兜岩・前赤石のタカネバラと串ヶ峰のオオヤマレンゲ、伊予の鈍亀さんに遭遇
前週、兜岩へタカネバラを見に行くが、東平へ行く途中で大雨となり引き換えした。
今週は日浦谷を遡行して物住ノ頭へ上がり、上兜と前赤石の銅版標識整備に行くつもりだったが、前日又
大雨が降り沢歩きはあっさり諦める。
ならば、一週間遅れたが兜岩のタカネバラは今年はどこの花も花期が遅れているのでまだ大丈夫やろ・・・
と言う事で東平から又平凡なルートで行く事に。
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図
東平〜兜岩〜西赤石〜物住ノ頭〜上兜山〜串ヶ峰〜前赤石〜東平
今日は前日の雨で足元が悪くハイカットの登山靴を履いて歩くつもりだったが、朝車に乗せ忘れてしまった。
仕方なくモンベルのローカットシューズで07時20分東平を出発。やはり2週間山から遠ざかるとペースが
上がらない。
上部鉄道跡を歩くと谷筋が轟々と音を立てて水が落ちてきている。あ〜日浦谷へ行かなくて良かった〜
09時頃展望の無い兜岩に到着。イヨノミツバイガワサのオンパレードだ。西面の岩場を歩いてタカネバラ
を探すが予想通り一本もない。岩場の奥まで進んで今度は去年見た東側斜面を探す。
作りとても歩きにくい場所で、あまり訪れる登山者は居ない。
6株程のタカネバラを確認するが、大方の花は散っていて残っている花も形が欠けており勢いが無い。
それでも数枚は何とか咲き残ってくれていた。
兜岩で随分時間を使って、10時10分西赤石へと進む。やまちゃん流で言えば、今回の目的は上兜山と
前赤石山の標識メンテナンスと串ヶ峰のオオヤマレンゲ鑑賞だ。稲叢山、高ノ瀬、樫戸丸、寒風山のオオヤマ
レンゲは既に皆さんからレポを頂いているのでちょっと違った場所の花をレポする思惑である。
東平駐車場 上部鉄道の沢筋もゴウゴウと音を立てる
兜岩は赤石橄欖岩の岩山である。赤石橄欖岩は前赤石山から権現越の間に現れたマグマ由来の岩石であるが、不思議と
西赤石界隈ではここにだけ突出しており、特有の植生が現れている。
ウスノキ シモツケ
コウスユキソウ (アカジク)ヘビノボラズ
コメツツジ タカネバラ
シロドウダン シロモジの実
カイナンサラサドウダンと同定した本もある
イワキンバイ ウバタケニンジン イヨノミツバイワガサ
タカネバラ タカネバラ
タカネバラ ヤブウツギ
稜線を見るが登山者は見えない。空耳か・・・
標識のある山頂へ進むと半袖に虫避けネットを被ったカップルがいた。一人は私と同年配の男性でもう一人はそこ
そこ若い女性だった。時間確認の山頂写真を撮りたかったが、ご夫婦で無い場合もありカメラを向けるのが失礼
なので遠慮する。ご挨拶だけしてそのまま物住ノ頭へと藪っぽいくなった登山道を足早に向う。
すると、後ろから先ほどのカップルが追いついて来たではないか。何や〜 この人たちの速さは?
