマラン                    終わりかけのゴゼンタチバナ


       日本とは思えない ペンション 「グリンデルワルド」

 
   ここの食事に満足のサマンサ                        山小屋風の部屋


乗鞍岳へ

乗鞍エコーラインで肩ノ小屋口から乗鞍大雪渓の横を通って室堂ヶ原まで (約30分)

8月7日朝05時に起きて乗鞍高原観光センター前から06時10分発「畳平」行きのアルピコ交通バスに乗り、途中の登山口
「肩の小屋口」に向う。この時期03時40分発の御来光臨時便があるがさすがにこれはパス。ホテルで朝食を優雅に食べた
い派のサマンサは08時発の時差出発となる。つまり、この時間差を利用して日本百名山・乗鞍岳に登ってしまおうという作戦
である。

07時前に肩の小屋口に到着し剣ヶ峰へのお手軽登山を開始する。汚れた雪渓の右手に登山道が続く。さすが標高が3千
メートルの山だけあって早速ハクサンイチゲ、アオノツガザクラ、キバナシャクナゲ、イワキンバイ、イワカカミなどの高山植物
が現れる。

残雪の上を歩きたいが登山道の両側には緑色のロープが張られているし、この残雪はカチカチになって決して美しくはない。
振り返ると先ほどバスで上がって来た乗鞍エコーラインが見えて下界は少し雲がかかっていた。右上に旧コロナ観測ドーム
を見ながら歩くと07時40分「肩の小屋」に到着。この辺りは室堂ヶ原と呼ばれている平坦地だ。

「室堂」とは宗教的な宿泊所の事を指すので、この辺りにも修験者の宿泊施設があったのだろう。肩ノ小屋には沢山の登山者
が泊っており、このお手軽な3,000mの稜線に泊って御来光を楽しんでいるのだろう。

 
   乗鞍エコーラインの定期バス                  07時少し前に肩ノ小屋口に到着 バスは更に畳平へ


             やっぱりここは3000mの高山だわ

 
 コバイケイソウと乗鞍大雪渓                   雪渓の横に付けられて登山道

 
  チングルマの向こうには旧コロナ観測所が見える       う〜〜ん キバナシャクナゲかな?


   ちょっと乗鞍大雪渓に下りてみる   眼下に雲海が見えるからやっぱり高い所なんだなあ

 
アキノキリンソウやヨツバシオガマの向こうに乗鞍岳の主峰が           肩ノ小屋


室堂ヶ原〜剣ヶ峰 (約35分)

肩ノ小屋から岩だらけのなだらかな広い登山道が剣ヶ峰まで続く。天気は決して悪くはないのだが低い雲がかかって遠くの
山並みは良く見えない。近くまでバスが通っているだけあってここの登山者には結構素人っぽい人達や子供達も沢山混じっ
ている。途中振り返ると旧コロナ観測所のある魔利支天岳の向うに北アルプス南部の山々が見える。
槍ヶ岳、奥穂高、前穂高、焼岳・西穂高から奥穂に続く稜線・・・少しガスっているのが残念だ。

登山道は朝日岳の左側からトラバース気味に主稜線に出る。すると右手下に権現池が現れる。余りにもお手軽すぎてここ
が標高3,000mの山だと思われないが、この目で見る景色は紛れもないアルプスの風景である。

最後の登りはさすがに岩っぽく傾斜も結構キツイ。山頂手前には山小屋があるがまだ家主は到着していないのか入り口は
閉じられていた。そこから剣ヶ峰の山頂までは目と鼻の先だ。08時17分祠を左手に回りこんで標識の立った山頂に出る。

 
     室堂ヶ原から剣ヶ峰に向かう                登山道は朝日岳をトラバースして稜線へ出る


    広い作業道が登山道となっている        登山道から北アルプスを眺める


  槍ヶ岳                     西穂から奥穂までの稜線              前穂高岳

 
          槍ヶ岳       南岳              ジャンダルム       奥穂高岳


                      火口湖  権現池

 
       蚕玉神という石柱があるコル                   山頂手前の小屋

 
  信州側に建つ「朝日権現社」                      剣ヶ峰山頂 (奥が御嶽山)


山頂から更に続く大日岳・屏風岳が見え、その左手奥に木曽の御嶽山がデンと構えていた。山頂には飛騨側に乗鞍本宮
(鞍ヶ嶺神社)があって宮司もどきの人が登山者に目もくれず本を読んでいる。折角由緒ありそうな乗鞍山の山頂本宮にやっ
て来たのだから御蔭のありそうなお札やお守りを買う。

さて、記念写真だがミニ三脚を出すのも面倒なので先ほどから暇そうに佇んでいる男性にシャッターを頼む。この人は御来
光を拝みに早朝ここに来たのだが生憎カメラにメモリーを入れ忘れたと言う気の毒な人だった。そんな時に限って素晴らしい
御来光風景だったと言う。

