四国の冬山シリーズ
平成23年2月19日(土) 冬の笹ヶ峰
 南尾根コース


冬の笹ヶ峰 南尾根直登コースはいかが?

  
            冬の笹ヶ峰山頂             石鎚をバックに

86歳になるお袋さんが新居浜で入院しているので午後から顔を出す予定でいた。朝起きると天気が
物凄く良い。どこか簡単な雪山に登って病院へ行く事にする。
思い付いたのは、てっとり早い笹ヶ峰
の南尾根である。早朝、道具を積み込んで高松の家を出る。


道すがらお袋さんの事を考えながら西条へと向う。

世の中には亭主を無くしてのびのびと老後を送っているケースが多く見受けられるので、女性は
強いもの、逞しいものと勝手に想像していた。袋さんも親父が去年亡くなって介護から開放された
のだから、あれこれしたい事や旅行などを楽しむものと思っていた。


しかしながら、気が抜けたのか体調も思わしくなく病院通いに明け暮れる毎日て、腹部に腫瘍が見つかり
悪性ではなさそうなのだが、手術をしたのだった。

私が子供の時は10人の大家族の中で賑やかに過ごした。今はその家もお袋一人がひっそりと住んでいる。
母の日課はまず親父が大好きだったコーヒーを豆から挽いて本格コーヒーを作り親父に祀る事から始まる。
若い頃、非常にモダンだったお袋さんも今では仏壇の前で般若心経を唱える様になり、全てに段取りの良
かった人だったのに今ではスーパーのレジ前で財布を出して小銭を探してモタモタしている普通の老人に
なってしまった。いづれにしても歳を取るって良い事は次第に少なくなってくる様だ。


          
                       笹ヶ峰 南尾根のブナ

旧寒風山トンネルへの道は凍結もなく、08時40分頃大座礼林道分岐に着くと、寒風山方面へ行くで
あろう数台の車が置かれている。 そこを抜けようとすると四国中央市の上砂さんご夫婦がおられて挨拶を
すると、「ストーンリバーさん達も来られています」と言われた。やはり晴天の雪山は寒風山が賑わう様だ。

寒風山・大座礼林道は工事中の箇所があり、作業車や作業員がいた。ANちゃんが鳥を撮りに来るという
沢筋の橋を渡って暫く行くと又、作業場所があった。


あれ? その向うは車の轍(わだち)は全くない。30cm位の積雪道をラッシュ4WDでタイヤをスリップ
させながら200m位進むが、吹き溜まり箇所で全く進まなくなった。見ると下が凍っていてその上に新雪が
積もりスタックする。やはり4WDと言えどもラッシュではパジェロやランクルの様には行かないわ。
まあ安いんだから仕方がない・・・


バックで作業場所近くまで帰り、ここに車を駐車。歩いて壷足で登山口を目指す。

 
        わ〜〜 山は真っ白だい                  これ以上は車では進めなかった

09時20分登山口に着き用意をする。植林帯の斜面に入るといきなり雪の為足が潜りすぎる。早くもスノー
シューの出番だ。
尾根道の急登になると背の高い笹や潅木を掴みながら体を上昇させる。細くて瀬の高いブナ
などもあり雪道との風景の取り合わせが良い。


10時27分崖部を上の尾根に這い上がる場所に到着。スノーシューが斜面で滑るのだが、ここにはロープが
あるのでそのまま慎重に這い上がる。


日差しを浴びた気持ちの良い尾根道を左手に聳える寒風山を木々の間から眺めながら進む。

 
   笹ヶ峰 南尾根登山口                          直ぐにスノーシューの出番となる

 
    崖部にはツララが下がっていた                  寒風山方面

 
       霧氷が付いている様だ                      ブナが現れる


やがて赤茶けたダケカンバの樹林帯となり、ブナ林が近い事を告げる。

1100時頃四国で指折りのブナ林が姿を現す。じっくり見ると樹勢は老年期に入っている様だ。ブナ林は概ね
樹床が笹に覆われているが、ここも例に漏れず豊富な笹に覆われている。 しばらくこのブナが織り成す神秘的な
風景を楽しんだあと更に上を目指す。



  
                      ブナ林が雪の斜面に並んでいる

  
         今年初めて会ったブナ達

 
    霧氷は付いていないが見ごたえあり              雪上に巨木の影を落す





  
   ここのブナは枝分かれをするタイプが多い

  
        ブナ林を後にしていよいよ森林限界の上に出る

ブナ林を過ぎると直ぐに森林限界となり辺りが開ける。モミの木広場を過ぎると傾斜が強くなるが、見渡す限り
の雪原を左手に寒風山や伊予富士、右手にチチ山から冠山の白い稜線を眺めながらその高さに追いついていく。

笹ヶ峰の南斜面は山頂部のスロープ手前が段になっており、そこでは深い雪の表面が凍っていうr。結構傾斜が
強いのでジグザグを切るが、その度に蹴飛ばした雪が無数の小さい球体となり音を立てて落ちていく。


