平成24年11月18日(日)
寒風山東尾根・完全踏破
山脈はその両側で傾斜が急な面となだらかな面に性格を変えるケースが多い。石鎚山系の場合は概ね瀬戸内海側
(愛媛県側)が急峻で、太平洋側(高知県側)が比較的なだらかな様相となる。
寒風山でも瀬戸内海側(西側)が急傾斜で、高知側(東側)がなだらかである。しかしながら西側には旧寒風山
トンネル口や北西尾根にはバリエーションルートがあるのに、なだらかな東側には名だたるバリエーションルート
は無い。これでは片手落ちと言うものではないか?と言うのが私を寒風山東尾根に駆り立てた理由である。
前回(11月3日)東尾根這い上がりを目指すも踏み跡を追い過ぎて沢に出てしまい、途中まで沢歩きとなった。
紅葉の時期それはそれで大変満足だったものだったが、やはり当初の目的を達しないと寝覚めが悪い。
11月18日遠出が出来ない事情を利用して再度寒風山東尾根を徹頭徹尾詰める事にした。 ここでお断りをして
おきたいが、本編で言う「寒風山東尾根」とは山頂から東に延び、その後南東へと落ちていく主稜線の事である。
この尾根の直ぐ南側には南東方向に延びる小さな尾根がある為、これと特別する為に敢えて寒風山・東尾根と呼ぶ
事にした。
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図 寒風山・東尾根這い上がりの巻
寒風・大座礼線の東尾根コーナー広場に駐車し、寒風山の山頂付近を見上げるが今日もガスに覆われている。徹頭徹尾
にこだわって道路の尾根筋を良く見ると踏み跡があったので08時50分突撃開始。直ぐに前回利用した広い道を横切り、
又同じ場所から尾根に取り付く。
う〜〜ん 今回も寒風山はガスの中 (寒風山・東尾根)
今度は絶対に左へ振らないと決意して前回の踏み跡が左へ巻く地点まで尾根を辿る。
調べてみると、破線が山腹を旧寒風山トンネル上まで続いていたので恐らく古い道があったのだろう。そこは少し平ら
で尾根道が消えていると思ったが、よ〜く見ると藪の中に薄い踏み跡が続いていた。
ホッとして第一目標とした尾根に飛び出して見える背の高いカラマツを目指す。藪っぽいがこのカラマツまでははっき
りとした踏み跡が続いていた。
09時20分目標地点に着き辺りを眺めると附近には老いたカラマツ林がある。しかし葉っぱには勢いが既に無くかつて
の植林の生き残りだろうか。
同じ場所にスズキのエスクードが停められていた よ〜く見ると、林道から直接続く踏み跡を発見
ありゃ 前回歩いた広い道に出た 尾根筋に続く踏み跡に入る
覚悟はしていたものの・・・ 目標はあの丘のカラマツ樹だ
もうこの左への踏み跡へは入らない 車をデポした広場を眺める
確かに踏み跡が続く もうすぐや〜〜
登山口から約30分で第一目標のカラマツ群に着く
左手にカラマツ林がある 枯れかかったカラマツ林が痛々しい
さて、ここから尾根には踏み跡が消失するが、単純な一本尾根の為ルートはほぼ決まっている。地図で見ると尾根が
この上でやや右手に湾曲するのだが、実際歩いて見るとその様な実感は無い。笹薮が続くが尾根部の獣道(けものみち)
を見つけて辿れば比較的歩き易い。全くスペースが無い場所もあるが手で掻き分けるとそんなに手ごわくは無い程度の
笹藪である。
これも今までマーシーさんと散々手ごわい藪を歩いた免疫効果だろうか。この尾根は予想した通りながらかで危険な場所
はない。倒木があると、その上で辺りの景色を眺めながら又笹藪に飛び込む。
げほっ 道ないじゃん これはミズナラかなあ
中々の藪ですなあ 岩場があると笹がないのでそちらに進む
なるべく獣道(けものみち)を追いながらあるく 意外といい景色じゃん
同じような・・・違うような景色が続く ブナよ 力を分けておくれ
植林の様だが良く見ると植林では無い様な・・・ コル部から次のステップへと進む
10時00分倒木尾根に着き足元を見るとスパッツを付け忘れていたのに気付き、次の大きな倒木の上で履く。昨日の雨
に濡れた笹でグショグショになったウィンドブレーカーもついでに雨ガッパに着替える。撥水効果が謳い文句で買った
ファイントラックのズボンはスネやヒザが既に水が滲(にじ)んでいる。今更藪でゴアテックスのレインズボンが破けるの
も嫌なので下はそのままで歩く。
笹尾根にブナやモミ、檜やミズナラなどの樹が立ち、眺めるだけなら十分美しい自然の景色だと感じる。ただ平和な瞬間は
余り長くは続かず、歩き始めると笹はあくまで深く藪こぎ作業を強いられるのではあるが。
結構好きな風景だ 倒木の上でスパッツを着ける
ミズナラの巨木
笹に溺れる こんな風景もいいねえ
尾根を振り返る 倒木があれば歩き易いのでその上に乗る
お〜〜 今日一番の風景や〜 10時28分タコ足ブナで
ブナのシルエット リョウブに鹿の皮剥ぎが沢山見られる
おっと シビれる風景やで
右手の尾根筋が霧氷で白くなっている そろそろ前回の沢這い上がり地点かなあ
