イノシシ達の二ッ岳攻略法  肉淵谷を這い上がれ
副題 ノの字の滝って一体どれ?


平成21年5月2日
肉淵谷橋ーしおじ滝ーののじ滝ー峨蔵大岩盤の滝ー新説ノの字滝ー
けやき平ー二ッ岳南東コルー二ッ岳ー二ッ岳南尾根ー肉淵谷橋 歩行約9時間



カシミールソフトを使った不完全なGPSトラックログ (肉淵谷遡行の前半はログが取れませんでした)
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである 

エントツ山掲示板で4月19日21時17分「深山牛」さんから肉淵谷川ーののじ滝に関する書き込みがあり、おいわさんから
いわゆる一つの疑問が提示された。「seisan no 滝めぐり」(「新居浜市のホームページ」とある)には違う滝がののじ滝とされ
その写真まであると言うのである。
これに加えて憧壁さんからもアドバイスを頂く。日本登山大系10巻にののぢ滝2段120mとあるらしい。 へ〜〜

伊藤玉男さんの「赤石の四季」にある「ノの字の滝」とおなじ物であろと思われるが、伊藤さんが言うこの滝の場所記述では
深山牛さんが行った「ののじ滝」と同一場所みたいなのである。

う〜〜ん 滝の事はようわからんけど、マーシーさんも二ッ岳攻略法として以前から南尾根よりのアプローチに少し興味を持って
いたので、石鎚水晶尾根山行を後回しにして急遽肉淵谷へ向かうことにした。

二ッ岳登山口に向かう峨蔵林道へ入り芋野集落から真っ直ぐ肉淵谷へ下りる。舗装が切れるカーブに「肉淵谷橋」があり、ここが
取り付き口となる。橋を渡った所から肉淵谷に向かって左側(右岸)へ入っていく作業道がある。近くにいたおじさんに「ののじ滝
へはここから行けますか?」と聞くと「え〜 ののじ滝? 知らんなあ  しおじ滝へはここから行けるが遠いぞよ。気いつけての」

この辺りは昔水田だったらしく平らな石垣が積まれている。直ぐに取水口施設があってしばらく植林の作業道を進む。
歩き始めて15分、08時45分「第一ののじ滝標識」があり、作業道は尚も右岸を延びているが、ここは標識に従い右側に(左岸)
沢を渡る。

 
   肉淵谷橋を渡った所が今回の登山口           直ぐに取水口施設があるy

 
肉淵谷川を右手に見ながら植林作業道を歩く         第一ののじ滝標識発見 08時45分

沢を渡ると植林地帯の急斜面沿いに踏み跡が続き、赤テープも所々に見られる。ルートが急斜面を這い上がっていく所を
見ると、どうもこの辺りの沢部は急勾配で遡行が難しいのだろう。

08時52分 「第二ののじ滝標識」を通過。さらに斜面を這い上がると 09時10分「第三ののじ滝標識」があった。
マーシーさんがその標識を検分して、左側に「じおじの滝」と彫られているのを発見。おう ここにしおじ滝があるのか。

急斜面の崖を安全な場所を探しながら下りてみると踏み跡もある。数段も続く連滝で最下部の滝壺付近に下りてみる。
岩伝いに沢を反対側(右岸)に渡り正面から滝を撮影後、又斜面を這い上がる。

 
      左岸に渡る                         何か 滝が相当ありそうな雰囲気じゃおまへんか

 
     左岸の植林地帯の踏み跡を辿る            第二ののじ滝標識発見  08時52分

 
  尚も植林帯の斜面を這い上がる                第三ののじ滝標識発見  09時10分

 
よく見ると「しおじの滝」とも彫られている              滝が見えた

 
      樋状の滝が続く                      最下部の右岸側から滝を見る

ほぼ登山道に這い上がった場所まで戻り、更に音がする上部の滝に向かってまた下り返す。こちらはちょっと崖があり
川床まで下りるのは厳しそうだ。マーシーさんは5m程の崖を知らぬ間に川床まで下りている。肉淵谷に入って最初の
見事な滝でこれが「しおじの滝」に間違いない。

09時40分また標識のある元の道に復帰、し更なる遠き道のりを二ッ岳へと向かう。
すぐに「第四ののじ滝標識」があり 09時48分 この先でルートは沢に下り立った。
           
  
   崖をスルスルと下りるメタボ猿                  水が澄んでいて気持ちがいい


これが「しおじの滝」だ  都合3段になっている

 
      第4ののじ滝標識                             沢に下りつく

「しおじの滝」上部に出て大きな岩がゴロゴロする沢を更に上方に向かって10分程進むと、正面右手に小さな沢があり本流は
どうも左へ折れている様だ。

そのコーナーを曲がると突然前方に次の立派な滝が現れた。お〜〜これが今物議をかもし出している「ののじの滝 or Not?」滝
じゃおまへんか。伊藤玉男さんの「赤石の四季」にある「右岸の道をなおも辿ると今度は谷が右折する。そこに20mほどの落差
の滝がある。ノの字の滝である」と書かれてあるものだろうか?。

