平成20年4月20日 コマドリ尾根を這い上がれ  壮絶なる笹薮との戦い

瀬場ーコマドリ尾根ー駒鳥山ー石室越ー前赤石ー石室越ー駒鳥山ー南尾根ー日浦谷


何ってたって藪〜 ♪ 何てたって藪〜 ♪  コマドリ尾根を這い上がれ
登山道を歩かずに前赤石にいっちゃった


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ

瀬場登山口(0800h)−1200.9m三角点(0920h)−1,398.7m三角点(1040h)−コマドリ山(12:40h)
石室越(1250h)−前赤石山(1320h)−コマドリ山(1410h)−南尾根ー林道(1635h)−造林小屋(1710h)
日浦谷車(1720h)−瀬場自転車回収(1740h)

駒鳥山(こまどり山)って知ってますか? こまどり姉妹なら知ってる・・・ う〜〜ん 惜しい!

赤石山系の主峰「東赤石山」と四国一の岩峰「八巻山」の西側に石室越からカーテンの様に張り出し、この2つの名峰
を隔している邪魔な尾根があります。 これがコマドリ尾根と呼ばれて、そのピークがコマドリ山というらしいのです。

安森 滋さんの「四国赤石山系物語」の表紙裏地図で初めて知りました。(安森さんは現在赤石山荘の管理人をされて
います。)

                  
                   安森 滋さんの力作  四国赤石山系物語


              前赤石から石室越方面  正面のピークがコマドリ山

以前、土居側の鏡沢(雲ノ平)から雲原越(物住ノ頭と前赤石山の中間点)に這い上がり、この駒鳥山を訪れた時
雰囲気の良い尾根があった。(実はこの尾根はコマドリ尾根ではなく東側の支尾根だったのだけれども・・)
是非ともこの尾根を歩こうとその時マーシーさんと誓っていた。

瀬場登山口でマーシーさんを下ろし、下山するであろう日浦谷付近に車をデポして自転車にて又瀬場まで帰る。
マーシーさんの同級生が何やら板みたいな物を背負っている。聞くと赤石山荘の修理ボランティアだという。つい
先ほどまで安森さんが山から下りて来て瀬場に居たと聞く。 逢えなくて残念!

8時にこのボッカ(歩荷)隊2名と一緒に筏津登山道の合流地点まで10分位歩く。マーシーさんに「ここから尾根へ
取り付きますかいねえ」と言って登山道を横切りテキトーに上を目指す。

   
マーシーさんの友達 ボッカさん              瀬場登山口

  
ボッカも東赤石山荘まで大変だねえ           登山道を横ぎり尾根へ向かう

植林地帯なのでスペースがあり道がなくても問題はない。 竹やぶの中に廃屋がありつい最近まで人が住んでいた
匂いが残っている。裏手の植林地帯の急斜面をテキトーに登っていく。尾根に着く前に踏み跡がありなるべくそれに
沿ってあるく。

尾根に出てもさらにしっかりとした作業道が続くが稜線を外すので急斜面の伐採地を這い上がる。するとなだらかな
大地の様な場所があり確かな踏み跡沿いに西へと進む。
二人で手分けしてこの辺りにあるであろう三角点を散会して歩く。この細長い台地が終わり次の急斜面が始まろうと
する場所に1,200.9m三角点があった。

「こりゃ楽勝やなあ」「こんなんでええんかなあ」と二人で話し合っていると、それを聞いた山ノ神が怒って急に藪道が
現れた。でもまあこんなもんやろとやっと現れた笹薮に納得する。


  
竹やぶの近くに廃屋があった               スペースがおまんにゃがな  楽勝〜

  
    1,200.9mの三角点              植林地帯が消えると笹薮が現れた

進路を北に振って傾斜が更にきつくなり、笹を掴みながら這い上がるとまたちょっとなだらかな丘に到着。尾根沿い
に進んでいるとコンバスが東を指している。 「ありゃ マーシーさん こりゃ登山道へおりるぜよ」と元に少し引き返し
また北に向かう。

