待たせてゴメンね 下兜山 (しもかぶとやま) 愛媛県

平成17年12月18日 よりにもよってこんな日に 「下兜山(しもかぶとやま)」へ 1,240m


下兜山登山ルート カシミール3Dソフトを利用したGPSトラック・ログ軌跡図
  国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)

新居浜市から南側の山並みを見ると、正面の串ヶ峰から少し左(東側)に下がった尾根筋に一際目立つ尖がった頂が眼を引く。ふもとの船木(ふなき)地区が昔から雨乞いの山として親しまれてきた「下兜山」(しもかぶとやま)


国領(こくりょう)川より下兜山 (左側の尖がったピーク)

兄貴分の上兜山(かみかぶとやま)から新居浜・土居へ落ちる稜線、「かけさこの尾」上にある。
地図をみると登山口は数箇所あるようだが、積雪の事もあり投稿登山記でレポートしてくれた高嶺フラワーズ、しまなみ隊をはじめ、くろもじさん、マーシーが登った新居浜カントリーの東側にある高速側道沿いの貯水タンク登山口より登る事に。

今年一番の寒気団襲来により朝新居浜の実家を出ると路面凍結がひどく、登山口まで時間がかかってしまった。

 
新居浜カントリーゴルフ場の東側 高速側道に登山口がある 貯水タンクが目印

09時すぎに登山口を出発。道路は昔から使われているのか相当掘れ込んでいる。すぐにうす暗い杉の植林地帯となる。第一鉄塔を越えると気持ちのよいほど一直線の登りに見舞われる。このあたりはまだ雪もすくなく、石ころだらけの登山道を喘ぎながら歩く。


   植林や自然林が混在する登山道

前半は尾根を東側に外して道が伸びているので、左側には下兜山から伸びるもう一つの尾根「かけさこの尾」が見える。どうもこちら側より高い位置にあるようだ。

 
アンテナの塔がある             東側にはもう一つの尾根「かけさこの尾」

ふと右の斜面をみると祠のようなものがあり、コップが木にかぶせられている。下兜権現の分霊だろうか。
登山道には崩壊地が二箇所あり、最初のは乗り越えたら進めたが、二つ目は登山道が落ちて無くなっている。ここは斜面を攀じ登って迂回。ドンドン進むと尾根筋に出て尾根を西側に外れて道が続く。このあたりから急に雪の量が増えてアイゼンをつける。
 
次第に雪が増える              途中の斜面に見える祠

杉の植林もあるが次第にアセビなどの自然林が多くなる。やはりあのクネクネ曲がった自然林の登山道が楽しい。

 
分岐は真っ直ぐ(左側)へ          雪が増えてくる登山道


雪が深く積もったアセビ街道

平な場所に着いたので初めての休憩。時刻を確認してびっくり。早くも12時になっていた。今日は山頂で温かい豚汁とエスプレッソを飲もうとバーナーセットを持ってくるが、雪が深くてそんな場所も無く、時間もあせってコーヒータイムどころじゃない。ザックを木の枝に吊り下げて中から例の紙パックおにぎりをだして頬張る。ペットボトルのお茶は既にシャーベット状になっている。さむ〜〜

  
次第に雪が深くなる              休憩地点の平(なる)

 
吹き溜まりの雪が美しい           次第に厳しくなる登山道

ザックを背負って出発。ここからの急坂は雪が深いので結構キツかった。登山道を外れないようにしながら少しだけ樹林帯の雪が薄そうな場所を選んで登っていく。すこし平らな場所まで喘ぐと、正面左に下兜山の尖がりが見渡せた。下兜展望所だ。へ〜〜まだあんなところまで登るんかい?


細かい枝に霧氷ができて幻想的な風景の登山道


この展望所まで3時間半もかかってしまった 左上に下兜山が見える

樹木が雪で垂れ下がった尾根を抜けると嫌になるような急坂と雪の量だ。西風をうけて登山道は吹き溜まりになっているので、ここも少し西側に外れて植林の中を進む。それでもなかなか歩けない。しばらくすると左手にロープが張られている場所に来た。正面を見上げると日の光からどうも尾根らしい。ロープは左へ巻いているが雪の深さが尋常ではない。あちこち迷いながら最終的にロープを手繰りながら登るのが一番効率が良い事を発見する。

 
尾根からロープが張られている       もう何処を選んでも雪が深い

 
細いロープが雪でアイスバーに         尾根近くの斜面

尾根に上がると風が強く、不気味な音となり串ヶ峰から峨蔵山の間を吹きぬけて峰々に木霊す。まるで自然から脅かされているようだった。

2週連続して見た「クライマーズ ハイ」という横山秀夫原作のNHK番組で山のプロが主人公の佐藤浩市に語る山のプロとアマチュアの違い「プロ(一流)は山頂の手前でも引き返す勇気がある。アマチュア(B級)は山頂まで行く誘惑に負けて危険を犯す」を思い出した。そうじゃ!もうここまで来たら帰りが暗くなろうが山頂の祠を見届けなければB級登山者じゃない

