平成18年4月9日 マーシー・ランボルとかけさこの尾を下る

魔戸の滝ー串ヶ峰ー上兜山ー下兜山ーかけさこの尾ー船木 (約10時間)

魔戸(窓)の滝― 串ヶ峰 ― 上兜山 ― 下兜山― かけさこの尾― 船木
     (1,530m)  (1,561m) (1,233.7m)


カシミールソフトを使った「魔戸の滝ー串ヶ峰ー上兜山ー下兜山ーかけさこの尾ー船木」
GPSトラック・ログ軌跡図    ( 国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

魔戸の滝ー串ヶ峰          4時間弱
串ヶ峰 −上兜山          30−40分
上兜山 −下兜山          1時間30分
下兜山ーかかえさこの尾ー船木  3時間       実歩行時間 約 9時間


人それぞれに因縁の山がある。私にとって子供の時から雄姿を仰ぎ見てきた「その山」は「わいわいヤブ漕ぎ日記」から上兜山(うえかぶとやま)への肩だと知り、魔戸(窓)の滝からアクセス出来る事がわかった。その後「その山の名」は伊藤玉男さんの著書の中で「串ヶ峰」だという事を見つけたのだった。

   
    正面奥が 串ヶ峰  種子川(たねがわ)より

2年前に標識を立てた因縁の山「そは麗しの大女の肩・串ヶ峰」へは永らく西種子川(西谷川)林道が台風の為に崩壊して登山口の魔戸(窓)の滝へ進入できなかった。その林道が復旧したので串ヶ峰から上兜山を経由して下兜山の「かけさこの尾」を船木まで下りる計画を立てる。


カシミール3Dによる 窓の滝ー串ヶ峰ー上兜ー下兜ーかけさこの尾 ルート図

計画実行日 平成18年4月9日 (日)黄砂曇り
参加者:御老公 エンの行者(エントツ山)、ヤブ漕ぎの盟友「マーシー」と彼に別天地へ行こうと騙されて付いて来た「ランボルギーニ」トリオ

ランボルギーニの鈍足4駆を関の戸近くの高速道路側道空き地にデポ、新居浜の新田地区、種子川(たねがわ)西ノ谷川を魔戸(窓)の滝へ向かう。06時40分魔戸(窓)の滝駐車場に車を停めてしばらく滝を眺めながら歩き東側に伸びた尾根の取り付き部へ未舗装の林道を歩く (相当道が荒れていて車は通れない状況)

 
魔戸の滝(窓の滝)駐車場(トイレあり)      バックは窓の滝 

登山口でランボルギーニにヤブ漕ぎ用の豚皮なめし手袋と帽子を支給する。あまり早く渡すと尻込みして帰られても困るからギリギリまでヤブ漕ぎは伏せておいた。茫然自失のランボーを取り付き尾根に追い立てる。良く説明しなかったマーシーが悪いのだ。

前回はこの林道最終地点から植林された斜面を適当に取り付いて行ったが、07時今回は切り通し場所から忠実に尾根を進む。以前下調べをしていたが、案外尾根部は林業の作業道の様になって道は在ると言える。(微妙な表現) 予想以上に快適な道にランボルギーニも調子に乗って先頭を歩いている。

     
     切り通しにある串ヶ峰、上兜ルート 取り付き場所 (06:56 h)

 
植林地帯と自然林が混在        大崩落場所の天辺から林道を見る 

そのうち、行けども歩けども急坂の連続にマーシーも最初は調子が上がらず苦しそう。ランボルギーニもハイオク・アウトバーン仕様なのでエンジンに不調をきたしている。

     
          行けども歩けども急坂の連続

新居浜の「ヤブ漕ぎ大将」T君のアドバイスに従いあちこちに作業道が見られるが徹頭徹尾 尾根を歩く。登山口から約1時間歩くと急に西側が開けて最初の細尾根の展望所に到着。しばらく石ガ山丈(いしがさんじょう)から兜岩を経て西赤石に至る稜線を眺める。

 
約1時間で最初の展望所に着く (07:56h)    境界礎石も近くに見られる

ここからも更に急な登りの連続で、道は確実にあるものの小木の枝が伸び、スズタケの藪も出現する。大岩の展望所が数箇所あり、それぞれ立ち止まって先ほどと同じように、谷を隔ててこちらの尾根に沿って伸びる石ガ山丈、兜岩、西赤石を見渡す。山頂付近には雪がそこそこ残っている。

約1時間半歩くと以前林道終点の植林地帯から取り付き尾根に辿りついた紫のテープがある懐かしい合流部についた。ここからは知った道だ。次の大岩展望所までは予断を許さないブッシュとスズタケ街道が続き、所々でホッとするような岩とアセビ、シャクナゲの空間が現れる。

 
ブッシュ大統領は嫌いだ〜      1時間半で以前のルート合流点に ( 08:30h)

