別子銅山 「炭の道」を歩く  
川来栖〜天ヶ峠〜笹ヶ峰南面〜宿・西山越〜チチ山北面〜土山越


パート1)チチ山北面の炭の道 土山越〜馬道の別れ(舟窪)〜チチ山北面・炭の道〜西山越
パート2)笹ヶ峰北面の炭の道 天ヶ峠登山口〜天ヶ峠〜笹ヶ峰北面・炭の道〜宿〜西山越
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別子銅山「炭の道」 チチ山北面と笹ヶ峰北面 土山越〜西山越〜宿〜天ヶ峠〜川来栖上部


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 チチ山〜笹ヶ峰北斜面の「炭の道」

プロローグ

別子銅山の稼働が順調に行われると山元では荒洞の精錬に大量の薪や木炭が必要になって来た。伊藤玉男さんの「あかがねの峰」に別子銅山
公用帳によると元禄8年既に740基の炭焼き窯があったと書かれていた。
今まで歩いて来た道の無い故郷のマイナーな山歩きでも意外な山
奥や沢筋にも沢山の炭焼き窯の跡を見てきたものだ。


今年4月に別子銅山の黎明期を支えた荒銅の輸送路「第一次泉屋道」を歩いた続きで、以前マーシーさんと歩いたチチ山北面と笹ヶ峰
北面の「炭の道
」を伊予の鈍亀さん達が歩きたいと言うので又チームを組むことにした。

大永山トンネル口の上側「土山越え」からチチ山北斜面を通り、笹ヶ峰の北尾根にある「西山越」までのルートをパート1として、続く西山
越〜笹ヶ峰北面〜天ヶ峠〜旧国道登山口をパートIIに2回に分けて歩く事にした。


鉱山の宿命「遠町深鋪(えんちょうふかじき)」という言葉があるが、採鉱が長期になるに従って薪や木炭の生産、運搬の距離が遠くなり、
鉱脈を掘るに従い地熱や湧水に悩まされるという現象だ。特に山元で行われた精錬作業では亜硫酸ガスの為に銅山近辺の山には緑が消え失せ
てしまった。この為、別子銅山の歴史も又、遠くからの精錬燃料調達と湧水処理に追われる立場となる。

「炭の道」「馬道」とは

江戸時代初期に始まった別子銅山が石炭を使った近代洋式精錬所が出来、製炭課が廃止される明治30年までの長い間、現地では銅の精錬に
膨大な薪や炭が必要だった。
ざっと言うと、銅鉱石から含有率8%程の鉱石を選んで砕き、沢山の薪を使って蒸し焼きにして焼鉱を作る。
この焼鉱を珪砂と混ぜて大量の木炭を使い不純物と分離して含有率35〜40%のハ(かわ)と呼ばれる銅の二次製品にする。更にこのハを
又珪砂と混ぜて大量の木炭を使って焼き成分97%の粗銅にする


要するに粗銅1トンを精錬するのに3〜4トンもの木炭が必要だった。炭は軽いから3トンと言うと相当なかさばり量だ。もう赤石山系では
到底足りない。
そこで西側の山々で言えば西条の「宿」(笹ヶ峰の登山道沿い)を別子銅山専用木炭集積地としてここに集めて馬道をチチ山
北斜面に作り木炭を西山経由別子銅山の(和式)精錬所まで運んでいた。これが今回歩く土山越えから西山越えの炭の道って言う訳だ。


マーシーさんと冬にこの「炭の道」を歩いてから既に10年になる。あの道はどうなっているのだろうか?

「炭の道」 パートI  土山越〜西山越

チチ山北面の炭の道を歩く、帰りは沓掛山北東尾根を下る

2018年(平成28年)5月12日(土)
大永山トンネル口〜土山越え〜馬道の別れ〜尾根道分岐〜(チチ山北面・炭の道)〜西山越え〜沓掛山〜沓掛山北東尾根〜河又


カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 チチ山北面「炭の道」 (伊予の鈍亀さん提供)


朝06時に山根運動公園を出発し、大永山トンネル手前のチチ山・沓掛黒森展望所で今日歩くルートをなぞる。チチ山北面には所々横線が
見られたが、連続する明確な道筋は認められなかった。


