平成19年12月16日  イノシシ達の忘年会 黒岳にて
河又ー大窓ー保土野越ー黒岳ー権現山ー鉄塔巡回路ー河又

平成19年12月16日 河又ー大窓ー保土野越ー黒岳ー権現山ー
鉄塔巡回路ー河又


カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図
(国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
河又0730h−大窓0930h−保土野越1200h−忘年会1210−1300h
黒岳1330h−権現山1455h−鉄塔1510h−大森越1625h−河又1720h

紫雲さんから「今年も静かで雰囲気の良い山で忘年会登山しましょうや〜」との申し出があった。場所はお任せとおっしゃる。 
ずる〜 そんなの富士山に登るより難問じゃないの〜

兎に角マーシーさんに相談。人生や金の相談はアテにならんヤツだが、ヤブ山歩きだけに関しては頼りになる。4ルートの
提案があり、その中に河又―大窓―黒岳―権現越が目に付いた。「これしか無い!」と勝手に決める。大丈夫かいなあ・・・


黒岳 標高1,635.9m 二ッ岳ー権現山の縦走路にある中継地点の山だ

この黒岳を北側から直登るルートは泉保さんと盟友坂上さんが積雪時に相当苦労した玄人好みの匂いがするアプローチで実は
ここを歩く事を以前から密かに楽しみにしていた。

去年クリスマス会登山をした紫雲さん、マーシー、ランボルギーニ、それに今回は紫雲さんが高知の「与力」さん、私が新居浜の
「ペーコ」さんをそれぞれ誘う。二人とも四国のヤブ歩きピン芸人として一目置かれた存在だ。

朝7時少し前に土居から新居浜への入り口「関ノ戸」峠手前、東赤石登山口の標識を南に入ったあたりで待ち合わせる。ここから
ペーコさんと与力さんの車2台に分乗して関川の上流沿って谷合を入っていく。

 
   駐車地点                  いきなり急坂の作業道に取り付く

柾木の滝から尾根に這い上がる方が若干時間短縮らしいが、我がイノシシ同盟は滝など風流に眺めずに尾根を直接詰める主義
を押し通す。マーシーさんの先導で最初は作業道に沿って急な傾斜を這い上がる。しばらくして一見とんでもない尾根に取り付いて
いく。まあ この辺りはコマンチ・マーシーにお任せだ。暫くすると先ほどの作業道と交差するが、お構い無しに尾根を進む。尾根筋
にそって作業道も見え隠れしている。

登山口から一時間程急坂を登ると林道が尾根を交差していた。こういう光景はわかっていてもガックリくる。今までの苦しいヤブ尾根
歩きが何だったのよ〜?って

 

一旦広い林道へ飛び降りて、又前面の尾根に取り付く。この広い林道は地図にも記載されていて、熊鷹山近辺の植林伐採の
作業道だったのだろうか
さてそこからの急坂ときたらもう呆れるほどだった。それも植林地帯だからいつまでたっても同じ様な景色で気晴らしにもなりゃしない。

マーシーとランボルが喘ぐ同行者を尻目にお構い無しに先を進む。ガイドとかホストとかには完全に失格な奴らじゃ。与力さんは
ピッタリと二人をマークして、盛んに「もうすぐ平らな場所に出ますよ」とか励ましてくれる。ん? いい人にかわらん

 
 雪が現れた第二林道交差付近         又道を外れて登るのね

紫雲さんとペーコさんは普段のポーカーフェイス顔が、この非常識とも思える薄暗い植林の急登のなかで一層ニヒルになり不機嫌に
さえ見えてる。まあこんな場所でニコニコしていたら気持ちが悪いけど・・・

 
この傾斜を見てください もう崖ですわ    第一目標の尾根部に着く

目を回すような急登を乗り切ると、出発して丁度2時間で熊鷹山と黒岳を結ぶ稜線に出た。久々に平らな大地にお目にかかり、一つの
山場を越えた喜びを分かち合う。ここからピークを左に少しトラバースして下り切ったところが「大窓」らしい


 大窓へ到着  キツかったなあ・・・ (でも この後 更なる地獄絵図が・・・)

さてここから先を見ると雪を被った笹の急坂が眼前に迫る。うへ〜 マーシーさんに拾った棒を渡すと扇風機の様にブンブン
回して雪を落としながら歩く。このイノシシ扇風機付きラッセル車が先頭を行き、ランボル・与力の精鋭が後に続く。先導部隊
が雪を落として暖かい色になった笹の急坂をゆっくりとB班が追っていく。

