2006年11月05日         石鎚中沢コース
イノシシたちの挽歌 (パート2) 石鎚山「中沢コース」  ご来光の滝から南尖峰へ
10月22日  石鎚山「中沢コース」 マーシー、ランボルと
ご来光の滝ー中沢ー南尖峰ー天狗岳ー弥山ー土小屋



カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ 行程図
(国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

0740h 長尾展望所出発
1000h ご来光の滝
1100h 中沢 入り口
1330h 南尖峰
1400h 弥山
1600h 土小屋

マーシーさんからの電話

土曜日の夜遅くマーシーさんから電話が入った。「ランボルギーニと今土小屋にてテント泊中です。明日中沢を歩いてきますが、エントツ山
さんに内緒で行く訳にはいかないので電話しました」何やて〜 オレ様を放って行く気かい!!
実際、前回「北沢への分岐」がわからず気になっていたのだ。

幸いな事に明日、サマンサは娘カラミティ・ジューンと孫を連れて岡山の温泉へ行く事になっている。「もし目が覚めたら石鎚へ行くかも
知れない」と小さな声で告げる。

朝4時に不思議と目が覚めて石鎚・土小屋を目指す。7時のゲート開きまでに遅れないように西条インターを通勤割引の効かない
5時半に下り瓶ヶ森林道を走る。7時丁度に土小屋に付くとマーシーさんとランボルギーニはまだテントもそのままでのんびりと朝飯を
食べていた。 こんな気合の入っていないヤツらと生死を共にするのか・・・がっくり・・・全身の力が抜ける

 
石鎚よ 待ってておくれ〜          路上生活者? マーシーだった

いざ 行かん 中沢コースへ

7時半にやっと長尾展望所に下り準備をする。車で来られてご来光の滝を望遠鏡で覗いているお年寄りがおられたので3人の記念
写真をお願いする。
「どこへいくの?」と聞くので「ご来光の滝まで」 すると心配そうに「行った事あるの?」と言う。それに頷(うなづき)き返し、さらに「それ
からあの石鎚の天辺まで這い上がってきます」と畳み掛けると「え〜〜 ほんとに大丈夫?」とじろじろと3人の様子を見つめる。まあ
どうひいき目に見たってそんな勇者には見えないわい ほっといて〜

     
    ボクたち 藪にはいるとスゴイんです (サエない風貌トリオ)

心の底から心配そうな様子でこの老人に見送られていつものガードレールを乗り越え川原へと落ちていく。沢の紅葉は未だ早かったが
かすかに色づきの兆候がここかしこに見られる。写真を撮られる単独の男性が一人だけ先行していた。七釜の美しさにうっとりして足を
取られながらいつもの沢の空気を吸いながら歩く。

     
       南沢への入り口 

 
洞門 ここから沢をず〜と歩く            唯一の難所(?)

洞門から大きなゴロ石伝いに沢歩きを楽しむ。相変わらず清流の色に木々が色づいて覆いかぶさる。ペンキもテープも不要なルートだ。
ご来光の滝が迫った事を告げるように滝上の絶壁が頭を出す。秋の空にうろこ雲が流れている。

ご来光の滝

ご来光の滝は一週間前よりさらに色づいていたが、まだ去年の美しさには程遠かった。ランボルギーニは久しぶりの滝なので懐かし
そうに滝の下でしげしげと上を眺めている。私とマーシーはどっかと腰を落として休憩。心は更に上に向かっている。

  
          ご来光の滝と秋の空 のどか〜

     
          色づいたご来光の滝付近

更に上を目指す

ご来光の滝で少し休憩の後、左側へ回り込み涸れ沢を這い上がる。今回は慎重に本谷に近い右側を進んでみる。 あれ? テープ
と登山道がちゃんとある。尾根筋まで上がるとマーシーさんが「人間の足音がする」とつぶやく。何も聞こえない・・・「こんな時間に上か
らなんか人が来るかよ」「いや 確かに音がした」

お〜〜? すると上からいでたちがサマになっているカッコいい女性と頼りがいのある男性が下りてきた。お二人は松山から来られた
マナスル」さんご夫妻で愛大小屋からご来光の滝を見に下りて来たとの事。楽しい山仲間との語らいのあと、すがすがしい気持ちで
分岐の大木へ進み、そこから木々の間から見える石鎚南面を撮影。 え〜〜 ホンマにあそこまで行くんだろうか?と人間の歩く能力
に自ら驚く。