06時40分大永山トンネルを抜けた南口から笹ヶ峰登山道へと上がり、歩きなれた登山道を歩き「土山越」を07時15分通過する。
土山越は西赤石から笹ヶ峰への縦走路として使われている登山道合流点だ。



県道47号線 大永山トンネル手前の展望所よりこれから歩くチチ山北面を眺める

  
     炭の道はあの辺りやろかねえ                で、で、 帰りは沓掛山北東尾根を下るのね

  
06時40分 大永山トンネル口を上がる          07時15分 土山越を通過 左:チチ山・笹ヶ峰 右:綱繰山・銅山越と記されている

そこから左へ折れて広めの林道を横切り細い縦走路を進むと電源開発の鉄塔保線路と交差する。地形図には林道交差部辺りに「大坂屋敷越」
と記されているのは昔この辺りに立川銅山の大坂屋敷があったのが謂われと聞く。

07時40分「馬道の別れ」分岐標識に到着する。この先辺りは舟窪と呼ばれたらしく少し二重尾根となっている。馬道の別れからナスビ
平への道があるが、途中やはり崩壊している箇所もある。ナスビ平も高知方面からの別子銅山の木炭・食糧集積所だったのでこの道も炭の
道であったものと思われる。
ここで冠山方面へ行く二人の登山者が休憩されていたので少し話をしてお別れする。

  
   広めの林道を横切り登山道に入る              高知から来られた二人組が休んでおられたのでご挨拶

窪から「炭の道」へと入る

07時45分「尾根道分岐」に到着する。笹ヶ峰にはこの分岐を左へ上がって獅子舞の鼻〜チチ山の別れへと進む。我々は道迷いの発生を
防ぐ為に倒木が積まれて通せんぼをした真っ直ぐの道へと進む。以前、笹ヶ峰への登山道はここを真っ直ぐ「菅平」まで進み、そこから尾
根に向かって急峻な山道を上がっていたらしい。この崖路が危険なので伊藤玉男さん達の憧山会が尾根道を作ったと聞く。


  
 07時40分 「馬道の別」れを通過                 舟窪と呼ばれる二重尾根部分を進む


07時47分 縦走路分岐 獅子舞の鼻〜チチ山の別れへはここを左に上がる  「炭の道」は通せんぼの枝を乗り越えて真っ直ぐ進む


分岐から5分程笹深い道を進むと、笹は無くなり土がむき出しの斜面となる。足元がズルズルと落ちて行く急斜面を念のためスリングを出
して歩く。炭の道は水平道の筈だから基本的には道が不明な場所では獣道の様な跡を辿って歩く。やはり斜面崩壊がし易い場所では往年の
道は残っていない様だ。


08時10分沢部は特に危険な為にロープを出して確保しながら渡る。殺風景な場所ではあるが鮮やかなミツバツツジの濃いピンクが心を
和ませてくれる。08時23分石垣が現われルートが間違っていない事を確認する。つまり30分程は荒れた急斜面が続き、崩落の為に明
確な踏み跡は無い場所を我慢して進まなければならない。


08時35分足元が安定して来るとスズタケが生えた往年の炭の道が現れた。やはりザレ場の斜面では道が使われないとほぼ痕跡を残さな
いまでに自然に還る様だ。


 
 左に上がると縦走路、ここは真っ直ぐに水平道を進む          人が歩かないので笹が少し藪いている

  
 直に笹が消えて土砂がむき出しの急斜面になる         薄い獣道に沿って亀吉さんが亀美さんをスリングで確保して進む

  
   踏み跡が有る様な、無い様な                  沢部では岩盤が滑りやすいので用心の為ロープで確保

  
少しロープを出し過ぎたかも知れない                08時23分 荒れた斜面に入って初めて石垣が現れホッとする

  
尚も不安定な斜面を歩く                       08時35分傾斜が緩やかになると笹が出て炭の道が現れる


菅平

08時37分愛媛の森林募金で作られた「銅山峰〜笹ヶ峰」の標識に出合う。この辺りが「菅平」(すがだいら)と言われる平坦地でここ
から尾根にむかって古い登山道が急斜面を這い上がっている様だ。伊予の鈍亀さん達は以前ここから尾根に這い上がったがやはりロープが
必要な崖もあったと言う。確かに獅子舞の鼻からの縦走尾根は右手(北側)はほぼ崖でこんな所に以前登山道があったのが不思議だ。