 
ブッシュあり                  スズタケの藪あり

    
          ブッシュもスズタケもあり〜

    
       こんなステキな場所もある

   
    西赤石、兜岩、石ガ山丈(いしがさんじょう) 大岩展望所 (09:17h)
    ここまで 登山口から2時間20分

 
苔むした岩場の道              岩場とシャクナゲの幼木

 
大岩展望所 (09:52h)   石ガ山丈の向こうには沓掛・黒森山が霞んでいる

     
        ここまで来ると 串ヶ峰の肩が見える

     
         西赤石、兜岩が次第に眼の高さに近づく

この登山道にはヒカゲツツジの幼木が多い。新居浜が展望出来る岩場に着いたが、残念ながら黄砂の為ぼやけて故郷を眺望する事ができなかった。最後のスズタケの藪を喘ぐと前方の壁が無くなり懐かしい「串ヶ峰」山頂に着いた。時刻は11時前、登山口から3時間40分、ほぼ予定通りのコースタイムだった。

   
           串ヶ峰登山道 風景

 
   新居浜展望所の岩           残念〜  故郷が霞んで見えない〜

   
   串ヶ峰山頂  私設標識の前でマーシー、ランボルギーニと (10:40h)

気になる山頂標識は大きいほうがちゃんと風雪に耐えて立っていた。小さい方は見当たらない?探すと近くに倒れているのを発見。 突然ランボルギーニが途中でメガネを落としたと言う。かけていたメガネを落としたのに気がつかない程彼にとっては、藪がひどくてヘロヘロだったのだろう。アーメン 二人がメガネ捜索をしている間、こちらは山頂標識のチェックと手直しだ。

   
             串ヶ峰山頂 

案の定 メガネは見つからずランボルギーニは悲嘆にくれている。横でマーシーが「値段は5万円くらいだろ?仕方ないよ」とか随分無責任な言葉を親友に投げかけている。「私も探しますわ」と下りかけると「こんなもん落ちてたわ」とマーシーがメガネをポケットから出してきた。それまでもランボルギーニはペットボトルやザックに留めていたストックの部品を藪に取られていたのだ。二人でこの不運な同行者を「運がいいヤツだなあ」と褒め称える。

 
串ヶ峰山頂から上兜をバックに      マーシー ランボルギーニ ありがとう


   *********

エントツ山の替え歌コーナー  ♪

題:三年目の串ヶ峰 (原曲はヒロシ&キーボーの三年目の浮気)

(エ)馬鹿いってんじゃないよ ♪  串ヶ峰(おまえ)の事は
     ご無沙汰してたけど いつも下から眺めていたんだよ ♪

  馬鹿いってんじゃないよ ♪ 串ヶ峰(おまえ)の事は
     一日たりとも 忘れた事など 無かった俺だぜ  ♪

(串) よく言うわ いつも 他の山ばかり登って ♪
      私が何んにも 知らないとでも 思っているのね ♪

(エ) よく言うよ ♪ 林道不通で 今まで来れなかったんだよ 
      ヤブ漕ぎ大将だって 今日まで登って 来てないんだろ ♪

(串) バカ言ってんじゃないわ  ♪
(エ) バカ言ってんじゃないよ  ♪

(エ) 三年間のご無沙汰くらい 大目に見ろよ
(串) ひらきなおる その態度が B級登山者なのよね ♪

(エ) 三年目のご無沙汰くらい 大目にみてよ ♪
(串) 三人揃って 来てくれたから 許してあ・げ・る ♪

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風雪に耐えた串ヶ峰の標識と共に記念撮影をしてターニングポイントの上兜山へ出発。赤石山系主稜にある物住ノ頭(ものずみのあたま)からこの串ヶ峰へと伸びた支尾根上に突き出た「上兜山」への道は潅木の藪だが道を間違う恐れはない。途中の岩展望所で西赤石から雲が原を経て物住ノ頭、前赤石、峨蔵山の主稜を眺めながら、また北側の下兜山への稜線を確認しながら歩く。

     
         大女の肩を歩くマーシーと上兜山

 
        串ヶ峰ー上兜山 大女の肩ヤブコギ線の風景

ギザギザ頭の上兜山へ11時30分に着き昼食をとる。見るとランボルギーニはヤブ漕ぎ登山にもかかわらず優雅にバーナーを出しお湯を沸かしている。私もマーシーも長距離歩行に備えてバーナーなどは省いて来た。なるほどバテるはずだわい。冷ややかな目で見ると「こ・・これくらいの楽しみは許されるやろ〜」と反撃する。その後も更に優雅なドリップコーヒーだ。いい味だった。お礼に3個持ってきた大玉リンゴを渡してザックをさらに軽くする。

   
上兜山 山頂のマーシー (11:24h)       上兜山「わいわいしゃもじ」

上兜山にはどうした訳か錆びた鉄の板がある。昔の山名標識の名残だろうか?その下には懐かしい「わいわいさん」の取り付けたしゃもじがぶら下がっていた。
この上兜山は天然檜が生えた狭いピークだが、東側が断崖絶壁となり鋭く切れ落ちている。ここから赤星山、二ッ岳からの峨蔵山、赤石山系の尾根筋が一望できる。霞がかかり逆光となったその黒い山並みは幾筋かの白い雪模様を付けて衝立の様に背後に並んでいる。その残雪の為いつもは定かではないいにしえの道が赤石山脈の山肌を刻んでいる。

