2003年05月18日
「石鎚・二の森」縦走記  帰り道は遠かった
四国百名山踏破を着々と目指す「エントツ山」と「ロボコップ加地」の叔父・甥コンビ。「原」は既に3回土小屋、成就社経由で
石鎚山頂を拝んでいる。一方不思議な事に「加地」はこの四国を、いや西日本を代表する石鎚山に登っていない。そんな?

当初、原は梅が市から「堂が森ー二の森」縦走を考えていたが、二人の意見を折衷して5月18日石鎚・二の森 縦走登山
となった。仕事の関係で寝不足が続きちょっと体力に不安をかかえながら05時過ぎに高松を出て 06時30分時新居浜山根
公園集合、土小屋0800時到着。この道はつい二週間前アケボノツツジ岩黒山登山に行ったお馴染みのルートで今日は二人
だけの静かな山行きとなる。寂しいようなホッとしたような・・・・・

まずは 石鎚山 (新緑・ツツジ・イシヅチサクラが素晴らしい!)
5月の連休にはすごく賑わっていた土小屋駐車場も、天気予報が芳しくないこともあり閑散として何処へでも停め放題。土小屋
駐車場ど真ん中にモビリオを停め、ゆっくり準備。加地さんは既に登山靴を履いたまま運転していた。せっかちな登山ロボットだ。
道路左の遊歩道から標識に従って登山道に入る。

しばらくは「鶴の子の頭」を過ぎるまでブナ、オオカメノキなどの雑木林とミツバツツジの静かな登山道が続く。四国のほとんど
の登山道は登り始めると結構急な坂道となるが、石鎚山はゆったりと瓶が森を挟む新緑の谷あいを眺めながら優雅に登る
事になる。

    
  ミツバツツジの登山道           東稜 尾根道登山道 加地さん(石鎚山をバック)            

尾根道の登山道を景色を楽しみながら交わす会話は前回のアケボノツツジ登山の事。そのうち左手にヒメコマツ越しに石鎚山
が現れる。休憩の必要がない登山ロボットへの対抗策は唯一写真を撮ることだ。要所要所で「写真を撮りましょうよ」と促して
休憩がてらとする。特に加地さんのソニーのデジタルカメラは図体がでかく本格的なのでレンズキャップを外したり時間がかかる。
(よしよし)

石鎚山を左手に見ながら進むと右手の低い笹深い尾根にアケボノツツジが咲いている。「ほ〜まだ咲いとるわ」と懐かしくて笹を
掻き分けながら登山道を離れて見物に向かう。登山道に転がり下りて美しい登山道を快調に進むと、道は石鎚山の懐に抱かれ
てブナ林などの雑木林で山頂が見え隠れするようになる。この緑はなんと表現したらいいのだろう。どんな絵の具を使っても人間
の技では描き出せない繊細かつダイナミックなこれぞ創造主のなせる業。

   
 ブナ林と石鎚                    ブナ林と盟友登山ロボット加地

加地さんによると石鎚山は宗教色の強い山なので暗〜い、恐山のような印象を持っていたらしい。たしかにこの時期新聞をにぎわ
したパナウェーブ研究会と見間違うような白装束集団が大挙して登っている。追い抜きざまに挨拶をすると電磁波の事は何も言わ
ないから山岳信仰の修験者集団に間違いなかった。よくみると女性や80歳くらいのお年寄りもいる。信心が人に力を与えるのか。
武井さ〜ん、ミーボ! おぬしら何か神さん信じなさい。(ミーボはかみさん(ユキエ)至上主義だがね)

  
 石鎚山の修験者             イシヅチサクラとアケボノツツジの混在

石鎚山の北側を回りこむ登山道になると結構登り坂が急でしんどいが、登山道が良く整備されているので歩きやすい。所々にある
沢はだいぶ崩れかかってガレ場になっている。ガレ場の上には雪が残ってさすが石鎚山の高さを思い知らされる。ふと見ると茶色い
幹に小さな白い花が咲いている。標識があって「イシヅチザクラ」とある。 はは〜ん、これが2週間前に瓶が森で我が女性隊員が
「サクラが咲いていた」というので「そんなバカな」!と一笑にふしたら、瓶が森の登山口にある解説看板で原の間違いを正された
苦い思い出の花なのだ。