するとヤマシャクヤクの花が現われて喜ぶ。この辺りは地形が安定しているので往年の「炭の道」が静寂の山の中に浮かび上がる。江戸時
代から明治にかけて馬に背負われた薪や木炭を運ぶ風景が時空を超えて幻の様に蘇る。のどかな風景が続き木々の間から沓掛山と黒森山が
見え、このまま平和な道が西山越まで続いているんじゃないかと錯覚しそうだ。

  
  ずっとこんな状態ならいいんだけどなあ・・・     岩もあるが道も有る


  08時37分「菅平」の標識 ここを左へ上がると獅子舞の鼻の先に出る古い登山道がある

  
山手に上がれば笹ヶ峰 この標識は現在意味を成さない   灌木の中に続く炭の道

  
 ヤマシャクヤクの群生地があった            雰囲気いいわねえ


  どこま〜でも 行こう〜♪  道は険しくとも〜  ♪  こんな風景がずっと続いて欲しいなあ

  
  陽だまりの「炭の道」                チチ山北尾根の向こうに沓掛山が見える

09時頃から又沢近くの急斜面になると平和な幻想は破られて道のほぼ無い斜面と化す。
谷部で北側の景色が開けて帰りに下る沓掛山と北
東斜面を眺める。
09時13分沢の崖地を乗り切るとまた「炭の道」が現れた。道は山側から崩れ落ちた土砂の為に斜めに傾いてはいるが
雰囲気は十分に残されている。


  
  08時56分 大岩の間を抜ける                  又 斜面がザレてきた

  
   でも 道の痕跡は残っている                   岩や木を回り込んで歩き続けるボク達


  開けた場所から目的地方面を眺める  チチ山北尾根までまだ遠い  沓掛山まで上がって北東尾根を下るのか〜


    新居浜方面を見下ろす  この角度から県道を眺める人は少ないぞ

  
小沢が現れる ここは良い水場だったろう              沢の向こうがザレ落ちて急斜面だ

  
 09時12分 炭の道が現れる                    小沢も傾斜が緩やかだと道が残されていた

  
  こんな風景でも道筋は有る                      09時20分 平和な風景だ


東鈴尾谷川

09時25分大岩の横を通過する。さて道は上側か下側か? 二手に分かれて進む。こんな時は複数で歩くと便利だ。結論は炭の道は大岩
の上側を通っていた。すると直ぐに水の流れる沢が現われ、当然上から岩や石が落ちて荒れている。でもこんな水場は人間にも馬にも貴重
な休憩場所だったと想像出来る。

新居浜を流れる川は「国領川」として知られる。しかしこの河川は鹿森ダム辺りでは「足谷川」となっており、更に河又から東側に別れた
川名は「西鈴尾谷川」に変わる。つまり大永山トンネルへ向かう時に左手に見える谷川は「西鈴尾谷川」と言う訳だ。新居浜に長年住んで
来たエントツ山自身この西鈴尾谷川という川名を聞いた事も無かった。

さて、チチ山の北尾根を挟んで東側斜面から流れ出る谷川はこの西鈴尾谷川の支流部で、それぞれ東側から「東鈴尾谷川」「中鈴尾谷川」
それとおそらく「西鈴尾谷川」の3本である。ちなみにチチ山北尾根の西側にある沢は「土山谷川」と呼ばれている。


この「東鈴尾谷川」を渡った所で少し休憩するが、マーシーさんからナッツチョコレートの差し入れがあった。最近マーシーさんは心を入
れ替えたのか貰う喜びだけでなく捧げる喜びも覚えて来た様だ。


  
  むむっ デカい岩が転がっている                  ここは大岩の上側を炭の道が通っていた様だ

  
 09時28分 東鈴尾谷川に出合う  上流部            滑らない様に渡る                 


   東鈴尾谷川の下流部  この沢は西鈴尾谷川〜足谷川〜国領川となって瀬戸内海に注ぐ

  
 いつも二人三脚の伊予の鈍亀さん                 マーシーさんから差し入れ  まあ珍しい事

09時38分なだらかな植林地斜面の上側にヤマシャクヤクの群生があり寄り道をする。そこから10分程平らな道跡を進むと長めの石垣
が積まれていた。この辺りから又笹が生えて大岩が転がる良い雰囲気の森となる。ここが4人にとって「炭の道」一番の美しい場所だと想
いが一致する。
10時00分 又炭の道に石垣が現われる。こんな場所に人の手が加わった石垣や炭焼き窯を発見すると個々の人間が持つ
時間を超越した懐かしい気持ちになる。


