平成22年3月20日〜21日
実録 鞍瀬の頭・北方稜線完全縦走記


保井野―堂ガ森―鞍瀬の頭―鞍瀬北方稜線―三ヶ森―虎杖(いたづり)


鞍瀬の頭1,889m) から伸びる北方稜線の始まり  (堂ヶ森方面から)


鞍瀬の頭 北方稜線の続き 三ヶ森を経て東に伸び、加茂川に落ちる場所が虎杖(いたづり)と呼ばれる

石鎚山の西側には西ノ冠岳を経て二ノ森があり、堂ヶ森へと続く主稜線がある。二ノ森と堂ヶ森の間に標高1,889m の無名峰
があり、通称「鞍瀬ノ頭」と呼ばれている。
通常、○○ノ頭(あたま)とは渓谷の源頭部にあるピークを指し、この場合東予市に注ぐ中山川の支流、鞍瀬川の源流=鞍瀬
渓谷の源頭部にあたる事から「鞍瀬の頭」と呼ばれる様になったのだろう。読み方はインターネット検索をすると「くらせのかしら」
と記されている。

四国には他に「物住ノ頭」(ものずみのあまた)、「自念子ノ頭」(じねんごのあたま)「鶴ノ子ノ頭」(つるのこのあたま)などがある。
でも、れいほくネイチャーハントなどでは「自念子ノ頭」(じねんごのかしら)と記されている様に「あたま」と「かしら」の使い分けが
曖昧だ。

個人的には「鞍瀬の頭」(くらせのあたま)と呼びたい所ではあるが、ここは一応インターネット検索で出てくる(くらせのかしら)と
しておこう。

この高瀑の滝へ至る林道の右手にずっと続いている尾根、鞍瀬の頭・北方稜線を以前から歩く機会を待っていた。
そのアプローチや縦走尾根の長さから到底日帰りは無理〜。来るべき尾根歩きに備えて先日三ヶ森へ偵察登山に
出かけていたのだ。

時期は藪が薄い3月の三連休とし、ペーコさんを誘ったが用事があり、マーシーさんと二人で歩く事になった。
鞍瀬の頭」までは石鎚ロープウェイを利用して東から行く方法や高瀑の滝から西ノ冠岳〜二ノ森主稜線へ這い
上がるルートがあるが、今回は西側の保井野から堂ガ森経由で行く事にした。


生憎寒冷前線の通過で山は大荒れの予報。でも雨の大半はどうも夜だけみたいなので予定通り決行。

   
   この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである

   長〜〜い鞍瀬の頭 北方稜線     カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図
   保井野―堂ガ森―鞍瀬の頭―鞍瀬北方尾根―三ヶ森―虎杖(いたづり)


第1章
保井野〜堂ガ森〜鞍瀬の頭 (約4時間45分)

3月20日06時15分、西条のコンビニ・スリーエフでマーシーさんと待ち合わせ、虎杖(いたづり)下山口に
私のラッシュをデポ。桜三里から鞍瀬渓谷に入り08時前に保井野登山口に到着。国道11号線からここまで
ずっと舗装道路で登山口には立派な駐車場やバイオトイレもある。梅ヶ市登山口とえらい違いだわ。


身支度を整えて08時05分右手の細い登山口へと進む。やはり一泊となるとテントやらエアーマットやらと装備が
多く、ザックが重い。右手に柵にタイヤを取り付けた牛の放牧場跡がありそれに沿って暫く歩き沢沿いの道に入る。
ユキワリイチゲが咲いており、その後急斜面を上がると09時20分尾根部に着く。ここが空池と呼ばれる窪地だ。
ここからシャクナゲの樹木が茂る急な傾斜となり、これを喘ぐと10時21分水場に到着。登山口の標高差が違う
のか梅ヶ市コースより確実にこちらのコースがキツイ。


この辺りからは次第に笹が多くなり、10時30分見覚えのある梅ヶ市分岐を通過する。ここまで上がると樹林帯を
越えて一面の笹原となり眺めが良いが、南からの風が非常に強く山側に向かって相当の横風となる。ストックを山側
に押しつけ、体を谷側に投げ出しながら進むので急に風が治まると谷に転げ落ちそうになる。