御嶽山をバックに山頂標識近くでポーズを決める。なにせ会社の同僚からプレゼントされたシャツと帽子を着て来た証拠写
真なのだ。すると、「鳥居の方でも撮りましょう」と言ってくれた。いい人だからザックから予備のSDカードを差し出すと「ありが
とう  でも私のはSDミニしか使えないんです」とおっしゃる。いい人だが不運な人だった。


         乗鞍岳の最高峰 剣ヶ峰に立つ   満足感はあるが達成感は無い

 
          乗鞍本宮の鳥居                       飛騨側にある乗鞍本宮(鞍ヶ嶺神社)

剣ヶ峰(3,026m)〜富士見岳(2,818m)〜畳平(2,702m)  (約1時間40分)

さてすぐ近くに見える大日岳や屏風岳まで足を伸ばしたい所だがバスで追っかけてきているサマンサの顔が浮かぶ。山頂で
結構時間を使ったので急いで、しかし写真をしっかり撮りながら09時05分 肩の小屋へ下りる。今頃サマンサは畳平へ着い
た頃だが、お花畑を散策して時間を潰すように言ってあるので少し余裕がある。

登山道を離れて稜線伝いを歩き09時25分富士見岳(2,818m)へ到着。ここから畳平が一望出来る。サマンサに電話をする
が感度が悪くて繋がるだけで通信は出来なかった。

ここから下に見える鶴ヶ池に向って下りるのだがコマクサが沢山咲いていて撮影に手間取る。もう時期遅れで綺麗なのが余り
残っていないのだ。10時10分バスターミナルに到着するとサマンサも丁度お花畑から上がって来た所だったのでホッとする。。


 
  朝日岳のコル部、蚕玉岳へと下りる               子供も元気に沢山登って来る

 
  肩ノ小屋から沢山の登山者が上がってくる           不消池(きえずのいけ)をバックに咲くコマクサ


     富士見岳から剣ヶ峰を振り返る   おっさんが一人寝ていた


                    富士見岳から畳平を見下ろす

 
  重いカメラを首から下げたおばちゃん             イワヒバリが種をついばむ

  
    花は全て終わりかけていた                  畳平のお花畑遊歩道でサマンサ発見


    バイケイソウは美しくないが、コバイケイソウはアルプスが似合う

 
   畳平の郵便局        乗鞍本宮              畳平バスターミナル バックに恵比須岳

  
 乗鞍大雪渓では夏スキーをしている人が沢山いた       乗鞍高原・観光センターより乗鞍岳・剣ヶ峰を見る

少しお土産店を物色した後11時05分女性ドライバーの運転するアルピコ交通バスに乗って乗鞍高原観光センターへ帰る。
今回の乗鞍岳登山は胸を張って山歩きとは決して言えない内容だったが、まあこの山はこんなもので良いのではなかろうか
と不思議に納得をする自分がいた。


付録 
おまけの日本百名山 「美ヶ原・王ヶ頭」と「霧ヶ峰・車山」

  
    美ヶ原高原 〜 霧ヶ峰高原 の移動地図

平成25年8月7日〜8日
美ヶ原 (日本百名山): 王ヶ頭 (2,034m)  火山の浸食地形台地

お手軽に超3千メートル峰  乗鞍岳(日本百名山)を制覇した後は更にお手軽な日本百名山“霧ヶ峰”が待っていた。


               美しの塔とバックに美ヶ原・王ヶ頭 (2,034m)

8月7日午後、乗鞍観光センターにてボリューム満点のカツカレーを食べた後、カーナビを次の予約ホテル「美ヶ原高原ホテ
ル・山本小屋」にセットして出かける。ところが私のカーナビ、ソフトが古くてさんざん遠回りをさせた挙句、通行止めになって
いる美しの森という私有地へ誘導し、突然「目的地周辺です  音声案内を終了します」って黙ってしまった。ちょっと〜〜カー
ナビのお姐さん!!

結局、元に返そうとしつこく音声案内を繰り返すカーナビ嬢に悪態をつきながら一旦山から下りて今度は道路標識を頼りに
美ヶ原美術館を目指す。1時間半程のロスとなった。

 
      長野を走る電車もハイカラだ              最近熊が出た場所でカーナビは終了した そりゃないぜ〜

雰囲気抜群の白樺平を抜けて高原の美術館「美ヶ原美術館」へ16時15分頃到着。折角だから美術館を見学する事に。
館内の展示は天体精密画家・岩崎賀都彰(かずあき)氏の「宙(そら)アート」がテーマだった。しばらく見学の後、野外現代
アート彫刻展を見に背後の丘に出て40分ほどかけて散策する。

 
                     美しい白樺平を通過

 
 岩崎賀都彰(かずあき)氏の「宙(そら)アート」展               美ヶ原美術館

 
       野外アート展示場                     このシマウマはお尻ばかりで頭は無い


             星に一番近い美術館 「美ヶ原美術館」

17時25分やっと目的地の「美ヶ原高原ホテル・山本小屋」へ到着した。夕暮れ時の高原を一人で散策をすると近くに人馴れ
したアオバヅクがいた。

ホテルに帰って夕食となる。東南アジア系の給仕が沢山いるので「フィリピン人ですか?」と聞くとネパール人と言う。泊り込
みで給仕やベッドメーキングをしているのだった。ここの料理が半端じゃなく、昼に食べたカツカレーを後悔した。