谷が左折しているのでこれじゃないのかな? でも落差20mはピッタンコ。それに風格といいこの滝が無名である筈はない。
流水がノの字になっていないか探すが逆ノの字しかない。近くに第五これがののじ滝標識」を探すがどこにも見当たらない。
何と中途半端な標識だ事。 う〜〜ん 悩む所だ。(ホントはちっとも悩んでいないけど・・・)

峨蔵山系の澄んだ水が緑に溢れた大自然の中で飛沫を上げて岩盤を流れ落ちるその光景は人間様が付けた名前など無くても
いいのだ〜。

岩棚を更に上流部の滝に近づくと立派な滝壺がありその色の濃さがかなり深い事を物語ってとても神秘的なのだ。
「竜でも水の中から出てきそうやなあ」と言うとマーシーさんが「いや 万作おじさんが金の斧を持って出てきそう」と言う。

右手の草付きを伝ってこの滝の上部へ這い上がる。

  
   お〜〜  見事な滝があったぞ                 カタカナでノの字に見える場所を探すが見つからない


風格から言って俗称「ののじの滝」にしときましょう

 
滝の中段より左岸の草つきを慎重に滝の上部に這い上がる     絶景かな 涼しい水しぶきを上げてほとばり落ちる

仮称「ののじの滝」上部を10時10分頃出発。上流部は比較的なだらかな沢で遡行に問題はない。廻りの木々が風に
揺らぎ涼風が優しく二匹のイノシシを包む。 ブヒ〜〜 今日も来て良かった〜〜

10時15分第一ゴルジェが現れる。水に入らず強行突破は無理。 ここは左岸に逃げる。それを乗り越すと又脈々とした
大きなゴーロの川面が二ッ岳のどてっぱらに向かって突き進む。左手にはエビラ山から派生する岩盤が肉淵谷へ落ちて
いる。「これが海ならウミツバメの巣があるやろなあ」といいながらこの魔崖まがいの絶壁をしげしげと眺める。

 
    なだらかな沢がしばらく続く                  左手に大岩盤の崖岩が迫る

 
第一ゴルジェ  ここは右側(左岸)へ迂回            前方に二ッ岳の南稜線岩峰が見える



    新緑の肉淵谷川   延々と続くよ どこまでも

大岩だらけの川面を前方のルートを探しながら尚も進んでいるとマーシーさんが「お〜 これも一応滝やで〜」と言うので少し引き
返して左手を眺めると木々の間で気がつかなかった岩盤から水が落ちている。「清滝と水の量はどっこいどっこいやなあ」

更に上流に進むと、出た〜〜〜 10時40分 これが例の「物議かもしだし滝」もしくは「君の名は滝」 や〜〜 
くだんの伊藤玉男さんの「赤石の四季」にある「やがて谷が右へ折れるとすぐに廊下になる。その手前には本谷にもろに落ち込む
滝がある。水量の少ないのが欠点だが50m以上の乗壁は山系中第一級のものである」と記された滝である。

すなわち、おいわさんが信じている「seisan no 滝めぐり」に掲載されている「ののじ滝」であり、又これがとりもなおさず憧壁さんが
掲示板で引用された「日本登山大系10巻にののぢ滝2段120m」であろう。

高瀑(たかたる)の滝を彷彿とさせる落差ではあるが、滝としての風格や風情には少し難ありか? でも一応こんな場所でこんな
風景は感動する事は間違いない。

 
       第一峨蔵岩盤の滝  10時32分            むむっ   何かある雰囲気〜


                     第二峨蔵大岩盤の滝 10時40分


 
     珍しくシェーが決まったマーシー                  本家エントツ山流派のシェー


     峨蔵大岩盤の滝 これがおいわさんの紹介された 「seisan no 滝めぐり」にののじ滝として登場する滝

先の道のりが長いのであまり感傷に浸っている暇はない。特にシェ〜〜などしている余裕はないのだ。この辺りまで谷には
比較的水量が豊富で小滝も数多い。

10時50分「第二ゴルジェ」が現れ右側(左岸)を迂回する。この迂回ルートは中々沢には下りられず30分ほど谷の左岸に
沿って進む。この間、谷間の緑溢れる風景や前方の尾根筋を遠望しながら歩き11時26分再び沢部に復帰した。