名物 石鎚の鎖場
登りだして一時間程過ぎた頃、成就社からの登山道と合流。ここから左に鎖場に続く板の階段が続く。両側には青色をしたトタン
屋根の小屋が並びちょっと興ざめの風景。この木の階段を登ると「二の鎖」の鎖場だ。 夫婦連れが「鎖場私達でも登れますか?」
と聞くので「大丈夫ですよ 全然問題なし!みんな命が惜しいから鎖を放す人はいませんよ」と無責任に答える。丁度そのとき鎖場
上部から「もうイカン 登れん!」「バカ言うな!ここまで来て何を言うんじゃ!弱音吐かんと来んかい!」「もうダメです〜 下ります〜」
「バカヤロ〜」と争う中年の男連れの甲高い声がこだましてきた。これを聞いたであろうくだんの夫婦連れの姿はもう迂回路に消えて
いた。

        
恐怖感のかけらもない登山ロボット加地     鎖場の下には成就社登山道が見える

先日二人で登った子持ち権現山の鎖場に比べれば何ちゅう事ないわい、とスイスイと岩場を登っていく。 上からは「まだ来ないで下さい
よ〜」と日本人の恥が吼えまくっている。かまわず無視して登っていく。途中からこの二人が行く手をさえぎるのでしばし岩場で写真撮影
する事に。 岩場にはアメボノツツジが咲いていて、先ほど通過してきた鎖場小屋や成就社方面よりの登山道が良く見えて気持ちがいい。
上から相変わらず聞こえてくる甲高い叫び声が自然にマッチせずうるさい。

鎖場を上がると石鎚北壁の全容が見えて、石鎚の3つある山頂部の南尖峰に登山者の姿が見える。初めて来た加地さんはこの山景
が好きで色んな山からこの石鎚山を写真に収めてきた。いまその老眼の目でナマ石鎚を全霊でもって眺めている。

 
   石鎚北壁をバックに原・加地             石鎚弥山頂上

この後、最後の登山道を右側に回りこみながら登るとあっという間に石鎚弥山(みせん)頂上に着いた.。土小屋の駐車場には車が少な
かったのが信じられないくらい大勢の登山者が頂上にいた。弥山の石鎚神社はいつの間にかピッカピカに新設されて山頂にはふさわし
くない光るような建物になっていた。弥山の岩場左手から天狗岳に下りる道がある。上から見るよりは実際に下りてみたら意外と危なくは
無い。当然二人は痩せ馬の背中のような細い尾根道へ下りてゆく。

      
  石鎚 天狗岳の原・加地          弥山(1,921m)にある立派になった石鎚神社

              
.     石鎚最高峰 天狗岳(1,982m)   石鎚 南尖先鋒 (1,982m)

天狗岳への道にもアケボノツツジやイシヅチサクラがたくさんあり感激!紅葉の時期が有名な石鎚だがこの時期も魅力的だ。特に
珍しいイシヅチサクラの花が満開で、バックの二の森、堂が森への縦走路の景色を盛り上げる。弥山の石鎚神社には途中で追い
抜いた修験者が揃ってお題目を唱える声が山々にこだまして、ここは神の山であることを実感させる。弥山の岩場には弁当を広げ
る登山者で、気持ちはわかるが登山者が通るスペースだけは開けて座るのがマナーってもんじゃ!

さあ〜  「二の森」 へ縦走だ!

