平成24年2月5日 (2012-2-5)

堀田(国道438号線)〜笠形山〜前ノ川〜雨島峠〜阿波竜王山〜寒風越〜三頭越〜
久保谷(国道438号線)  約11時間30分


竜王山から北西に支尾根が伸びており、先ず明神川を挟んで900m級の「島の峰」尾根が982.0三角点ピークより
西に向かって派生する。
次にその北側雨島峠より前ノ川を挟んで700m級の「笠形山」尾根が西に向かって派生している。どちらの支尾根も展望
には欠けるが、地形的、山歩き的にはとても魅力ある場所だ。

笠形山
は土器川上流、琴南町にある細長い山塊で西端の775mピークから三角点762.3m、771mピーク(赤鉄塔)、
三角点・前ノ川 700.3m、鉄塔109番 771mピーク、三角点798.1mピークとほとんど雨島峠までアップダウンの
尾根が続いている。


     国道438号線から土器川近くから笠形山を眺める  真ん中のピークが笠に見える


随分前になるがこの「笠形山」にハマった時に色んな場所からこの山に取り付いたものだ。6年前には笠形山から
雨島峠に出て県境尾根の間にある島の峰尾根の周回を企てた。


この時に雨島峠手前の776mピークの109番鉄塔から見た南側へのしっかりした尾根を中尾根へのルートと間違えて鉄塔
尾根を南に下ってしまった。その為又前ノ川沿い黒部渓谷から雨島峠へ登り返し、この時間ロスの為中尾根(島の峰)
周回を目前にして日没となり尾根を下りてしまった。



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図

今回のルートは島の峰尾根に入らず直接竜王山へ南進し、県境尾根を三頭越まで進むという周回とする。


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図  笠形山〜竜王山縦走ルート図



三頭トンネル南口〜堀田バス停(前ノ川分岐) 自転車で下る

朝暗いうちに家を出て06時30分三頭トンネル入り口の広場に車を置く。通勤自転車を車から降ろしてザック
を背負い妖しい格好で登山口の堀田まで引き返す。道路は凍結している場所もあり少しタイヤの空気を抜いて出発
辺りは次第に明るくなり土器川上流、琴南(ことなみ)の谷あいは雪景色となっている。


07時00分前ノ川への入り口付近にある堀田バス停の歩道横に良い場所があり自転車をチェーンロックして取り
付き口へと向う。数週間前に来た時は前ノ川へ少し入った場所から取り付く予定であったが、国道向いの民家横に
切り通しへのセメント階段がありそこから上がる。


  
06時35分 ラッシュをデポして自転車で国道を下る        正面の尾根は島の峰 (中間の尾根)だ

  
笠形山の南西端にある堀田バス亭近くに自転車をデポ       向かいの切り通しへの階段から取りつく


堀田〜笠形山〜前ノ川(三角点)〜雨島峠   約5時間20分


予想通り直ぐに尾根部に這い上がる。道があっても無くても尾根に上がればこっちのものだ。道は無いが歩き易い。
15分ほど進むと道路が横切っていたが尾根筋をそのまま進むと07時40分前方にフェンスで囲まれたコンクリ
ートの建物が見えた。表札を確認すると「国土交通省雨量観測所」とある。辺りは広場になりここまでは車で来れ
る様である。


広場の隅に水場が作られており、ここに向ってイノシシの足跡が沢山付いている。

  
   尾根部に這い上がればこっちのもの             あんりゃ 道路が横切っているじゃん 構わず直進

  
        国土交通省雨量観測所            広場から又左手の尾根に向かう  イノシシの足跡だらけ

比較的なだらかな尾根筋を進むと08時25分境界石が現れ一安心する。笠形山までの地形を考えると尾根筋は
長いがはっきりしており後はこの境界石や境界柱を追っていけばいい訳だ。


境界石が現れてから道がはっきりしてくる。以前国道のガソリンスタンド廃墟から這い上がってこの尾根筋に着く
と道があったのだ。
雪は積もっているがアイゼンを付ける程でもなく多少滑りながら歩く。所々に右手に平地があ
り昔この辺りまで人が入っていたのだろう。


08時50分境界石がありそこから右に尾根がターンしていた。しばらくすると左前方に笠形山の西側ピーク部が
見える。
09時00分枯れた松の横に測量用のポールが立ち、そこに「右に笠形山」の古い標識があった。

