香川でかくも短くて面白い縦走尾根があったとは

 「源氏ヶ峰ー五剣山」 

 

平成19年4月21日 にょっきんファイブ 「五剣山」 尾根歩き


源氏ヶ峰ー五剣山 カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ

(国土交通省 地図使用承認番号 平15総使、第634号)

昔 八栗寺へお参りした記憶があったが五剣山は山歩きの対象ではなかった。
最近になり「四国山の会」会長 aki さんが2度にわたり紹介してくれた「五剣山」をサイト仲間のKazashiさんが
続いて歩きそのレポを見て興味がそそられる。
そうこうしているうちに 今度はYasuko さんとフェルナンデスが出かけてあの急峻な岩場の鉄梯子を見て
恐れをなし撤退したって・・・。これは面白い場所に間違いない!!

もちろん「香川の里山歩きの活路は縦走に求める」が信条の私はその出発点を源氏ヶ峰と決めていた。

4月21日仕事が昼で区切りが付いたので折りたたみ式自転車を会社で車に放り込みその足で志度方面へ向かう。
屋島を過ぎて牟礼(むれ)を抜け庵治(あじ)あたりで五剣山の稜線が道路筋に伸びたあたりに自転車をデポする。
我ながらアバウトな性格だとしみじみ思う。

全く土地勘がないのでウロウロしながら出発点と考えていた源氏ヶ岳付近へ進む。
道すがら見る五剣山の岩峰がおいでおいでと呼んでいる。ほ〜あの上を歩くのかと思うと気分が高まってきた。


縦走開始登山口近辺から見た今日の縦走尾根「五剣山と源氏ヶ峰」

適当な駐車場所が見当たらないので六萬寺を抜けて高松北高の南側、車の学校跡の門前に停めて
ズボンと靴だけ履き変える。いままで普段着で里山を歩きズボンを数着台無しにしているのだ。

「六萬寺」は平家が屋島に行宮(あんぐう=天皇の仮の御所)を作る間、安徳天皇の仮住まいをされた由緒あるお寺だ。

学校の敷地の為直接尾根に取り付けないので左へ迂回し、ため池の横を抜けて途中から学校裏の尾根に向かう。
小さなピークからいきなりの藪尾根、境界杭を拾いながらイバラとスズタケに悪戦苦闘。
ほとほとくじけそうになった頃何とその尾根が舗装道路に突き当たった。ホッとするやら気が抜けるやら。

   
牟礼への交差点から見える五剣山      学校裏のピークに登りここから縦走開始

  
げ〜〜 ず〜と藪ばかり  とほほ    あれ? 尾根が道路の交差部に出ちゃった

次の尾根に上がろうと場所を探していると赤と緑のテープ発見! ここから源氏ヶ岳まではスズタケが仮払われた
まともな道があった。

    
舗装道路脇にある「源氏ヶ峰登山口」 ここからスタートがモアベターよ

登るにつれて北側には樹海越しに瀬戸内海が見え、南側にはクレーター5座や高松平野が一望できる。
平家討伐の為に徳島の小松島に上陸した源義経がここから屋島の平家陣地を偵察したという「源氏ヶ峰」に
程なく到着。
なるほどここからは屋島全体は見えないが平家の総門(そうもん=海側の守り拠点)があったと思われる
付け根は見渡す事が出来た。

 
   ミツバアケビ (?)            源氏ヶ峰 山頂


源氏ヶ峰の西端から五剣山を見る  ここから樹海へ下っていくのだ

西側に出ると目指す五剣山の岩山もその頭を覗かせている。ここから一旦尾根筋の樹海に下がると
もう見晴らしは利かない。鬱蒼と生い茂る木々の間を尾根道を探しながら西へと進む。
所々で踏み跡が分散しているが尾根筋を歩けば間違いない。テープも要所に見られる。

 
    イノシシのヌタ場                鬱蒼とした森が続く

森を抜けると見通しが良くなり、左手から来る広い道と合流した。これを上がると五ノ峰の東側に続くピークらしき
稜線に出た。五剣山の4峰がにょっきり姿を見せている。心地良い風に吹かれながら尾根を進む。

