平成21年6月27日 串ヶ峰 山頂標識メンテナンスの旅

東平ー上部鉄道跡ー兜岩ー西谷川造林小屋跡ー西谷川遡行ー上兜山ー
串ヶ峰ー上兜山ー物住ノ頭ー西赤石山ー兜岩ー上部鉄道ー一本松停車場跡ー東平


    
      串ヶ峰標識     バックは兜岩 その奥に沓掛山・黒森山


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである
 

東平(07:40h) ー一本松停車場跡( 08:15h) -上部鉄道跡ー兜岩(0935h-1000h)ー西谷川造林小屋跡(1040h)
ー西谷川遡行ー上兜山(12:20h)ー串ヶ峰(1230-1330h)ー上兜山(1400h)ー物住ノ頭(15:00h)ー西赤石山(1545h)
ー兜岩(16:00h)ー上部鉄道ー一本松停車場跡(1700h) ー東平(1735h)

串ヶ峰に至るには @ 魔戸の滝 東尾根を辿るルート A 物住ノ頭より北側に延びる「大女の肩」藪尾根ルート
の2つがある。
兜岩から北東尾根伝いを西谷川に下ると造林小屋跡がある。数年前に行った時はまだ建っていたが、その後倒壊
していた。ここから魔戸の滝へ林業作業道が下っている。
さて、この沢を逆に遡行すれば上兜山へ至る事が出来るハズである。
かくて平成21年6月27日 串ヶ峰山頂標識メンテナンス作業へこの第三のルートを解明する事にした。


    
         以前ペーコさんから頂いた新居浜市内から見た串ヶ峰と西赤石


西谷川造林小屋へ行くには魔戸の滝から林業作業道を辿る方が早いのだが、帰りに雲ヶ原から上兜山の南側へ
「立川銅山道筋」ってのがあり、上野山吹所に通じていたらしい。そこを通ってみたいという意図があったので東平
(とうなる)から出発した。

 
   世にも不思議な鹿森ダムループ道路          東平  し〜〜〜ん

東平を07時30分頃到着したが人っ子一人居ないシーズンオフの様な寂しさがあった。07時40分東平を出発。第三から
一本松停車場跡を08時15分通過して上部鉄道跡を進み兜岩分岐を08時35分左手に登っていく。ここから兜岩までは
植林地帯が多く、いつものアケボノツツジも無く退屈する。

 
   今日はこの杖を拾って相棒とする               上部鉄道風景

 
     上部鉄道兜岩分岐                兜岩から上兜山(中央のデベソ)と串ヶ峰(左の肩)

09時35分兜岩に付くと一面イワガサの白い花が咲いている。手前から兜岩に這い上がると何とタカネバラが咲いており、
ちょっと花期を過ぎているのが残念だったが、東赤石まで行かなくてもこの花を見ることが出来た。
兜岩から東側に「大女の肩」を眺める。ここから一旦沢に下りて上兜山まで又這い上がる訳だ。う〜〜ん やはりピン芸人
だと気合が入る。

     
       天気は曇天だが吊り尾根の向うに石鎚まで見通す事が出来た


          ちょっと終わりかけたタカネバラと西赤石山


09時50分兜岩を出発し、帰りに通過する西赤石には登らず石ヶ山丈(いしがさんじょう)分岐を左に下がる。ここでも
タカネバラを見ることが出来た。10分位分岐から踏み跡を下がると今度は石ヶ山丈の尾根ルート分岐に着く。ここには
沢山のテープが木に巻きつけられて登山者を左へと誘うが今回はそこから西谷川へと下りていく別ルートを取る。

 
  ウバタケニンジン(?)にイワキンバイ(?)        タカネバラに会えたのはラッキーでした

ここは一見踏み跡が無い正面の植林地帯に向かって下りて行く事になる。しばらく続く植林地帯では尾根を外さず進む
事が肝要だ。やがて植林地帯の足元にはスズタケが現れ、雑木と笹の下りとなる。所々に赤テープが出現するが、気に
せず沢音がする方向にひたすら下る。最後は崖の様な急斜面を木を掴みながら慎重に降りていくと沢に着く。

 
石ヶ山丈分岐にはテープが沢山木に巻きつけられている    細い植林地帯の支尾根を進む
(ここを右の藪に入っていく)

 
   やがて下り傾斜となり自然林となる           沢の音が大きくなり西谷川が見えた


       川床に下りると 倒壊造林小屋を探そう。 これが目印となる

      
  数年前はしっかり立っていた              現在は倒壊してしまった

兜岩を出発してから約40分でこの倒壊小屋まで着いた。
ここから沢沿いを下がると左手に林業用作業道があり魔戸の滝へと続く。

四国の山には前人未到という様な場所はそうそうあるもんではない。きっと愛媛県の好き者がこの沢を遡って
上兜へ這い上がっている事だろう。

最近は雨も少なく、そんなに水量も多くないだろう。この山域の藪はスズタケが多く長時間に渡る藪コギは難渋を
強いられる。
道が無い山では尾根を歩くのがセオリーではあるが、スズタケの藪を避けてこの沢を遡行する方が
この場合容易と判断がつく。10時40分 西谷川の遡行を開始する。


