故郷に帰ろう  黒森山からシャクナゲの尾、辻ヶ峰から我が家へ
リーチングホーム吉居(西条)−傾き山ー黒森山ー辻ヶ峰ー角野(新居浜)

吉居―傾吹(かたぶき)山―黒森山分岐―シャクナゲの尾―辻ヶ峰―角野


吉居(0730h)−傾き山(1000h)−堂ノ平(1100h)−黒森分岐(1120h)
第1鉄塔(1200h)−1242.7m三角点(1300h)−辻ヶ峰(1430h)−
495.7m三角点(1600h)−内宮神社(1645h)−山根自宅(1700h) 計9.5h

(国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

前回、又兵衛岳から黒森の尾根を下がった際吉居への下山道を暗闇で見落とし、櫛ヶ峰への尾根を歩く羽目になった。
この吉居から堂ノ平(なる)への登山道の確認と、黒森から新居浜・角野への壮大な尾根を下る計画を立てて前日盟友マーシー
さんを誘う。

06時半に下山地の新居浜市角野の太鼓台宮参りで有名な内宮(うちのみや)神社駐車場でマーシーさんの車をデポし西条の
吉居に向かう。
加茂川大橋を越えて寒風山トンネル方面へ向かうと武丈(ぶじょう)公園には沢山の桜が咲き誇っていた。こちらは何の因果か
しらねども花とは無縁の藪尾根あるきするあるよ。加茂川上流付近の急な山肌にもあちらこちらと山桜がこの季節ならではの
存在を誇示している。

因縁の西条、吉居「加茂・角野線」に入り広いスペースに車を停め登山口を探すが、どうもそれらしい道は見つからない。比較
的広くて荒れた道があったのでしばらく歩くが、どうも反対方向の沢に向かっている。もう一度元に帰って吉居方向に歩きながら
取り付きを探すが見当たらない。

 
加茂・角野線に入る 沢の上に傾き山が   適当な場所から分け入る

「適当に上がりますか?」と言いながら斜面を這い上がって行くと踏み跡を発見。でもこれも尾根の左、沢方向に導いている。しばらく
これを歩いてますます沢の方へ行くのでまた「この辺りから尾根に這い上がりましょか?」と道の無い尾根へと取り付く。まあ 阿吽
(あうん)の呼吸ってこんな事なのかしらねえ

 
大岩がゴロゴロする尾根            炭焼き跡だろうか

 
又兵衛岳が見る見るうちに下に見える    取り付いてきた尾根 吉居が見える

ゼイゼイ言いながら岩だらけの支尾根を上昇すると尾根部へ到着。ものすごく切り立ったピークまで這い上がると少し開けて
いて吉居の橋が見渡せた。

そこから更に上を目指していると右手上に例の「かたぶきの大崩壊地が見えた。あちゃ〜 この尾根は崩壊地の手前だった。
先日夜歩いた「かたぶきトラバース道」に合流したが、もうあの崩壊地は渡らないと心に固く誓っていたので、そのまま「かたぶき
山」の天辺を目指す。

    
       傾き山(傾吹山=かたぶき)稜線へ辿る岩尾根

傾斜が更にきつく岩場も現れるが、それを二人で楽しみながら上へ上へと進む。どこから稜線に入ったのかはっきり分から
なかったが、赤茶けた地面からシルバー色の雑木やブナが乱立している。


傾き山の稜線へ出る  ブナと潅木に覆われたいい雰囲気の場所だった

最後のピークを上がると石柱が立っており、その向こうは切れ落ちた断崖となっており、堂ノ平らしい窪地とその向こうに
黒森山がさらに高く見えた。

 
傾き山の山頂 ここから南は絶壁となる   傾き山から黒森とそれに続く縦走路

最初は少し黒森山に向かって左側から下ろうとしたが、途中で断崖絶壁に阻まれる。右側の樹林帯へと迂回しながら
急な崖を下りていく。痩せ尾根まで下り立って暫く樹林帯を這い上がると別な尾根が右手から延びてきている。低い笹
に覆われた尾根にははっきりと踏み跡があり、これが吉居への正式なルートだろう。

