エントツ山 第9休憩所
「万作おじさんの吉野川源流紀行」ツアー随行記 (平成16年11月21日)

プロローグ
何気なしに登り出した山だった。動機と言えば歳と共にやってく自然回帰というところだろうか。いざ山へ登りはじめると、そこには山と
色々な結びつきを持った人たちがいる事が見えてくる。山に暮らす人たち、地質や民俗学調査の人、登山道を整備する人たち、森や
水源を守る人たち。単に好きで登りたいから・・・と割り切ってもそういう山や自然を愛してそれと向き合っている人たちも気になる存在だ。
今回はそんな中のお一人に高知で会った。

 万作おじさんと歩く「吉野川源流」への旅  
(平成16年11月21日)

 
 吉野川源流 略図  (国土地理院 地図使用承認番号 平15総使、第634号)


くろもじさん、こもれびさん、REIKOさんの掲示板に登場している万作おじさんに会いに高知県本川村(現・伊野町)の「木の根の森」へ
家族と出かけた。

      
       木の根三里のシンボル 沢の栃の木

宿泊した「木の根のコッテージ」は新宮霧の森コッテージを少し小ぶりにした木の匂いがする宿泊施設だった。「携帯電話が通じない〜」
とカラミティがわめく。そんな日もあっていいじゃん(AUは通じるらしい。)もちろんテレビも無くシシオドシの音だけが辺りに木霊する静か
な夜だ。夏休みに残した子供の絵日記を見ながら眠りに付く。

早朝一人でライトを付けて遊歩道を一通り散策してみる。子供が歩くので安全に気を配り、アスレチックなどもある。はりまや橋付近の沢
がとても気に入った。

 
    木の根三里橋        朝なお静かな木の根ふれあいの森

万作おじさんという名前から仙人のような隠遁生活のおじいさんをイメージしていたが、これがなんと若くて精悍な人だった。高知特有の
彫りの深い顔立ち、引き締まった口元が意思の強い事を表して、人当たりは良いがちょっと頑固そうである。しかし話してみると意外と
性格は明るく素朴な人であった。なるほど、山男の匂いがする。

背が高く笑顔がとっても自然で黄色のバンダナがかわゆく似合う万作おばさん(?)の作った朝食を頂いていると万作おじさんから
「吉野川源流へ行くのでご一緒しませんか?」と勧められた。渡りに船?特にどの山へ行くか決めかねていたので同行させてもらう事に。
主体性のないサマンサ・カラミティ コンビには拒否権はない。
そうと決まったら、集まって来たツアーの方をあまり待たせないようにあたふたと準備をして別な車で後を追う。 石鎚公園線手前で
お弁当を仕入れて通りなれた長沢ダム方面へと走る。平家落人ゆかりの越裏門(えりもん)を過ぎ、神社のある分岐から林道に入っ
てどんどん山道を進む。

 
途中で立ち寄った限界集落「寺川」  登山口にて万作おじさんの指揮で準備体操

登山口は車は数台止めるスペースがあり、準備運動をして橋の袂から植林帯を上がる。国有林と民有林の境界についての話を聞き
ながら進むと、すぐに自然林となり切り立った沢の斜面を縫うように細い道が上流へと続く。眼下には吉野川源流から続く沢が朝日を
浴びながら豊富な水量を保って長くゆったりと流れている。

   
境界の説明を面白くする万作おじさん  道は結構細いし 所々木で補強されている

道は危険という程ではないが気をつけないと足場が悪い箇所がある。我が軟弱部隊は「なんで私達ここに来てしまったのかしら?」と自問し
ながらも、ひたすらツアーから遅れ無い様に後を追う。すぐ皆から離されるが所々で万作おじさんが解説する木や鳥の巣のお陰で追いつく
ことができた。

最後尾には高知の「FRVさん」がしんがり役を勤めてくれていた。この人のホームページ「滝・川・渓谷と高知」はバラエテイ豊かで自然が
一杯。くろもじさんと同様に万作おじさんを慕い良きパートナーとなっているようだ。

      
  私達が乗っても大丈夫でした    急な傾斜 自然に体が山側に傾きます

        
    眼下には葉の落ちた木々の間から吉野川の支流が覗かれる

        
             エメラルドグリーンの水瓶

谷の中腹道が終わると大きな岩が切り立っておりそこから一旦沢に下りていく。左岸に大きな岩盤がそそり立つ風景はこの道での一番
素晴しい景色だった。でも残念な事には植林の大木が土石流で沢に落ち込みこの素晴しい景観を台無しにしていた。ここでは岩盤の為
谷が狭まり水量が多く、ワイヤーが張られた沢の流れは急で少し落差もあり、この源流歩きで唯一気を付けなければならない場所だった。

        
      倒木が景観を壊す           一番気に入った沢の景色

     
                    沢に下りる
       
ここからしばらく沢沿いを歩くと又中腹の道となり一行は万作おじさんを先頭に上流へと更に進んでいく。 左側(右岸)から小沢が落ちて
きてそこを渡る大き目の木橋が斜めの角度で渡されている。そこをやりすごし大きな岩を巻くと、今度は落差のある2段の木の梯子がか
けられておりそこを慎重に下りていく。