「どこへ行ってるんですか?」と聞くと「一応物住ノ頭まで・・」と言う。この時期、こんな場所に来る変わった
人達だ事。更に会話を続けていると新居浜の方達とわかり、何かピンと来るものがあった。
「ひょっとして伊予の鈍亀さんじゃありませんか?」と聞くと「ひょっとして原さん?」と返す。 あら〜〜
普段から掲示板で親交があるので初対面とは思えない懐かしさがこみ上げてくるが、間違いなく初対面だのだ。
藪で狭くなった登山道では立ち話も出来ないので、岩場を這い上がった場所で改めてご挨拶をする。お二人は丁寧
にネットを取って挨拶をされるのだが、こちらは先ほど兜岩で既にコメカミを虫にやられている。「どうぞネット
を被って下さい」と促すが礼儀正しくて中々被ってくれない。
鈍亀吉さんの方は「私の叔父さん(父の弟)と同じ会社で親しくさせて貰い今でも付き合いがある」と言う。道理
でがっちりした体躯と義理人情が厚そうな顔は建設会社出身を物語っている。
鈍亀美さんの方ははるちゃんの噂通り若くて理知的でしっかりした顔立ちの美人で口元は意思が強そうな印象である。
う〜〜ん、山で会った主なご夫婦は「グランマー啓子・グランパ」「kyo・静御前」「reiko・殿下」「わいわい隊」
「ストーンリバーズ」「トンちゃん・マー君パパ」「上砂隊」「紫雲・乙姫」「与力・火打石のお静」
「やま・きぬコンビ」「ろくべえ・かお」「流れ星・レーサー」「ぼちぼち・もちもち」(敬称略)と何れも自然と
役割分担が出来ていて個性的で明るく良いチームワークである。「こもれび隊」や「花山 楽・歩」コンビには最近
お会いしていないけど元気なんやろか?
「いつもお世話になっております」とお互いの挨拶の後、物住ノ頭へと進む。11時10分物住ノ頭へ着くと6人
位のグループの方が休憩されていて東赤石まで縦走すると言われる。3人で記念写真をお願いする。
ゆっくりお話をしたかったが物凄い虫で、お二人とも半そでの上に鈍亀美さんが相変わらず律儀にネットを取って
いるので虫に刺されないか気が気でない。
ちょっとハイペースで歩いたので鈍亀奥さんが太ももを痛めた様でだったので、11時30分ここでお二人にお別れ
して私だけ串ヶ峰へと進む。
伊予の鈍亀〜ズ 物住ノ頭で記念写真
尾根道は前日の雨で滑りやすく笹や樹を掴みながら歩く。ドウダンツツジの実が沢山垂れ下がっており、その向うに
上兜山が霞んでいる。南側から見る上兜は東側が絶壁となって深い谷へと落ちている。単なる尾根のピークであるが、
この尖がりは船木からでもよく見えるのだ。
12時10分上兜山に到着し、右裏のネジを一本変えて補修。左裏の取り付けネジも代える予定だったのだが、まだ
しっかりして外れなかったのでそのままにする。 ここは風が強い場所ではあるが天然杉に囲まれているので条件は
いい様だ。
ブドウの房の様に沢山ぶら下がるシロドウダン
こちらは美味しそうな色をしたベニドウダン ガスの向こうに上兜山
気の早いハゼの葉っぱ 上兜山銅版標識 「わいわいしゃもじ」もまだぶら下がっている
さて、いよいよ串ヶ峰のオオヤマレンゲだ。今はここの藪道もルートが付いている。
2007年串ヶ峰に北海道と本州中部にしか生息しない「イリタマゴゴケ」という珍しい地衣類が発見されてから
急にこの辺りに登山道がお目見えしてしまった。オオヤマレンゲは串ヶ峰山頂のすぐ手前、踏み跡道のすぐ右側にある。
ここのオオヤマレンゲは3株が固まって存在しているのだが、低い場所にも咲いているので鹿などがここまで来れば
ひとたまりもない。ひとしきり天女花を眺めたあと、串ヶ峰山頂へ行く。