 
      美ヶ原高原ホテル・山本小屋                  「なに見てんのよ〜」 アオバヅク


          夕日にシルエットを浮かび上がらせる美ヶ原・王ヶ頭

 
  ネパールから来たメイドさん                     ジンギスカン料理はボリュームたっぷり

8月8日  又してもホテルの朝食至上主義者サマンサをホテルに置き、05時単独で「美ヶ原・王頭山」(日本百名山)へ出か
ける。もうこれは登山では決してなく、牧場の車道をひたすら歩いて山頂(?)を目指す。この王頭山ときたらホテルのビルとア
ンテナの乱立する、良く言えば台地のモンサンミッシェルだ。

05時18分美しの塔を通過。写真でイメージした美しの塔はこんな牧場の柵に囲まれた場所ではなく果てしない草原が広が
る大自然の中に立つ姿だった。まあこんな食い違いは世の中に一杯あるもんさ。牧場の柵に囲まれた広い道をひたすらモン
サンミッシェルを目指す。

06時00分 王ヶ頭ホテルと電波塔群の奥にある美ヶ原の最高峰「王ヶ頭」(2,034m)に到着。深田久弥がもし生きていた
ら自分の選んだこの日本百名山・美ヶ原をどう思うだろう?

裏にマツムシソウやフウロが咲いたお花畑があったのでしばらくこの辺りを散策し06時25分ホテルに向って歩く。07時丁
度にサマンサの待つホテルに帰り朝食の後美しの塔に案内し、日本百名山の第二弾を終了する。
 
 
       朝日が高原に顔を出す                  美しの塔とその向こうに王ヶ頭
 
 
    う〜ん  これが登山道か〜                    なんか波間に浮かぶ島みたいな・・・


            これは日本百名山ではなくおとぎの国やで


                  逆光を牧場の柵で遮る   のどかな世界

 
むむっ これが日本百名山??                   ホテルの向こうに三角点があった

 
      もう破れかぶれのシェ〜や                 この向こうに北アルプスが見えるらしい


   ここが石鎚山より高い場所とは思えない  美ヶ原頂上 「王ヶ頭」 2,034m

 
  赤いホタルブクロとコウスユキソウ               マツムシソウもほぼ終わりかけ

 
  まあ横から眺めると溶岩台地の様に見える                 カワラナデシコ

 
  美しの塔は元々霧で遭難するのを防ぐ為に建てられた位置を知らせる鐘と避難小屋だったらしい

 
 マルハタケブキの彼方にはマイクロ波反射塔、放送局の通信中継所、ホテルなどに占められた日本百名山がある



平成25年8月8日 霧ヶ峰(日本百名山):車山 (1,925m) 

霧ヶ峰・・・何と響きの美しい名前だろう  小さい時からテレビコマーシャルでエアコンの涼しげな宣伝で良く耳にした高原の
名前だった。だが、旅行雑誌を見る限り決して登山対象の山とは思えなかった。

とりあえずカーナビ姐さんを半分信用しながら用心してビーナスラインに入り今回の旅行最終目的地へ向う。09時15分観
光雑誌で見ていた霧ヶ峰湿原=八島ヶ原湿原があったのでここを散策する事に。泥炭層の上に水が溜まった高層湿原ら
しく大変貴重な場所との事。パッと見尾瀬沼みたいな湿原が広がった周りに木道が付けられている。ここで小一時間歩き霧
ヶ峰・車山に向う。


      霧ヶ峰ビーナスラインにある霧ヶ峰湿原=八島ヶ原湿原

 
    高層湿原が広がる                            ツリガネニンジン

 
          ヤナギラン                             カワラナデシコ
 
   木道の遊歩道が敷設されている                      出発点に帰る


車山の手前にお手軽な登山道があったが、サマンサはラッシュの運転が出来ないので仕方なくリフト乗り場へ進む。大人往復
で1,500円のリフトにより日本百名山「霧ヶ峰・車山」登山はあっけなく終了した。


              展望所にて  晴れたら見える景色はこれだ〜〜!

 
      もうリフト登山は避けられない                      気象レーダー (車山)

 
          車山山頂                          三角点も一応押さえとこか

 
    ジャコウソウの群落が車山登山の成果だった          マツムシソウも咲いていた


                車山から見るのどかな風景


     全体的になだらかな車山だが意地の岩場もある

 
     諏訪大社の分社「車山神社」                登山者の集団がぞくぞくやってくる

 
    リフトで気持ち良い風を受けながら下りる         駐車場から眺める車山


あとはひたすらカーナビを「自宅に帰る」にセットして一路四国を目指す。
日本百名山を3山も巡るリッチは旅は満足感と物足らなさを伴ってここに無事終了した。

   
         

     
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