2005年03月08日
冬山の王者「石鎚山」を楽しむ法  B級登山者用・表参道コース
冬山の王者 「石鎚山」の魅力 B級登山レポート  平成17年2月27日


石鎚山 成就社表参道コース (国土地理院 地図使用承認番号 平15総使、第634号)
成就社山頂駅 0930h 石鎚山頂 1300時  成就社山頂駅 1700分 (計7時間半)


    
             伊吹山より冬の石鎚山

四国では何処の山へ登っても石鎚山の威風堂々たる姿は登山者の目を引きます。特に雪を抱いた石鎚の美しさに心を
奪われない登山者はいないでしょう。そう、石鎚山は四季を通して「四国の山の王者」なのです。その石鎚山へ一番厳しい
冬に登ってみました。


「役の行者」が開山の由緒ある石鎚神社・成就社より石鎚山北壁を望む

前日、寒川町のクロスポイントに寄りピッケルを購入。こういうのを「サラリーマン付け焼刃登山者」と人は呼ぶ。そう、私は
いつも尻に火がついて慌てるB級クライマーなのです。
ブルータスしんちゃん、クレオパトラ15世夫婦と朝7時半新居浜インターで合流。ロープウェイまでのアクセスが心配でRVR
四駆に便乗させてもらうって寸法。

インターネットで調べるとロープウェイの始発は朝九時だったが、スキーシーズンの為か8時前から動いていたみたい。混み
合うゴンドラの中の住人はスノボーの若者がほとんどで確かにナウい、少数派の年寄り山登り族はちょっと肩身が狭いが
そのそぶりも見せずプライドで胸を張る。でもスノーシューなど背中にくくりつけているでしっかり胸を張れないよ〜。

  
石鎚ロープウェイ乗り場    さっそうとロープウェイ乗り場にいく中年B級登山者

ロープウェイから見る急斜面の森林には雪がかかって規則的な模様をなしている。この高度差をえっちらおっちら登るなんて
とんでもない。サラリーマンは文明の利器を利用してあっという間に標高約1,300m弱の「山頂成就社駅」に着く。空あくまで
蒼く石鎚と対峙する瓶ヶ森の氷見二千石原が白く輝いている。ロープウェイ駅から成就社まで樹氷が素晴らしく、もうここまで
でも十二分に冬山の雰囲気を味わうことが出来る。

      
          ロープウェイからの景色

 
ブルータスしんちゃんとクレオパトラ15世  霧氷が青空に映える

去年「塔ノ丸」で会った時は「ストックを使うと返って疲れる」などといってザックに差したままだったブルータス夫婦が、今日はお揃
いの2本ストックだ。それで今回は「2本ストックって疲れんわ〜」などとほざいている。これだからな〜、人間は信用が置けない動物
の頂点に立っている証明の様なものだ。

標高が1,300mほどあるので成就社までの道すがらたくさんの霧氷を楽しむ事ができ、写真目的で上がって来られる人も多い。

      
      成就社までの参道で美しい霧氷を手軽に見ることが出来る

後ろから女性二人が追いついてきた。下のロープウェイ乗り場から大分手前に車を置いて歩いていた人達だった。新居浜の
「工藤姉妹」で聞くとびっくり、実は親子で笑いの絶えない楽しい人種だった。どこかで見たようなピッケルなので二人に質問
すると、案の定彼女たちも「クロスポイント」の洗礼を受けているようだった。ここから追い越したり追い越されたりしながら一緒
に登っていった。

 
正面が 奥前神寺                工藤姉妹に追い抜かれた

ブルータスしんちゃんは正月に石鎚山へ「初日の出登山」に来た際に、石鎚神社のお年玉くじ引きに応募したところ一等の5万円
旅行券が当たってその御礼参りも兼ねていた。お参りを済ませて南側にある拝殿から石鎚を拝む。ちょっと気がつきにくいが
成就社付近では唯一ここから石鎚北壁を見渡すことが出来る場所なのだ。

 
石鎚神社 成就社本殿             南拝殿より石鎚北壁が見える

山門をくぐって最初は八丁坂の美しいブナ林の尾根を下っていく。雪は結構積もっていて木々も真っ白だ。四国にはブナの
素晴らしい山がたくさんある。大座礼山、佐々礼尾山、皿ガ嶺、権田山、石墨山・・・・・・  でも実は、岩黒山の北斜面から
この石鎚がブナ林でも王者なのだ。八丁坂を過ぎると前社森(ぜんしゃがもり)までダラダラと登りが続く。この頃には木々
の間から石鎚北壁や向かいの瓶ガ森、子持ち権現山が見え隠れするようになる。