 
  枯れ沢のガレ場を這い上がる     あれ? 結構な道があるじゃん

    
    カッコイイ「マナスル」さんご夫婦が愛大小屋から下りられて来た
    こんな出会いが一番いいですわ  また山でお会いしましょう

  
   これから歩く中沢コースは正面の第二幕岩直下に沿って回り込むルート

分岐はいずこ? 中沢へ入る

本谷に下りて少し下流に下がり、大きな岩がゴロゴロしている水の無い支沢に入る。西沢の分岐付近に着くと慎重に周りの様子を
見る。何と左手に岩が押し出して中洲と間違いそうだが、確かに沢が分かれている。後から来るマーシーに喜びいさんで報告。勘が
鋭いマーシーさんでさえ見逃した北沢分岐だ。次はガクガクさんが言っていた木に取り付けられた沢の標識を探す。 これも直ぐに
右手の木に見つけた。倒木がこの標識を分かりにくくしていたので見やすく片付ける。

 
中沢入り口 この上に分岐がある         分岐での北沢入り口

       
   北沢入り口はこんな感じね 入り口が押し出された土砂、岩でで塞がれている

 
     西沢入り口            分岐点の標識 (右側の大木にかかっている)

Okaちゃんに紹介してもらった本の略図では、北沢分岐はもう少し先に表記されていたっが、 北沢・中沢・西沢の分岐はちょうど
「三叉路」になっていたのだ。(後からメールで楠橋さんから頂いた本の地図には三叉路になっていた)

美しき天然 中沢を歩く

全ては解決して気分良く中沢を進む。すると間もなく例の第一難関の絶壁が現れた。前回は左へ巻いて偶然北沢を発見したのだが、
どうみてもここは右へ迂回するのが順当に見える。高度差のある藪坂を迂回して上の沢へ下りる。滝口から下を覗くと結構落差が
ある。

 
最初の難関 (一週間前に正面を撮影)        右手に迂回する

 
  上から覗くと結構高い          そこから黒ずんだ岩を歩く

そこから上に向かって溶岩のような岩がどこまでも這い上がっており足場を確保しながらこの一本沢を登っていく。 左右の木々が
美しく紅葉して岩の暗い色とマッチして神秘的な景色を作る。一年のうちで最高の季節に来た様だ。ランボルギーニは単車の転倒で
足首に怪我をしてまだ完全に直っていないという。そのリハビリにこんな所へ? その為か足をかばって終始最後尾を歩く。
自己責任の原則でお互いがそれぞれの選択ルートを勝手に歩く。

    
     涸れ沢を囲むように紅葉・黄葉が左右を美しく飾る

暫く急な岩床を登っていると、沢の両側にある木々が紅葉のトンネルを作り、はるかその向こう正面に巨大な岩壁が見えた。まるで
中世の要塞の様で目指すその第二幕岩を眺めながら三人で感激する。

 
        沢を歩く               正面に岩の絶壁が見える

 
   岩の黒と木々の黄色と赤の色調に疲れを忘れる

北沢ルートと違って、ここ中沢ルートはこの第二幕岩に向かって一直線に沢を登っていく。と言っても決して気楽な道ではなく、落石や
絶壁など危険が一杯で気が抜けない。

振り返るたびに自分の位置が高くなり、眼下に中沢が面河本谷に向かって滑り落ちている。向かいの面河山中腹にはちょうど目の
高さくらいに愛大小屋の真新しい屋根が白く光っている。 その上に笹の稜線があり愛大小屋から真上に這い上がれそうだ。

     
      正面の第二幕岩を彩る中沢の風景

     
足の故障をもろともせずに黙々と付いてくるマンボルギーニ 美しい〜(景色が)

 
  雨の日は滝となるだろう急な沢       第二幕岩に向かってひたすら登る

  
       次第に正面の第二幕岩が近づいてくる

  
  
       第二幕岩にがすぐそこに

 
それから暫く進むと又直接沢を進む事が困難な断崖に直面。ここも私は左、マーシーは中央寄り突破、ランボールギニは右へ迂回。
左に迂回した私が損なくじを引き、岩の絶壁を杉の幹を頼りに飛びつきながらサーカス登山をして上に這い上がる事に。中沢は迂回
する場合は向かって右側(左岸)ってことですな。

ズボンやシャツをかぎ裂きを作りながら本体と合流。おかげで途中素晴らしい景色に出会えたのだが・・・・

 
振り返る度に高度が上がる              又難関が現れた

 
左に迂回  これが失敗             ヘロヘロになって沢に復帰


       迂回の失敗のお蔭で見えた素晴らしい景色

そこから上は高度差は相変わらずあるものの、あまり崖はなくコブのような岩の出っ張りを頼りに比較的安全に歩けた。振り返る
度に向かいのお山の見える場所が上がっていき、愛大小屋の屋根が良く見える。難関を乗り切った所ですこしだけ休憩を取る。