なだらかな場所では進路を見失いやすく、支尾根に迷い込まないように気をつけなければいけない。

北に向かって岩が転がった中々の細尾根が続きそれを外さず更に登って行くと10時40分ルート上に1,398.7m
の三角点があった。

それからの笹薮たるやもう筆舌を尽くせず・・・・ まさに藪山ノ神に呪われた二人のイノシシだった。 今年、遅くまで残った
雪の重みで背丈の倍ほどある全ての笹がこちらに倒れているのだ。 両腕で掻き分けながら進むのだが尋常な圧力では
なかった。 それに登り坂と来ている。 「甘かったなあ〜」「まあ これが相場でしょう」 

覚悟の上とは言え壮絶な笹藪との戦いだった。

  
   藪の尾根歩きが楽しい                げっ  笹がエライ深くなってきたぞ

  
1,398.7mの三角点発見〜               もうカンベンしてよ 藪子〜

  
    シャクナゲの岩尾根                大岩をすり抜けるマーシー


         天然檜越しに歩いてきた尾根が見える


  
ふむふむ ここがこれで・・・結局藪か・・・          ぎょへ〜   許して! 藪子〜

逃げても逃げても追っかけてくる藪との戦いもコマドリ尾根が南尾根と合流する手前あたりから少し展望が良くなった。
相変わらず肩口まである笹薮ごしに歩いてきた稜線が見えてきた。 遠めには何て事なさそうな平和な尾根なんだけど
なあ・・・

東側にある支尾根で邪魔されてきた東赤石、八巻山が望まれると何とはなしにゴールが近いという喜びが湧いてきた。
でもその前に最後のとんでもない急激な笹薮坂を喘がなければならないのだ・・・

上から藪から棒に「着きました〜」とマーシーさんの声。 登山口から4時間40分 その内 3時間は藪との死闘だった。


                      笹の海に浸かるマーシー

  
おっ 東赤石のトンガリと八巻山が現れた         笹とブナ、モミ 景色はいいんだけど歩くのに難あり

  
    なんとも地味〜なコマドリ尾根            尾根にはまだ雪が残っている

12時40分 ついに 駒鳥山、 こまどり山、 コマドリ山 (どんな字で書いても何ともいい名前だ事)に着いた。
美しい名なのにこの地味さは何だ? 人間にもそう言えば完全に名前負けした運命を一生背負った人もいる。

マーシーさんに「この山で帰るのはいかにも達成感がない。 せめて前赤石の山頂でも踏もうや」と石室越に向かう。
こんな季節なのに尾根には雪が残っていた。

この尾根にはブナがあるが、赤石山系にはブナが極端に少ない。ブナは大量の水を吸うから赤石橄欖岩の土質では
ほとんど見受けられない。



  八巻山から東赤石    折角の展望所なんだけどはっきり言っても樹が邪魔!


          邪魔と言われても困るコマドリ尾根最後のブナ林 

石室越から登山道を少し西に下がりガレ場から前赤石の岩峰に取り付く。以前はトラバース道でも結構刺激的だったのに・・・ 
前赤石山は西側(物住ノ頭方面)から稜線を辿るのが面白いが、この東側からはちょっと藪っぽい。

13時20分気持ちの良い前赤石山頂で風に吹かれながら初めて休憩らしい時間をとり貧しいランチタイムとする。相変わらずこの
辺りはすぐに霧が北側から吹き上がってくる。

東側の眺めは例の石室越からコマドリ尾根のカーテンでさっぱり。 南側眼下には日浦谷が見え「ここから日浦谷へ直接降りて
みない?」という私の提案はマーシーさんによって即却下。確かに遠めにはイージーに見えるがいざ下ってみると現実は至って
厳しいものだ。

計画通りコマドリ山から南側に伸びる別な尾根を下る事にする。

 
         石室越                         石室越から前赤石
  
        前赤石に向かう                 赤石橄欖岩の最後の山 (兜岩は除く)



                        前赤石山にて マーシーさん


                   前赤石山にてシェーのポーズ

元来た道を石室越へと引き返す。ガスの切れ目に北側の下兜山からかけさこの尾、 その東手にはちょっと離れた赤星山
が見渡せる事が出来た。

石室越から直角に右折してコマドリ山へ向かう。14時10分コマドリ山へ帰り、西側の展望所(っても岩の上に無理にせり出す)
から銅山峰方面を眺めやる。 ほとんど歩いた場所なのでなお一層の親しみが湧く景色だ。

