平成20年6月14日 高瀑の滝を這い上がれ

石鎚林道登山口高瀑(たかたる)の滝ー稜線ー西ノ冠岳ー北西尾根石鎚林道登山口




この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ

川口ー石鎚林道ー高瀑渓谷登山口(林道崩壊地)(0820h) −旧高瀑の滝登山口(0920h)−
高瀑の滝 (1040h) − 稜線 (1300h) −西ノ冠岳(1430h) − 北西尾根 −旧登山口1710h)−
車デポ地 (1800h)


以前からアライグマ一家のぼのさんや荒獅子さんが西ノ冠岳を目指したレポを見てここは是非歩きたいと思っていた。
マーシーさんにその事を話すと即 行きましょう! 当然乗ってくる。

西条から石鎚ロープウェイ方面へ行き、途中河口で右折。ドデカイ岩が川に横たわる加茂川の分流に沿って舗装道路
を進む。 地図をみると「石鎚伊予小松停車場線」とけったいな名前がついている 諏訪神社の辺りから舗装道路は切
れる。

途中異様な登山者が歩いているのに出くわす。時代遅れの登山帽、体にグルグルとザイルを巻きつけている。青いズボン
に黒いスパッツ。 何者? はは〜〜ん このオッサンが以前 reikoさんが寒風山登山口で目撃したという怪しい登山者や
な? とピンと来た。 「どちらまで?」と聞くと「高瀑の滝から西ノ冠岳近くの稜線まで這い上がるのよ」と答える。ギクッ
同じ目的・・・・ それを聞いて武士の情け、知らぬ顔は出来ない。「ボクらも高瀑の滝まで行きますから乗りませんか?」
と誘う。

この南軍の敗残兵みたいなオッサンは諏訪神社辺りに車を停めて歩いていたのだ。そこからでも登山口までかれこれ
30分は走ったからどんだけ歩くつもりだったの?

この道は上部で「石鎚林道」となっていて地図を確認すると雪タルまで伸びていたらしい。数年前の台風で道は崩壊し
途中で車をデポする。ここでチョー怪しい南軍兵士とは別れて歩くことに。

      
              どう見ても怪しいオッサンや (林道崩壊地の登山口にて)

8時20分出発。崩壊地を渡ると所々に大きな岩が崩れ落ちたりして多少荒れてはいるが、広い林道が続く。橋を渡ると
すぐにトンネルがあり、そこからもなおも歩くと道が上り坂のヘヤピンカーブとなっておりショートカットする。

約1時間で休憩所の建物が残っている「旧高瀑の滝登山口駐車場」の広場に着いた。ここから林道は左に急カーブを
切り雪タルまで続くらしいのだが、高瀑の滝にはここから沢沿いの道に入る。


 
      林道崩壊地を渡る                          トンネルがあった

 
旧高瀑の滝 駐車場  登山口は正面建物の右手       標識などもかかっている

    
                高瀑渓谷   ここは秋が綺麗やろなあ

広場の右手にある沢が素晴らしいかったので暫くその風景を楽しんだ後、広場に帰り石段がある沢沿いの登山道に
分け入って行く。水量はさほどでもないが石鎚山系の清流を楽しみながら上流へと向かう。 道は荒れている所もある
が要所には橋やロープなどが敷設されており概ね立派な道だと言える。

滝を右岸に巻いて難所を越すとコンクリートの橋がかかっており、そこからガレた傾斜を這い上がり細い山道を進む。
突然前方の木立の間から巨大な岩盤とその中央部から流れ落ちる滝が現れた。


 
      沢沿いを歩く                                 滑の河原


 
   美しい滝の右岸を迂回する                 コンクリートの橋を渡る


 
  ガレている斜面を上がる                      あちこちに素晴らしい滝がある

うひょ〜〜 これが高瀑(たかたる)の滝か〜〜  おもわず叫ぶ。 水量が少ないのか、岩盤が平べったくスケールが
大きいすぎるので水が飛んで水量が少なく見えるのかよくわからない。でもこの落差は凄い。

マーシーさんを滝下に行ってもらいその大きさを対比してみる。下の写真下に小さく写った人形がマーシーさんだ。
しばらく滝下でウロウロしてこの大自然の不思議な光景を眼一杯楽しむ。