 
   08時05分 保井野登山口を出発                右手に牛の放牧地、タイヤ柵が残っている

 
ユキワリイチゲの咲く沢を通過                    09時20分 空池通過

 
 1020分 水量が十分な水場を通過                      笹の急登を喘ぐ

 
     梅ヶ市・保井野 分岐                      堂ヶ森の大きな反射板が見える

残雪の残る堂ヶ森主尾根に上がると目指す鞍瀬の頭、すぐ左に西ノ冠岳、その間に遠く石鎚弥山が見える。1100時
大きな反射板のある三角点で記念写真を撮る。風が強くて落ち着かない。


堂ヶ森を下って雪が残る登山道を更に下りると右手に立派な愛大避難小屋があり、後学の為登山道を少し外れて見学す
る。登山靴やスリッパなども置かれて快適な山小屋そのものである。


さて、ここから前方にどっしりと構える鞍瀬の頭に強い風に吹かれながら取り付いていく。

鞍瀬の頭」(くらせのかしら)はチチ山に境遇が似ていて、どうして立派な山なのに周りの有名な山に挟まれて何故
かマイナーで不遇の存在なのだ。国土地理院の地図上には無名峰となっていて名前すら付けられていない。
Waiwaiさんが以前山行の参考にした天野さんの登山記(2001年11月)当時は依然として「無名峰北稜線縦走」と
タイトルが付けられている。標高1,889mの無名峰、こんなの1個香川県にくれたら決してないがしろにはしないのだが・・

「鞍瀬の頭」山頂の笹原を少し下った左手にはコッペパンの様な鋭い岩尾根が北側へ落ちており、到底ここを歩けるとは
思えなかった。恐らくその裏側へ回り込むのだろう。 その鋭い風景を見て「果たして下りていくルートはあるんじゃろ
うか」とちょっと不安が顔を覗かせる。 まあ今まで這い上がった尾根も見た目には結構厳しかったけど何とかなった。
きっと大丈夫じゃろう・・・頼りになる少し太り気味の相棒もおる事だし・・・



堂ヶ森の南広場に出て鞍瀬の頭(右手前)、西ノ冠岳(左中程)、石鎚(真ん中奥)を眺める

 
   堂ヶ森 1,689m 三角点にて                  愛大避難小屋へ立ち寄る

 
    鞍瀬の頭まで結構長いなあ                  後に堂ヶ森が次第に低く遠ざかる


      う〜〜ん  結構厳しそうな鞍瀬の頭 北斜面だこと


   ひゃ〜〜  これが鞍瀬の頭 北方尾根かい  長くてアップダウン多いなあ

息を整える休憩をしたいが風が強すぎてそれが出来ない。一度だけ小さいモミの木がある場所で低い雪の残る登山道
を利用して風を避けて小休止をする。
次第に大きくなる鞍瀬の頭を目指し、なだらかな笹原を登ると五代の別れに到着。

そこから尾根沿いに鞍瀬の頭へ至る事が出来るが、風をモロに受けるのが嫌なので縦走路を回り込み、二の森側から
鞍瀬の頭へ最後の登りとなる。
12時50分 細長い山頂に着いた。
やっとこの長い縦走へのゼンマイ・ネジが巻かれた。

  
 
   南側に五代ヶ森(一番奥)への稜線             鞍瀬の頭(右ピーク)を南側から見る


鞍瀬の頭を東側に回りこむ  左:西ノ冠岳(1,894m)、 中央:石鎚 (1982m) 、右手前:二ノ森 (1,929.2m)