      
   登山道では瓶ヶ森(中央)と子持ち権現山(右)が木々の間から見える

 
    雪深い登山道          斜面も雪が深い

 
樹氷越しに瓶ヶ森と子持ち権現山    石鎚も思わせぶりに姿を見せる

     
                青空に映える霧氷

前社森(ぜんしゃがもり)手前から夜明峠手前の休憩所までは階段の急登だが、雪の為木の階段は存在しない様に見える。
雪に覆われた木々の中をジグザグに登っていく。どの木をみても雪化粧が美しい。工藤姉妹も感激の声を上げながら付いて
きている。

 
ブナの美しい登山道            明るい工藤姉妹  いいね〜

 
木の階段が見えるのはここだけ     ブルータスとエントツ山

      
        こんな構図が好きなんです

      
               白化粧美人

登り坂が急になり雪も高度が上がるにつれて多くなり気合を入れて歩く事になるが、様々な木が雪や霧氷に覆われ
退屈する暇は無い。多くはないが冬の石鎚に魅せられた登山者が上から下りてきて挨拶を交わす。山登りの楽しみ
の一つだ。ブルータスしんちゃんもクレオパトラ15世も体力が付いたのか殆ど休憩無しで歩いている。

試し鎖を迂回して東側のトラバース道の急な坂を上がると、前社森からの道と合流し尾根に小屋がある(茶店)。この
あたりからは向かいの瓶ヶ森、左に頭を覗かせる笹ヶ峰などの頂が次第に同じ様な高度となってくる


    
イキの良い若者             前社森、尾根の小屋が見える

    
瀬戸内海が見える            単独登山者

   
  前社森・トラバース合流尾根の小屋から瓶ヶ森 その左に笹ヶ峰ー沓掛山

尾根の小屋を過ぎて夜明峠(よあかしとうげ)が近づくと、視界が開けて雄大な石鎚北壁が眼前に現れる。ここから
30分くらいがブナ林が尾根を外しているので石鎚冬山登山の一番美しい風景に出会える。左手には瓶ヶ森、笹ヶ峰、
沓掛山、黒森から西条へ続く稜線、右手を振り返ると小松から今治が眺望できる。

  
 北側に振り返れば今治方面が      何度も瓶ヶ森を見ながら登る

  
ブナ林の向こうに石鎚の気配が     石鎚北壁が見え隠れして心が騒ぐ

 
 石鎚北壁が現れる 思わず声が     なおも続く美しいブナ街道

冬景色は写真に撮ると色彩が無くなるのは残念だが、人間の目とは素晴しいもので、そのパノラマ映像が脳に
立体感と感情を伴って取り込まれる。写真はその風景の一部を表現する道具に過ぎない。優れた写真家は人間
の体感する風景を深く捉えようと何時間でもそこにたたずめる忍耐を持っている。

B級登山者の凡人はただただ「お〜〜すげ〜」という表現方法しか持ち合わせていないのが悲しい。

    
       夜明峠付近より石鎚  二の鎖小屋まで尾根道が続く

      
            樹氷越しに東予・今治方面が見える

  
山頂まで1kmの標識           二の鎖小屋が次第に近づく

押し寄せ、迫り来る景色に圧倒されて歩みがちっとも進まない。自然の造形・・・言ってしまえばそれだけだが何度見ても、
いくら見ても見飽きない。まるで私の小さな孫「かなタン」のかわいい動作を見るのと似ている。(比較がチョー個人的で
すんません)

 
 クリスマスに逆戻り            オバケみたいに雪が積って重たそう

 
二の鎖小屋までの急登          土小屋登山道分岐

二の鎖小屋で昼食とする。雪の為かがみこまなければ中に入れない。先客のお二人が遠慮して身支度を整えて出発
された。さて、塔ノ丸でお湯が沸かなかった失敗を挽回すべく、冬山用のバーナーで汚名返上。山で初めて暖かいコーヒー
を飲むことが出来た。バーナーっていいなあ

  
ブルータスがコーヒーを沸かす     小屋を出発 今からが正念場

さて、いよいよここからが冬の厳しい石鎚の姿を経験するのだ。鉄の階段は山際の半分は雪で埋もれている。手摺が
あるので実際は安全なのだが、崖っぷちという高度間が恐怖感をつのらせるらしい。人生の崖っぷちを多々経験している
私にとっては別にどうってこたぁない。

上から数人の団体さんが恐る恐る下りてくる。先頭の人が後ろから続いてくる仲間が滑らない様に雪と氷を蹴ったり
掃いたりサービスをするもんだから、その冷たい雪や氷の粉が風に乗って我々に襲ってくる。 「やめて〜もう!」
(オームの横井弁護士は今どうしているんだろう?)