10時10分水量が少ない沢を渡る。やはり沢部付近では斜面の崩壊が進んでおり道が有るのか無いのか良く分からないラインを伝ってほ
ぼ水平に進む。


  
  又 ヤマシャクヤクの群生地が現れる              この辺りは少し植林地帯が下から延びていた


 09時48分 眺めの石垣に遭遇 人の手が加わった古(いにしえ)の馬道だ

  
 往年の馬道が偲ばれる                        この辺りにもヤマシャクの群生地がある

  
 地形が安定すると笹が出てくる                   この辺りは大岩がおおいわ


  何とかと何とかとマーシーさんは高い所に登りたがる


   岩と森の殿堂で雰囲気満足の三人

  
 森の中に続く炭の道                          地盤が安定している所では石垣も残っている


              あこがれの別子銅山遺構 「炭の道」を歩く

  
 10時11分 小沢を渡る 中鈴尾谷川か?            谷の近くはほぼ崩落などで荒れて迂回を強いられる


チチ山北尾根を横切る

10時20分地形が安定すると又はっきりとした道が現われホッとする。すると上下に明確な尾根筋が見えるので最初はチチ山へ這い上がっ
た尾根だと勘違いした。
チチ山の北尾根は少し上部で二又に別れてこの手前にある尾根は下の方で斜面に吸収されている。北尾根本体はこ
の辺りで少し西側に湾曲して北に下がっているのでもう少し先だろう。ミツバツツジが咲く炭の道を進むと沓掛山が斜め左側に見えてゴール
が次第に近づいた気がする。

崖っぽい箇所を抜けると10時35分石柱が置かれた尾根筋に出る。地図で慎重に確認すると河又からチチ山の山頂へ続く一本の尾根筋に
立っていた。「ここがチチ山北尾根に間違いないですね」と4人で納得する。「炭の道」歩きもこの北尾根まで来ると西山越は近くなる。


  
10時20分又「炭の道」が現れる                   すると尾根筋が現れるがこれは北尾根ではなかった

  
ミツバツツジの向こうに沓掛山が近づく                ミツバツツジが咲く自然林 炭の道は斜面なりに傾いている

  
 尾根筋を過ぎると急に斜面がキツくなる                  すると沢が現れた


   沢筋は大体 こんなパターンの荒れ方だ 

  
 沢筋が連続する 結構急な斜面だ                 10時30分 穏やかな地形になると道が現れる

  
  チチ山と西山越への稜線が見える                10時32分 尾根部に石標が現れた

  
 地図とGPSで確認するとここがチチ山北尾根に間違い無かった   三角点ではないけれど4人でここまでやって来た


  10時32分 ここが以前二人で這い上がったチチ山北尾根だった  エントツ山はダサいチョッキ姿だ

  
このチチ山北尾根を過ぎると水の無い小沢が連続してガレ場を気を付けながら次々と渡る。この沢はチチ山北尾根と沓掛山北東尾根の間を
流れる土山谷川の上流部・源頭部だ。水気を感じさせる斜面ではニリンソウ、バイカオウレンやワチガイソウ等の咲く斜面を歩いていると
10時57分水が流れる沢に出会う。
炭の道がこの沢筋に差し掛かる場所には苔むした石積みの跡が残っており、ここでも馬や人が喉を潤
した事だろう。

この沢を過ぎると炭の道が暫くの間緩やかなチチ山斜面をのどかに続くが、又水気がある斜面になると岩盤が露出して荒れてくる。11時
10分藪化した斜面になり、沓掛山の南斜面の笹原が近くに見えてくると又穏やかな炭の道が現れる。


