2007年09月07日

平成19年7月22日 瓶ヶ森 子持ち権現行者ルート (本ガケ道)
平成19年7月22日 子持ち権現行者ルートを行く
西之川ー名古瀬登山口ー十郎アレー鳥越ー子持ち権現ー瓶ヶ森ー釜床谷ー鳥越ー西之川


石鎚山と子持ち権現(右)

プロローグ

およそ四国に限らず我々程度のハイカーが歩く山には前人未到だのという大それた場所は無く、どんなマイナーな場所にも行ってみれば
赤いテープやらアクリル板の派手な山頂標識が懸けられているものである。

さて今回ご紹介する子持ち権現ホンガケ道なるものは我が尊敬する四国山のHP「愛媛労災病院山の会」で取り上げられた5本の長大
な鎖とワイヤーロープなどが敷設された修験道である。この「愛媛労災病院山の会」HPは高知の「山登の部屋」に唯一肩を並べる愛媛
が誇るウンチク登山記である。

ガクガク隊が瓶ヶ森からこのホンガケ道を周回したとの報告を掲示板で紹介して頂く。これを受けて7月8日相棒マーシーと早速このルート
を歩き二人で唸った。こりゃ西ノ川から歩かねば・・・


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 
国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

西之川登山口(名古瀬) 07:20h − 常住08:10h −鳥越09:00h
尾根道10:00h − 小剣山10:30h − 子持ち権現 11:15h−11:40h
瓶ヶ森・男山 12:40h  女山13:00h 瓶壺13:30h 鳥越 14:40h
常住 15:20h − 名古瀬登山口 16:00h 全歩行  約8時間40分

第一章 西之川ー常住ー鳥越分岐  (約1時間40分)

7月22日西ノ川を過ぎて川沿いの未舗装道路を進むと右側に「赤谷」という文字通り赤茶けた谷が見える。ここは江戸時代からある
「大森鉱山」(西之川鉱山)という銅鉱石を産出した鉱山より流れ出る褐色の不気味な谷である。明治22年住友鉱山の配下において
隆盛を誇ったらしい。

その赤谷を通過して名古瀬登山口へ。道路工事中の林道脇に瓶ヶ森登山口の標識を発見し付近に車を駐車、山道に入る。一旦上
の林道に出てさらに奥へ進んでいく。生憎雨は落ちないもの付近の山々はガスの彼方だ。

 
赤谷  谷の奥まで赤茶けている      名古瀬登山口

植林地帯を過ぎ「十郎アレ」という谷合を抜けて更に植林の急坂を登ると峠に出た。荒れた小屋の残骸がありここが「常住」といわれ
る場所である事は容易に理解出来た。

 
   奥の登山口                今は荒れ果てた常住

この小さな峠を過ぎると薄暗い斜面に伸びる沢筋の道となる。所々に水場がありひと時の涼を楽しむ事が出来た。さらにギンバイソウ
の咲く薄暗い植林地帯や自然林の道を進むと谷筋に入り急な傾斜を上ると石垣があり以前来た「鳥越」に着いた。

 
    水量の豊富な沢筋            涸れた沢筋を登る

昭和のはじめにはここに「工藤小屋」という茶店があったらしい。瓶ヶ森林道が出来る前の事だから、瓶ヶ森や子持ち権現山への修験者
や登山者にとってここは厳しい登りを前に絶好の休息場所として賑わった事だろう。

 
鳥越分岐はいい雰囲気だ          通行止め標識からいよいよ行者ルート

       
           鳥越付近の自然林

第二章 鳥越ー子持ち権現ー瓶ヶ森(男山、女山)  (約 4時間)

さて、ここからいよいよ通行止めの子持ち権現ホンガケ道を進む事に。
植林の斜面伝いに続く僅かな踏み後を進むと一旦小さな沢(水は無い)にぶち当たる。ここを一旦沢に下り向こう岸に這い上がると
「平兵衛岩へ」という紛らわし標識がある。