 
       2度目の鞍瀬ノ頭                            初めて来た鞍瀬ノ頭


第2章 鞍瀬の頭―鞍瀬北方尾根―テント場―三ヶ森(みつがもり)まで
1日目 約 5時間10分、 2日目 約 2時間50分   合計: 約 8時間

霞んだ眺めを楽しんだ後、強風を避ける為低木の生い茂った北側の藪へ入る。ここで20分位昼食タイム。

13時15分、真北への正面突破は崖の為難しいので左手から笹の樹林帯を下がる。堂ヶ森からここへ来る途中、
尾根筋から下がるルートを二人で予想した。少し西側の笹原を下ってニードル尾根手前で北側へ回り込むという
イメージだった。少し下がった所で先を行くマーシーさんから「これ違いますわ 右手に尾根があります」と藪の
中から声だけが聞こえる。

見ると先のコッペパン岩山の先は谷に切れ落ちており、もう一つ東側に別な尾根が下がっている。どうも下り口を
間違った様だ。つまり鞍瀬の頭を北側に出る途中の藪から少し右手へ下りなければならなかったのだ。藪の中を
もがきながら迂回しメインストリートに這い上がる。


藪山の場合、大体が上方からルートを見つけるのが難しく、少し下がった場所で別な尾根を発見する事になる。

「鞍瀬北方稜線」は一旦そこに這い上がると後はルートがはっきりしていた。目指す第一目標の三ヶ森は遥か彼方で、
そこから虎杖への尾根が右に湾曲しながら延々と続き気の遠くなる様な長さだ。ホンマにこれ最後まで歩けるん
やろか?


笹原を抜けると13時40分岩尾根らしくシャクナゲ藪の急降下となる。それを抜けると再び笹原となり、右手に
西ノ冠岳が木立の間から垣間見れ、その姿を次第に変えていく。

14時30分岩尾根に入り、ドンドン高度を下げると高瀑の滝が姿を現す。確かに水量は少ないが落差が十分で
迫力のある風景だ。
15時18分再び猛烈なシャクナゲ藪になり、更に1538分スズタケの藪を抜け15時50分
細い岩尾根に入る。


この急な登りでマーシーさんを見失う。何せこちらは使うか使わないかは別として取り敢えず記録写真を撮るのに
非常に忙しいのだ。あちらはお構いなく韋駄天ぶりを発揮してドンドン進む。マーシーさんを呼ぶと声がしてその
方向に下りて行くとどうもおかしい。山や谷で声が反射した様だ。うんざりする傾斜の岩山を登り返し追いかけて
いると太ももが攣った。


マーシーさんを先で待ってもらい5分足を休める。還暦を迎えてもう風のように藪尾根を駆け抜ける事は夢となった。

 
   鞍瀬の頭 北側の藪を進む                   ピークの先先から左手に下りた

  
    右側に尾根が見えて、乗り換える                      右側の尾根


一端尾根に乗るとルートは比較的単純だ    正面、三ヶ森までの尾根が眺められる

 
堂ヶ森の手前に黒っぽいニードル尾根が見える             鞍瀬の頭を振り返る


     なるほど  ここまで来ると高瀑の滝が見える


                 高瀑の滝をズームにするとこんな感じね

 
ありゃ  藪っぽくなってきたぞ (正面は三ヶ森)            厄介なシャクナゲ藪

 
おニューのザックに傷をつけた潅木藪                  スペースがあるとホッとする

 
     アップダウンが激しい岩尾根に                又 岩尾根が現れる
        
 

                西ノ冠岳が時々眺められる

 
         岩に生えた樹                      岩山には必ずシャクナゲの藪が待っている
 

                   美しい風景やなあ


                     高瀑の滝が真正面から見える

 
              岩尾根                      グフェ〜  又これを登るの? (右手を登る)

 
   天然桧も岩尾根の必須風景                   右手は切れ落ちて高瀑への林道が見える


鞍瀬北方尾根 最大の難所に遭遇


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
鞍瀬北方尾根 唯一の危険箇所   カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図


16時20分 突然岩場に出る。右手の谷に向かって一枚岩が垂直に落ちている。ここを滑落すれば一体
何百メートル落下し続けるんやろ。下には高瀑の滝登山口、Uターン付近の林道工事現場が見える。左手に
確保する細枝を持ちながら、岩のバンドに溜まった落ち葉の上を慎重に渡る。最後は手がかりが無く、足場も
細くて心許ないので向うの平地まで火渡り行者の様になるべく足場に体重をかけず、飛び降りる様にして
クリアする。後からやってきたマーシーさんも最後はムササビの様に飛んで私の上に覆いかぶさって来た。