  
   08時25分境界杭が現れると尾根道となる            雪は深いが道は明瞭だ

   
       境界杭は石柱と木と両方ある            08時50分 775mピークから右に尾根が曲がる

  
775mピークから一旦尾根が下がるので行く手が高く見える    三角点直下の標識  (どうも南側から尾根を  
                                         外してトラバース道ががここまで来ているようだ)

09時10分久し振りの石積みのある「笠形山三角点」に着いた。笠形山の三角点は全山塊の西端に位置し事実
上一つ西側のピークより笠形山の尾根歩きが開始されると言ってもよい。

左前方には更に高いピークが見通しの悪い木々の間から垣間見れる。三角点から東に進むとまるで二重尾根の様な
非常に平たく丸い形のピークが待っており、この場所の植林と相まって登山者泣かせの地形と言える。


まあどこを通っても東にさえ進めば広い斜面の次には比較的わかりやすい細尾根が待っている。心配であれば常に
北側の端に沿って進めば良い。


          09時10分 笠形山三角点 (762.3m)

 
進行方向に高みがあればそれに向かえば良い       植林地帯はルートを迷わせる

 
      結構雪は深い              右へ振ったので今度は左へ振ってみる


斜面を下がりわかりやすい道に入ると俄然テープの数が増えてくる。赤や黄のビニール、赤紫のベルベットの様な布も
多い。登山の前に家で端切れを裂いてザックに詰めてくるのだろうか。10時00分柏原渓谷よりの鉄塔巡視路登山道が
左手より合流する。


   
        ベルベット生地の道しるべ                 黄テープの道しるべ

  
     同じくグルグル巻きの道しるべ                テープが現れると目印不要の明瞭な道となる

  
      左が柏原渓谷への鉄塔巡視路                  この三叉路にある標識


笠形山 鉄塔銀座を歩く


鉄塔@ 鉄塔銀座の入り口

すぐ近く標高771mピーク付近に大きな鉄塔(114番)がありそこから先ほど歩いて来た笠形山三角点からの
植林尾根とその向うに雪を被った大川山(だいせんざん)が見える。北側に向って太い電線が柏原渓谷に向って迫力
を持って下がっており大高見峰や猫山が見える。


  
  114番鉄塔より次の鉄塔113番が近くに見える    北側に電線が下がり、大高見峰や猫山がうっすら見えた


最初の鉄塔から西側を見ると笠形山の尾根が見渡せる   その向こうに雪を被った大川山が見える

鉄塔A (オレンジ鉄塔)

進行方向にほぼ水平の尾根が続きすぐ近くに次の鉄塔が待っている。尾根の鉄塔巡視路に沿って歩くと次の
鉄塔(113番)は下部が白とオレンジ色に塗られている。

ここが771mピークらしい。笠形山は見晴らしの無い尾根だが、人工物のある鉄塔付近だけが唯一展望の利く
場所となる。南側に見える立派な尾根は県境尾根ではなくその間には島の峰(
939.6m)の南ピーク(950m)を
中心に鍵形に曲がった尾根が国道438号線前ノ川分岐南側まで延びている中尾根(島の峰尾根)だ。この尾根
は900mの標高を持つので700mの笠形山尾根から見る1000m程の阿讃県境尾根は殆どこの中尾根に
隠されている。

113番鉄塔越しに良く見ると島の峰尾根の彼方に県境尾根の電波塔が僅かに見られた。進行方向(東)に向っ
て更に電線が延び雨ヶ峠付近まで鉄塔が続いているのが見える。
しかし右下に一本鉄塔(112番)が見えるが
尾根道はこれを通過しないようだ。


 
     赤鉄塔は771mピークとされている                この石柱は何だろう


   鉄塔越しによ〜〜く見ると中尾根の向こうに僅かに県境尾根の電波塔が見える


鉄塔手前から酷い藪尾根を苦労して下がると又綺麗な鉄塔巡視路に合流するが、しばらく進むと巡視路は右手、
南に下がるのでここから又尾根を進む。
最初は藪気味だが次第にスペースがあり雪の白い線に沿って尾根道が
続く。