 
最初の沢を渡る 対岸は藪っぽい    石鎚山の金剛杖が道しるべに置かれている

そちらには進まず「因島光明寺石峰団」のアルミ標識がある左側へと直角に曲がる。ここには道しるべ代わりに石鎚登山の杖が岩の
上に置かれていた。
この因島光明寺は今治の石土山石中寺から分派した修験道の一派で昭和14年天台宗寺門派因島石土教会を設立、さらに戦後
光明寺を設立した天台宗系の修験道宗派らしい。

そこを更にすすむと鬱蒼とした自然林地帯に入りこの辺りからもう一度水があまり無い岩だらけの沢を渡る事になる。ここが一番分か
りづらい場所かも知れない。注意深く歩くと赤テープや沢にケルンが積まれているのがわかる。

 
アルミ製の道しるべがある           二つ目の大き目の沢を渡る

最初に行った時はこの沢を越えて踏み跡が真上の急坂へと続いていたので無理をして這い上がり、小規模な崩壊地の最上部を大岩
に沿って渡り、迂回路からの尾根道に合流した。

        
        第一回目は崩壊地の上部を渡る

今回はこの沢を渡って更に藪っぽい斜面を真っ直ぐ進むと崩壊地跡のガレ場に出くわす。これを渡ると左上へ向かって尾根道が伸び
ている。ワイヤーなどもここから出現する

 
このガレ場を渡るのが現在のルート    細尾根に沿って上がる(ワイヤーもあり)

   
細尾根に出て周囲の景色を眺める     更に細尾根を這い上がる

一の鎖  
この細尾根を上り詰めると長さ38メートルといわれる立派な一の鎖が現れる。
前回はこれを上まで登り詰めて大規模な崩壊地に直面。ここでガクガク隊はロープを使用して向こうに渡ったのだが、我々はそんな
技術がないのでスゴスゴと引き返して一の鎖を少し登った所から大きな岩盤直下を右手に迂回する。ここから尾根に取り付くと「小剣山」
の石標があるピークに這い上がる。

   
  一の鎖 結構上まで長い        一の鎖最上部は崩壊して通行不可

一の鎖基部まで戻り大岩の壁に沿って右側の支尾根へと迂回する。見上げるとこの子持ち権現界隈の岩場の凄さが実感出来る。
岩の断崖を左に見ながら右手の支尾根に迂回する事になる。尾根部に上がると左手に小剣山という岩のピークに出る。ここには
石の祠が置かれている

 
絶壁の最下部に沿って迂回する     迂回してきた絶壁を望む

 
二の鎖
結局二の鎖は一の鎖を登り切った大崩壊地を渡った場所からこの小剣山へ約20mの鎖場の事。この鎖場は小剣山から這い
上がった反対方向の急斜面というか崖にぶら下がっているのを見る事が出来る。

 

 
小剣山の向こう側に2の鎖が下がっている 2の鎖を下りた所の鞍部

三の鎖
小剣山を下がると細い鞍部となっておりそこにも鎖が長く伸びている。これに沿って進むと左手に約20m程の鎖がかかっている。
ここは全く問題なし

四の鎖
さらに進むと急に岩場で視界も開けてくる。天気が悪いので見通しは利かないが晴れた日ならすばらしい眺望が望める事はその
地形から容易に分かる
この岩場にかかっている36m程の鎖場が一番楽しめる。斜面は急だが岩は礫岩なので適当に足がかりがある。

 
4の鎖 基部                    ホソバオニユリが咲いている

 
ここが一番楽しい鎖場だった        背後にはシロジ谷をはさんで瓶ヶ森が

五の鎖
景色の良い四の鎖を登るとルートが少し左に振って細い踏み跡を辿ると鬱蒼とした樹林帯の急斜面に2段階の鎖場が出現する。
れが五の鎖36mで回りに樹木や笹がある為緊迫感が無いが、足がかりが乏しく一番ヘロヘロになる鎖場だった。