途中で追い抜いた南軍兵士がやってこないのでお先に失礼して稜線へ這い上がる事にする。

   
                   「高瀑の滝」と マーシー人形

 
  高瀑の滝 これって水量多い方かしら          シェーってポーズ取っても 人間はちっぽけだわ

「高瀑や 水が無ければ ただの崖」 つまらん川柳をヒネリだしながら更なる上を目指す。 一見して滝の正面に向かって
右側に木の茂みがありここが這い上がるルートだとわかる。

案の定 ガレた傾斜を登って行くと木に赤いテープが巻かれていた。 更に踏み跡を辿ると崖部にはロープなども敷設され
傾斜はキツイもののそう危険な場所は無い様に思えた。

左手には木々の間から滝の落水が見え、次第にその上部と同じ高さになる。 比較的長い鉄梯子なども置かれており、この
ルートは林道が崩壊する以前はよく使われたルートなのだろうと想像できる。

笹が現れだした頃、左の滝上部に向かう踏み跡があったが相当藪いていそうだったので尾根筋を進む事にする。


 
おいわさんには負けるけど4枚目撮ったど〜            滝に向かって右側を這い上がる



 
     木々の間から滝を見る                   比較的 ここが難所かな?


 
   滝の上部とほぼ同じ高さになった               鉄梯子がある  こりゃ立派な登山道だわ

 
細尾根を這い上がる  ロープなども敷設されていた          笹が出てきた

石鎚山系のバリエーションルートを歩いて感じることは笹と樹木、特にブナとのマッチング風景がとても素晴らしいと言う事だ。
笹のヤブコギは苦しいけどこの大樹が枝を張る景色を見ると何だか癒される。普段誰も見ない場所でさえこの美しい風景は
存在している。

そうこうしているうちに例の虫がまとわりついて来た。ブユとかブトとか呼ばれる忌まわしい動物。jこれが清流に生息するって
言うから存在価値はあるって事? 二人ともネット帽子を被る。



     
                   こういう景色が藪歩きの楽しみでもある

 
       岩の細尾根もある                      左手に西ノ冠岳が姿を現す


     
                     癒される風景


岩のある細尾根を過ぎると西ノ冠岳のゴツゴツした天辺が次第に目線に近くなってくる。 笹薮もそれに連れて猛烈となるが
稜線が近づいているのでガマンが出来ると言うもの。

二ノ森から西ノ冠岳へ縦走していると辺りには白骨林がたくさん見られる。 この尾根にもそれが現れ目標が近い事を知らせ
てくれる。最後の藪を乗り切ると1300時 稜線に飛び出した。

 
      虫がたくさん現れてネットが要る               西ノ冠岳が近づいてくる


                    更に大好きな風景


  
     白骨林が現れると稜線が近い               廻りの風景も開けてくる

二ノ森ー西ノ冠岳の稜線部に到達しホッとする。暫く休憩するがブトがウザイので追われる様に歩き出す。左にトラバースする
縦走路を外して細尾根のピーク沿いを歩く。 ツマトリソウやマイヅルソウが岩陰にひっそりと咲いている。

ここから見る石鎚山は瓶ヶ森から眺める秀麗な姿には遠く及ばないが、山とは美しいだけでは無く裏側から崩れながらもその
屋台骨を支えている勇壮な姿がある事を知らされる。

ここまで例の南軍兵士以外は誰にも会わなかったが・・・・・ そう言えばあの時代遅れのクライマーはザイル抱えて今頃どこで
どうしているんやろ
?・・・・・ 西ノ冠岳トラバース路にはいるとチラホラ石鎚方面から現れた。


 
  1300時 稜線に上がる                       二ノ森方面を見る




        道の無い尾根筋を進む   いい景色や〜

  
   稜線沿いを西ノ冠岳へ向かう                          ツマトリソウ

  
   マイヅルソウ                            キバナノコマノツメ

西ノ冠岳に東側稜線伝いに上がる。 今年裏年と聞いていたヤマシャクナゲがあちこちで咲いている。若い花は濃い色をして
殺風景なこの山に彩を添える。 イワカガミの小群生がありここが皆さんの撮影スポットだったのか。