10時15分右側に砂岩の傾斜を持つ奇妙な尾根を20m程通過する。今日は雪を被って判らないが以前石炭の
様な黒い粒が着いた異様な岩盤を思い出した。今回もここは滑り落ちない様に尾根に生えた松の枝を掴みながら
進む。


しばらく進むと長いテープが増えて下り坂が東に振るので不安になり一度位置をGPSと地図を出し確認する。
すると確かに尾根部にいるので安心して進むと尾根道は直ぐに右へターンしていた。
ここからも雪が深いなだら
かな下り坂が続きやがて右手から鉄塔巡視路が合流してきた。


  
  この藪尾根を下りると鉄塔巡視路に合流する      鉄塔巡視路が右下に下がって行くのでそこから又尾根を進む

 
   奇妙な砂岩の岩盤を滑らない様に進む              テープがやけに多い

 
     尾根が右にターンして下って行く             尾根で右手から鉄塔巡視路が合流してきた

10時45分鉄塔巡回路が尾根の右側にトラバースしている。電力鉄塔マーカーには112番から111番方面と
なっている。尾根を迂回して向こう側に出ると思い鉄塔111番へのトラバース路を進む。5分程歩いても南へ尚
進み一向に尾根を巻いて行かないので元の分岐に帰る。10時58分腹をくくって雪の多い尾根道に入る。


 
鉄塔巡視路が右にトラバースしているのでそちらに進む        引き返して尾根を進む事にした



雪の深さは10〜20cm程だが相変わらずアイゼンを付ける程の傾斜はない。緩やかに登る尾根道を右に回りこんだ
11時08分、「前ノ川三角点」(
700.3m)を通過。ここには四国のマイナー峰を網羅するキティ山岳会の野望、
青いアクリル板がコナラの木に架かっており「まだ先は長い」というメッセージが添えられていた。何処から何処
へ行くかも判らない登山者にこんなメッセージは要らんやろ。でも努力とアイデア、それに実力は一応認めてるよ。



11時17分尾根道に鉄塔巡回路が右手から合流。この巡回路は先ほど引き返した道を一旦鉄塔111番へ寄り、
又尾根に回りこんできたのだろう。
讃岐の山には珍しく雪に覆われた尾根道をどんどん進む。

  
   キティ山岳会の野望がここにもあった             分かり易い尾根道をどんどん進む


鉄塔B

小さなピークがありそこを登ると11時37分鉄塔110番があった。そこから眺めると迫力のある中尾根が直ぐ
前面を横に走っており、手前のピークから尾根が右に切れ落ちている。そのピークのすぐ向うに次の鉄塔が見え、
電線の方向がその鉄塔から左に曲がっていた。


 
    小高いピークに向かって進む                 110番鉄塔から次の109番を眺める

鉄塔C   ほろ苦い思い出

尾根に続く巡視路を進むと11時44分鉄塔109番に到着。ここまで来ると南東方向に中尾根への分岐点となる
標高982mピークの巨大な山塊が見える。この鉄塔には6年前 苦い思い出がある。当時中尾根を目指して折角
ここまで到達しながら、前面に見えるしっかりした登りの尾根を中尾根へのルートだと勘違いし、この鉄塔から南に
下る尾根筋の下に雨島峠があると思い間違って進んでしまったのだ。今見るとそんな勘違いを何故してしまったんだ
ろう?と思う様な地形なのだが・・・凡ミスとはこんなイージーな間違いを言う。


結局前ノ川上流部の黒部渓谷まで下りてしまい、又雨島峠まで登り返した苦い経験だった。この時間ロスが中尾根を
途中で下りなければならない結果となった。


当時の事を思い出しながらこの鉄塔からしみじみと南側を眺める。でも感傷に浸っている時間は余りない。
次に進もう。


 
       尾根に続く鉄塔巡視路                109番鉄塔から更に雨島峠へと鉄塔は続く



左に見える尾根が進行方向だと思いここから正面に向かって尾根を進んだ、思い出の109番鉄塔   

例によって藪尾根を苦労して下りると右手から立派な鉄塔巡回路に合流。途中から右の巻き道になるのでこれと別れ
て尾根を進む。すると今度は108番鉄塔から107番へ進む鉄塔巡回路に尾根で合流した