すぐに第三ゴルジェが現れここは左側(右岸)側に迂回してクリアする。

 
   大岩盤の滝を見物の後沢歩き開始                   高度を少し稼ぐ

 
第二ゴルジェに突き当たる 10時50分                   左岸へ迂回


迂回ルートは沢を高巻きし、深い森や前方の二ッ岳岩尾根が眺望できる あ〜〜まだまだ歩くのね・・・

 
    11時26分 沢に復帰                      第三ゴルジェ  これは左側(右岸)を巻く

11時40分 右手に小さい支沢があり、その上部で更に本谷が二股に分かれている。右手の沢には樋状の滝が落ちており
丁度カタカナの「ノの字」になっている。シャ〜〜ン 我々はついに「ののじ滝」論争に決着を付けるべく元祖「ノの字の滝」を
ここに発見したのである。

この分岐は右手にある新説「ノの字の滝」を這い上がる。約20分ほど左岸の崖を這い上がるとなだらかな川床の沢に出た。
伊藤玉男さんの「赤石の四季」に「やがて上空が開けて川原状となる。この辺りをケヤキ平と言って昔は炭焼きが沢山
入っていたらしい」とある「けやき平」に1200時到着した。


 
     まだ水量が比較的豊か                      新説「ノの字滝」発見


   沢がここで二股に分かれる   右側 新説「ノの字滝」ルートを取る


     丁度12時頃  なだらかな「けやき平」に出る  登山口から約3時間半の場所

大きな岩がゴロゴロ転がり廻りの広葉樹が並木道の様に続くケヤキ平は約30分続く。ミツバツツジのピンクが緑一色
の山肌にアクセントを付ける。こういう石がゴロゴロした場所を「ゴーロ」と呼ぶようだ。

二ッ岳の懐に近づくに従い肉淵谷が次第に競りあがってくる。高度が増すと潅木が低くなり赤茶けた土砂が地表に現れる。
この中にキラキラ太陽に輝く雲母石が沢山見られた。峨蔵山系は鉱物学者垂涎の研究室でもあるのだ。

12時55分 最後の難所を恐る恐るクリアして尚も天へのゴロゴロ石段を這い上がっていく。ストックを使えない山行なので
さすが太ももの筋肉が張ってくる。少し休みながらマーシーさんと眼下に広がる肉淵谷を眺めたり、上空になおも聳え続ける
二ッ岳の岩峰を見上げたりする。「あとどれ位かかるやろか?」 沈黙が二人を包む。ウグイスがキョッ キョッ ケキョと啼いた

 
       ケヤキ平風景                       ケヤキ平も次第に傾斜が現れる    

 
     12時55分最後の難所を越える   あ〜怖              四足歩行が得意なサル人間

 
      赤茶けた土が現れる                   キラキラ太陽に反射する雲母系の石が多い   

13時頃から一層傾斜がきつくなり、浮き石が多く崩れやすい岩場となる。落石に注意しながら二人の距離を取って四足で
這い上がっていく。稜線が近づくと露出した岩が少なくなり潅木地帯となる。前面の岩ピークを見るに、この涸沢は二ッ岳の
南東にある岩尾根に向かっている様だ。

二ッ岳直下のコルに出る為マーシーさんと左にコースを振る。潅木地帯から笹が出て来て、最後はスペース豊かな緩やかな
自然林となり、1400時 やっと二ッ岳南東コルに這い上がった。

何と肉淵谷橋を出発してから実に5時間半かかってようやくこのコルに到着した訳だ。

 
 うへ〜  これじゃまるで境内の石段じゃないのさ〜         ちょっと一休み  よう歩いたなあ    

 
 
     二ッ岳の岩山が近づいた                  エビラ山とその南稜線が見える


 
       笹を漕いで左手に迂回する                二ッ岳南東コル  1400時

コルに着くとマーシーさんが「山頂へは行かずもうこの稜線を下りましょうよ?」とのたまわく。「何言ってんの 私はピークハンター
やからここまでやってきて二ッ岳の山頂を踏まずして何としょう!」としぶしぶ顔のマーシーさんを二ッ岳山頂にブヒブヒと追い立てる。

コルから山頂までどの位かかるか見当が付かなかったが、まあ今までの苦労に比べたらさしたる事はなかろうて。急斜面を
最後の老人力を振り絞って這い上がる。 アレ? リップさんが掲示板に貼ってくれたステルス岩があるぞ。 ちゅう事はすなわち
登山道が近い! 元気を出して登山道に辿り着き14時15分 二ッ岳山頂に到着する。わ〜〜い まともな登山道を5分歩けたぞ

 
「オラ もう動かん!」「そんな事言うともうエサやんないぞ!」   お〜〜 リップさんの言ってたステルス岩やんけ〜 

 
  登山道は人が多く歩くから根が飛び出している          飯や めしや 人生メシやで〜〜

山頂の南側展望所には5人くらいの中高年男性登山者が食事をしていた。こちらは山頂の木陰で二人共防虫ネットを被って
遅い昼食を取る。魔法瓶のお湯でパン入りのシチューみたいなものとコーヒーを作る。マーシーさんはカップ麺専門だ。