   
   大丈夫かしら?この橋      ここを巻けば又沢に下りていく

     
沢に下りる (サマンサはこの落差に絶句) 「日本で一番小さい鳥」の巣

沢に下りてまた水辺を右へ左へと渡り返しながら上流へと進んでいく。その間も万作おじさんのこの豊な吉野川源流水域に息づく
動植物の話がツアー参加の人たちに歯切れ良く語られる。ただ単に仲間を山に引っ張ってきて「シェルパ原」などと詐称した自分
が恥ずかしくなる。う〜〜ん 山男ってこうでなくっちゃ!

   
なおも整備された道が続く            業務上過失援助交際?

       
      しんがりを勤めた静かなる土佐っぽFRVさん  
      家族から邪魔物にされたストックやマフラーを引き取るエントツ山
      自然体がいい 森が似合う万作おじさん

  
 水量が減ってきて石がゴロゴロしてきた  木の根が石を食っている

再び沢に下りてゴロゴロした岩の沢を登っていく。この辺りから水量が徐々に少なくなり何処を歩いても目的地にいけそうで
ある。でも万作おじさんは安全なルートを探しながらツアーをリードする。

  
  あくまで澄み切った水      沢には倒木がたくさん流れてきていた

     
               吉野川源流風景

桂の木が枝分かれして大きな塊となり立っている。その傍らには清流の小滝があり源流から発した透明な水がとうとうと落ちてくる。
所々谷の開けた所に出ると正面の山を指差して万作おじさんが「あれが瓶ヶ森です」と教えてくれる。あいにく雲がかかって全容は
見えない。

       

万作おじさんによると木自身が自分に付いた虫などを落とすために皮を剥いでいくそうだ。その下には新しい模様の入った皮膚が
用意されている。

ここでエントツ山隊 例によって脱落〜〜

それまで必死の形相で付いてきたサマンサが弱音を吐き出した。あとどれくらいコールの後「もうここら辺でいいわ」と言うのをいつ
もの如く「もう少しだから、せっかくここまできたんだから」となだめすかすが、沢の傾斜が次第にきつくなり、万作おじさんの姿が遠
ざかりだした所でしんがりのFRVさんにも迷惑をかけるのでギブアップ やっぱり今回もダメだったわ KAZASHIさん・・・

  
みんなの姿が次第に遠ざかる   一応 さよなら〜(源流まで15分の標識付近)

ここで食事をするという二人が私の性格を見越して「源流までいってきたら?」と仰せになる。がってんでえ! と荷物を置くや
ぴゅ〜と風の様に万作おじさんのパーティを追う。桂の木に標識がかかっており「源流まで15分」とある。

万作おじさんはもう私の意図を察知して「もうどこを歩いても源流の碑までいけますよ」と促してくれる。源流の碑は思ったよりも
広い場所にモニュメントが置かれている。まだ先に水がありそうなのにここでいいのだろうか? 四万十川の源流も銅山川の
源流ももっと狭くて水がちょろちょろ状態なのだが・・・

ここが瓶ヶ森からと西黒森山から流れ出る沢の合流点で標高は約1,200m程らしい。
万作おじさん達のパーティは源流の碑を見据えた広い場所で昼食を広げていた。すぐ傍には大きな桂の木があり日当たりが
良く絶好の食事場だ。目的地の源流碑を目の前に余裕の昼食・・・ニクい演出だなあ。

        
                吉野川源流のモニュメント

  
源流の碑モニュメントン直下、まだ水量がある。 ツアー昼食場所

     
    吉野川源流碑 横にある桂の大木 万作おじさんのシャッターにて

ツアーの皆様にお礼を述べてまた飛ぶように二人の待つ場所まで帰って、二人の食べ残したお弁当を頂きながら歩き出す。値段の
割には美味しいお弁当だった。行きと帰りの風景が少し違うので沢を下るのがすこし不安だったが、目印や丸木橋を確認しながら
問題なく登山口に帰りついた。

   
 落ちたところでちょっと濡れるだけですよ  沢を外れるとホッとする二人

  
ひゃ〜何でこんなとこ下りなきゃなんないのよ? スリーショットも撮っときましょか

        
            やっぱりこの風景がいいわ〜〜

万作おじさんの後を追った「吉野川源流紀行」 愛媛県人にはあまり馴染みでない瓶ヶ森の南側にあたる。地図で確認すると
自念子ノ頭ー西黒森山ー瓶ヶ森ー子持ち権現ー伊吹山で囲まれた自然豊な谷あいを高知側からこの懐に迫る山歩き・沢歩きだ。
今回「万作おじさん」がツアーの安全を確保しながら注意深く導く姿やFRVさんの寡黙なしんがり役を勉強させて頂きました。ツアー
の皆様 ありがとうございました。

源流橋登山口からゆっくり歩いて 往路2時間半 復路1時間半が見当でしょうか





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