鉄塔D  

イノシシの足跡に導かれながら12時10分尾根を少しだけ外れた斜面にある鉄塔107番に到着。するとその向う
にすぐ次の鉄塔が見える。もうこのあたりを鉄塔銀座と名付けよう。この近くに798.1m三角点があったのだが、
地図を良く見てなかったので見逃してしまった。

 
  藪尾根を苦労して下りると又鉄塔巡視路に合流     快適な巡視路を歩く

 
      イノシシの足跡を辿る         107番鉄塔のすぐ向こうに又鉄塔が見える

鉄塔考

時々山にある鉄塔を自然に似つかわしくない人工物の忌まわしい景色と見る人がいるが私はそうは思わない。

電気というものは現在の所まだ効率的な蓄電技術が確立しておらず絶えず発電所や変電所から家庭や工場、鉄道施設
等に送り続けなければならない。この為各家庭や工場に自前の太陽光などの発電設備を設置出来る時代になるまでは
鉄塔と電線は暮らしと産業を支える重要な施設なのだ。

外出先から家に帰ってスイッチを押すと電燈が灯り、テレビのスイッチを入れると画面が出たりするのは魔法では
なく発電所と幾つかの変電所を経由して来る送電線や配電線のお蔭なのだ。出来るだけ街中を通さず効率的に送電
するには山の中に鉄塔があり電線を通すのは必然である。

登山者にとって山を横切る鉄塔や電線は位置関係の特定に役立つばかりでなく、その多くの鉄塔巡回路は登山道と
して登山者の安全をも保証している場合が多い。



ところが、昨年2012年より国土交通省の地図閲覧データ地図から電線が消えてしまった。

理由は国土交通省より各電力10社に要請した鉄塔、電線データの提出を電力会社が「揃って」拒否したからだと
言う。電力会社によればデータ提出を拒否したのはテロなどに対する保安の為らしい。日本中の国土、我々の空に
張り巡らした鉄塔、電線のデータを開示しない。こんな守秘義務は通用するのだろうか。

テロ対策と言うのなら1998年2月に坂出で起こった14番鉄塔倒壊事件や2001年アメリカ同時多発テロの
直後ではなく、何故、東電原発事故の後発電と送電を別会社にする議論が起こった今なのか?電力10社のお偉い
さんの中には山男は一人もいないのだろうか?

日本地理学会が国土地理院に鉄塔などの情報を引き続き電子地図に掲載する様要請する意見書の経過を見よう。


鉄塔E 

こんな事を考えながら雪尾根を歩いていると12時20分最後の鉄塔106番に着く鉄塔の下に三角点の様な
石柱が見られた。ここから中尾根が良く見えるが、その手前に右側に張出し尾根を持った927mピークが見える。


  
      982mピークの山塊が見える                     細尾根を下がる

  
最後の鉄塔106番  正面のピークは927mピークで        ここにも同じような石柱があった
             登山道はこの尾根をトラバースする


島の峰への尾根  左端が付け根の982mピークで右端が島の峰三角点の北側にある950m峰
(以前、中央に見える尾根を島の峰尾根へのルートと間違って手前の鉄塔から南に進んでしまった)

 

やっと折り返し地点、雨ヶ峠に到着

12時22分、最後の鉄塔を過ぎるとあっけなく懐かしい雨島峠に着いた。峠には三界万霊(さんがいばんれい)
と刻まれたお地蔵さんが祀られている。


三界とはこの世の世界で、それを分けると欲界、色界、無色界の3つがあるらしい万霊とはこの世における一切
の霊、つまり自分の祖先の霊だけでなく無縁の霊も含む
この世にある全ての人間の霊を広い心で拝む事を対象と
したお地蔵様なのだ。


今回の縦走で丁度中間地点となる。ここまで登山口からほとんど休み無く5時間20分歩いて来た。しかしここ
から県境尾根への登りが待っているのだ。



   雨島峠三叉路     足跡が戸石方面から竜王山へと続いていた。


                  雨島峠の三界万霊地蔵


雨島峠〜阿讃県境尾根   約2時間30分


幸運な事に足跡が竜王山方面からこの峠まで付いており、峠から東側の塩江方面(水ヶ元、戸石)へと下って
いる。寂しい一人歩きに友が出来た思いがする。又、このトレースを辿れば深い雪だが時間セーブになる。