もうこの時期の石鎚山に大満足の二人であったが、原点に帰って気持ちを縦走に向けてテンションを揚げる。時刻は11時半。 弥山
から少し下りたところに二の森・面河登山道の標識があり、左の谷へと進む。北側斜面から一旦尾根にあがり、こんどは山稜南側の
縦走路となり、途中から面河方面への道と分かれ右側の尾根に近い笹原道をドンドン進む。この方面はすぐに1,920mの三角点
、西の冠岳(1,894m)、1866mの名も無い山が屏風のように続く。

       
天狗塚イシヅチサクラ越しの二の森方面        二の森縦走路と加地さん

あれだけ賑わっていた石鎚山だったが、二の森に行く登山者は誰一人いない。どんな山に行っても誰か2−3人には会うものだが、
二の森は地味で人気が無いにも程がある。タレントの出川みたいにうるさくないのに何故か不人気ランキングは上位キープ。確か
に縦走路は退屈するくらい長〜い道のりだ。シコクシラベの陰があったので昼食にする。考えてみるとここまで写真を撮る以外は
全く休憩無しだ。やはりロボット加地のお供はきついわ。楽しみといえば振り返るたびに形をかえる石鎚山の姿だけ。本当に不思議
なくらい刻々とその形を変えていく。香川の何処から見ても形がよく似ている釣鐘型の山に慣れているせいかマジックを見ている
ようだ。

    
縦走路より弥山              縦走路より石鎚南壁

       
弁当を食べるときもポーカーフェースだ       差をつけられる縦走路

食事を終えて再び二の森を目指す。良く見ると足元の笹道には小さな高山植物の花が沢山咲いている。誰にも見られずに枯れて
行くのかと思うとちょっと不憫な花たちだ。二の森手前の名も無い山(それでも1,866mもあるのだから名前ぐらいつけてやっても
よさそうなもんだが・・・)の北側斜面に入る。岩と雑木林の道が続き、白骨林がずら〜と並んで壮観。この頃から足が痛くなりロボット
の歩行速度についていけな〜い。こちとら生身の人間よ! 帰りの長い道のりを考えてペースを落とすが、山岳歩行ロボット加地は
はるか彼方に消えていく。恐るべし加地。再び尾根に出て急坂を上がると、上の方から「二の森頂上近いよ〜」の声にホッとする。
最後の力を振り絞って頂上に着く。やっと来た〜〜〜〜

       
   縦走路北斜面の白骨林帯            二の森山頂の原・加地コンビ
       
  雲が湧く二の森頂上より石鎚を望む   イワカガミ(イワウメ科) ヤマエンゴサク(ケシ科)」

森二の森の寂しい頂上でひと時を過ごした二人ははるか遠くに見える石鎚山を見ながら又あそこまで帰り、さらに土小屋まで歩くのか
と考えると呆然としてくる。行ったからには帰らにゃならぬ。人っ子ひとりいない登山道からは天気が崩れる気配で雲が湧き上がり余計
に寂しさを助長する。雨に降られる覚悟で雨具をリュックに詰めてきたが何とか使わずに済みそうだ。大腿部の筋肉がつりかけるのを
かばっていると、今度はふくらはぎがつりそうになる。限界にきている筋肉をなだめながら相変わらず無表情で正確な加地ロボット歩行
に遅ればせながらも付いて行く。ここにきてダウンロード・ミーボやフリーズ・ユキボの気持ちが何とかわかるような気がしてきた。
シェルパ原としてはヘナチョコ隊員の痛みを理解できるいい経験を山の神が与えてくれたのだ。

         
 思い出の石鎚 天狗岳を南側から       弥山の石鎚神社を天狗岳から望む

16時くらいに石鎚分岐まで帰り着きその場で小休止。休んでいると一人中年の登山者が石鎚頂上までの道を聞いてくる。「この上が
すぐ頂上ですよ」と言ってもまだしつこく聞いてくる。説明の必要が無い様なことだがニコニコと丁寧に説明をする。次は何処へ行って
たのかと尋ねてくる。石鎚から二の森へ行ってましたと加地さんが答えるが、二の森がピンとこないようでまだしつこく食い下がる。

人間疲れていると忍耐が続かない。適当に答えて二人は腰を上げる。あれ?急に元気が出てきてサイボーグ原の筋肉も復活!この
後は走るようにして軽快に土小屋を目指す。下山時は雨は降らないもの天気は崩れ模様で薄暗くなるが、雲が湧く感激の石鎚を何度
も振り返りながら二人の縦走登山はフィナーレを迎えたのだった。





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