山頂付近の藪を西の端まで進むが絶壁で到底下りる事は不可能だった。すこし元に戻って北側へ迂回する。そのまま直進し
てしまうととんでもない場所へ下がってしまうので慎重に左へ迂回しながら下る。そこはシャクナゲのジャングルでまるで行く手
を阻むバリケードの様に二人に立ちはだかる。

虫も多いのでネットを被ったまま押したり引いたりくぐったり、踏みつけたり乗り越えたりと悪戦苦闘しながらコンパスを頼りに
北西尾根に乗る。 岩の崖を下りる時に枝に宙吊りとなり背中が引っかかる。あちゃ〜〜 モンベルのシャツがビリビリと音を
立てて破れていく。「だから藪歩きする時はボロい服装で行く様に何度も言ったでしょ!」 サマンサの声が耳元で聞こえた。

 
        ヤマシャクナゲ                            イワカガミ

 

  
    シャクナゲのジャングル                  ジャングルと戦った証 あ〜〜モンベルのシャツが・・・

   
     あのピークに進めばいいか                     そうそう あのピークを目指そう

何とか西ノ冠岳北西尾根に乗れた様だ。 前方が開けて尾根筋を眺める場所まで下り余裕が出たので、まるで転げ落ちてきた
かのような西ノ冠岳を振り返る。

二ノ森方面から見る西ノ冠岳は崩壊が激しく痛々しい。しかしここから見上げるその山はギアナ高地の様に岩盤がそそり立って
美しい風景だった。「おい この西冠風景をみた人間はあまりおらんぞ」 とマーシーさんに話かける。「確かにィ」と珍しくカメラを
取り出して盛んにシャッターを切る。


     
 

   
  振り返ると・・・ え〜〜 あんな所から下りてきたの?      更にシャクナゲの藪

 
                   ここはギアナ高地か ?


                     二ノ森方面を眺める

 
  西ノ冠岳も次第に遠ざかる                     稜線にはモミの若木が多い

西ノ冠岳は北の西条側から見ると石鎚山と一体となり豪快な山塊のシルエットを造っている。従って北側へは無数の支尾根が
伸びて複雑な地形となる。最初の短い支尾根は高瀑の滝へと続く。その次の北西方面に伸びる支尾根が旧高瀑の滝登山口
近くまで続いている。

地図だけを見て歩くルートを決めるが、実際現場に行くまでその様子はわからないのだ。しかしこの尾根は一旦乗ってしまうと
意外とルート取りが容易で、前半にモミの幼木風景が広がり、後半はブナの美しい風景、最後の詰めは猛烈な笹薮となる。

  
     美しいブナも現れる                        ええ尾根やなあ


  
     どうですか  この風景    西ノ冠岳 北西尾根

 
   藪のヤセ尾根                          あ〜〜 笹が深くなってきた

西ノ冠岳を出発してかれこれ2時間以上この尾根を下っている。林道まで高度差約900mをひたすら歩くその最後はやはり
ひどい笹薮だった。「やっぱりな・・・・」 我々二人にはいつもこの半分諦めの呟きが付きまとう。

お互いが笹や木々の揺れにその存在を確認しながら藪に潜る。1700時頃 前方に崖が現れ下に林道がある。木を掴みな
がら慎重に嬉しい空間に下り立つ。 この道は両側から木々が伸びて狭くなっているが、雪タルへの石鎚林道だ。これを下る
とすぐに旧高瀑の滝登山口広場に着いた。

後は朝方歩いてきた道を1時間ほどかけて戻るだけ。


 
    やっぱり藪か                          最後にはこれか〜

  
   林道に転がり落ちる                         旧高瀑の滝登山口に下りつく

  
  沢筋から西ノ冠岳が見えた (ヤブウツギ)                崩壊地を渡って車に帰る

今日もマーシーさんと組んで面白い山歩きが出来た。まだ歩いた事のない場所を地図とコンパスと山勘で計画に沿って歩く。
う〜〜ん この楽しみはたまらん !  帰りにコンビニに寄り今日の山歩きの無事を祝って恒例のアイスクリームで乾杯する。



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