後でこの足跡は「さぬき里山 自然探訪&トレッキング」のブログ作成者だとわかった。


雨島峠を出発するとすぐ105番鉄塔方面への巡回路が左に別れる。足跡は右手のトラバース路へと続いている
ので迷わずそれを追う。ところがこの927mピークの山襞(ひだ)が大きく西に振るので、このイボイボ長靴
を履いた人間がひょっとして林業関係者だったらとんでもない場所に行ってしまうのでは・・と少し心配になる。
でも今更ピークに登り返す気にもなれずひたすら長靴の持ち主が登山者だと信じてトラバース道を進む。


この辺りの雪は相当深く、時々大きな壷足となっている。12時40分道脇に小さな林業作業小屋がありその先で
ルートが少し左に振るので安心する。


13時05分トラバース登山道が尾根部へ回りこんだ。すると今度は左側のトラバース道へと足跡が誘う。少し
このトラバース路を進んだ所でGPSと地図を出し位置確認を行う。すると尾根筋に982mの三角点が地図に載
っているのでここを踏む為に一旦足跡の友とお別れして尾根に這い上がる。

雪が深く3歩毎に息が切れ休む事を繰り返し13時30分やっと尾根部に到着。尾根筋の雪は深く畝って積もって
いる。トレースの無い尾根を喘ぎながら13時40分、「982m三角点」の三叉路に到着。

 
105番鉄塔(左)へは進まず右のトラバース道へ    トラバース路に足跡クンが続く

 
え〜〜あの尾根襞を右にトラバースするんかい             作業小屋跡があった

 
    足跡が少し登って行くので安心する           尾根に出て左のトラバース路をしばらく進んだ後
                                     ここから尾根に這い上がる (13時10分)

 
      風で雪が吹き溜まった尾根筋                  ピークに近づいたぞ
 


  13時40分 982m三角点を通過  島の峰は右へ 、竜王山は左へ進む

右へ行けば島の峰がある中尾根へと続く。左に行くのは初めて通るルートだ。尾根筋を進めば自然に竜王山へ進め
るだろうと簡単に考えていたが甘かった。


最初は背の高い植林地帯があり、その内右手が少し開けて主稜線などが見えたが、更に進むと高さ4〜5mの若い
杉の植林地帯となっており地形が平たく見通しが全く利かない。尾根の外れに出ると正面に県境尾根が見えず谷に
向って下っている。右手は平たい杉林の傾斜が同じく下っている。もう一度高みまで引き返し尾根を拾いながら
出来るだけ右寄りに進むが又私の足跡に合流してしまう。


GPSで位置確認すると場所は尾根筋に居る。う〜〜ん、ここは地図の方角とコンパスを信じて南東を目指し植林
地帯の中に突っ込む。雪まみれになりながら南東方面へ進むと植林地帯が終わると同時に14時05分尾根筋に
出た。そしてそこには旅の友、足跡クンが左のトラバース道から出てきて待っていた。


 
    最初は分かり易い尾根だった              ここから南に見える尾根は目指す竜王山だ 遠い〜

 
ありゃ  一体どっちへ行けばいいの?             う〜〜ん 地図と磁石を信じて南東へ進む


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図  島の峰分岐ピーク(982m三角点)付近

この難関をクリアすれば後は明確な尾根道を県境主稜線へ向うだけだ。時間を読んだ訳ではないが漠然と竜王山に
14時頃到着と考えていたが無理だった。

道がはっきりすると俄然赤テープが増える。「要る時に無く、要らない時に有るものな〜〜に?」
島の峰(中尾根)を振り返ると途中で北側に曲がっている様子がわかる。境界石柱が現れ正面右に目指す阿讃県境
尾根が見えてホッとする。


しかし、前方の主稜線が目線より相当高いのに足元の登山道が下がって行く。丁度石立山の稜線縦走で中東山から
高ノ瀬主稜線へ上がる手前でドンドン高度が下がるのと似ている。


でも縦走の友「足跡クン」に励まされ14時35分東浅木分岐、14時55分割れ地蔵がある主稜線分岐(戸石、
川奥分岐)に到着した。


 
   14時05分 明瞭な尾根まで下りつく                 境界石も現れる

 