 
あれ?えらく広い道に合流したやんけ      おっ 小豆島も見える 

ウバメガシのような木々の中にとてつもない大きな岩が現れたと思ったら、次から次へと大岩が続く。
五剣山の上部は火山性の安山岩質凝灰角礫岩ちゅう火山灰と角ばった礫(れき)が堆積して出来た岩らしい。
そう言えば讃岐里山の特徴であるこげ茶色の安山岩に大小の石が沢山噛みこまれている。


          五剣山の岩山が次第に近づく

 
   とてつもない大きな岩が出現          最初に現れた祠

祠があって、八栗寺からだろうか別な道が左手からここに合流している。所々で岩には横線が入っている。
これが溶岩流が破砕されて土石流の様に薄く体積した比較的柔らかい「凝灰岩層」で、
1707年に起こったマグニチュード8.4の「宝永地震」の時、五剣山の五ノ峰頭頂部がすっぱり転げ落ちたのだ。


安山岩質凝灰角礫岩の中に柔らかい凝灰岩層で亀裂が見られる


屋島がよく見えてきた  下に八栗寺も次第に姿を現す

尾根筋から左手(北側)に 幅の狭い岩のズレが続いているのでこれを慎重に進む。
次第にこの足場が少なくなり、丁度八栗寺の真上で行き詰った。
岩壁から小さな石が出っ張っているのでそれを手がかり、足がかりに3mくらい攀じ登ると
細尾根の祠に這い上がった。

 
   尾根の北側絶壁斜面を進む    ガクガクさん流 岩の弱点を利用して進む

はは〜〜ん これがaki さんや kazashi さんの写真にあった東峰=五ノ峰だ。
細尾根を少し下りて写真を撮る。ここは大雑把にピークが二つあったようだ。

 
        五ノ峰の絶壁より八栗寺を撮影


    五ノ峰に這い上がる絶壁から西側の岩峰を撮影

東側を見やると細尾根越しに歩いてきた源氏ヶ峰とその向こうに志度湾が広がる。
南側真下には八栗寺、その向こうに高松平野、西側は山水画のようなコッペパンと屋島の付け根、
北側は庵治半島、瀬戸内海と小豆島がぐるりんと見渡せる別天地だ。

 
必死で祠の痩せ尾根に這い上がる     少し細尾根を東に下りてみる


    五ノ峰の細尾根が2つの小ピークを経て四ノ峰へと続く

 
 岩窟 お地蔵さんでもあったのか?    八栗寺が真下に見える


  見晴らし抜群の五ノ峰   屋島と高松平野が見渡せる 気持ちいい〜


   四ノ峰の絶壁が見える  え? あれを登るの?


かつて細い屏風の様な山頂部があった五ノ峰だが1707年の地震でキレ落ちた
尾根の東には源氏ヶ峰とその向こうに志度湾が霞んでいる

 
   庵治半島が北側に見える        岩窟に小さな祠が

 
ちょっと中を拝ませて頂く 庵治石だ        祭壇が設けられている

細尾根を西に進んでいよいよコッペパンに取り付く。四ノ峰(四ノ剣)へいきなりの絶壁で唖然とする。
仕事柄高い所や垂直の梯子には慣れてはいるが、下から見上げると長い鉄梯子の続きは垂直の鎖場で
岩の亀裂に足をかけて登るの?
これを見てフェルナンデス・Yasuko ペアがランバダ登山をギブアップしたのか〜 無理も無いわい。

覚悟を決めて鉄梯子を上がる。これを昇り切るとあれ? うまいこと道が北側のルートへと振っている。
天の助けか? このトラバース路のお陰で安全に「四(よん)様」に登る事ができた。