                    この右手の狭いバンドを上から渡った  クワバラくわばら

ホッとして次の岩尾根に回り込むと、あれ?前方にルートが無い。マーシーさんが少し下がって現場を偵察し、
「崖になっていてとても行けそうにありませんわ、下に迂回しましょう」安全策は大好きなので直ぐに同意。
笹の急斜面を木に掴りながら30m位下がると、また崖に阻まれる。


左手の沢を伝って下りれないか移動してみるが、この沢も崖がありとても下りれそうにない。

う〜〜ん 絶対絶命のピンチ。 ここまで来て引き返すしかないのか? 乾いた喉を水で潤し、元に帰りザック
を置いてもう一度ルートを偵察してみようと相談。


先ほど下りた急斜面を登り返して一旦諦めた現場に帰る。息を整えてマーシーさんが崖に向かう。「ルートが
ありますわ」倒木にしがみ付きながら下がって現場を見る。岩盤がバンドになっていて2〜3メートル下がると
人が通れる程の幅があり、崖側に細い木もそこそこ生えている。


安全の為マーシーさんのスリングを使ってザックを先に下に下ろし、空身で慎重にバンドまで下がる。下側から
現場を見るとルートが比較的わかりやすく、檜に回されたスリングを外しこの垂直な大岩を回り込むと17時
20分笹の尾根道に復帰した。

 
     笑ってる場合か!             ザックをスリングで下ろして空身で下りる

 
ここを下りて来た  天然桧が無かったら厳しい   その下側のバンド

  
      難所の岩場を振り返る        難所をクリアすると 1,333.1m 三角点があった


さてこのロスタイムを稼ぐべく尾根を急ぐ。三ヶ森に出来るだけ近づいておかなければ明日が又キツイのだ。先程から
雲の量が増えて風も更に強くなり天気の大崩れを予兆している。「向うに見えるピークまでは行きましょう」と薄暗く
なりつつある笹と自然林の尾根を進む。


18時20分 野営目標としていた比較的なだらかで細長いピークに着き、尾根を少し外した鹿の寝床らしい窪地に
テントを設営する。こういう場所が風の影響が少ない事は動物の方が良く知っている。
最高の場所にテントを張れた。

天気の大崩れを予想しテントを入念にロープを伸ばし回りの木に縛り付ける。マーシーさんがフライシートを引っ
張ってストックで留めて登山靴を収納するターフを作る。


テントの中に入って暫くすると雨がポツリぽつりと落ちてきた。よかった〜

明日の行軍に備えて水を出来るだけ確保しておかなければならない。食欲も無いので残ったおにぎり弁当に手を
つけ、マーシーさんから分けて貰った焼酎を少しの水で割り胃に流し込む。


テント泊 : 落雷・突風・雷雨の夜

酒飲みの相棒は「ビールをもう1缶余分に持って来るんだった」と何度も悔やみながら一気に飲み干し、焼酎に移って
いる。その時、テントが一面オレンジ色に輝いたと同時にズダ〜〜ンと物凄い音を立てて近くに雷が落ちた。二人とも
一瞬びっくり仰天、声も出ない。そのあと雷雨がテントを勢い良く叩き出した。 その後も時折辺りが明るくなり雷鳴
が轟く。

マーシーさんが「カミナリはテントの中は安全ですよ」というがその根拠については眉唾ものだ。寝袋は要らんやろと
決めつけて二人ともシュラフカバーのみ。マーシーさんはホッカイロを使って暖を取って酒の勢いに任せてすぐ寝て
しまった。こういう時、ナイーブな感性を持たない人間はいいよなあ。


 
       尚も岩尾根が続く                         あの尾根あたりでテントを張りましょか

 
テント泊する尾根がすぐ先に                      18時20分 テントを設営


3月21日 (月)