黒森山から下がってくれば、この吉居への分岐はここでほぼ直角に左へ折れている。樹林帯を真っ直ぐ下れば傾き山
と崩壊地へと続く按配になっている。

 
斜度 90度 木に捉まりながら下りていく      なおもドンドン下りていく

  
傾き山(右)と崩壊地(左)への分岐        吉居への明瞭な尾根道

なおも黒森山に向かって急坂を喘ぐと窪地の中ほどに白い石柱が見えた。お不動さんのある堂ノ平(なる)に着いた。
先日の無事下山へのお礼とこれからの無事を厚かましくお祈りして又急斜面を進む。


なだらかで平和な場所  堂ノ平(なる) 前方左にお不動さんが・・・


堂ノ平のお不動さん  不動明王が2体鎮座する

見覚えのあるシャクナゲ群落地から長い尾根が北側に延びている。ここが辻ヶ峰への「シャクナゲの尾」と呼ばれた長い尾根で、
辻ヶ峰を経由して私の故郷、新居浜市角野(現在は中筋町の裏山へ延々と続いているのだ。

 
笹が多くなり又登り坂となる          黒森のブナもなかなかのののじゃ

 
シャクナゲ林の中に辻ヶ峰への分岐がある  シャクナゲ林

急に霧が辺りに立ち込めて視界が悪くなった。風もびゅうびゅうと唸りを上げ、木々がぎしぎしと暴れている。単なる前線通過
に伴う気象現象なのに人間はこんな時「山が怒っている」と表現する。山に怒られながらに二匹のイノシシは崖尾根を下っていく。
ここから第一鉄塔部までが高度感といい景色といい一番素晴らしい尾根歩きだった。


黒森分岐から「シャクナゲの尾」 長いんだなあ これが

 
  障害物競走 マーシー一歩リード           相撃ち

 
    大岩が多いわ                マーシーの別荘「イノシシ荘」

急な崖尾根を下り立った所にややさび付いた古い鉄塔があり、東側にしっかりとした鉄塔巡回路が河又方面へと延びていた。
先が長いので昼食は次の1,242.7m三角点と決めて先を急ぐ。余りにも長い尾根なので時間的な予測がつかないのだ。

 
   ちょっと貧相に見える鉄塔        鉄塔巡回路が東側に伸びていた


           理想の尾根歩きを堪能できた

ここから先も細尾根と岩が現れ満足のいく尾根歩きを堪能できた。1,242.7m三角点についたが、ここで全体の尾根歩きの
未だ3分の1すら来ていないのだ。風があまりにも強いので先の窪地まで進んで今日初めて休憩らしい休みを取り食事とする。

マーシーさんは魔法瓶にお湯を入れてきて粉末コーヒーを忘れている。私は初めて「中華風おかゆ」を試食する為二人分コンビニ
で買ってきたがお箸がない。粉末カフェオーレを持ってきたがコップとスプーンが無い。ふかふかする落ち葉の上で至福のランチ
タイム。

 
    1,242.7m 三角点           吉居以来初めてゆっくりと座る


時々地図とGPSで位置を確認し、「あれ? まだ3分の1も来ていない」とか言いながらドンドン歩く。丁度清滝の上流部あたりで
一箇所木々がない場所があり、そこから西赤石、串ヶ峰、その手前には国領川の上流にあたる小女郎川が深い谷を刻んでいる。
前方にはまだ距離があるが辻ヶ峰を確認する事が出来た。