  
北尾根を過ぎると又斜面はガレてくる                でも少し地形が安定すると道が出現するって繰り返し

  
10時40分 滑沢が出現                        沢の前後は斜面が荒れる

  
 沢山の小沢を次々にクリアしていく                 そうしながらも沓掛山が次第に近づく

  
   次の沢は結構掘れこんでいる                   安全な場所を探して渡り登山道の高度に復帰する

  
 道が現われて喜ぶ でも手放しで喜ぶ事はしない          ニリンソウ

  
 シコクハタザオ                              ワチガイソウ

  
  バイカオウレン                            10時56分 滝を持つ沢があった


  滝の徒渉部には上から岩が落ちて平らになっている

  
11時00分 傾斜がゆるやかな沢を渡る              すると道が現れた

  
11時06分 岩が露出して濡れた沢が出現             滑りやすいので慎重に渡る

  
 藪っぽい灌木帯                             ここにもザレ場がある

  
  ザレ場から見る沓掛山も近づいてくる感じ           11時12分 「炭の道」が現れる


11時25分山側に石垣が残る場所を通過するとザレ場になり結構デカい岩が上から落ちて転がっている。この沢部は「土山谷川」の源頭部
と思われる。ここでは少しルートを下がって安全な場所を渡り先で道に復帰した。
11時33分ヤマシャクヤクの群生地が現われて退屈な心
を和ませてくれた。ここの群生地は道を挟んで上にも下にも花が沢山咲いており、ヤマシャクが種を飛ばして広がっているのが分かる。

この付近から炭の道は多少斜めに傾いたり荒れたりしてはいるものの道筋が途絶える事は無かった。



     緩斜面になると美しい森が光を浴びている

  
ガレ場の手前に石垣が山側に積まれていた            11時25分 幅の広いガレ沢となる


 11時25分 幅の広い涸れ沢のガレ場を下側に迂回して渡る

  
 幅の広いガレ場を渡ると又「炭の道」が現れる          この辺りにヤマシャクヤクの大群落があった

  
 ヤマシャクヤクの花は繊細なので花期は短い          丁度良いタイミングで花を楽しむ事が出来た

  
  ゴールは近いぞ  頑張ろう                    炭の道は傾斜なりに傾いて続く


ゴールの西山越

11時48分足元に笹が現われてゴールが近い事を匂わせる。最後は全く道のない斜面が少し出現するがそれを乗り越えると12時02分
西山越に到着した。恐らく西山越から炭の道に迷い込まない様にわざと入り口付近を意図的に荒れたままにしている様な気がする。
炭の道はここから更に宿を経由して笹ヶ峰北尾根〜天ヶ峠〜川来栖まで続くのだが、本日はここで切り上げる。大永山トンネル口からここ
まで5時間20分、舟窪(縦走路分岐)から西山越まで4時間15分かかった事になる。


  
11時48分 笹が足元に現われる                   沓掛山をバックに「炭の道」


     往年の馬道を彷彿とさせる風景だ  江戸時代から明治まで補修をしながらこんな道を整備していたんだろう

  
炭の道は沓掛尾根に沿って右へと回り込む             最後は少しワイルドになる

  
  低い笹が足元を覆う                          最後は藪の斜面を突っ切る

  
  お〜〜 峠部に着いたぞ                      12時04分 ついに「西山越」に到着!!


 伊予の鈍亀さん達は「我々だけでは来れない場所」と謙遜されたが、こちらも懐かしい場所を4人で楽しく歩く事が出来た

帰り道は遠かった 沓掛山北東斜面を下る

先ず西山越から沓掛山へ上がる

さて、西山越えに到着して目的は果たされた。元に帰るルートとしては常識的にはここから笹ヶ峰〜チチ山〜チチ山の別れ〜獅子舞の鼻〜
大永山トンネル口が妥当な線だ。我々は非常識な集団だから、一旦沓掛山へ這い上がり「沓掛山・北東尾根」を河又まで下るルートを選択
する。このルートは伊予の鈍亀さん達も歩きたかった尾根らしくて決まるのが早かった。30分程西山越えで昼食休憩の後沓掛山へと進む。