山全体が一晩中強風でざわめいていたので寝たのかどうか良くわからない。夜中を過ぎてマーシーさんが「ひゃ〜
寒いわ」と酔いから覚めて起き出しゴソゴソと雨具を着て、その後又高いびき。「寒さしのぎに背中を寄せ合って
寝よう」と同性間の合意が成立するが、二人の間に大きな石が邪魔をして実行は不成立に終わった。ホッ


私の寝床の下が盛り上がっていて気になった。やはりテントを張る前は念入りに石やコブを取り除くべきであった。

朝、辺りが明るくなり、雨が上がっている様だが風はまだ相当猛威をふるっていた。06時半頃マーシーさんが目を
覚まし、「寒かったなあ、さあ朝飯でも食べましょか」とバーナーでお湯を沸かしだした。テントの中が一挙に暖かく
なる。二人ともカップラーメンを作り体を温める。お互いの水の残りを確認。私が600mlちょっと、 マーシー
さんが1.5リットルあるので350ml分けてもらう。


07時過ぎに片付けにかかり、雨を含んだテントを撤収してザックの底に入れる。重くなった分マーシーさんに私の
荷物を少し分担してもらい、07時30分野営地を出発。
強風の為、笹の雨粒が吹き飛ばされて足元は比較的濡れていな
かった。風が冷たいので返って歩きやすい。

しかし、朝からガスがかかり見通しが悪い。野営地を少し進んだ 1,250m ピークでコースが左へ振っている。ここを
注意を払ってルートを確認する。この辺りは既に岩峰を越してはいるものの、相変わらずアップダウンが続く。尾根
自体は笹と雑木林が主体であるが、先日の湿った雪や今回の強風で多くの枝が折れて尾根に散乱してとても歩きにくい。

08時00分斜面を這い上がり、1,202.9mの三角点を確認する。そのまま三角点の西に伸びる尾根はコースを外すので、
少し元に帰って植林地帯近くの尾根を下る。突然足元のミステリーサークルから黒い大きなイノシシが飛び出して来た。
安眠していて人間の足音に驚いたのか、見つからない様に最後の我慢を重ねて限界が来たのか、あっと言う間に我々を
脅かせて消えていった。あ〜びっくりしたなもう。

今までの藪尾根歩きで笹を丸く重ねてフカフカした巣を無数に見てきたが、これが鹿のものかイノシシのものか定か
ではなかった。これでミステリー・サークルはイノシシのねぐらである事が判明した。 

 
強風が吹き荒れたがあまり風の影響を受けなかった場所 オスプレー同士 左:マーシー 右:エントツ山

 
     尾根に散乱する木の枝            雰囲気が良い広場

 
ターニングポイント 1,202.9m 三角点       植林の尾根に入ると岩が散在している
 
イノシシが飛び出してきたミステリーサークル     ミステリーサークル シャクナゲ編


イノシシに遭遇した尾根は結果的に間違っていて、手前の杉林の尾根にトラバースして乗り換える。植林地帯の
尾根には多くの岩が残されていた。尚も倒木で荒れた尾根を乗り越えながら進んでいると三ヶ森の手前に立ち
はだかる円錐形の急な1,275m ピークに来た。お決まりの岩とシャクナゲ藪だ。これを頑張ると09時22分前方
の雑木林の向うに目指す三ヶ森のシルエットが姿を現した。

左側に少しいびつな台形の尾根を持ち、その右手に尖ったピークを持つどっしりとした右肩上がりの山塊だ。
この右側ピークが三ヶ森山頂である。


すぐそこに見える三ヶ森だが、その前に微妙な尾根のうねりがあり、2〜3個越えなければならない。09時
39分猛烈な笹薮を越え、10時02分三ヶ森直下の岩場で3分休憩を取り、その後なだらかだが藪っぽい斜面
を山頂へ向かう。
前方の山際が次第に透けてきて、10時20分先日ペーコさんと訪れた山頂に着いた。

