エントツ山 第 8休憩所
黒沢(くろぞう)湿原を救った花 「サギソウ」
友情出演 グランマー啓子の「黒沢湿原 9月18日の花達」

黒沢(くろぞう)湿原」は徳島県三好郡池田町漆川(しつかわ)の静かな山間部にあります。

この名が有名になったきっかけは皮肉なことにバブル経済の絶頂期を過ぎた1990年のリゾート開発反対運動でした。当時はまだ
バブルの幻想を夢見る時代で、この地にもご多分に漏れずゴルフ場を中心とするなどの大型リゾート施設の誘致計画が持ち上が
りました。

これに反対する住民は「サギソウを守れ」「黒沢湿原を守れ」と立ち木トラスト運動などを展開して当時マスコミにも随分取り上げ
られました。

    
頭師 喜久夫(ずし きくお)さんの著書       黒沢湿原のサギソウ
平成16815日剣山にて購入            H16年823日撮影

その運動の中心になられたのが地元池田町の「頭師 喜久男」さんで教職時代も含めて長年黒沢湿原の花を観察し写真に収めら
れています。(黒沢湿原 野草百花) この反対運動のお陰で池田町議会も建設計画の延期=実質上の白紙撤回を決議し数々の
絶滅危惧植物種が生息する黒沢湿原が今日も自然の姿で残る事になったのです。

     
    
     黒沢湿原  杭の立っている場所がサギソウ移植保護区域

 
 南北2km、東西100m−300m、標高550mの細長い湿地帯
      粘土層の上に腐植土などがが堆積した深泥地 約40ヘクタール

この黒沢湿原をバブル経済金満開発事業から救った「サギソウ」を見に平成16823日、この地を訪れてみました。アクセス道路
は井川方面から阿波池田の街中に入り殆ど出口付近で「黒沢湿原」への標識があり左折、あとは道は狭いが標識が要所に置かれて
迷う事はなく約30分で到着。

駐車場は茶店を越えて北側奥に。天気が悪いので私の車一台だけだった。昨今の山野草ブームで年間約30万人が訪れるようになり、
トイレもこの駐車場を含み各所に配置され池田町観光課の意気込みが感じられた。

ここから細長い湿原を南へ向かって松林の両岸に遊歩道がある。茶店は閉店され誰もいない。サギソウが目的なので松林を過ぎて
左側を早足で進む。それらしき標識があったので木道を渡り囲い込みされた「養殖場」のような場所へ到達。

 
      シラヤマギク            ウツボグサ(ぴんぼけ〜)

  
誰じゃ 私を「ヘクソカズラ」と命名したのは?    アキノタムラソウ

        
             黒沢湿原に咲いていたサギソウ

サギソウ ラン科ミズトンボ属
この黒沢湿原を代表する不思議な花だが、一体どれだけの固有原種が残っているのだろう。心無い花愛好家によって盗採されたり、
イノシシに食べられたりして在来種は絶滅状態だったらしい。
それを地元の有志や小学生らの移植活動によって保護され続けているのが現状。今姿を見せるこのサギソウにしてもおそらく県外か
らの移植種の可能性が高い。
最近のバイオ技術を駆使してサギソウの原種を培養して苗を作り、地元小学生に育ててもらいその後黒沢湿原に移植してもらうという
「里親活動」も行われている。

  
 サギソウ ラン科ミズトンボ属       ミズトンボ ラン科ミズトンボ属
同一種、属でありながら形が違う 「鷺(さぎ)」と「トンボの頭(別名 アオサギソウ)」

 
    キセルアザミ            ヒメミクリ

 
  ガマ                        ムカゴニンジン

また良かれと思ってここに別な植物を持ち込んだおせっかい自然愛好家(?)もいたりして従来の生態系すら脅かされているのが
現状だ。未草(ヒツジグサ)は固有の種だが、睡蓮(スイレン)などはもともとここには存在しなかったらしい。誰かがここに「モネの庭」
でも作ろうとしたのだろうか?
その上 ヨシが年々増え続け以前は深かった沼地も陸地化して来ている。そういえばあちこちにヨシがたくさん生い茂っている。

  
 ヒツジグサ (スイレン科)         エゾミソハギ(ミソハギ科)とヨシ

  
        サワヒヨドリ            エゾミソハギとサワヒヨドリ

木道を渡ると森の中に黒沢大師があり、その近くにオトギリソウやツチアケビが見られた。この辺りから黒い雨傘と頭の間にアブが入り
込む様になり傘を振ったり手で払ったりと忙しくなった。アブと格闘しながらこの湿原の南端「たびの尻滝」に到着。北側から湿原の水路
を流れてきた水はここで一気に200mほど下の松尾川に落ちていく。雨のため水量は多くごうごうと音を立てて吸い込まれそうだ。
  
オトギリソウ               ツチアケビ

 
「たびの尻滝」 一段目            2段目  松尾川に流れ落ちる

 
松尾川を挟んで対峙する舟山(1,043m)  シロバナサクラタデの群生

     
              黒沢湿原のコオニユリ

         
            黒沢湿原 風景 平成16823


     

       
風が吹き 鷺草のみな 飛ぶが如    高浜虚子


帰りは出会方面の標識どおり道を進んで松尾川―祖谷川―を通って祖谷口で国道33号線に出た。黒沢湿原 サギソウ、トキソウ、
ヒメミクリ、イシモチソウ、ミヤコアザミ、キセルアザミ、タチカモメズルなどの稀少植物と共に四国の財産としていつまでも残っていって
欲しいものです。


追加付録
グランマー啓子の 黒沢湿原 9月18日の花

エントツ山の幼馴染(おさななじみ) グランマー啓子さんより黒沢湿原秋の花を提供頂きました。
使用カメラは ソニーサイバーショットP100(510万画素)
花の写真を撮るときは息を止めるそうです。 人呼んで「酸欠ショット」をお楽しみ下さい

 
    途中のソバ畑             ソバの花  こんなにキレイ

    
 オミナエシ(オミナエシ科)       オモダカ (オモダカ科)

   
 キセルアザミ (キク科)          ゲンノショウコ (フウロソウ科)

   
コキンバイザサ (キンバイザサ科)       スイラン(キク科)

       
タムラソウ (キク科)             ツルニンジン (キキョウ科)

  
ヒツジグサ (スイレン科)     ヒツジグサ 午後2時より早く咲く

  
    ミゾソバ  (タデ科)             ミソハギ (ミソハギ科)

  
ミヤコアザミ (アザミ科)          ムカゴニンジン (セリ科)

グランマー啓子さんは エントツ山とは小・中・高の同級生でキュートな女学生でした。登山部出身の硬派なダンナ様に連れられて
山歩きを始められ、今では御夫婦揃って山歩きを楽しんでおられます。これからも山情報、花情報を宜しくお願い致します。
エントツ山編集部 (部員 一名)





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