10時40分前回、沢から這い上がった尾根にあった目印の苔生した大石に着いた。大岩に自分の気持ちが投影し、2
度目ではあるが物凄く懐かしい風景に会った様な頼もしい雰囲気を感じる。前回はそこから少し窪地の獣道に添って急
斜面を進んだが、今回は藪っぽい左の高い場所を歩く。
昨日の雨で足元も悪く霧氷が落ちて霧で笹が濡れて手袋もズボンも水を含み気持ち悪い。心臓の鼓動が早くなっている
が気温が低いのでさほどの休憩は体が要求して来ない。
11時00分になると霧氷が現れた。深い笹の斜面にモミの木通りが現れ、そこから下を眺めると車をデポした東尾根
コーナー広場に置いた車が見える。モミの木通りの前方に岩場が見え、獣道がこの岩場を左手へ迂回している。前回は
ここを左に迂回したが、今回は尾根を大岩に向かってブナの木を抜けて真っ直ぐに進む。大岩の右手右手から急な谷が
競りあがっていたので11時10分、今回はルートを変えて右手の沢筋から這い上がって見る。滑り落ちないように慎重
に上に出るとそこは霧氷の藪尾根となっていた。
登山口から約2時間弱でこの苔岩に到着
前回、登山道と一瞬思ったこの場所は単なる溝だった 沢から這い上がって来た左斜面を眺める
ブナが所々に現れる コブ檜を通過
雪が残されたガレ場 この岩場を抜けるとモミの木通りだ
車を停めた尾根広場をズームで
ブナがカモ〜〜ンと腕を大きく広げる
モミの木通りの彼方に聳える岩峰 前回、この獣道に従い大岩を左に迂回した
今回は左へ迂回せず、そのまま尾根を大岩へと進む
大岩直下にでて右手に回り込む 大岩の間に通れる斜面がある
斜面に下りて大岩の間を這い上がる
谷を這い上がると霧氷がびっしり着いた灌木藪がありそれを抜けるとデカい岩壁が現れた。この大岩ポイントは林道から
眺めても尾根から飛び出して見える場所だ。大岩の直下に進むと少しテラスとなっており眺めがすこぶる良い。しばらく
眺めを楽しんだあと、右手に回り込むとそこは新たな岩壁がそそり立ち断崖絶壁である。
近頃マーシーさんは岩登りをやっているそうだが、予めロープが下がっている岩場は安心だが、こんな岩場でトップを上が
るなんて役はしたくも無いし見たくも無いものだ。
を左手に迂回して安全な雑木が生えた急斜面を這い上がる。
すると霧氷の向こうに次の岩壁が現れた 先ほどの大岩よりデカい岩壁だ
大岩の軒先にある展望テラス 左手から迂回する
岩尾根を這い上がる 11時25分右手が切れ落ちた谷を横目に細尾根を歩く
この岩場は問題なく這い上がれる シャクナゲの細尾根を進む 冷た〜〜い
霧氷が次第に大きくなってくる この雑木林を抜けると笹原に出るぞ
雑木林を抜けると11時30分ガスで見通しは利かないが見覚えのある広い笹原に着いて山頂は近いと感じる。
の段を越すと上から人の声がしてきた。
無事終えたお礼をして11時40分山頂に上がる。登山口から約3時間弱の寒風山東尾根歩きだった。
高知からこられた同じ会社の山親睦会の方たちが昼食中だった。下半身ずぶ濡れの私を見て「どーいてあんなに濡れちゅう
が〜〜」と不思議がる。スミマセン 色々事情がありまして・・・
山頂でおにぎりを1つ口に入れる。一瞬青空が見えたのでカメラを構えるが5秒くらいのお天道様からのショートサービス
だった。その後天候回復の兆しも無くズボンが濡れて寒いので下山する事にする。
この笹原に出たら山頂は近い 霧氷を眺めながら笹原を歩く
寒風山の山頂に近づくと霧氷が立派になる おおっ 山頂に着くと青空が現れた
ほんの数秒間の青空だった 寒風山の山頂にて
右手斜面(西側)には霧氷がびっしり付いている。あ〜 青空が欲しい・・・・・人間のあくなき欲望が顔を出す。南岩壁
を下りる時には青空が無いものの少し視界が良くなり伊予富士の北斜面が立ち込めたガスのなかで少し光を浴びて光っている。
桑瀬峠から駐車場までは退屈なので、コンビニで買った百円塩せんべいの袋を開けて周りに遠慮なくボリボリかじりながら
歩く。歩き出してから口にしたのは三角おにぎり一個だけだったので煎餅をゆっくり一個づつ食べ続け、袋の中身が全て無く
なる頃下山口に着いた。
山頂の西斜面
登山道にて 葉っぱの色が欲しかった
長いこと見上げて首が痛くなった
トライフラワー ? アイスフラワー? ヒゲの霧氷に目がいく
桑瀬峠と南岩壁の間に横たわる台地
台地から南岩壁を眺める
桑瀬峠から伊予富士への尾根
桜をイメージさせるブナの霧氷
13時20分旧寒風山トンネル口に下山すると沢山車が置かれており、県外ナンバーも見受けられる。この頃になるとズボン
も乾き気持ちが良い。13時40分東尾根コーナー駐車場に帰ると、朝並んで停めていた愛媛ナンバーの新型エスクードが
まだあった。寒風山を見上げると山頂付近は相変わらず雲に覆われていた。
登山道を歩く方が概ね楽で景色も良いに決まっている。でもこの藪尾根歩きが私に与えられたジャンルと言うものだ。