望郷シリーズ
法皇山脈と峨蔵山を結ぶヤブの架け橋 「赤星山ー峨蔵越」 縦走

平成17年11月23日 赤星山―峨蔵越 尾根縦走 二ツ岳の二角獣を目指す尾根歩き


赤星山ー峨蔵越 縦走路   国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634) 
カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図
中尾登山口ー赤星山    1時間40分
赤星山ー峨蔵越       4時間
峨蔵越ー峨蔵林道登山口 1時間


赤星山から見る峨蔵越までの尾根縦走路 (右上 台形の左端のトンガリが二ツ岳

高御位山(たかみくらやま)さんが四国の峨蔵山―赤石山系―石鎚山系(峨蔵越=二ツ岳から梅ヶ辻=堂ヶ森)を歩かれた。地元人間としてはもう少しその線を延ばしたい。そんな思いで赤星山―峨蔵越を歩くことに。相方は当然「必殺ヤブコギ請負人マーシーだ。

マーシーの提案で赤星山側から峨蔵越へのコースに決定。朝07時四国中央市で落ち合い、マーシーの妻ミセス・アッシーの運転する暴走軽自動車を追い法皇トンネルから金砂湖を経て銅山川を遡り芋野から峨蔵林道へと入り二ツ岳登山口に私のナディアをデポ。

それから取って返してミセス・アッシーの運転で赤星山中尾登山口まで送ってもらう。男共の勝手な遊びに文句も言わずご協力に感謝・・・マーシー!いい嫁だなあ・・・

中尾登山口―赤星山 約1時間40分

 
中尾登山口 いざ出発!          登山口の水場 ここを右に上がっていく

懐かしい中尾登山口では相変わらず水が樋(とい)から滔々と流れ出ていた。意気揚々と出発したのはいいが、途中GPSのスイッチを入れるのを忘れていたのに気がつき電源を入れる。植林地帯の中で衛星を捕捉できず鉄塔まで上がり再度位置を確認。暖かい日差しを受けた潅木の登山道をジグザグに上がっていくと東側が少し開けて豊受山が木々の間から見えた。やがてシャクナゲの尾根道となり赤星の祠に着いた。 

 
最近 花や実を撮り出したマーシー    落ち葉がフカフカの雑木林

 
尾根道に上がる                東側が開けると豊受山が見える

祠の右手を回り込み山頂に向かう。マーシーは相変わらず踏み跡道がある度に犬の様に嗅ぎまわっている。頂上手前で近くにヒガラが木の実を一心不乱でついばんでいる。二人の中年男には全く関心を示さないようだ。急いでカメラを出すがどうも二人とも巧く撮れなかったわ ANちゃん。
ここからはカタクリの保護ロープを張られた道を通ると直ぐ山頂広場に着いた。

 
最近 信心深くなったマーシー        ヒガラや ヒガラや〜〜

冬枯れの茅(かや)が倒れてまるで台風で倒れた稲田みたいだった。マーシーは山頂広場の更に平たい場所を見つめて「ここがリップさんが丸一日テントで寝た場所でしょう」って お前はコマンチ族か?

 
赤星山山頂 相変わらず山頂らしくない  土居から関川方面と瀬戸内海

赤星山山頂から北側に視界が開けて土居の海岸線から瀬戸内海が眼下に広がる。そこから更に西を見ると峨蔵山の仁王門「二角獣」(二ツ岳とイワカガミ岳の二本の角)から懐かしい峨蔵岳―赤石山系の稜線が連なっている。この赤星山から見る二ツ岳(正確には二角獣の左角)が一番形が美しいと思う。


赤星山から 二ツ岳と峨蔵山ー赤石山系 マーシー邪魔じゃ〜

赤星山から1,177.4m三角点まで 1時間40分

赤星山から第一鉄塔交差部まで30分 第一鉄塔―第二鉄塔 交差部 30分
第二鉄塔―1157.4m 三角点ピーク 40分 (合計1時間30分)


