讃岐の里山 縦走シリーズ
平成23年6月18日

天霧山〜弥谷山(いやだにやま)〜黒戸山竜王山〜毘沙古山(びしゃごやま)〜貴峰山(とみねやま)    


平成23年6月18日 香川の里山縦走

天霧山〜弥谷山(いやだにやま)〜黒戸山、ついでに竜王山〜毘沙古山(びしゃごやま)〜貴峰山(とみねやま)


多度津方面から見た縦走3山 天霧山、弥谷山、黒戸山

                天霧山                弥谷山            黒戸山


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 

カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  全行程約 8時間


      

高速道路を西から善通寺に差し掛かると左手に烏帽子の姿をした突起が見える。これが天霧山の南ピーク
である。この自然要害の上に「天霧城」の天守閣跡がある。



     
       高速道路を西から善通寺に入ると左手に天霧山の尖がりが目に入る

天霧城は「梯郭(ていかく)式城郭」と言って、本丸を堀や崖の要害を背に、二の丸、三の丸を階段式に
敵が攻め込む前面に配置する。

天霧山南尾根とはこの自然要害をもろともせず天霧城に攻め込むルートである。


6月18日に石立山〜白髪山をマーシーさんと縦走する予定だったが、前日になり雨予報となった為に延期
する事になった。
そこで雨でも霧でも歩ける天(雨)霧山を歩く事にした。

登山口は高速道路から何度もルート確認をした南尾根の末端部。ここに記念碑の様な物があり、細尾根が
天霧山基部に続いている。
お城の様なモーテルの横を通り、大池の近くに広い場所がありここに車を駐車
する。
近くに月照・信海上人の像への参道がある。


天霧山南尾根を這い上がれ 


    天霧山南尾根の全貌  鳥坂より


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラック図による 天霧山南尾根

07時30分、記念碑の裏手を抜けて尾根に向う。薄いが踏み跡もある。
暫く尾根を進むと地形通り平たい場所に出る。左手はミカン畑の様だ。境界杭の様な物があるのでなるべく
それに沿って進む。

フェンスのある建物の下側を抜けて石垣を這い上がると舗装道路が横断していた。右手に向って採石場方面
へ続いており、坂が上がっているのでそちらに進むが尾根に取り付く藪のスペースがどこにも無い。

07時50分仕方なく左手に向って伸びる作業道を使いこの部分をトラバースし10分程歩き、道が切れた
場所から尾根に向って這い上がる。木々を掴みながら更に10分位ピークまで這い上がると、向こう側が切れ
落ちて採石場の光景が眼下に広がる。


 
   月照・信海上人の像への参道入り口                   ここが登山口

 
    少し薮いた尾根  踏み跡あり                 目指す天霧山南ピークが見える

 
    みかん畑の作業道に出る                      石垣を這い上がって上に進む

 
   左手下にみかん畑が広がる                    舗装道路を東に進むと立ち入り禁止の看板が

 
    元に戻って斜め左の作業道へ入る               作業道は次第に道の様相をしなくなる

 
      ここからは道が切れる                       斜面を這い上がる

 
これは確か「p莢 (さいかち)」凄い刺や マメ科なの?    稜線の向こうは砕石場の崖となっている

しばらくこの崖に沿って上がると、急な尾根部となる。ありがたい事にスズタケなどの藪は無く、快適な急登
を這い上がっていく。
その内、讃岐の里山お決まりの安山岩が現れる。節理が水晶の様な方形で同方向に刻まれ
ている。


山頂部に近づくと所々に平坦な場所があり、ウバメガシが生い茂っている。おそらく平坦地には城の遺構でも
あったのだろう。次第に上方が透けてきて岩が多くなり08時40分細長い山頂部に到着。
左手には弥谷(いやだに)山への縦走路がある。


細長く平たい場所には「天霧城本丸(物見台)」の標識が立っている。ここの標高は382mで、三角点は東側
に少し離れて標高は360.1mと20mばかり 二の丸、三の丸、外郭部、三角点へと下がっていく。
細い尾根を東側へ下がって行くと天霧城址の欠けた石碑が松の木に立てかけられており、その向こう、草深い平地
に天霧山三角点があった。そこに「北東端の方形郭」の標識が設けられている。時間は08時50分だから登山口
から天霧山三角点まで1時間20分位かかった事になる


南側が開けており、転落防止のトラロープがありそこから天気が良いと善通寺5岳や琴平山が眺められた事だろう。

 
下を見ると見ると大池が見える 登った尾根は右側            天霧山の南ピークが見える

 
    又 さいかちの登場だわ                         人面石   イタリア人か?