行き先も告げずにこの忘年会に誘ってしまったペーコさんに加害者の様な気持ちになる。スンマセン ここまで延々と急坂が
続くとは・・・(実は予想しておりました〜)

 
   雪掻きラッセル車が進む         細尾根も出現


それまでの植林地帯から岩と自然林が現れて救われる景色に


でも今までの殺風景な植林坂地獄と違い、大岩や細尾根、ブナが次々と現れ頭上の霧氷とあいまって内なる苦しみの中にも
外なる楽しみが見出せるのが救いだった。

 
  登って  登って 又 登る      ペーコちゃん ゴメンね こんな場所に誘って

 
  霧氷の景色に救われる          ペーコ 紫雲 与力の雄姿

   
    ブナはどんな季節も美しいが 冬は尚更忍耐の美を感じる

こんな雪の日に水や鍋、カニなどを背負って黒岳でラーメン忘年会をしようなどとふとどきなイノシシ人間に、黒岳北尾根は
容赦せず次々と急登や細尾根を繰り出してくる。誰や〜 こんな所で忘年会をしようなどと言った奴は!!

 
シャクナゲの細尾根も現れる        根っこが風で倒されて洞になっている

 
   最後の急登 キュートや           さあ 縦走路は近いよ

上の方から与力さんの「少し傾斜が緩やかになりましたから縦走路が近いですよ〜」と天使の声が結晶となって降ってくる。
待て〜! 最後の縦走路合流点「保土野越」を踏むのは最も苦しんだB班の権利だ〜と主張してユンケル系イノシシ達を
足踏みさせる。

それでもそこから5分位はなだらかな傾斜を進み、1200時に「保土野越」に着いた。丁度登山口から予想通りの4時間半
だった。 四国であちこちの急登を経験してきたが、今日の標高差1,300mの格闘は記憶と記録に残るものだった。 
嗚呼 もう登りはほぼないのね〜 バンザ〜〜イ


           保土野越に到着〜

恐るべき北尾根との格闘を終えて全員ホッとすると同時に空腹感が襲ってきた。数年ぶりの保土野越だったが冬と夏では
景色が違ってピンと来ない。ここから黒岳はもうすぐ近くだ。ブッシュが霧氷の林と化して冷たく降りかかる。それまでヘロヘロ
だった全員が生き返ったような足取りで霧氷の美しい光景を楽しむ。

さて、尾根筋は雪と笹が多いので、ささやかな「イノシシ達の忘年会」ラーメン会場を黒岳直下のガレ場に決め、冷たい北風
を避けた南側斜面を少し下がる。先ほどからガスがかかって周りの展望は無い。でも山男達の忘年会場としてはお似合い
の場所だった。

 
ガレ場の南斜面で荷物を下ろす       東側は黒岳への崖となっている

ランボルのザックに途中から入れて貰ったワインの小瓶を紙コップに注いで今日の健闘を称えあう。儀式なんだから形だけ
で良かったのだが、マーシーさんは不満らしく「もっと大きなワインかと期待していました」と物足らない様子

 
まずは ワインでイノシシ仲間の友情に乾杯〜  余興にランボルのファイヤ〜〜

次にザックを引っくり返してバーナー、鍋、水、ラーメン、具を出しあう。水を1.5リットル余分に持ってくる様に申し合わせて
いたが、ちょっと多すぎた様だ。ランボルが例のとぼけた様子で「あれ?バーナーの調子が悪げなねや」とブツブツ念仏を唱え
ながらいきなり炎を噴き上げた。この見事な大道芸に逃げ惑う者あり、拍手喝采する者あり。

さてもお次の手品師は山ノ神だった。
あたりが少し明るくなったと思いきやす〜〜と霧の中から谷が現れその向こうに権現山が姿を見せた。この立体感のある風景
の出現に先ほどランボルの手品には評価が分かれたが、この大自然の手品には一同感動の嵐。 ラーメンの事などそっちのけ
で現れた青空の中に映る霧氷や山並みをデジカメで捉える。

 
     青空が現れた            やはり霧氷は青空に映える

くだんのラーメンはというと、私が持ってきたキャベツとカニのぶつ切りを鍋に放りこむ。次に北海道産のコーンを・・・・ あれ、
缶を開けるとどろどろで粒がない? 散々迷って買ってきたコーンはクリームコーンだった。それにひるまずあっけに取られる
常識人の目の前で二つの鍋に臆せずぶち込む。6人分としては充分ではなかったが寒い稜線で心が温まるに充分だった。