西山越えから沓掛山は一般登山道なのでのんびりと気楽に歩く。天気の良い土曜日だが沓掛山へ来る登山者は少ない。単独の登山者2名と
すれ違う。今日は沓掛山北東尾根を下るのでお助けロープとスリング4本を繋ぎ合わせたのを持って来た。それをいちいちザックから出す
のが面倒なので、大きなポケットが付いた山ベスト(釣りベスト?)を着て来た。しかし皆から「そんなベストは年寄りしか来ていないぞ」
とからかわれる。確かに先程すれ違ったお年寄りの登山者もベストを着ていた。笹原の急斜面を喘いで登るとアケボノツツジが咲いていて
嬉しくなる。北東尾根の取り付きを確認しながら13時15分沓掛山に付いた。


南側にどっしりと構える笹ヶ峰とチチ山を眺めながら、チチ山の北面にある「炭の道」の道筋を目で追う。やはりくっきりとした一本の線
は確認する事は出来ない。江戸〜明治と別子銅山を支えて多くの人馬が行き交った炭の道も痕跡が次第に消えて行き、人々の記憶からも消
えて行く幻の道になっていくのかと考えると寂しい。


  
分岐より宿へは行かずに沓掛山へ向かう              ここの尾根は実に美しい

  
 今日初めてとなる沓掛山への急登                  山腹の登山道は笹薮だった

  
              西黒森〜瓶ヶ森〜石鎚山          おっ アケボノが咲いてるじゃん

  
 13時15分 沓掛山の山頂に到着                  三角点を踏む


    沓掛山からチチ山方面を眺める


   沓掛山から笹ヶ峰方面を眺める


沓掛山・北東尾根

沓掛山への登山は西条側の笹ヶ峰登山口から西山越え経由が一般的だろう。新居浜に生まれた私は新居浜側からのアプローチに拘(こだわ)
る。立川・大永山の河又から一本の尾根が沓掛山へ伸びている。つまり北側の「本谷川」と南側の「土山谷川」の間に沓掛山へと魅力的な
一本の尾根が伸びているのだ。ここは以前ペーコちゃんやマーシーさんが歩き、私も冬場に挑戦し雪に阻まれ黒森からの下山が夜になった
事もある。


13時30分沓掛山の山頂から登山道を少し下り、北東尾根の合流点から尾根に入る事になる。合流点の付け根は藪なので少し下がって笹が
生えた左手の尾根筋に上がる。尾根は笹に覆われモミやリョウブの樹が立っている。少し尾根を進むと岩尾根特有のシャクナゲが早速現れる。
これは北隣の黒森山の新居浜への尾根も同じ風景だ。


13時42分右手がパックり岩が裂けており北側の土山谷川へ切れ落ちている。そこから早速シャクナゲの崖を樹や岩を手がかり・足がかり
に下りる。
マーシーさんはこの尾根を1回上り2回下りているとの事だがこんな不規則な崖尾根のルートは記憶にほぼ残っていない。でもこ
んな場所になると俄然ファイトを燃やして我々を先導する。


  
13時22分 沓掛山を下りる 登山道に咲くアケボノツツジ     沓掛山・北東尾根 付け根は藪で入る隙間が無い

  
13時33分 笹の中を尾根に這い上がる              尾根の北側は黒森山の切り立った岩壁が見える


 13時35分 沓掛山・北東尾根に乗る  平和な尾根風景はここだけだった  この後苦難の崖尾根下りとなる

  
        荒れ尾根の序曲                      1分後にはシャクナゲ藪に突入

  
 13時40分 シャクナゲの細尾根                  北側に開いたロックゲート 土山谷川へと落ちて行く

  
 シャクナゲの岩尾根を下る                       ず〜〜っと 岩とシャクナゲ尾根が続く


13時52分さっそくスリングを出して安全を確保する。その5分後にはお助けロープを出す。一応ワイルドな場所を歩いているとは言え亀
美さんに何かあっても亀吉さんに申し訳無いので色々忙しい。
14時05分右手に美しいアケボノツツジの花が見えてしばし花見をする。
左手にある黒森山の崖は見上げる角度になっている。


  
 う〜〜ん エントツ山さん スリングでは長さが足りないわ   それじゃ ロープを出しましょう

  
ロープやスリングの回収に忙しいエントツ山          ロープをダブルにしているから一本を引っ張れば回収できる

  
   いや〜 急斜面ですなあ                     14時00分 まだまだお助けロープが活躍します


14時05分 みんなで花見   こんな所にアケボノツツジの大木が眠っていた  でも中々ここまで見に来れないわ


稜線がシャクナゲの藪なので右手に振って下る。シャクナゲを避けるとリョウブの藪になるが傾斜が急なので樹が乱立している方が安心感が
ある。しかし藪尾根に入ると下側に続くメインの尾根が分からなくなり度々修正が必要となる。