                竜王山が良く見えて安心する

 
     何と 尾根道が下がっていく〜〜              足跡クンと一緒に歩く


                     東浅木原 分岐

 
    竜王山に近づくと更に雪が深くなる             割れ地蔵に手を合わす


            14時55分 竜王山 県境尾根分岐に到着〜

 

県境尾根を三頭越へ向う

県境尾根に着くと団体登山者で深い雪が踏み固められていた。もうここでお世話になった「足跡クン」の姿は大勢の
登山によって消されてしまっていた。今までありがとうよ。


ここで雪が舞いだした。標識には讃岐竜王山400m、阿波竜王山300mとあったが、あの冴えない讃岐竜王山を
往復して時間をロスする気が起こらず、迷わず展望台がある阿波竜王山へと進む。尾根の雪は踏み固められているが
多い場所では腰の高さまである。
このボブスレーのコースの様な道を南西に進むと15時05分やっと最終目標の
阿波竜王山」展望台に着いた。

以前にも書いたが讃岐竜王山から讃岐が見えず、阿波竜王山からは讃岐の国が良く見える。徳島には立派な山が沢山
あるのだからこの阿波竜王山を讃岐に分けてくれないものかと思う。




 
     讃岐竜王山は見てるだけ〜〜              主稜線は団体登山者によって踏み固めれられていた

 
      阿波竜王山展望台                    15時05分 ワレ リュウオウザンニ トウタツセリ

雪を避けて展望台の二階に上がる。「島の峰」の尾根は見えるがその向こうははっきりとした展望は得られなかった。
先を考えると時間が残されていないのだが、ここまで特に休憩もせずペットボトルの水とパンをかじりながら歩いて
きたのでザックを卸しカップ蕎麦を作る。出来上がるまでの3分を利用して記念写真を撮ったり香川側のはっきりし
ない景色を眺める。
大急ぎでカップそばを掻きこみ15時15分三頭越を目指す。

  
          島の峰を眺める                  今日の食料品を出して カップそばだけを作って食べる


あれ? 足跡がない・・・
今まで大勢で踏み固められたトレースはこの少し向こうで虚しく消えていた。軟弱者〜〜〜 ここまで自動車で上がって
尾根だけちょこっと歩いただけかい!! せめて寒風越か三頭越まで歩かんかい!! と手前勝手な雑言を吐きながら
トレースの消えた雪の阿讃縦走路を進む。(ひょっとして反対方向の相栗峠まで歩いたのかもしれない・・・)


下りは膝までの雪を蹴散らすと雪がだるまになってコロコロ転げて行くのが面白く走って下りる。が・・・登りは悲惨
だった。出来るだけ雪が凍った事を期待して北側を歩くのだが、それを藪が邪魔をする。

ストックを前に突き出しそれに乗って前に進んだり、腰の位置にストックを置き腕の力で身体を前に運んだり・・・
下りはウサギの如く、上りは亀の如く歩む。

NTTドコモアンテナ塔を左に回りこみ一旦車道に下り、また山筋に入って下ると16時13分立派な石碑がある竜王峠
に着く。ここは車道が峠を横切っており、寒風越までは更に600mの標識に従い向いの山道に入る。

16時20分「竜王山一等三角点」を通過。なんでこんな場所に三角点があるんだろう。

 
おえ〜〜 足跡クンがないよ〜〜 とほほ          車がここまで来ている  ちくしょ〜

 
   島の峰から明神川下流へと延びる中尾根          出来るだけ北側を歩こう

 
      カンベンしてよ〜〜                        又 車道かい!

 
   ホンマ かんべんしてよ〜〜〜〜             ドコモの電波塔のフェンスに沿って左折

 
         竜王峠の石碑                       ここから又尾根に入る


       16時20分 通りすがりの竜王山一等三角点に着く


更に下ると16時30分「寒風越」(さむかぜごえ)に到着。標識を見ると北側に流れる明神川中流の集落
「横畑
1,750m」 え〜と 肝心の三頭越はっと 何〜 まだ 2,400mもあるじゃん! がっくり

すると天の助けか、ここまで2人の足跡が前方の三頭越方面から続いて横畑へと下りていた。
今度は「足跡クン達」が旅の友となる。但し二人の足型は逆方向であり、気が合わないのか別々な場所を歩いて
いる。フツーは前の人のトレースをなぞって歩かない? まあこの際贅沢は言っておられよか