 
最長の鉄梯子 五ノ剣から四ノ剣へ登る  石鎚山の修験杖が相当邪魔になる

   
    これが安山岩質凝灰角礫岩かね デコボコじゃがね

四ノ峰は不動明王が祀られていてそのピークを過ぎると木々に囲まれた細尾根の回廊があり、
次の三ノ峰ピークへと続く。ここまでくればフツーの登山道なのでプレッシャーも気合も無くなる。

 
 四ノ剣 山頂の不動明王立像       四ノ剣から三ノ剣に向かう回廊

  
三ノ剣 上り口のお地蔵様           三ノ剣 山頂の白瀧大明神

三ノ峰から二ノ峰の鞍部は南側が少し崩壊しているのでトラロープや鉄の橋が架けられ安全に配慮されている。
二ノ峰には「金剛蔵王権現」なるものが祀られているらしいが、立派な社があり扉が閉まっているので定かではない。
近くには白瀧権現や龍王社らしきものもあり色んなご利益神仏が混在しているようだ。

 
  三ノ剣から二ノ剣への鉄橋         二ノ剣の社 狛犬もいるぞ

西端に位置する一ノ峰へと続くコル    途中にも不動明王などの祠がある

さらにここを抜けるとなだらかな鞍部を抜けて五剣山西端の一ノ峰(西峰)へ至る。道はほぼ平坦に近い。

最後のコルで左手の急斜面に明らかな下山道があり、又鉄梯子がかかっている。尚も西に進むと
八大龍王碑が倒れている。そこをさらに進むと西端部の開けた岩場に出た。
ここからはあの細長い屋島の全貌が見える。

 
コル部には南側に下る道がある       これが有名なヘビ地蔵か 気味悪〜

最終目標の女体山を見ると、あれ〜 傷だらけのブルースよ。一気に恋心が醒めた。
おびただしい数の採石場で山は完全にズタズタの傷ものにされている。
尾根の北側には採石用の舗装道路が延びている。こんなとこ歩いても仕方ないわ〜  
でも自転車をあの下に置いてしまった私なの・・・


一ノ剣から女体山を見る  無残な姿じゃ いい花崗岩があったばかりに気の毒な


屋島の全貌が見える  その昔 この平和な場所で源義経と平家が戦ったのか・・・

しばらく風に吹かれた後、突端を少し下りるが絶壁! 北側も絶壁。南側を少し下ってみるがこれも途中から
保証が無い。諦めて先程見た下山道まで引き返し鉄梯子を二つ下る。
その後は道を外して適当に西へ下りるとしっかりした道に遭遇。それを歩いて西側の尾根に出る。

 
急な崖にはちゃんと鉄梯子が設けられている 西の尾根へは崩壊地を渡る

ここから見た西峰=一ノ峰(剣)の絶壁には例の柔らかい凝灰岩の層が所々崩れて魔崖の様に見える。 
更にこの崖を振り返りながら尾根を進むと道がなくなり視界も樹木の為利かなくなった。
コンパスが無いので適当に北北西にすすんだのだが、気がつくと眼前に絶壁が見え 廃坑のような古い採石場に
下りてしまった。そこには沢山の水が溜まりまるで谷の様で尾根には戻れない。


魔崖の様な一ノ峰(西峰) この岩には登るべき岩の弱点はないぞ

 
境界礎石を追いながら尾根を進む     あれ〜〜 採石場の南側に下りてしまった

支尾根を探しながら下っていくが、そこからはず〜〜と別な採石場が現れ絶壁に阻まれる。あきらめてここを下って、庵治石の加工工場や庵治石御殿を見ながら路地を歩いて自転車のデポ地点へ帰る。

 
いくら北に登り返そうとしても次の採石場が・・・  庵治にデポした自転車に帰る
 
こんな海辺の小山で興奮した山歩きは初めての経験だった。信仰心とか八栗寺参拝とは無縁の歩きではあったが、
修験道の気分を十二分に味わえた3時間であった。

後から資料を調べてみると・・あれ? この岩山は入山禁止とあった。おかしいなあ 
私の歩いたルートにはそんな立て札は無かったのだが・・・・




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