12時50分串ヶ峰に着く。山頂標識はついこの間ペンキを塗って整備しているので問題はない。
串ヶ峰は直下まではアケボノツツジで彩られるが、山頂付近は味気ない藪山でこの時期だけヤマツツジで良い色になる
のだが、ここの花も既に終わっていた。
先ほど伊予の鈍亀さんから手作りのバウンドケーキを頂いて一度串ヶ峰、山ノ神に祭ったのだが、こんな場所で無造作
に食べるのには勿体ない。下山した後レギュラーコーヒーと一緒に頂く事にする。貧しい昼食の後暫くたたずずみ、
オオヤマレンゲを又じっくりと眺めた後 物住ノ頭へと帰る。
串ヶ峰のオオヤマレンゲ やっぱ 魅力的な山の花やねえ
伊予の鈍亀美さん手作りケーキをちょっと山の神に供える 今年は山ツツジが散っていた
来年 また会いましょう 串ヶ峰から上兜山
物住ノ頭〜串ヶ峰やぶこぎ線から上兜と串ヶ峰を振り返る 今は寂しい物住ノ頭に帰る
14時30分物住ノ頭に帰る。次の予定で前赤石山の山頂標識メンテが待っているのだ。物住ノ頭から前赤石を往復
するのに1時間半位かかるので串ヶ峰のついでにここを毎回訪れるって訳には中々行かない。
(?)をピストンし前赤石山訪問の時間を作った。
前赤石山は物住ノ頭から東側に続く赤石山系のピークで、ここから赤石橄欖岩の岩峰が石室越〜八巻山〜東赤石山〜権現越
と続く。この山系では別子銅山がある西側の銅山峰・西赤石方面から開けて来たので、八巻山〜東赤石山の手前にある前衛峰
(ジャンダルム)として「前赤石山」と名付けられたのだろう
前赤石山の岩尾根への分岐まで下がり14時30分縦走路を外れて藪に入る。入り口のクロズル藪を越えると後は
ルートが明瞭な岩の細尾根となる。
ここのルートは中央突破しかない。3箇所位岩壁を這い上がる事になるのだが、手がかり・足がかりがあり普通の
体力、運動能力があれば技術的にもそう問題はない。危険はないのか? う〜〜ん危険などという物は街でもあるし、
山でも川でも海でもとこにでも存在する。ヘマをするとどんな簡単な登山道でも怪我をするものだ。
右へ振っても、左に振っても絶壁なのでここでは中央突破が一番安全である事が確認される。
登山者はそのルートしか見ない。単純な岩尾根では右へ振ったり、左を覗いたりして安全なルートを確認するクセを
つかなければならない・・・・・とアウトドア爺さんはそう思う。
北アルプスや南アルプスの広い岩尾根の様にどちらへでも行ってしまう場所ではこの丸いペンキが安全を確保して
くれる。ケースバイケースなのだと思う。 う〜〜ん 自分でも毎回口うるさい説教爺さんだと思う
巨大な岩が覆いかぶさった左手を這い上がり、更にその上に出るとトラバース縦走路が見下ろせる。行く手の細尾根
には相変わらず棒の先には赤テープ、岩には赤ペンキが標されている。前赤石山は手前に一つニセピークがあり、
そこまで這い上がれば後は楽勝となる。そこから一旦下がる藪っぽい岩場にタカネバラが咲いているのだ。
前赤石の西側取りつき部 岩の回廊が続く
この岩山は細長い尾根なのでルートは容易にわかる 山の歯ブラシ シライトソウ
手前のピークに向かう 一枚岩でないので手がかり、足がかりが豊富だ
南側のトラバース道側は少し急な傾斜となる 手前のピークを越すと次の本峰が見える
ここもイヨノミツバイワガサが多い 岩峰を振り返る
叫ぶ岩 標高が低いので本峰手前には樹林帯もある
前赤石山のタカネバラ 花には特定の虫が集まる
前赤石山頂が近づくと一旦北側にトラバースして樹林帯を抜ける事になる。15時05分着いた
大勢の登山者を受け入れる事は出来ない。ここは単独か少人数で楽しむ岩山である。