 
ラーメン 一人1個は鍋に入らなかった   谷の向こうに権現山が現れてきた

1300時、少しの晴れ間を利用してザックをデポしたまま黒岳山頂へ行く事に。手前のガレ場にある柘榴石(ざくろいし)を
見ながら「こりゃ指輪には無理じゃなあ」と諦めて斜面を這い上がる。振り返ると日本石の向こうに権現山が見え、その又
向こうに赤石山系が衝立のように並んでいる。


        霧氷の彼方に我が故郷が見えた


  ザックを置いたまま身軽に黒岳へと最後の登りを開始

 
柘榴(ざくろ)石 宝石にはちょっとね・・        黒岳直下

山頂に上がると、東側にはエビラ山、二ツ岳が稜線を連ねて、その左手に赤星山がやや低い位置に見える。 絶景かな
私の合図に生真面目でシャイなイノシシ達が催眠術にかかったようにポーズを取ってくれる。普段は各々の感性で山を歩き、
たまに意気がピッタリでユニットを組む いい事じゃなあ


どうじゃ 今年の忘年会 良かったじゃろ?  (結果論ですが・・・)


        黒岳山頂より 東側の風景



       黒岳山頂より 西側の風景

 
このシェーはちょっとビビッた(後ろは崖)      ガレ場を下る

13時40分黒岳を下りる。忘年会場へガレ場を下りて帰りザックを取り権現山へ向けて出発。山ノ神からのプレゼントも
期限付きだったらしく先ほどの青空はほぼ終わりを告げた。権現山まで幾度も黒岳とエビラ山を振り返りながら霧氷の尾根
を進む。


南斜面寄りになると霧氷が解けて笹が乾いている    黒岳を撮る

  
     さらば 黒岳 ありがとうよ


       二本石=日本石の岩峰

 
     縦走尾根を進む             霧氷を見上げる

 
     黒岳が遠ざかる            権現山への笹縦走路

そこからの縦走路には5m置きに白い紐やテープが残置されており、うんざりしながら14時55分権現山に着く。

   
        権現山での元気な姿 (写真を撮るときだけ)

夏にクロズルに覆われていた鉄塔までのヤブ道は綺麗に刈り払われて複雑な気持ちになる。往年の四国で指折りの
峨蔵山難路縦走路もただの散歩道か・・・感傷に浸っていると鉄塔に到着。
下山に使わせてもらうのは四国電力本川幹線で非常に整備された巡視路が尾根沿いを北に下がっている


     疲れた足よ あれが権現山の鉄塔だ  (後ろに赤石山系)


最後に名残惜しく 黒岳、エビラ山、権現山を振り返る仲間達

 
    鉄塔                      鉄塔から直接下る

マーシーが「時間が早いから赤石越から下山しましょうか」と言い出した。5対1で即却下。15時10分 快適な鉄塔ルー
トを下山する。夕方にむけての下山道はこうでなくちゃ
逃げ足の速いイノシシは大股で脱兎(?)脱猪のごとく大森越に向かう。前半は自然林で朝の地獄の行進を思い浮かべ
ながら今ある平和を皆で謳歌する。

 
    快適な鉄塔巡視路を下山       第二鉄塔の向こうに上兜山が見える

16時25分大森越通過。柾木の滝へ下りるか相談するも暗い滝見物は意味がなかろうとそのまま尾根を進む事に。薄暗い
植林地帯をジグザグに下りて1700時丁度柾木の滝分岐近くの林道に下り付く。

 
東赤石への分岐標識             日本石と権現山  傾山に似ている

 
      大森越              熊鷹山と大窓の稜線が東側に見える


下りて来た権現越から河又への四国電力本川幹線 (鉄塔が並んでいる)

分岐点から振り返ると稜線が暮れなずむ夜空にくっきりとシルエットを刻んでいた。車に到着する直前、皆でマーシーさんが
使いたがっていたブラックダイヤモンドのヘッドランプを無理やり出せて道路を照らさせる。なるほど性能は良いようだ

   

ヘッドランプの先にはデポしたままの2台の車と同時に、今朝出発した時の6匹のイノシシ達の姿も映し出されている様に思えた。


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