    最後はウバメガシが生い茂る中々雰囲気が良い尾根道

 
     平たい場所が2〜3箇所ある                  尾根部に着いた

 
        本丸手前                             天霧城 本丸跡

 
          二の丸跡                                       三の丸跡

  
          外郭部                             天霧山三角点  標高360.1m


天霧城とは

ここ天霧城は中世の豪族、香川氏の山城である。
城主香川氏は元々相模国(神奈川県)香川庄の出身で、14世紀に鎌倉幕府滅亡後、細川氏が讃岐方面の守護と
なった時に中讃・西讃地方の守護代としてこの地に入った。


香川氏は多度津の本台山(現・桃稜公園付近)に居城を構えたが、詰めの城つまり戦術上篭城策として天霧山に
城を築いた。


16世紀になって守護の細川家が衰退した後、阿波の三好氏が讃岐に勢力を拡大させて来たが、この攻撃に天霧城
で耐え、これと和睦する。   
その直後、今度は四国統一をもくろむ土佐の長宗我部元親の軍が西讃岐に侵攻し、
またこれに良く耐え和睦にこぎつける。つまり対等な和睦に持ち込むだけの堅牢な山城であった訳だ。



しかし、天正13年(1585年)には秀吉の四国征伐に合い、長宗我部氏がこれに降伏した為、香川氏も土佐に
敗走したのである。この時以来、天霧城が廃城となってしまったのである。



弥谷山(いやだにやま)へ

多度津、白方方面から見た弥谷山と黒戸山

            弥谷山                                黒戸山

草だらけの荒れた城跡を見るに付け「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」という雰囲気然としており、おまけに
東側からこの山は採石の為日々削られている悲運の山である。
細長い山頂尾根を本丸へ引き返し、09時08分
弥谷山への縦走路へ入る。


この縦走尾根へ移る為には天霧山の南端から西側へ下っていくのであるが、標識などが無い場合は細尾根に出る
まで方位磁石のお世話にならなければならない。幸いにここには弥谷山への標識があり、急な下り坂にはロープが
敷設されていた。


途中「犬返しの険」という斜面があるがまあこの程度ならフツーの犬は問題なくクリアするだろう。確かに岩が
露出して2本足の人間は滑りやすい斜面である。ちなみに我が故郷の立川山には同じく「犬返し」という場所が
あるが、そこは約15mのほぼ垂直の崖となっている。



細尾根に下りると「地籍図根三角点」という物に初めてお目にかかった。概して緑一色で花などが少ないがここに
オカトラノオが群生していた。縦走路に下りると四国電力の鉄塔巡回路に沿って黒戸山手前まで進む事になる。

隠し砦跡や白方への遍路道を経由し、09時40分三角点のある弥谷山(いやだにやま)に着いた。
行基がここを開山した時は山頂から中国・四国の八カ国が眺められる事から「蓮華山八国寺」と名付けたらしい
が(後に弘法大師により弥谷寺と改名された)、八国どころかなんにも見えない無展望山頂である。山頂から10分
程で弥谷寺への分岐があるが、尚も尾根道を進む。


 
   本丸を過ぎて弥谷山縦走路へ向かう      銃走路に沿ってロープが敷設されていた

 
    犬返しの険  標識が2個ある       安山岩が露出していて滑りやすい(迂回路有り)

  
   地籍図根(ずこん)三角点             オカトラノオの群生 

 
隠し砦跡  ロマンチックな響きがる         こんな標識が結構多くかけられている

 
   祠があるぞ                   弥谷(いやだに)山の山頂三角点  展望は無い



黒戸山へ、そして見立に下山

この縦走路は鉄塔巡視路に従って快適な尾根道を最初は西へ、その後次第に北へと回り込む。


途中幾度か鉄塔を通過するが気をつけていれば道を失う事はない。又要所には黒戸山・弥谷寺の標識が敷設され
ている。尾根がグルリと北側へ回り込み、黒戸山に近づくと天霧山や弥谷山のピークが雨霧に霞みながらも眺めら
れる様になる。

山の北西側にある集落「久保谷」分岐を過ぎると10時36分黒戸山」に着いた。


黒戸山には三角点があり、見立不動院への登山道整備完了の立て札があった。

ここからは北東へ向う尾根に沿って登山道が整備されていた。里山は地元の愛好者によって整備される場合が多い。
ここも急な坂道には道具を使って階段状に道を整備している。これは実に丁寧で手間な作業だったろう。でも不必要
な物もある。それは見ればわかる「足元注意」「頭上注意」「スベル」の注意札が無数に木々にかけられているし、
ロープも必要な箇所以外にも付けられている。