取り敢えずここからは「不揃いの足跡クンたち」のお世話になりながら200m毎に置かれた標識の距離が減る
のを楽しみに幾度ものアップダウンを繰り返し17時33分念願の「三頭越」に着いた。


ここには三頭神社の鳥居と江戸時代末期に据えられた一対のお地蔵さん、垂れ乳の柔和な女仏は天宇受売命
(あめのうずめのみこと)、猿顔の男仏は猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)が鎮座しており「こんな時間に
来ちゃダメよ〜」と叱咤された。

 
   16時30分 寒風越に到着          頼もしい足跡クンが仲間に加わる

 
       休憩? そんな時間は無い!     計画ではこの三頭峠手前の913.3m三角点から
                          直接尾根を西北西に下る予定だった


   17時33分 少し暗くなってきた三頭峠に着いた

 
チョー薄着の天宇受売命 (あめのうずめのみこと) 男は愛嬌 猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)
        


三頭越〜久保谷 (国道438号線)

この日の日没時間は17時36分、薄暮が約30分あるが谷間である事を考えると途中で暗くなる事は確実だ。三頭越
を出発する前に覚悟して持って来た照明道具を準備する。


ペツルのミニライトをポケットに、ヘッドランプをザック天蓋のトップに、使用予定のLED懐中電灯を胸に下げる。
この懐中電灯はメーカーは不明だが西条のコメリでお袋さんに買ってあげたのが抜群の照度。気に入って自分のを買い
に再度西条の国道11号線コメリに寄ると駐車場で誰かがコンコンと窓をノックする。

県警交通課の若い女性が「ここは右折禁止なのですよ〜」って申し訳なさそうに言われて罰金7千円! 本体7百円 
合計7千7百円もした高級品なのだ。


この久保谷(くぼたに)の沢を下るのは初めてだが、以前ユキワリイチゲを見に下流までは来たことがあり、道は複雑な
場所があるものの沢の水が浅いので暗くても問題無い。
少し県境尾根を折り返す方向に登山道が伸びており、沢の源頭部
で右岸を進む。


少々谷が深く頼りない斜面を進む場所があるが慎重にアイゼン無しでクリアする。右岸に岩が出てくると渡渉して左岸に
移る。左岸に岩が現れると右岸に渡渉する。下流に進むに従って沢幅が広がり谷との落差が少なくなってくる。


「足跡クン達」も不定期に付き合ってくれるので心強い。18時07分あと450m手前で真っ暗になるが懐中電灯一本
で十分である。


見覚えのある小さな堰堤を越えて右岸の遊歩道チェーンを越えると前面に車の音とトンネル付近の黄色い電灯が見え、橋
を渡り18時25分愛車ラッシュに帰り着く。
先ほどの雪はここでは雨となって降り出したが、予定通りの縦走を完了出来
た満足感につつまれながら自転車を回収に向う。


 
三頭峠から右に下りると尾根道から見えた広い道路が        久保谷 源頭部 この辺りはまだ広い道がある
あり、それを横切って細い道を下る

 
 この谷筋は右岸に道がある場合が多い                よっしゃ〜 あと450mだい

 
罰金込みで7千5百円のライトに照らしだされる久保谷     18時25分我が愛車に帰り着く



香川の里山は単体として登るのが気楽で平和で健康的で理想的な山歩きだと思う。しかしながらそれに終始する限り他県の
厳しい山々や中央の山を歩き通す事は出来ない。

私は残念ながらマーシーさん、趣深山さん、泉保さんの様な超人的な足腰を持たない。フツーの爺さんがフツーの体力でも
ルート選びのアイデアを駆使し、根性で休憩時間を極力減らしてヘロヘロになりながらベソかき歩きを全(まっと)うするタイプ
なのです。

里山単体歩きはもっと足腰の弱った時の為に残しておく事にして、讃岐の山々を結んで縦走の形態を取った時、初めて県外
の山歩きと肩を並べることが出来ると思っている。それに登山口まで近いというのが里山縦走の強みでもあるし・・・・
これが私が常々主張する「香川の山は縦走にその活路を見出せ」というテーマの真意である。 

今回の笠形山〜竜王山縦走はこのテーマに沿った香川の山歩きを提案出来たと思う。



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