寒風山から笹ヶ峰へ続く稜線の上には伊予富士、西黒森、瓶ヶ森の主稜線が並んでいる。振り返るとスキー場の
様なスロープが登山口へと落ちており、その向うには高知の深い山並みが衝立の様に幾重にも重なっている。
四国は山深き島である。


 
スノーシューが無ければヒザまで埋もれる                  振り返って見下ろす南尾根

 
      先は未だ長い                            寒風山、伊予富士が目の高さになる

知らぬ間に寒風山が目線より低くなり、瓶ヶ森の右側に石鎚山が姿を現している。

山頂が近くなるとますます雪の表面が硬く凍っており、スノーシューの歯がジャリジャリと音を立てる。しかし
油断すると股までズッポリ陥没する。


1100時前に笹ヶ峰山頂に到着。この良い天気にひょっとしたら丸山荘方面からの登山者があるだろうと思っ
ていたが、ここ数日訪問者の形跡は無かった。


   
      左から   西黒森、     瓶ヶ森         石鎚

 
 
         エビの尻尾もあるででよ                      チチ山方面

  
       笹ヶ峰山頂は平たいのでガスが出たら方角がわかりにくい

 
山頂標識ポールにはあまり霧氷は付いていない                石鎚をバックに



                              霧氷が旗の様に並ぶ

 
  鉄の方位板には沢山の霧氷が付いていた                蔵王権現の祠



               おいわさんも呆れる程の石鎚山オンパレード

「360度見渡す限りの展望」って良く言われるけど、「(料理が)絶品〜」と言う決まり文句の様にそれ以上の
表現方法はない。

雪の台地、笹ヶ峰山頂の北側にはやはり樹氷が多く、高縄山系が雲に浮いている。沓掛山はモヒカン頭の様に細長く
頭頂部に雪を置いている。


東側はチチ山が真っ白け、そこから続く冠山の手前と平家平も真っ白け、銅山峰から西赤石、物住ノ頭、前赤石、
八巻山・東赤石までが見える。


その右手上方には二つの白い山並みが続いている。左側が矢筈山系、右側が剣山系だ。
良く見ると牛の背から三嶺、次郎笈まで確かに見える。

南側は寒風山、伊予富士、その奥に手箱山・筒上山・岩黒山、手前に帰って西黒森、瓶ヶ森、石鎚山と馴染みのある
山がグルリと続く。


 
   高縄半島の山々が浮き上がる                   白い丸山と モヒカン頭になった沓掛山


                   これが青空だったらなあ


         風紋が美しい  リップさんに登山用語で「シュカブラ」と教わる

 
    やっぱりここの霧氷は迫力あります                祠にお参りしてそろそろ下山とする


           帰りに石鎚を又眺める

 
    未練がましく石鎚を又振り返る                  祠横を抜けて下山する

 

   
  東側は 左奥:串ヶ峰〜上兜 手前:西赤石  中央:物住ノ頭、 奥の白い山:前赤石 コマドリ尾根〜東赤石

  
      剣山・次郎笈           三嶺    西熊山     牛ノ背・天狗塚

いつまででも居たい様に思える爽快な山頂である。一人で楽しむのは勿体無い景色でもある。昼食の時間ではあるが、
ちょっと時間を使いすぎたのでカット。


さて、浮世離れはこれ位で「お袋さんよ♪ おふくろさん♪」森進一のしわがれ声を真似ながら下山する。
スノーシューとは言え走るようには下山出来ない。13時ブナ林を過ぎ、13時50分下山する。

 
     平家平  冠山                                寒風山を見ながら南斜面へ

 
    笹ヶ峰南斜面を一気に降りる                     笹ヶ峰 南尾根登山口


車に帰り寒風山トンネル口の合流点まで戻るとストーンリバーさんが丁度車で帰る所だった。久しぶりに二人の笑顔
に会って嬉しくなった。ストーンリバーさんとは西三子峰で初めて山でお会いして以来、その人柄の良さやお互いの
山好きの為ずっと親交が続いている。


聞くと「Falcon さんも来ていますよ」とおっしゃる。

Falcon さんとは随分前に西赤石で遭遇した以来じゃった。Falcon さんのいる上の駐車場へ行こうとしたが、コーナー
の凍結が凄かったので下の方でお袋さんに電話をしながら待つ事に。


電話中にFalcon さんの車が上から来たので慌てて手を振りながら車から出る。やっと気がついて停まってくれた。
何せ歳を取るとなるべく頻繁に顔を見せておかないとどこの爺さんや?と思われる心配があるのだ。


久しぶりに会った Falcon さんはちっとも変わらないいい青年(?)やった。

バタバタと落ち着きの無い笹ヶ峰訪問だったが、雪山を歩く喜びを味わえ、心置きなく母の待つ病院へ駆けつけた。


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