     
           色気のあるヒメシャラと岩

 
    シルバーメタリックな潅木       相変わらず大岩が多いわ


お〜 辻ヶ峰がやっと見えた  でもまだしこたま歩かにゃならんばい


ここで恒例のエントツ山替こえ歌コーナーだ〜

題: 望郷フリーウェイ  原曲 新井由美の「中央フリーウェイ」


望郷フリーウェイ ♪ 

かたぶき尾根を追い越し   黒森に向かって歩けば 
   シャクナゲが 岩の尾根を這って広がる

望郷フリーウェイ  ♪

片手に持つコンパス  片手で地図を広げ 
   このルートで合っているか チェックする

風が強くて 霧が湧いてきて 行く手を覆う
   二人して イノシシになったみたい

望郷フリーウェイ
 
右に見えるは 西赤石 左はかたぶきの角(つの)
   この道は まるで滑走路  故郷に続く

シャクナゲ・フリーウェイ
   初めて歩いた頃は 毎回ドキドキしてたのに
   このごろちょっと 余裕だわ

凝りもせずに 故郷が やがて眼下に見えてくる
   二人して 子供に帰ったみたい

望郷フリーウェイ

前に見える辻ヶ峰 後ろには黒森が遠ざかる
   この道はまるで滑走路

故郷に続く  古里に続く  ふるさとに続く    ♪


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大永山トンネルへ向かう国道からや、西赤石の兜岩から眺めた長〜い尾根を今自分は歩いているのだ。一人では大層で不安
な尾根歩きだがマーシーと歩くと妙に安心で退屈しない。
歩くスピードや体力はマーシーが数段格上なのだが、何とか12時間以内ならついていく事が出来る。

 
標高が下がって樹相が少し違ってきた   植林帯の中に鉄塔巡回路の分岐がある

辻ヶ峰に近づくに従って植林地帯の割合が増えてきて道もしっかりしてくる。それに比例して尾根歩きの楽しみも減ってくる。ソーラー
電池のある鉄塔を過ぎてしこたま歩くと又別な鉄塔が現れ、更に道が広くなる。植林帯の中に分岐があり、小高いピークに向かって
進むと「辻ヶ峰」に着いた。

 
    辻ヶ峰手前にある鉄塔        辻ヶ峰山頂にて記念写真

展望がすこぶる悪く山頂標識もないが三角点だけはがある。一応目標通過点であるこの無粋な山頂で記念写真を撮り、さらに
北帰行を続ける。もう今日の尾根歩きとしてはカタは着いたようなものだが、目標である我が家の裏山に到達する為に更に慎重
にルートを確認しながら進む。

 
   方向感覚を狂わす樹林帯         最後のピークが見えた

やっと木々の向こうに新居浜の町が明るく霞んでいる場所まで到達。ここから少し東目にルートを代えながら、尚且つ立川に
下りてしまわないように進む。

いきなり石組みに囲まれた小さな社のようなものが眼前に現れた。くろもじさんによると恐らく黒石の六地蔵ではないかという
事だった。たしかに祠のなかには数体のお地蔵様が祀られていた。その左奥には柱が傾いた不動明王の石碑も祭られている。

 
瑞応寺の裏山天辺にある6地蔵の祠、 その傍らに不動明王の祠が 不思議な空間だ

今はだれも寄り付かないであろうこんな鬱蒼とした場所に立派な祠があるのが不思議だった。真っ直ぐ北へ進むと次郎丸、篠場、
瑞応寺あたりに出てしまうので北東に折れた尾根を進む。次第に多くなった羊歯(しだ)が標高の低くなった事を暗示させる。


最後の尾根から見る串ヶ峰(左)と西赤石(右)

こんな所にも三角点(標高495.7m)があり南側には木々の間から西赤石と串ヶ峰を見上げる事ができるが、北側は生憎の密度
の濃い植林地帯の為展望はない。

 
495.7m三角点 南側が少し開けている  国領川が木々の間から見えた

頃合いをみて北に下がる。鉄塔手前は背丈より高い羊歯(しだ)の群生に覆われ道がない。最後のシダ藪にむせながら倒れる
ようにマーシーさんに続くと鉄塔からは下草が少ない傾斜となり、やがて内宮神社本殿の屋根が見えた。境内を散歩中の叔父さん
がいきなり山から下りて来たこの異様な格好をした二人を見ても努めて平静さを装い本堂へと歩いていった。

 
ご先祖様 強い足腰のDNAをありがとう  エントツ山の実家テラスで乾杯

内宮神社の入り口斜面にある強足神社にお参りをして、別子銅山の下部鉄道跡を歩き実家に無事到着。両親をホッとさせマーシー
さんと健闘を称えてジュースで乾杯!完璧な計画遂行にちょっと物足りなさを感じながらマーシーさんと吉居にデポした車の回収に
向かう。



黒森山から新居浜上部地区に長く延びる尾根(シャクナゲの尾)を歩き下ってリーチング・ホームしたいという念願はここにマーシー
さんの協力によって無事達成する事ができた。


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