 
うっそうとした木々の間に5の鎖が      そこを越えればワイヤーが続く

ここを越えれば最初はワイヤーがかかった笹の傾斜が続くが、それも次第に緩やかになりブナなどの気持ちの良い山道となる

 
最後は傾斜が緩くなりゴールの予感が・・  おっ 子持ち権現さんの裏手に出たぞ

突然 見慣れた子持ち権現の岩窟が現れホッとするという段取りだ。
山頂に着いて少し休憩。マーシーが沢山捨てられたタバコの吸殻を回収。けしからん愛煙家がいるもんだ

 
   子持ち権現山頂             滑りやすい6の鎖を下りる

後はいつもの鎖(六の鎖?)を滑り落ちて見慣れた「「子持ち権現駐車場」へ出る。ここから尾根道を上がりさらに上側の瓶ヶ森林道
に到着。前回はここでこもれびさんご夫婦に遭遇した記念の場所だ

瓶ヶ森林道を少し歩き瓶ヶ森登山口から男山―女山へ周回し瓶ヶ森ヒュッテに下りる
イブキトラノオが風に揺れ一面の霧に風情を添える

 
     イブキトラノオ                シロドウダン

 
    瓶ヶ森 男山山頂            男山の蔵王権現

 
女山の祠  中身は空っぽ(?)       ノギランが沢山ある 

 
     コウスユキソウ               タカネオトギリ

 
  コメツツジ                       イヨフウロ

 
ナンゴククガイソウ                 ミヤマオダマキ

終章 瓶ヶ森ー瓶壺ー釜床谷ー鳥越ー常住ー西之川 (約 3時間)
  
瓶壺には先日の大雨が災いして小石が沢山溜まっている。傍らにはビールの空き缶が置かれている。けしからん愛飲家がいるもんだ

 
瓶壺手前の七つの胴体を持つ松      瓶壺には小石が溜まっている

瓶壺の沢を渡っていると滑ってしこたま腰を打つ。う〜〜ん あの過酷な行者コースを乗り越えてこんな所で怪我するの? 3分間うずく
まったあと復活して釜床谷の岩がゴロゴロした急坂を下りていく。ここは沢部であるからにしてお花畑的な環境にあるので虫も多い。

夏場の山で一番美しいと思う花はヤマアジサイだ。紫から青、青紫 一般的なアジサイに比べて大袈裟でなく山や谷に良く似合っている。
この気を抜くと転げ落ちそうな釜床谷で何度もその美しさに立ち止まった

 
瓶壺から流れ出る沢              ヤマアジサイが美しい


           釜床谷の風景

 
    釜床谷の大木                  釜床谷には大岩が多いわ

やがて道が歩きやすくなり周りの風景も平たく開けて来るとやがて鳥越分岐に着いた。ここで小休止を取り、今朝進軍して行った
行者ルートにマーシーさんと二人で懐かしく目をやる。2度続けてこのルートを攻略したのでもうルートを間違う事はないじゃろう

帰りは鳥越から常住までぶっ飛ばす。常住を過ぎて植林の凄い坂を下る。こんな急な坂を登ってきたのかとあきれる程木が無かっ
たら崖の様な角度だ。ロープを張った崩壊地を越すとなだらかな谷合いの登山道となる

 
     鳥越分岐              常住を越すと急な植林の坂を下りる

 
   ロープが張られているザレ場      谷合の道は雰囲気が良い

 
マーシー洗濯叔父さんに バシャバシャ     上の登山口に15時45分到着

今回のメインは鳥越から子持ち権現に至る「ホンガケ道」、「行者道」と呼ばれる修験者が歩いた鎖場のある修験の道だった。
きっかけを頂いたガクガクさん、ロマン溢れる登山記を提供して頂いた愛媛労災病院山の会に感謝、鎖場に関する記述はこの
HPを参考にさせてもらいました




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