寒風山の橋本さんの様にある時点までは評価されても、それがある時期から過剰サービスとなる可能性がある。その
限度が登山整備をやっている本人は登山者の為という情熱で一杯だからわからない。やはり客観的に冷静に指摘を
してくれる友がいたらなあ・・・という思いだ。

登山道整備という崇高な行為に対して批評する自分が嫌なのだが、やはり山歩きというものを真摯に考えるとここは
一言言わせて貰う事にした。


四国の社会派山HP 趣深山さんの赤テープ考はここ


清々しい風を受けながら霧で霞む津島神社を眺める。トンビか鷹が獲物を狙ってゆっくり優雅に旋回しているのどか
な風景がとても良い。最後は真北に向かい急な下り坂を下りると建物の裏手に出た。え? これが見立不動院なの?
私の見立て違いではなかろうか・・・特に表札もないが土壁などからそれに間違いないだろう。

狭い舗装された道路を左手に下りて行くと更に右手に下りる分岐道があったが、ショートカットを狙い真っ直ぐ進む。
周りは放置されたブドウ畑にクズの蔓が蔓延り大薮となっている。ショートカットをもくろんだ道路は途中で終了し
とても進めない藪が待ち構えていた。


諦めて元に帰り「急がば回れ」を思い知る。山の手は放置されたブドウ畑、下手は現役のブドウ畑となっている。
個人的には縦走した3山の内「黒戸山」が海岸の景色などを眺める事が出来て一番良かった。

 
   いい風景やなあ                快適な尾根やで

 
  きっと食べれないキノコ              鞍部が池になっている

 
   久保谷部落への分岐               黒戸山三角点 299.3m

 
う〜〜ん 赤テープと標識のオンパレード        樹が頭に上にある度に「頭上注意」が・・・

 
    南側には天霧山と弥谷山               岩にツツジ

 
うっ これは何のゲームや                 苔むした大岩壁

 
 天気悪いけど緑が空を覆う              これって 見立不動院なの

 
一面のブドウ畑跡に出る ハウスは現役のブドウ畑  黒戸山手前の尾根を見上げる ブドウ棚にクズが絡まる

 
以前車で偵察に来た見覚えのある道路へ着いた。ここで長靴からローカットシューズに履き替える。 
縦走路の途中で躓いた拍子に古傷の踵が痛み出したのだ。びっこをひきながら広い道路の歩道を歩き自動販売機を
探す。無い・・・
無い〜〜

30分程詫間方面へトボトボ歩きながら山手の旧道に下りて自販機を探すが無い。何かの工場があったがまさかそこで
「水下さい」と言う訳にも行かず我慢して進む。


JRの線路を挟んだ交差点で回転灯がピカピカ・クルクル回っている。その店の前に自販機があるではないか!! 
ヨッシャ〜〜  でもJRの線路とその向こうに水路があり向う側に渡れない。
踏み切りまで相当迂回して自販機に
到達。命の水を補給する。
さあ、これで又山に入れるぞ。


         黒戸山(右側)からピークを2つ越えて下山道が続く


 
  長靴からローカットシューズに履き返す              やっと現代の泉(オアシス) 自販機に到達



竜王山〜毘沙古山(びしゃこ)〜貴峰山(とみねやま)

踏み切りを旧道に渡り返して左側の山塊に向う。鉄塔方面に行けば何とかなるやろ・・と12時20分雰囲気
便りに登っていく。20分程鉄塔巡視路を歩きそれを外す草深い登山道があったのでそちらに進んでいくと
尾根部に着いた。三角点を一箇所外してしまったが、そのまま尾根道を進む。


この時期里山に多いヤマツツジが鮮やかな色彩を霧に霞んだモノトーンの世界に浮かび上がらせる。右手には
良くは見えないが詫間の町が広がっている様だ。



12時50分一つのピークに着き、辺りを見回す。樹に赤テープが巻きつかれているが山頂標識は見当たら
ない。う〜〜んここが竜王山だと思うんだけど・・・少し進むが気になってGPSで確認する。やはり今のが
竜王山だった。引き返してもう一度何かの標(しるし)を探した後、やはり無いのでそのピークの写真を撮る。

草深い尾根ではあるが確かに登山者の踏み跡がしっかり残っている。櫨(はぜ)の木には小さなブドウの様な
実が沢山ぶら下がっていた。この実、特に皮の部分から木蝋が作られるのか。又、ハゼの木は秋には無くては
ならない里山風景を作る存在となる。