 
ドリップコーヒー作る人と待つ人         上兜山から前赤石と東赤石方面

 
    上兜山から峨蔵山              上兜山を下りる

休憩をしていると風が冷たく寒くなったのでコーヒーを飲んだあと出発する事に。ここから船木の高速道路際までほぼ下りだが長い道のりが待っている。上兜山から急坂を串ヶ峰方面に引き返し、ちょっと早めに肩尾根を外し下兜への尾根を探してこれに乗る。

 
     上兜山を下りて 下兜山とそれに連なる尾根を見る

 
下兜への尾根に乗る              境界礎石もある

心配していた程の藪もなく結構快適な尾根だった。ランボルギーニは大いに喜び、他方ヤブ漕ぎコンビはちょっと気が抜ける。こんな場所にもテープマニアが入っていて、余りにも非常識な短距離間の残置テープはマーシーとエントツ山によって間引きされた。

 
     快適な尾根道だ           道が良すぎて気が抜けた

上兜―下兜間 約1時間の尾根道は高度差も余り無く快適だが、一箇所西側の支尾根に入ってしまう箇所がある。進む尾根の正面に木立の間から下兜の尖がりが見えるので真っ直ぐに進みたくなる。こんな所はマーシーを連れていると非常に便利で得意の鼻を効かせて勘の悪い二人を右へ迂回させる。半信半疑で着いていくと、案の定ここは尾根が複雑に東側へ振っていた。

 
大型動物のねぐらがあちこちにある      ルートを探しながら歩く

南側から見上げる下兜山はその高さとボリュームに迫力がある。実際この急坂は四国屈指の厳しさではなかろうか。力を振り絞って這い上がると午後1時30分、祠のある懐かしい山頂へ着いた。霞の為にこでも船木への展望はなく、ザックを下ろして写真を撮る。

 
下兜山がブッシュの間から見えてくる  近づくと相当急でボリュームのある突起だ

 
一杯普段の懺悔をする二人 (13:30h)     下兜山 山頂の祠 (冑権現)

裏側に回りこむと、前回は雪に埋もれて気がつかなかったが古い祠が無造作に捨てられていた。こんな事許せん!!恐れ多くも由緒のある船木の守り神「冑権現様」の祠を新しくして、古いのをすぐ裏側にゴミの不法投棄とおなじ扱いにするなんて・・・
信心なんてかけらもない委託設置業者に任せた結果だろうか?罰があたるよ

 
裏に打ち捨てられた祠            下兜山 三角点

船木側から下兜山への正規の登山道を少し下りて、三角点まで行く。ここから振り返って大岩の北側をかけさこの尾に回りこむ。この尾根も想像に反して所々藪いてはいるものの境界礎石などもあり道は明瞭だ。

 
大岩の北側を回り込み尾根へ出る    ちゃんと礎石もある「かけさこの尾」

この長くてアップダウンのある尾根をひたすらあるく。同じ景色なのでいい加減に飽きてくる。歩かなきゃ帰れないのでアセビの木や岩、植林の景色を見ながら黙々と歩く。大きなピークが3つくらいありこの退屈な尾根歩きに変化をもたらしてくれる。

 
    下兜山を振り返る                峨蔵山方面

    
           岩も出現する尾根道

 
退屈しのぎに大木を撮影             キレイすぎる尾根道に出た

右にも左にも連れ立って瀬戸内海に下り落ちる尾根を見ながら最後の行程をこなしていく。途中から明らかに長く使われてきた登山道となり、鉄塔を越すと益々道幅が広くなる。

 
明らかに昔から使われた掘れ込んだ道  スミレを撮る二人 (似合わん!)

一箇所鉄塔巡回路に入りかけたが、道は西側の谷筋へと下がるので引き返して尾根を左にトラバースした道を進む。
峠の四辻の様な場所に着きハタと立ち止まる。右のピークに向かって鉄塔巡回路が伸びている。左にも道がある。迷った末に真っ直ぐ北に伸びるルートを歩く。高速道路からの車の音が聞こえてくるが中々終着点は来ない。

 
さらに掘れ込んだ登山道           荒れた場所もある

谷を隔てて東側にもう一つのピークが現れた。どうもそちらが車をデポした場所への支尾根の様だ。でもここまで忠実に「かけさこの尾」を下ったのだから伊藤玉男さんも褒めてくれるだろう。
程なく高速道路の側道に下り付いた。時刻は午後4時30分、場所は丁度関の戸のあたり。東に10分くらい引き返してデポした車にたどり着いた。

 
高速道路の側道に下りついた (16:30h)    下山場所 あ〜長かった

    
      バンザ〜〜イ  意外とあっけなかったなあ

今回の山歩きは極めて個人的な因縁ルートではあったが、マーシーに串ヶ峰上兜山を案内したいという願いにランボルギーニも良く付き合ってくれた。年寄り達の小さな冒険の旅はここに完了したのだった


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