一方 高知県側の県境尾根は線を繋いで歩いたのは平家平から三ッ森峠まで。山の形から確固たる同定が出来ない。

  
      下兜山と新居浜(左)                 どっしり構えた赤星山が遠望できる

  
  コマドリ山のピーク (奥の小高い場所)         再び地味〜なコマドリ山

  


コマドリ山から西赤石(中央) 、右端が物住ノ頭   奥が沓掛山と黒森山

  
   駒鳥山から前赤石山  左奥が物住ノ頭        イヤ〜〜ン 又 藪へ帰るのね

駒鳥山から先ほど喘いで這い上がって来た右手の急な傾斜へ向かう。左手にある美しい尾根は単なる支尾根なのだ。
分岐点のシャクナゲ尾根まで下り、慎重にコースをチェック。どちらを向いても笹薮なのでコース取りは重要で、GPSの
東経北緯と印刷した2万5千分の1地図で照らし合わせる。

この面倒な作業を怠るととんでもない珍道中へと誘われる結果となる。「藪っても下りだから楽勝よ」 この楽天的な発想は
その後見事に裏切られる事になった。

一応尾根に沿って下りるのだが、ちょっとした角度の違いから二人の姿がお互いに確認出来なくなる。合流しようにも強力
な笹薮とクロズル、イバラの妨害があって中々逢えない二人・・・。

コマドリ山から約2時間この二人の藪との格闘が続いた。笹の先の動きで二人の位置確認をしながら尾根に沿って南南西
へ下っていくとやっと笹が少なくなり天国の様な岩尾根となる。時折 GPSと地図で位置確認をしながら自信を持ってルート
を更に下ると16時35分いきなり林道へ下り立った。


                 コマドリ尾根から東赤石山

  
げっ  登りよりひどい笹薮・・・                   平家平 − 冠山 − チチ山

  
    一応景色も押さえるマーシーさん             藪の中のオベリスク

  
    どっちへ行くか木の上から偵察します         藪でも尾根を歩けば安全やで〜

  
やっとこさ 足元がすっきりしてきたぞ            日浦谷から谷を横切って伸びている林道

さて、ここからどうするか。あたりを見回すと右手に支尾根が下がっている。「これに沿って降りようや」と私が言い、崖の
様に急な傾斜を下る。しばらくするとマーシーさんが作業道の様な踏み跡を発見。 ちょっと遠回りの方向へ道は続いて
いるが「これを使いましょう」というマーシーさんの提案で左へ振って歩く。

やがて更にしっかりした踏み跡となりジグザクに下に向かい出した。薄暗い森のなかでヤマツツジが一際鮮やかなピンク色で
殺風景な植林と自然林が混在する場所に彩りを添える。

沢の音が聞こえてくる。そこに廃屋がありもう長らく使っていない様子で風呂場などが外から見える。今朝、瀬場からの歩き
始めで見た廃屋といい、この小屋といい確実に日本の生活様式が山から便利な里中心の社会に変わっている。小屋の横手
には綺麗な水が流れる沢がありこの水を利用して煮炊きをしたり風呂に入っていたんだなあ。

更に広くなった道を下ると舗装道路が見え別子山の県道へ下り付いた。

  
     更に急な尾根を下る                  ヤマツツジの彩りが嬉しい

  
           作業道                      使用されていない小屋

  
   お風呂の跡                             滑になっている沢

県道へ下り付いた場所が良くわからなかったが、日浦谷の手前だったので西赤石登山口方面の右手へと歩く。銅山川に
沿って綺麗な道を歩いていると、今日一日の藪歩きがまるで夢の出来事の様な気がしてきた


  
  やっと別子山の県道に下り立つ               車をデポした日浦谷付近

  
  ブリジストンの折り畳み自転車お回収          法皇トンネルを越えると夕日がきれいだった

日浦谷近くの曲がり角奥の広場へ駐車していた車に帰り、自転車を置いていた瀬場に引き返す。結構高かったブリジストン
の折り畳み自転車を後部座席に収納して三島へ出る。 法皇トンネルを越えると瀬戸内海に夕日が沈んでいくの藪歩きの
後だけにがやけに美しく見えた。

念願のコマドリ尾根を無事に這い上がって下りた事で、又 故郷の山歩きに新たな一歩を刻む事が出来て大変満足だった。
付き合ってくれたマーシーさんに感謝

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