 
    山へ向かって歩き、鉄塔巡回路に入る            鉄塔巡回路から尾根へ向かう登山道に入る

 
     山ツツジの存在がホッとさせる                   右手に詫間方面が霞んで見える

 
  竜王山の山頂 標高 178m  誰か山頂標識を・・・               尾根道は快適な部分もある

竜王山から毘沙古山(びしゃごやま)までは下草の少ない潅木地や少し下草のある藪尾根であるが、総じて尾根が
はっきりしているので歩きやすい。


先ほどから雨が木々を叩く音がしていたが、身体に感じるほど大降りになってきた様だ。ズボンは既に露でズブ濡れ
なのでモンベルのレインコートの上着だけを出して被る。

13時22分毘沙古山(びしゃご山)付近と思われるピークにさしかかるが、ここも又草に覆われており山頂標識
は確認出来なかった。(毘沙古山などと立派な山名が付いているんだから標識はあると思ったが、後にむらくもさん
のブログに枝にかかった山頂標識がある事がわかった。)又GPSでこの山頂付近を確認して写真を撮る。


 
    ええですなあ                                    尾根道風景

 
   毘沙古山への尾根道  雨が沢山降ってきた        毘沙古山 標高 231m


毘沙古山(びしゃご山)から貴峰山(とみね山)への尾根道は一箇所、北東方面への別尾根があり注意が必要だ。
ここを東に向けて下りて行くと尾根部を外さず鞍部へと進める。
急な斜面を下ると鞍部にお地蔵さんや休憩用の
長椅子が見えた。さすが貴峰山だけは人気があるのね。


鞍部あたりの整備された道と違い、貴峰山へと向う尾根道は結構急で荒れていた。しかし鞍部から10分程歩くと
13時55分ついに本日最後の山、貴峰山(とみね山)に着いた。
以前グランマー啓子さんの掲示板で見た
山頂の大岩にはめ込められた三角点を確認。でも天気が悪く展望が無かったのが残念。


山頂から東方面へ斜面を下るとこちらにも登山道がありロープが沢山張られていた。これに沿って急な斜面を15分
位下ると休憩所に着いた。
辺りに誰も居ない事を確認して東屋の中で着替えをする。

 
    毘沙古山と貴峰山の鞍部                   左手から登山道が延びてきている

 
    結構ハードな登山道だ                      ヒメレンゲ (別名 コマンネングサ)


                         貴峰山三角点

 
     表側から大岩を眺める                     下山ルートにロープが敷設されていた

 
あれ? 何か建物があるぞ  直接ここを下る                  東屋でくつろぐ

さて6山を巡る里山縦走は終わりを告げた。でもここから車まで結構遠い距離を帰らねばならないんだわ。
見ると右手から車道がここまで延びてきている様だ。
ここからは車道以外は東側に向って南側に下る道と、
東側へ伸びて下っていく地蔵さんが並んだ道がある。

14時23分帰る方角の東側の地蔵道を選択して東側に下るが、途中から上りになった。ん? ひよっとして
これが鞍部に続く参道か? 楽な道は無駄が多いわ


休憩所まで引き返して、南側へと下る。やはりこれが正規の下山道だった。枇杷の実が雨に濡れている。今年は
我が家の枇杷も沢山の実を付けているが雨が多いので味が落ちそうだ。下界の里が見渡せる場所まで下りたが、
雲が低く垂れ込めており山が確認出来ない。


畑の真ん中に山頂にあったと同じ様な大岩がデ〜〜ンと構えている。田んぼや畑で働いているおんちゃんや
おばちゃんに声をかけながら鳥坂を目指す。


家を出る時朝ごはんを食べて以来、飴を2個舐めただけだった。普段は食欲が旺盛で困る程なのだが、山歩きの
時はお腹が空いても食べるのが面倒で何も食べていなかった。


15時15分鳥坂の国道11号線に合流し、「鳥坂まんじゅう」のお店に入り10個入り(¥350)を買う。
遍路さんも買いに来ている。鳥坂まんじゅうを優雅に食べながら国道を外れて高速道路沿いへと下りて行く。

車の近くに帰ると池に木道を通した水生公園みたいな施設があったので、サギ草でも無いかな・・・と回るが単
なる荒れた池だった。今朝這い上がった天霧山はすっぽりと雲に覆われている。



 
お地蔵さんの道を下るがこれは山を巻いて鞍部へと登っていく様だ   竹やぶ道を又引き返す

 
   南側へ下ってシャバに下りて行く                 農地の真ん中にドデカい岩がで〜〜んと座っていた

 
   下りてきた貴峰山を見上げる                   田んぼや畑の間を鳥坂へと歩く途中  蓮の葉っぱ



   鳥坂方面から見た  毘沙古山(左奥)と   貴峰山(右手前)

 
鳥坂まんじゅう 10個入りを買い、食べながら歩く        湿地帯から見るデポした我が愛車

15時35分デポした車に帰りつく。
ちょっと足のコンディションや天気も悪かったが、念願の天霧山の南尾根を這い上がれて大変満足だった。

 


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