14時40分ちょっと右側の枝尾根に進んだようなので斜面を左に横切って尾根に復帰する。それでもシャクナゲとリョウブの藪尾根が続く。
リスがマツボックリを食べてエビフライにして丁寧に置いてある。
崖があるとスリングを出して確保する。実はお助けロープをチョッキの大
きなポケットにねじ込んでいたのだが、ルートの度重なる変更などで忙しく、いつの間にか落としてしまっていた。
(マーシーさんが後日探しに行ってくれたらしいが発見できなかった)


  
ドンドン 細尾根を下る                         尾根を下りるに従い黒森山がだいぶ高くなる

  
シャクナゲ藪を避けて少し尾根をトラバース        左の崖で行き詰まり、右手の崖を下る この左の崖でロープを落としたみたい

  
 アンタはんも藪好きどすなあ                    尾根に復帰して急斜面をドンドン下る

  
尾根の下からマーシーさんが「尾根を一つ右側に外したみたいです」  14時35分 それじゃ左の尾根に渡りましょう

  
14時45分 藪を乗り越えて北東尾根に復帰する         するとリスの食事場があった

  
     相変わらずの藪の細尾根              崖があればスリングを出す   もうロープは落として無くなったのだ


  しっかし こんな尾根を歩きたかったなんて変わった夫婦じゃのうし   14時57分 少し平和な場所で


15時シャクナゲ尾根が開けて南側が開けたので今朝歩いたチチ山の南斜面を4人で眺める。15時13分と15時40分に高めの崖が現れ
たのでスリングで確保して下りる。私もこの尾根を這い上がったのだが、ようもこんな傾斜を延々と歩いたもんだと呆れかえった。

16時10分デカい天然杉の幹が横たわってゲートになっている。岩尾根にはこんな光景に良くお目にかかる。すると初めてシャクナゲの花
に出会えた。
16時18分見覚えのある樹の根が窓になったツインウィンドウに着いた。その場所から尾根が少し落ち着いて広葉樹の葉が頭
上を覆う様になり歩き易くなる。


  
 シャクナゲの藪を潜ると岩場に出た                チチ山北面を見ながら午前中に歩いた炭の道をなぞる


  チチ山北尾根の西側に「炭の道」の道筋が見える 土山谷川の支沢が沢山北斜面にある


      崖〜〜  まあこれ位の落差だったら楽さ   スリングはこんな時握り易くて便利だ

  
 見の軽い亀吉さんはスリングが邪魔になる           右手の崖を下りて岩越しに前に出る

  
  更に崖を下る                            まあ折角スリングがあるから使っとこか


         一心同体? 夫唱婦随? 阿吽の呼吸? 二人三脚? 似た者夫婦? 

  
徹頭徹尾 藪尾根、岩尾根やねえ                  まあ掴まる樹が沢山あるから大丈夫な尾根やね

  
 16時10分 デカい天然杉の幹が横たわるゲート         シャクナゲの花が藪尾根をパッと明るくする


    16時18分 ツインウィンドウ に着いた  根上がりの木は時々見るが二つ仲良く並んでいるのは珍しい

  
        亀吉              亀美            エントツ山                マーシー


伐採地の植林帯と鹿防護ネット

2個の根窓を過ぎると風景が穏やかになり広葉樹の緑が光に透けて明るい。16時33分植林帯が現われて人間の匂いがする様で少しホッと
する。普段登山者に嫌われる植林帯ではあるが余りにも厳しい岩尾根の後だからやっと人間界に下りて来た安心感に包まれる。最初にこの辺
りに来た時には広大な伐採地跡に植林されて若木の一本一本がプラスチックのポールで覆われて映画で見た戦場のお墓みたいだった。それが
今では植林木も育ってスロープの下側には懐かしい鉄塔も見え、すぐに鹿の防護ネットが現われる。しばらくはそれに沿って尾根付近を下る。
伊予の鈍亀さん達もこの辺りまでは歩きまわっているので見慣れた風景なのだが、終点まではまだ遠い事も知っている。