この山頂から歩いてきた南側を振り返るが、藪と南側のピーク尾根に遮られて残念ながら縦走路の全容は見え
ない。おまけに前回以上に石鎚山塊は低く厚い雲に覆われている。


 
   ぞっとする様な 1,275m ピーク                     案の定 岩山や〜
 
          前進あるのみ                        前進を阻むシャクナゲ藪

 
       やっと三ヶ森が見えてきた                 おっと、早速 笹薮の洗礼を受ける

 

 
   雪や風で弱い樹木はズタズタになっている           ダラダラと笹の登りが続く

  
      三ヶ森直下の岩                          バンザ〜〜イ  取り敢えず縦走一段落



やっぱり リップさんから掲示板に貼ってもらったこの写真が一番いいわ  鞍瀬の頭までの縦走路が見える

さて、鞍瀬の頭から三ヶ森までを縦走出来た感慨に耽っている暇はない。我々の計画はそれから尚も虎杖(いたづり)
まで続けると言う呆れたものなのだ。三ヶ森までで十分じゃないのか?いや、更にその向うに尾根があるじゅあないの。
中途半端はどうも気持ちが悪い。


ここで恒例のエントツ山の替え歌  曲は今井美樹の PRIDE プライド

題 : イノシシのプライド

 私は昨日(きのう)〜 ♪ 北に延びる尾根を 眺めて 誓った〜  ♪

   どんな時も 微笑を絶やさずに〜 ♪  歩いて 行こうと ♪
 
 鞍瀬を下りると  岩場とヤブで〜  涙を流しては 〜  ♪
   
   難所におびえ〜 カミナリとイノシシに おどかされながら〜  歩いてきた  ふふふぅ〜〜  ♪

 だけど今は〜  ♪ 虎杖(いたずり)を 目指す事が 

   私の プライド〜  


第3章  三ヶ森―虎杖(いたづり)  ( 約5時間)  (あ〜〜 登山記作成も飽きるほどの長丁場です)


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図   三ヶ森〜虎杖 (いたづり)尾根縦走ルート図
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである 

一応三ヶ森(みつがもり)山頂で記念写真を二人で撮って、10時40分反射板へ向かって下がる。

 
    まだ歩くん?  しゃーないわ                 鞍瀬の頭を振り返ってもな〜〜んも見えんわ
 

ここからしばらくは見慣れた風景なので心が落ち着く。樹木広場まで下がって、反射板へと進む。前回は雪に
覆われていた熊笹のデザインが綺麗だこと。茨っぽい反射板を11時00分に抜けて次の尖がりピークに向かう。
これを越えるともう大きなアップダウンが無く快適な尾根道になる筈だ。しかしこの部分は尾根が微妙に分かれた
場所でルートがわかりにくく11時24分少しコースを外れてしまいそれを修正する。


ピークを越えると植林地帯に入り、12時08分 1,145.2mの三角点は細い杉の伐採によって枝が
かかっていた。それを取り払い少し休憩。


その後 漫然と尾根を下がっていてふと気がつく。あっ この尾根は諏訪へ向かって下りるエスケープルートにして
いた支尾根ではないか! GPSでそれを確認して元の三角点に帰り軌道修正する。
しばらくは植林と自然林が混在
した快適な尾根道でここに来てテープが俄然多くなった。


 
      反射板が二つ見える                                樹木広場

 
   前来た時は雪で見えなかったヌタ場              これも雪で見えなかった熊笹

 
   反射板を過ぎるとノッポのピークがある            コース取りが難しい尾根が輻輳する場所

 
おっ 西洋バスタブ風イノシシのヌタ場や〜            植林と自然林が尾根を分ける

 
ターニングポイント 1,208m 谷ヶ内三角点                     杉と自然林の並木道

 
  天気も良くなり気持ちの良い自然林               あ〜しんど  水が少なくなってきたわ

 
    枝打ちを全くしていない杉林                   ありゃ 岩尾根になったぞ

13時15分頃から岩尾根となり、岩場の展望所からは北側に石鎚山塊が一望出来る。更に左手には東予市と
瀬戸内海、右手には沓掛山と黒森山が見える。


細尾根のシャクナゲ林を抜けると13時53分 周りが切り払われて実に見晴らしが良い964.5m三角点に
飛び出した。この開けた場所で小休止。天気が回復して青空が広がる。ここが三ヶ森ならもっと良かったのに。