 
    あれが愛大小屋かいなあ        そうよ あれが愛大小屋よ

     
        這い上がって来た沢を振り返る

     
     向かいのお山も同じ様な目線になってくる

     
今まで沢の正面に見えていた岩壁の全体が姿を現す 南尖峰は岩の出っ張りだ

最後の難関を越えて笹原へ

最後の難関とも言える 5m位の障害を越えると、左手には第二幕岩の壁が迫り、霧の向こうに終点の尾根らしき物が霞んで見え
る。この中沢歩きの終焉が近づいた。ホッとするようでもあり、あっけないようで いつまでもこんな景色の中を歩きたい気持ちにも
なってくる。 中沢とはそういう場所だ
 

 
   最後の難所 どないしょ?               左へ迂回する

 
ランボルギーニも最後の頑張りを魅せる   マーシーはあくまで正面突破にこだわる

 
  もうあとは尾根へ這い上がるだけ     あそこを回り込むと何処へ着くの?

 

 
   最後の厳しい登りを這い上がるランボルギーニ

 
第二幕)岩  中世ヨーロッパの要塞の様   ごろごろした石じゃのう

道は笹原に変ると、霧が一段と濃くなり視界を奪う。次第に急になる笹原を這い上がる。
先に尾根部へ這い上がったマーシーさんが「あれ? ここは南尖峰の上がり口ですわ」という。霧でほとんど回りは見えないが
「カニの横這い」らしい岩場がある。あっけない中沢ルートの幕切れだった。

お〜〜 ここは私の「パナソニックデジカメ終焉の地」だった。無駄と分かってもランボールギーニが這い上がって来るまで笹を分け
て四角い文明の利器を探す。やっぱり無い

 
岩の露出がなくなり笹原となる        最後の這い上がり ここはどこ? 私はだれ?


天狗岳で 何と 「勝ぼうず」天狗に会う

いつもの道を南尖峰へ進む。今回は取り付きの岩場から左手の上がり口をマーシーと這い上がる。ランボルギーニは足の故障で
この最後の岩場で今日一番の苦戦を強いられていた。

 
南尖峰への取り付き ここを上がらず左へ   ランボルギーニをサポートするマーシー

南尖峰にあがると新居浜出身の若者が一人で佇んでおり少し会話を交わす。
霧で何にも見えないので弥山から一般道を下山することにして天狗尾根を進む。天狗岳の脇を通っていると霧の山頂から「四国で
一番高い所に立ち寄らないのですか?」と天狗の声。(そんな場所何度も立ち寄っていますわ・・・と心でつぶやきながらも) 「そう
ですよねえ」と愛想を振りまくボクちゃんの悪いクセ。

 
   お〜〜 勝ぼうずさんかい        四国の一番高い地で イェ〜イ

マーシーさんが「あれ? どこかで見た顔ですね」「ひょっとして勝ぼうずさんでは?」「はいそうです」 勝ぼうずさんといえば讃岐富士
さんの掲示板で無茶苦茶な苦行歩きで有名な人だ。「エントツ山です」と挨拶するとびっくりした様子で初対面を喜んでくれた。
以前讃岐富士さんの掲示板で勝ぼうずさんの驚異的で自己破壊的と思われる歩きに対して皮肉を言った事もあった。そんな意見
を返って喜んでくれていたらしい。

マーシーさんはこの手の人物には非常に興味を抱く性格で、HPや掲示板の写真から現実の顔が分かるくらいだから、豪傑・勝坊主
に会えた事を心から喜んでいる風だった。

    
   強風の天狗岳から弥山に進む「勝ぼうず」さんとランボルギーニ

四国の最高点で会うなんて何と言う奇遇だろうか。そういえばはるちゃん楠さんコンビに会ったのもこの天狗岳だった。天狗の
ご利益に預かりながら風の強い岩尾根を弥山へ行き、山頂茶屋で暖かいあめ湯をすすりながら暫く勝ぼうずさんを囲んで座談会

 
    弥山で味噌汁を作る学生            食堂で名物男の座談会

人それぞれに人生の絢(あや)がある。勝ぼうずさんのお話を伺っているとあの一見無謀な歩きも理解出来、つじつまが合うような
気がした。

短くも意義深いあめ湯座談会の後、一緒に土小屋まで下山し50ccのバイクで徳島から来たという勝坊主さんの所業に又ビックリ
させられて互いの健闘を誓い合って別れる。その後車を滝展望所へ回収に行きそこで解散となる。

     
     徳島から50ccのバイクでやってきた勝ぼうずさん 参るなあ   

ご来光の滝から中沢を歩いて南尖峰までのコースは厳しいながらも非常に美しいルートだった。またその中で松山の「マナスル」さん
ご夫婦、徳島の「勝ぼうず」さんとの遭遇はこのルートの歩きと共に心に残るものだった。
マーシーさんの電話に感謝



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