 
    造林小屋近くから沢を上流に向かう            この辺りはまだ水量が比較的多い

 
          ミズタラビコ                        ウワバミソウ

地図の等高線で想像した通り比較的なだらかな傾斜で滝も少ない。最初の滝は皇子渓谷の機(はた)の滝をミニチュア
にした様な形で雰囲気が良い。二つ目の滝は両側からスズタケが迫り滑床を樋状の水路が上に伸びている。

ここは左手の藪に入り上部に出る。その後も歩き易い沢が続く。最初の大きな分岐を左に進み、次の分岐を右へ、最後の
幅が狭まった分岐では最初左側の小さな沢を進んだが、磁石を見ると北を指していたので元に引き返し右側の沢を進む。

要するに南へ進むと雲ヶ原の主尾根にぶつかるので東方角の「大女の肩」を目指す訳である。沢の水が無くなり幅が次第に
狭まって両サイドから嫌なスズタケが覆いかぶさる様になってきた。

   
      さわやかな沢風景             比較的歩きやすい沢

 
           ミニ 「機(はた)の滝」

 
      高度差もそんなに無い         次第に川の両側にスズタケが迫ってくる

 
     ミニゴルジェの滝  ここで左側の藪を伝って上側に出る

 
   滑を下る樋状の水路             お〜  まだ水があるわ

     
         まあ この辺りが沢らしい風景の終焉の地


1200時、スズタケを潜る様にして沢の最終地点まで来るとGPSで位置を確認すると既に上兜山の直下に来ており
藪歩きの時間は知れている様だ。後は覚悟を決めて藪に突入する。細い樹やスズタケの茎を掴みながら這い上がって行く。
当然回りは見えない。

やがて頭上が明るく開けて来たので振り返ると木々の間から向かいの兜岩や西赤石が見えた。この視線から判断すると
「大女の肩」も近い。
全身に力を込めて藪を漕ぐと
12時20分 あっけなく稜線に這い上がった。

 
     この分岐は右に進む                   水はもう無い でも藪を避けて助かるスペースだ

 
     むむっ 沢が消えちゃうよ〜〜               オラ こんなヤブ 嫌だ!

 
   上を見ると結構いい景色なんだけどなあ               足元をみるとこんな感じ

 
向かいのお山は〜♪ 西赤石 山よ〜 ♪               上兜のギザギザ頭が見えた

ここは何処? 私は誰? キョロキョロと辺りを見回す。ドウダンツツジの直ぐ南側に上兜山のギザギザ頭が見えた。
物住頭と上兜山間の見晴らしが良い場所から西赤石と支尾根(大女の肩)の間にある西谷川の上流部を眺めると、二つの
沢が見えるのだが、
今回遡行した沢は予想通り上兜山の北側に切れ込んだ所だった。

兜岩から西谷川を経てこの稜線に3時間弱で這い上がった事になる。これって西赤石―物住頭経由の主尾根を歩いて上兜
に行く時間とあまり違いはない。するとこの西谷川遡行ルートは立派な「上兜・新ルート発見」である。

おっと喜んでばかりもいられない。本日の主目的は「串ヶ峰」標識メンテナンスなのだ。天気予報では夕方から雨なので
早めにペンキを塗らなきゃならん。心なしか先ほどから雲が湧いているし先を急ごう。

上兜―串ヶ峰間は以前から比べて有名になったのか、はたまたコケの研究者用なのか快適な尾根道になっているのよね。
猛烈な雑木(ざつぼく)で顔にひっかき傷をつけながら彷徨った台地にはクネクネと一本の道が付けられていた。

 
    大女の肩から西赤石を眺める        勿論 この尾根は立派なヤブ尾根じゃとて

 
    上兜山から物住頭への稜線           西赤石と兜岩

12時33分 懐かしい串ヶ峰に着いた。山頂のスペースには人為が動物かスズタケのカーペットが敷かれていた。 
標識は堂々とそこに立っていたが、やはり風雪に耐えかねてペンキが剥げている。西側に置いたサブの標識は風が強い
場所なので心配していたが、こちらも無事で低く根付いたヤマツツジの花に囲まれていた。

物住頭より北側に伸びた大女の肩「串ヶ峰」は気まぐれな地球の造山活動で出来た無機質な皺みたいな物ではあるが、一度
山名が付けられ標識などを設置すると、これがまるで生き物の様な感情を移入してしまう。

こんな寂しい場所でペンキ塗りをしている自分の心理分析を出来ないまま約1時間で作業を終える。強い風に煽られながら
この愛着のある山頂を幾度も振り返りながら13時30分串ヶ峰を去る。


 
    串ヶ峰の山頂に着く                       西側の標識 (メンテナンス後)