14時00分最後の三角点を後にしてそこから更に東へ岩尾根を地図の等高線通り下っていく。右手は断崖絶壁
だが瓶ヶ森が見え、左手には隣の尾根が並行して続き、その間には谷部が見える。その内、左手に鉄塔が現れ電線
も見えてくる。 

益々下り傾斜がキツくなりヤマツツジに気を取られていると14時40分、マーシーさんの「道に出ましたわ」と
言う声が聞こえる。地図には確か破線があり、そをを一旦右に下がり、左に折り返すと横峰寺への古道に出る
筈なのだ。


 
    東予市と瀬戸内海が見える                   沓掛、黒森のセットはわかりやすい


ここから見る石鎚山塊は弥山・天狗岳・南尖峰は左端に縦薄に見える。 メインは石鎚三角点と西ノ冠岳の要塞だ
その右側のピークは二ノ森で、更に尖がった鞍瀬の頭が続く

 
     窮屈に歩いた岩尾根を振り返る                  シャクナゲ林

 
    広々とした 964.5m 槌ノ川三角点                最後のシェ〜〜  お〜まだ足が上がるぞい


             三角点から見上げる石鎚ドーム

 
   岩尾根が続く                             当然植林地帯もある


 左奥は高森あたり   正面の尖がりは二ノ岳 、右奥は瓶ヶ森  その右端にちょこっと子持ち権現が見える

 
ツツジが殺風景な尾根歩きに彩を添える              石組みされた古道が右に延びている

確かに石組みがあり獣道ではない。ツツジの赤紫色した蕾やコブシ類の白い花、大きな岩などとても雰囲気の良い
風景に酔いしれながら最後の花道になる筈だった。が・・・途中から沢部に入るや突然道が怪しくなり、そこを
抜けた植林地帯で道が突然消えた。


GPSで位置を確認すると、二人はとんでもない場所に居た。我々が右に舵を切った道は地図上の破線ではなく、
まだ相当上側だったのだ。


14時50分、目的地はもう近いのでこの急な植林地帯をショートカットして下側の道にぶち当たるまで下ろうと
言う結論に。 GPSと地図があればこういう場合本当に安心だ。


ただ、もう少し早目に位置を確認せにゃならんのだけれど・・・

ドンドン下がると15時22分道に出た。これを左に下がるとやがて沢に出て、15時25分横峰寺へ至る古道
と合流。右手に少し下りると15時35分黄砂を被って雨で汚くなったラッシュに帰り着く。


保井野に向かう途中で水が出ている場所を見つけて顔と手を洗う。少しさっぱりした気分で小松に出てコンビニで
アイスクリームとカロリーオフ・コカコーラを買う。メタボな二人だがこれくらいの贅沢は許されるだろう。


11号線から鞍瀬渓谷沿いに入り、カーブで車が揺れる度にマーシーさんの炭酸ゲップを聞きながら保井野駐車場
に帰る。ここで其々の車に分かれて解散となる。


 
  大岩の風景が良い ミツバツツジの蕾              古道が更に右へ伸びる

 
    あれ? 道が無くなった                    え〜〜い 植林地帯を下りよう

 
   三叉の花が暗い植林地帯に咲く                  しっかりした道に下りつく

 
 沢部で横峰寺への参拝道と合流                  沢に沿って参拝道を下りる

 
         虎杖(いたづり)に到着                 出発地点の保井野に帰り着く

いや〜〜 アドベンチャーな2日間だった。「鞍瀬の頭・北方稜線完全縦走」はマーシーさんの協力によりここに無事完了した。

天野さんの無名峰・北方稜線縦走は ここ
Waiwai さんの 鞍瀬の頭 北方稜線は  ここ
自然散策・鞍瀬北方稜線は  ここ

   
       
        
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