平成19年5月13日 我が故郷の山 2007 三部作 故郷の山 第2部 東平ー兜岩(西赤石)
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図
(国土地理院 25000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
東平ー一本松ー上部鉄道跡ー兜岩ー石ヶ山丈ー魔戸の滝分岐ー一本松ー東平
山歩きの大きな楽しみの一つが大自然の風景。そこに一面に咲き誇る花があれば何て幸せな事だろう。この幸せを味わう
為五月連休明けに西赤石アケボノツツジ展望所「兜岩」に出かけた。さて今年はどんな出会いが待っているだろうか?
早朝、東平に着き手早く準備を済ませて山を見上げる。予想どうり例年の色づきは無いものの少しはピンクっぽい。
今日は石ヶ山丈から藪尾根を兜岩まで歩く事に決め出発。
東平(とうなる)から見た西赤石・兜岩
アイちゃんに会った!!
出発した途端、忘れ物をしたのか男性が駐車場へ向かって小走りに帰っていった。第三広場手前の遊歩道で前から女性
が又上から帰ってきた。「エントツ山さん?」「はい」「アイちゃんです」「え〜〜!!」
我がサイトの貴重な訪問者「アイちゃん」に会った〜 (兜岩にて記念写真)
私は写真では若く見えるのだが実物は結構歳相応に老けている。このしっかりした顔立ちの美人さんにまじまじと見つめ
られて思わずうつむいてしまった。やがて先ほどの男性が引き返してきて「やっぱり居ませんわ」とアイちゃんに告げる。
どうも連れの男性が一行からはぐれた様だ。第三広場の奥には登山道の分岐があって、通常は第三通洞左手を回り込
み沢沿いを銅山峰ヒュッテ経由、銅山越に進む。広場の左手にはレンガ造りの発電所跡があり、この近くに遠登志(おとし)
=鹿森ダムへ下がっていく道と上部鉄道へ続く道の標識がある。
本隊はメインルートへ進み、はぐれ雲は上部鉄道―兜岩ルートへ入った様だ。私は上部鉄道ルートなので二人を案内
する事になった。東平から上部鉄道へは道は急だが昔の生活道でもあり途中社宅跡などがあるしっかりしたルートなの
で問題はない。
一本松停車場という標識がある上部ルートに上がり先行する数人の登山者にはぐれ雲が通らなかったか聞くが会わ
なかったという。しばらくするとアイちゃんとKさんが追いついてきたので一緒に上部鉄道跡を歩く。ここは明治26年から
18年間銅山峰ヒュッテがある角石原から石ヶ山丈まで蒸気機関車が走っていた鉄道路だけあって広い。問題は鉄橋
部が無くいかにも古そうな丸太の橋がかけられていたり、到底通れない形だけの朽ちた木橋が架かっていたりする。
まあそういう所はちゃんと迂回する場所もあり危険という事もない。
東平ー上部鉄道跡の一本松分岐 上部鉄道跡の橋をわたるアイちゃん
しばらくこの上部鉄道跡を歩くと兜岩への分岐標識に出くわし、そこから直接支尾根伝いに兜岩に至る。ほとんどが植林
地帯で見晴らしがあまり良くないが皮肉な事に崩壊した場所から東山―西赤石に伸びる山塊を見渡す事が出来て、この
時期アケボノツツジの屏風絵を楽しむことが出来る最高のルートとなる。途中の景色を楽しみながらアイちゃん、Kさんと
山談義をしながら兜岩への巻き道に出た。
アケボノツツジ越しに西赤石に連なる尾根 兜岩に到着 バックは西山・チチ山
薄日に照らされたアケボノツツジの群生に感動してくれる二人を見て何故か故郷の山を自慢でき嬉しくも誇らしい気持ち
になる。アイちゃんは新居浜出身で現在は香川県にお住まいで、丁度私と境遇が似ているので掲示板でも親しくさせて
頂いている。
携帯電話ではぐれ雲が西赤石山頂にて発見され、二人は安心してこのマグマから貫入してきた橄欖岩(かんらんがん)の
岩峰からの景色を楽しんでいるようだ。
まあ例年よりは華やいではいないけど・・ 兜岩の向こうに新居浜の町と瀬戸内海
西赤石山は東平角閃岩と言われる地下深くで変性された堅い岩盤から成っているらしいが、その北側にチョコンと橄欖岩
(かんらんがん)の岩峰が顔を出している。これが兜岩(かぶといわ)と言われる岩山だ。
赤石橄欖岩はこれまた比重の高い=重くて堅いマグマの成分が物住頭の東側にある前赤石から八巻山・東赤石と続く岩場
に露頭しそのアルプス的景観を作る主役であるが、この西赤石の北側に「ここだけ八巻山」もどきが存在する。
西赤石をバックに兜岩でシェーをプレゼントしてくれたKさんとアイちゃん
兜岩にやってくるKさんとアイちゃん 兜岩を去る二人
アイちゃんとKさんが本隊に合流すべく西赤石山頂へ行かれたので、兜岩の北端にある平たい岩に寝そべってコーヒーを沸
かす。ここは以前会った新居浜のヤブコギ大将お気に入りの場所だ。
心地よい風に吹かれながらふるさと新居浜の町を見下ろす。結構汚い街だけど生まれ故郷だから採点が甘い。西に目を移せ
ばチチ山と沓掛山が吊り尾根となりその向こうに石鎚大権現が鎮座ましましている。一方東を見ると上兜から串ヶ峰の大女の
肩が見えて泣かせる景色だ。
兜岩から新居浜の町
兜岩から西側 吊り尾根の向こうに石鎚が見える
右手に見える蜜洞岩に向かって出発
山に行けば必ず山頂を極めなければ気がすまない私だが、ここだけは別。悪いけど人がごったがえす西赤石山頂は行かな
いよ〜。少し片付けて蜜洞岩へ行く事にする。
ガクガク隊 兜岩に現る !!