  
   鉄の階段                お〜カッコエ〜なあ 単独登山者

 
     北壁をバックに        瓶ヶ森をバックに (何故かしなっている?)

 
鉄の階段の氷を飛ばしながら下りて来る団体さん 山頂直下のツアー登山者

鉄の階段の中間には急な坂がありちょっと危険だ。ここで初めてピッケルのお世話になる。長めのツルハシの刃を雪に
打ち込むと、下側が凍っているのでしっかりと刺さる。なんか芋堀りのような要領で石鎚山頂を目指す。ピッケルってもっと
カッコ良いはずなんだけどなあ・・・

山頂直下でまたツアー団体さんに遭遇。リーダーが装備や下り方の注意をしているのでどこかのアウトドアショップが主催
したツアーでしょう。
雪に覆われた西ノ冠岳から二ノ森、鞍瀬の頭が見えてた。その山々から面河に向かって急な斜面が白く輝きながら落ちて
いく。「バーナード、すまんがこれは香川の里山にはないスケールじゃよ」

     
              二ノ森とその右に鞍瀬ノ頭

         
          天狗岳  雪に覆われると余計に尖って見える

山頂には2組位の登山者がいた。アマチュア写真家らしいおじさんがいたので、「工藤姉妹」を誘って記念写真を撮ってもらう。
ここから見る瓶ヶ森は既に眼下となり、その右側には「萩さん、つばくろさん」が登った伊予富士が縦長に見え、左側には「なべ
ちゃん、わるこさん」が登った笹ヶ峰が顔をだす。南は高知の山々、西には二ノ森からANちゃんお気に入りの鞍瀬の頭が凍て
ついたイシヅチザクラ越しに一望できる。

    
   みんな頭が高い〜〜! ここにおわすのはどなたと心得る (四国で一番高い所)
 「へへ〜〜」黒森・沓掛、銅山峰、笹ヶ峰、瓶ヶ森 平家平 伊予富士がひれ伏す

天狗岳が傾き加減にそそり立ち、石鎚の険しさをことさら主張する。瓶ヶ森も立派な山だが、眺める山ではない。剣山は論外!
三嶺でさえも気品と見栄えの良さで石鎚の敵ではない。石鎚山は登って良し、眺めて又良しの四国の王者だと思う。

    
        石鎚山頂にて  前日クロスポイントで買ったピッケル

    
        西ノ冠岳と面河に傾(なだ)れ落ちる急斜面

      
             工藤姉妹を誘って集合写真

 
おじさん 写真を撮ってくれてありがとう   ブルータスしんちゃん

いつになく景色に見とれてゆっくりと登ったのでロープウェイの最終時間に遅れないように下山することに。今度は小松から今治
方面の町と海、瓶ヶ森と石鎚山に挟まれた不遇の山「大森山」を見下ろしながら雪の登山道を成就社へ帰る。

     
さあ 下山しまっせ〜            階段を下りる

 
成就社が見える 中央左の白い場所    なおも鉄の階段を下りる

二の鎖までおりて、そこから絶好の雪原を下っていくので、せっかく背負って来たスノーシューをブルータスにデモンストレーション
する事に。 アカン! 今年二回目の使用の為、右足で左足のスノーシューを踏んづけて坂道を転げ落ちる。

  
  雪で埋まった二の鎖小屋       スノーシュー デモンストレーション失敗!

  
鳥居さんも雪で埋まってます        快調なスノーシュー もうコケないよ〜

上から見ると成就社が随分近くに見える。夕方になるにつれ天気が回復して青空が広がり雪をかぶった木々とのコントラストが
素晴らしい。何とか最終便の前にはロープウェイ乗り場に辿り着いた。瓶ヶ森が夕日を浴びて、今度はこっちにも来てよ〜て言っ
ている様だ。はいはい、オオヤマレンゲの時にお邪魔しますよ〜。

ロープウェイの切符が見つからないドジな仲間がいて一便遅れて乗り込む。又スノボー帰りの若者と一緒にゴンドラに揺られ
ながら充実した一日を振り返る。

 
石鎚北壁よさらば                 雪原を成就社へ向かう

  
なおも美しい雪景色を堪能しながら成就社を目指す 石鎚よさらば

     
              ブナの霧氷よさらば

 
鳥居を過ぎればあと一息           成就社に帰り着く

   
       西日に霞む石鎚 (成就社 拝殿 裏手より)

一人で登る山もいい。仲間と登る山は楽しい。ブルータスしんちゃん・クレオパトラ15世 お世話になりました。
冬の石鎚は厳しいと言う。それでも天気やトレースなどの条件が揃えばB級登山者にだってその魅力を味わさせてくれる
優しさも石鎚山は持っているのだ




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