 

しばらく進むと大きな岩があり、これを乗り越えると、さらに巨大な岩壁が立ちはだかった。ホラー映画「リング」の貞子が井戸を不気味にゆっくりと這い上がっていくように、岩の左側の白い壁に取り付く。疲労は極致に達した


疲労 ? ヒーロー ?  ここでエントツ山の替え歌コーナー

「ヒーロー(疲労)」 原曲は 甲斐バンド「ヒーロー」

疲労(ヒーロー) 疲労になる時 あ〜は〜 それは今
疲労(ヒーロー) 疲労の悪魔が お前を離しはしない

雪山登りは ヘロヘロ歩きの ワンデイショー
ヒザまである雪の中 ツボ足抜きながら歩く事
今 私は疲労(ヒーロー) もう歩けないよ
中年体力の全ては 白いその悪魔に 全て吸い取られ
白銀の中 泣き顔の モンゴル人になる
今が過去になる前に ゴールに向かって歩き出さなきゃ

疲労(ヒーロー) 疲労になるとき あーはー それは今
疲労(ヒーロー) あの尾根向かって 力を振り絞り

雪山はいつも 人を惑わす蜃気楼
一つ越えれば また次のピークが現れる
彷徨うオレは疲労困憊(こんぱい) でもあきらめない
シャッターも押せ無いように この手がかじかんでいく
下兜よ祠から オレの姿が見えるだろう

今が過去になる前に ゴールに向かって登っていこう だから

疲労(ヒーロー) 鼓動は高まり
疲労(ヒーロー) グリコーゲンは燃え尽き
疲労(ヒーロー) 全ては凍りつき
この身は砕け散っても
目指すは下兜の祠・・・・・


疲労(ヒーロー)困憊(こんぱい)で最後の坂をよじ登ると海が見えた

血の気の失せた中年男が最後の尾根に這い上がり、ヨタヨタと前へ進むといきなり峨蔵山の絶壁が映画のスクリーンのように現れた。その稜線は雪雲に覆われまるで屏風のように岩壁が連なっている。 あれ? ここからどこへ行ったらいいの?間違いなくこの辺りが下兜山なんだけど・・・


尾根をヨタっていくと前面に峨蔵山の壁が現れた (右の窪みが権現越)

今回はニセ下兜山〜なんてオチも出来ないから辺りを捜索。少し帰りかけると右手にちょっとピークがありそうだ。う〜〜ん? これがニオウなあ。最後の力を振り絞って上がっていくと何か祠のようなものが見える。 あった〜〜〜 これこれ


感激の下兜山 山頂の祠  下兜権現


祠から船木地区や瀬戸内海まで見下ろせる

雪に半分くらい埋もれているが間違いなく下兜権現の祠だ。北側が開けて「池田の池」や瀬戸内海が見える。肩から吊るしたデジカメは凍てついてバッテリ不足の表示。冷たいデジカメを胸の中に入れて暖める。ザックの上に置いて記念撮影。

下兜山の祠から少し北側に出るが、岩場の上に雪が積っているようでどうもヤバそう。それでも歩いてきた尾根の様子、新居浜の東側、瀬戸内海が良く見える。あまり高度感が無いのでここまで5時間もかかったのが信じられない。


ちょっとヤバイが祠の向こうに乗り出し、登ってきた尾根と池田の池を撮影

上兜山への稜線やかけさこの尾などをチェックするつもりだったが、とんでもない。時刻は午後2時を回ったのでそそくさと撤退〜。帰りはあれだけ苦労した急坂の雪を蹴散らすように駈(か)ける。これだから雪山の下りはやみつきになる。

 
    下兜山 三等三角点                 坪足も楽し

帰りにもう一度、下兜山を見上げる。やはり上兜山(かみかぶと)の尖がり頭と良く似てたザンギリ頭だ。人生もお山も下り坂になると早いの何のって・・・あっという間に登山口へ下り付いた。朝あれだけ全てが厚く凍結していた道路が日向(ひなた)では暖かい太陽のエネルギーで元に返っていた。

     
      もう一度 帰りに展望所より下兜山を見上げる

 
上の崩壊部を迂回する           下の崩壊部は乗り越える

 
かけさこの尾には西陽(にしび)が・・・  車に帰ると雪はほぼ解けていた

          

故郷の山シリーズは今後 串ヶ峰―上兜山―下兜山界隈が中心になりそうである


                                目次に戻る              トップページに戻る