ごつごつした褐色のマグマ野郎をぴょんぴょんと渡っていると突然頭の上から「エントツ山さん!」と声がした。「ハァ?」と目を
上げるとそこにはまぎれもないガクちゃんが胸ににバッグを虚無僧の様に下げた姿で立っている。まさか藪野郎とこんな美し
い場所で出会う筈はなく信じられない様子で目をこすると「ガクガクです」って応える。そりゃわかってますよ。でも何でガクちゃん
がここにいるの?って心で呟くとテレパシーで伝わったのか「串ヶ峰から上兜を通ってこちらに来るつもりが、昨日テントを張った
魔戸の滝ちかくで今朝自殺者を発見してしまい・・・・」何とそんな体験をしながら警察への届けなどで手間取りルートを変え、
石ヶ山丈から兜岩に着いたという。
長い間山を歩いていると色んな事があるもんだ。そう言えば・・・万作おじさんの山で水を飲んだあとその上流で白骨死体を
発見した「白骨スープ事件」を思い出した。
串ヶ峰(左の肩)と上兜山(おへそ) ガクガクさん 現る〜
ガクガク隊とエントツ山 へ〜〜こんな人たちが藪を歩き回ってるんだ
橄欖岩の精 伊藤夫妻に会う !!
石鎚北沢を一緒に歩いたこの同胞と再会を懐かしがっていると傍らにおられたご夫婦から「エントツ山さんですか〜」って
声がかかった。え? 見ると山では今まで見かけた事がない垢抜けした女性が微笑んでいる。すわ橄欖岩の精か?あれ
その隣をみると体格は申し分無いがボデイガードにしてはちょっと優しすぎる感じの男性が竹の杖を持ってニコニコしている。
聞けば伊藤さんというご夫婦で、私の登山記を見られて何と魔戸の滝から「串ヶ峰」と「上兜」に藪を漕いで登ったと聞き
二度ビックリ。
ガクちゃんと 伊藤夫妻 (エントツ山 撮影)
エントツ山と伊藤夫妻 (ガクちゃん撮影) この構図の差を身よ
そのうち合流したガクガク隊の方達が付いて、黒森山でマーシーに遭遇した話題などで華が咲く。ガクガク隊の女性も男性
もあの壮絶な藪歩きをしている猛者とは到底思えない人達だった。凄いグループじゃわい。彼らは出会いがしらのアクシデント
にめげず予定通り逆コースで物住頭から上兜―串ヶ峰―魔戸の滝へ下ると言うのでお別れした。
しばらく、後に残った天女といぶし銀夫婦とお話をさせてもらい、蜜洞岩へと進む。
蜜洞岩へは初めて行くが、西赤石への急坂途中で適当に右に藪を分ける。目測を誤り相当南側へ出たので修正。やはりここ
にも若干の支尾根となっていて踏み跡があった。 この蜜洞岩からの眺めも又素晴らしく岩に腰をかけて西赤石と兜岩の喧騒から離れたアケボノ景色を堪能する。
蜜洞岩から兜岩を見る 蜜洞岩の下は絶壁
蜜洞岩から吊り尾根 石鎚方面
蜜洞岩から西赤石
さて、兜岩へ戻り石ヶ山丈の藪尾根を下る事にして直接兜岩の北端から尾根に強行突破する。尾根に下がると以前叔父のロボコップ
・タッキーと歩いた時よりまだスズタケが伸びている様で全く視界が利かない。
兜岩から直接北に下りる 石ヶ山丈の尾根
ぐへ〜 凄い藪 (石ヶ山丈への尾根) 迂回路で軌道修正
適当に北へ進めばいいじゃろと尾根を歩いていると、どうもターニングポイントを更にまっすぐ支尾根に進んだ事に気がついた。
このまま石ヶ山丈の東側を通る造林小屋コースに下りようと30分くらい進むがGPSでチェックすると相当遠回りになる。 予定を更に変更して2万5千分の1地図とGPSを使ったオリエンテーリングに挑戦して元の稜線に直線的に復帰する事にした。
道なき道を石ヶ山丈の尾根へ進む 沢や植林や岩場を越えていく
石ヶ山丈の尾根に復帰 串ヶ峰(左)と 右奥が物住頭
あとは上部鉄道分岐まで下りて、懐かしい上部鉄道跡を一本松まで歩く。鉄道を通した道だから高低差がないがいかにもクネクネ
と長い。右手に見える東平の施設がいくら歩いてもまだ同じ所に見える。退屈な一人歩きに堪えて一本松から東平へ帰る。
上部鉄道跡・魔戸の滝・石ヶ山丈分岐 石ヶ山丈 停車場跡
地獄谷の鉄橋跡 巨大な岩石の切り通し
結構プレッシャーがかかる朽ちた橋 ガクちゃん 橋を渡る (これは長いから結構揺れる)
渡れない橋は迂回する 迂回する風景も又よし
西日に輝く兜岩と西赤石山を振り返り今日の出会いを懐かしむ
駐車場につくと横に朝とは違った軽自動車が止まっていた。実はその持ち主が「勝ぼうず」さんだった。もし予定通り石ヶ山丈
から兜岩に歩けば帰りに勝ぼうずさんに出会っていたかもしれない。でもその代わりにアイちゃんと歩いたり、ガクガク隊や
天女夫婦に兜岩で時間差で会えなかったろう。
歴史の表舞台とは関係のない出会いと別れを繰り返しながら庶民の人生は進行する
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