                      串ヶ峰 メインの山頂標識    
 

串ヶ峰を出発すると直ぐ目の前に、来たときは気づかなかった白い花が現れた。白い妖精、大山蓮華(オオヤマレンゲ)
だ。こんな藪尾根にも人知れず毎年花を咲かせているのかと思うと余計にこの藪尾根の肩「串ヶ峰」がいとおしい物に
感じた。
藪尾根を次の標識設置山「上兜山」に向かう。

 
 えっ!? ここにオオヤマレンゲがあるの?           結構沢山咲いている

 
         上兜へ向かう                     ベニドウダンと西赤石


      西赤石、兜岩の東斜面  この正面の谷筋を這い上がって来た

1400時、上兜まで引き返し、ここに取り付けた銅版の山頂標識の点検をする。こちらは風雨を避ける天然ヒノキに
守られているのか輝きを失うことなくそこに在った。メンテナンスの事を考えるとどうも山頂標識は銅版の方が良さそう
である。

上兜山の東斜面は絶壁になっており、展望所より権現越から二ッ岳、赤星山が見渡せるが谷一面に雲が湧いて、エビラの
天辺が雲の中から姿を見せていた。


    
       上兜山にて                            わいわいしゃもじもぶら下がっている


                       上兜山 山頂風景

 
   上兜山の東斜面   雲が湧いていた               南側から見る上兜山

上兜の南面に出るとこの大女の肩が東側に湾曲しているのがわかる。東側の前赤石は相変わらず雲に覆われているが、西側の
西赤石方面は見通しが良い。

兜岩から北東に伸びた小尾根や遡ってきた沢筋が見渡せる。ドウダンツツジが沢山あり、紅いベニドウダンが多く見られた。
ここのホツツジも見事なのよね。

春に70歳の新居浜の小児科医、真鍋さんから串ヶ峰に行ってきましたとメールを頂いた。物住頭から上兜まで行きは下りだが、
帰りはそこそこの登りになる。これは大変だっただろうなあと思いながら自分も60歳を目前の老人に違いないと感慨に耽る。
自分はいつまでこんな場所をあるけるんだろう?

尾根の途中から雲ヶ原へ抜ける「立川銅山道筋」跡がないか東側を注意しながら歩くが藪が濃く発見できないまま物住頭に
15時到着した。


 
        ベニドウダン                             ウスノキ ?


      ヤマツツジが鮮やかに初夏の山を彩る   バックは西赤石と兜岩


 
 中央(左)=串ヶ峰   右=上兜山                       上兜山と下兜山

 
            ヤブも当然あるでよ               終盤はシャクナゲヤブ

 
        キバナツクバネウツギ                 1500時 物住頭に這い上がる

ここからは快適な尾根道で何の不安も無い。生命の活動は旺盛でこの立派な尾根道にも所々野草が生えて道を塞いでいる
場所もあった。特にトゲアザミが沢山咲き誇っており、美しい赤紫の花に気をとられているとチクリとやられる。

またモリイバラと思われる白い花も沢山咲いており、物住ノ頭を下りた岩場にはツガザクラが咲き残っていた。 ラッキー


  物住ノ頭から東側風景   前赤石とその左奥に権現山からエビラ山


 
      物住ノ頭  ここの標識もOK                       モリイバラ

 
     ツガザクラの咲き残り                    主稜線登山道もこの時期トゲアザミのヤブとなる

雲ヶ原について、北側を覗いて「立川銅山道筋」跡を探すが藪が深くて見つける事ができなかった。銅山峰の北側で銅の採掘を
していた立川銅山が何故鉱石を雲ヶ原を越えて上兜山の東側(上野山)まで運んで精錬を行っていたのか理解に苦しむ。(実は
そんなに苦しんではいないけど・・・)
とにかくこの辺りに道筋がある筈だし、上兜山方面から見ても道跡らしき筋が見て取れるのである。 まあ、もう藪の中に入って
いく気力もないし、今日の所は大人しく引き上げよう。


雲ヶ原より 串ヶ峰 (左の肩)と上兜山(中央のデベソ) これが物住ノ頭より北に延びた支尾根「大女の肩」である


15時45分 西赤石を通過。兜岩へ下り朝通った石ヶ山丈分岐を左に折れて上部鉄道へと下がる。数年前に買った皮の登山靴
がいまだに足に合わず、小指が痛い。がに股気味に歩いて唄を歌いながら退屈さを紛らわす。



西赤石山の山頂標識は冬の間行方不明になり、傷が付いて帰ってきた。(恐らく雪に埋もれていたんだろう)

 
     1600時 兜岩分岐を通過                       イワガサと西赤石


 
 1700時 一本松停車場跡通過                17時35分 東平駐車場 朝出発と同じだ〜〜れもいない

上部鉄道跡から一本松停車場跡経由、第三広場に17時22分帰り着いた。いつも思うがここから東平駐車場までが結構遠い。
朝と同じく人っ子一人居ない東平駐車場に17時35分帰り着いた。

お気に入りの山に山頂標識を立てて、ゴミにならない様にメンテナンスをする。このちょっとしたこだわりを持って今後も串ヶ峰と
関わって行きたいと思う。
今回の西谷川からの上兜山攻略ルートは使えるぞね



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