先客が山頂を後にしたので南側の展望所から眼下に広がる、這い上がってきた肉淵谷を眺めやる。上から見ると大した事
ないんやけどなあ・・・


 二ッ岳南展望所から見下ろす肉淵谷  下山に使った尾根は左に見える尾根のもう一つ東側(左)の尾根


中央奥はチチ山 その次のドームは東赤石 手前の台形がエビラ山 その右に黒岳 その右奥に上兜と串ヶ峰

さて、肉淵谷を遡行して来た達成感からもう下山はどうでもええ感じになちゃった。でもさすがここで寝る訳にもいかず、
14時50分二ッ岳山頂を出発。 登山道を2分歩いただけでもう道を外れるこの辛さ。

例のステルス岩手前の崖みたいな斜面を先程のコルまで下りる。

このシャクナゲの生い茂るピークを乗り越し急な藪斜面に突入。冷静に考えるとこんなルートが我々が最も得意とする所
なのね。 岩場と違ってロープワークや道具など不要でひたすら木を掴みながらイージーに落下していく。

総じて藪尾根には違いないが「笹とブナ」絶妙コンビもそこには存在するし、気を抜けばとんでもない支尾根に導かれてしまう。
今回は要所でGPSの東経北緯を見て地図で位置確認を行う。
これは衛星を3個以上補足出来ない沢部では通用しない場合がある事を考えると、稜線歩きが一番安全って事だ。

 
      二ッ岳南東の岩ピーク                       笹藪を降下していく



      これじゃよ  藪歩きが求める一番コマシな風景は !  名コンビ・笹とブナ

 
 やっぱり俺たち藪こぎかよ〜〜  正面のピークに向かう     そろそろ散髪せにゃあかんなあ

 
 美しいクチビル   アケボノツツジ様〜〜                天下の藪山「ハネヅル山」が見える

二ッ岳を出発してから第一のターニングポイントで南西に延びる尾根に乗らない様に気をつけなければならない。これに
乗ってしまうと肉淵谷へとまた追い返されるのだ。 (まあ 途中から南側の支尾根に乗り継げば出発点に帰れるのだが)

ここをうまく切り抜けると第2ターニングポイント 1,359m ピークを過ぎて次のピークを南南西に少し振らなければならない。
真っ直ぐ尾根を突き進むと峨蔵林道の上部に下りてしまい、長い舗装道路歩きが強いられる。

1時間位はシャクナゲの細尾根や笹薮の典型的な四国のやぶ尾根風景が続く。その後、尾根風景は一変して橄欖岩
地帯となる。赤石橄欖岩は兜岩で出現し、次に前赤石から八巻山、東赤石、権現越まで続いているがそれ以東はあまり
見かけない。こんな所にマグマが橄欖岩を貫入させていたのか。

白い模様のコケが生えた橄欖岩に五葉松・・・ まるで前赤石を歩いている様な錯覚を覚える。
この岩峰を更に下りると尾根が急に優しくなり16時30分頃から幸か不幸かとても歩きやすく変貌する。

 
        アケボノツツジ                        橄欖岩の岩尾根地帯


 
    (赤石)橄欖岩地帯が続く                  うんうん このルートでいいのかな? 今のとこ〜

終点が近づくと尾根道は益々平凡かつ平和な様相となり、境界杭や境界調査の為人間が入ったような匂いがする。
やがて植林と自然林が混在し、立派な赤松が生えていたりする。二人はどんどんピッチを上げて17時15分舗装された
林道に下り立った。約2時間半で下山した計算になる。この林道を10分くらい下がると出発点の肉淵谷橋に帰り着いた。

 
       天国まで下り立った(普通昇るんだけど)           新緑が美しい


  
          立派な赤松がある尾根

 
わ〜〜い  林道におりたぞ    17時15分          出発点の肉淵谷橋まで帰り着く

我が掲示板仲間の深山牛さんが何げなく紹介してくれた肉淵谷の滝写真が、おいわさん、憧壁さんを巻き込み、「ののじ滝」
がちょっと気になる存在になりました。

「百聞は一見にしかず」の故事に習い実地検分をして参りましたが、出かけた二人が結構いい加減な性格の為、
新説「ノの字滝」を発見してしまい結局真相はわからず仕舞いになりました。

皆様のお陰でこの二ッ岳南尾根界隈の奥深さを知ることとなり大変意義深いものとなりました。
この登山記をマーシー・エントツ山から深山牛さん、おいわさん、憧壁さんに捧げます。
ありがとうございました

    
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