銅版標識はそれ自体は結構丈夫で、ペンキ塗りの必要も無く山頂標識としては理想的だ。問題は標識を取り付けている
木製ポールが風雨で痛んだり折れたりする事である。
久し振りにここに来たが、土台の石積みが増えており皆さんのお蔭で風雪に飛ばされる事なく立って居る。
天気が次第に回復し、今まで姿を現さなかった西赤石山が見える様になった。
時計を見ると15時20分。足早く岩場を下りて入り口に置いていたストックを回収し縦走登山道に復帰。雨の後、
天気が回復すると物住ノ頭を過ぎた広い岩棚に大きなヘビが日向ぼっこにやってくる。お目にかかりたくないので
急いでそこを通り過ぎる。
前赤石山山頂
前赤石山の北斜面 やっぱり猫背やね
銅版標識にはえんとつ山がある 数年前 標識設置作業中の怪しいオッサン
南側のトラバース道方面 物住ノ頭(右)と西赤石山が見えだす
前赤石から物住ノ頭への尾根縦走路を眺める 岩と岩の間にルートが見える
まあ言えば この一枚岩が難所かな? でも手がかり、足がかりがある
ここが上から見た一枚岩 あとはルートが岩棚になっている
15時55分物住ノ頭に帰る。西陽を浴びながら縦走路をヨタヨタと歩き16時30分に西赤石を通過し、兜岩に下りる。
朝方は全く見えなかった西赤石が良く見える。
兜岩の南端の見晴らし岩あたりにタカネバラが咲くのだが、いい場所は既に散っており一輪だけ花の態をなす花びらの
後ろに陣取って西赤石がバックになる様位置取りをするがちょっと無理だった。
尾根縦走路から前赤石への入り口 雲原越分岐 ここから北側へ踏み跡道がある
15時48分 15時50分
物住ノ頭へ帰る この標識にもえんとつ山がある ツガザクラの咲き残り
15時55分
尾根縦走路はアザミがチクチクと痛い 物住ノ頭 前赤石山 石室越・コマドリ山
西赤石山 16時40分 西赤石北斜面に敷設された脚立が山の崩壊を防ぐ
兜岩南端にあるタカネバラ 兜岩のイワキンバイと西赤石
さあ、17時10分兜岩を後にして東平に向って下山開始。元気のある午前中はヘビに見える木の根っこを
ストックでちょんちょんと触ったりしながら歩くのだが、もう疲れているとそんな集中力も無く、気にならない。
木の根がヘビに似ているのではなく、へびの方が身を守る為木の根っこに擬態している訳だ。下り坂で縦に伸びた
木の根を踏むとツルリンコと滑って尻餅をつく。
しない為ヘナヘナと力なく一旦座り込む術(すべ)を覚える。
ローカットシューズが濡れて、靴下も濡れて下り坂が続くと足の親指が詰まり痛くなる。そこで靴下を脱いで素足に
なると足先が楽になった。 所が今度はくるぶし辺りが擦れて痛くなる。
やすくなるのだ。やはり今日はハイカットシューズで来るべきだった。みんなのブログ・やまちゃんみたいに反省する。
全く下山のスピードが上がらなかった。
緑だらけの西赤石山 アケボノ色、錦秋、霧氷の美しい姿を知っていると何か物足りない
19時丁度に東平の駐車場に到着。もちろん車は外に一台もない。
あ〜もう歩かなくてもいいんや。 朝張り切って文明社会から遠ざかった人間が、夕方には文明の利器へと帰り着き
ホッとする。山歩きの後はいつも「車って便利な道具や」とつくづく思う。
果たして我々は便利な文明社会に反逆する為に山歩きをすると粋がってはいるが、逆に文明社会のありがたさを再確認
する為に不便な山歩きをするのだろうか?
ともあれ上兜山〜串ヶ峰〜前赤石山の山頂標識を巡る歩きは、兜岩のタカネバラ・串ヶ峰のオオヤマレンゲに何とか間に
合う事が出来た以上に、伊予の鈍亀さん達に遭遇というおまけ付きで無事終了した。