  
風景がやっと落ち着いてシロモジなどの広葉樹が多くなる    シャクナゲの彩りが緑に映える

  
沓掛山北東尾根も裾野に近づき傾斜が緩くなる         16時33分 植林帯が現れる

  
伐採地・植林帯まで下りる 見える鉄塔は尾根筋では無い   16時35分 鹿防護ネットに沿って下る


 伐採と植林用に付けられた林道が見える  電源開発鉄塔227番が近づいた でも河又まではまだ遠いのだ

鉄塔と林道に出合う

16時50分「電発・伊新線227番」鉄塔に着いた。伊新線とは伊野(高知)〜新居浜を結ぶ電線網だろうか。17時02分林道とクロス
する。この林道は作業車が通れる様に尾根筋を相当迂回しているので近道になる尾根を進む。尾根に再度飛び込むと又鹿防護ネットが現れた。
この尾根は歩き易かったが17時21分又林道とクロスする。藪尾根に入ると直ぐに下側で林道と合流する。地形図には林道の上部は記載さ
れていない。恐らく伐採作業が始まって新しく尾根を迂回しながら付けられた道なのだろう。従って車の運転には易しいが歩くとなると無駄な
迂回がとてつもなく長いのだ。

  
電源開発の鉄塔に出合う 黒森山から来て舟窪へと延びている   伊 新 線 第227号とある

  
 植林帯を右下に見ながら下る             17時03分 最初に林道とクロスする

  
  又 鹿防護ネットが現れる              案外歩き易い尾根

  
 17時21分 2度目に林道と交差する         これもショートカットで尾根へ入る

  
  むむっ この尾根は短い距離だがヒドかった     17時25分 3度目に林道と交差する


この最後に出合った林道は北側の土山谷川へ大迂回をするので17時30分三度目の尾根突入にかかる。
林道が出来ると尾根を歩く人は先ず
居なくなるので藪が酷い。普通は多少距離が長くても歩き易い林道をトボトボと歩いて下るのだが、我々4人はそのタイプでは無い。
特に最後の急斜面は以前伐採地でその後植林された所だが、タラの芽などのトゲがある樹がとんでもない数で生えている。


傾斜が急なのでブレーキの為に無意識に幹を掴んでしまう。先に藪を突っ走っているマーシさんの「痛〜い イテ〜」の声が聞こえてくる。
それを笑っていると自分も同じ声を発する事になった。


17時53分沢の横にある林道にやっと下り着いてホッとする。土山谷川に掛かる橋を渡ってすぐ近くの県道47号(新居浜・別子山線)、
河又ヘヤピンカーブの駐車空間にデポした車に帰る。分岐には「黒森山」の標識が置かれていた。縦走の場合、旅は未だ終わらない。それか
ら出発点の大永山トンネル南口へ置いてある伊予の鈍亀さんの車を回収して本日の充実した一日は終了した。

  
17時30分 さあ、最後の仕事に入りましょう            荒れた植林の尾根を下る

  
県道が見える  うれぴ〜〜〜               最後に藪で苦戦

  
 何で伐採地にはトゲの有る樹が生えるんだろう?    泣いても笑ってもあと少しやで

  
 17時53分 あ〜〜〜 やっと着いたのね      亀吉さんも苦笑いしながら下りて来た

  
土山谷川に架かる橋を渡る              18時00分 県道47号(新居浜・別子山線)に帰り着く 

今回の歩きは伊予の鈍亀さん達が未だ歩いていなかった「チチ山北面の炭の道」と「沓掛山・北東尾根」を久しぶりにマーシーさんと歩いた。
やはりマイナーなルートは5年以上経つと記憶も薄れて山の様子も変わる物だ。お蔭で懐かしい場所を再確認する事が出来た。

さて次は「笹ヶ峰北面の炭の道」を歩く事になりそうだ。



エントツ山・マーシーのチチ山北面・炭の道歩き (平成20年11月22日)  は     ここ      

エントツ山の沓掛山・北東尾根の記録 (平成25年2月3日)   は           ここ   

エントツ山のリベンジ 沓掛山・北東尾根の記録(平成25年3月9日)は         ここ