さていよいよこれからが本番の尾根縦走だ。山頂広場から直接縦走尾根に下る道はない。地図には山頂手前から南側に巻き道があるが、こんなのは使わない。方角にあたりを付けていきなり藪の中に分け入る。二人で散会しながら声を掛け合い進路を修正していく。潅木と笹の緩やかな藪を進むと、崖のような急斜面に出て眼前に今から歩くべき峨蔵山への架け橋となる尾根が柔らかくくねっている。どんなヤブ尾根も遠くから眺めるとあくまでも柔らかく美しい。そこに人間が一旦足を踏み入れるとその美しさが牙をむく。

 
山頂からブッシュに入っていく       急斜面にでて二ツ岳への稜線を確認

突撃〜 二人の戦士はイバラや潅木の枝に引っかかれながら急斜面を落ちていく。私はスズタケのヤブは大嫌いだが、比較的スペースのある潅木のヤブは大好きで気分が高揚してくる。

 
ヤブでも潅木はスペースがある       何でこんなところにドラム缶?

尾根部までずり落ちてさらに木をかきわけると踏み跡がはっきりした尾根道が現れた。それが最初の目標物である第一鉄塔手前では尾根を右側外すのでマーシーは尾根を歩き、私は北側に下がった窪地をあるいて鉄塔で合流。さらに次の目標物第二鉄塔まで踏み跡がある尾根道を進む。これを過ぎると結構広い道が尾根と交差している。


赤星山のブッシュから尾根に下りてしばらく歩くと快適な道が現れる

 
第一鉄塔がブッシュの向こうに     ア〜〜ア ア〜〜 又ターザンになってるよ

 
第一鉄塔を越えると鉄塔順回路(?)が  第二鉄塔の自由の女神から二ツ岳

   
         赤星山が次第に遠のいていく

この手前で何かのワナに足を取られて1mほどの傾斜を転倒。右足首には針金のワッカ入っており、締め付けられていた。その先がワイヤーで木にくくられている。前のめりになって倒れているのでマーシーに外してもらう。 痛て〜 針金が足首に食い込みアザになっていた。

 
第二鉄塔を越えると尾根を横切り     尾根のブッシュに帰る
立派な道が交差していた

その交差点でちょっと休憩して気を取り直して次に進む。すぐに登山道付近で人間のゴミ、弁当のプラスチックや新聞紙が沢山散乱していた。気がめいる風景だった。第二鉄塔部より約40分あるくと 三角点のある1,157.4mピークに着いた。

 
スズタケも次第に現れる           ヒメシャラの木もある 奥は赤星

 
鹿の削ぎ跡が沢山ある           嫌なスズタケの道

 
ヌタ場があった                  1,157.4mの三角点

1,157.4m三角点ピークー より 1,307..3m三角点(ターニングポイント)まで
約 1時間45分 


1,157.4m 三角点ピークー 1,222m山頂 45分
1,222mピークより1,307m 三角点(ターニングポイント)1時間

1,157.4mピークを出ると、尾根が急に西に振る。真っ直ぐは尋常でないスズタケの林で進めない。あまり西に行き過ぎると植林帯の中に入って西の支尾根へ下りてしまうので、植林帯とスズタケの境付近を下がって行く。窪地はスズタケの海だが、尾根筋にでて次のピークに向けて尾根を上がっていくと次第に開けてくる。尾根を忠実に進むと1,222mピークに到達し、少しスペースがあるのでここで食事にすることに。

 
ちょっと西側に振って植林地帯を下りる  コースを元にもどすと強烈なスズタケ

 
境界杭を確認しながら歩く         1,222mピーク直前

潅木の向こうに浮き上がる赤星山を振り返りながらザックを下ろして食事の準備
マーシーのザックはチャックで背面がパックリ開くようになっている。私のは袋式なので中身を次から次へと出して底に仕舞った食料を出す。要らない中身がそのあたりに散らばり夜店のテキヤのようだ。初めてマーシーのバーナーで沸かしたお湯でカップラーメンを作る。ビッグサイズを買ったのでスープを飲みきるのがエラかった。そのあとドリップコーヒーも出てきた。なるほど、これがリッチな山歩きの楽しみというわけか

 
又 おにぎり開封失敗す          マスター  アメリカンでお願いします

先が見えた安心感で30分くらいゴロっと寛(くつろ)いだあと、さて出発〜
ところがこの1,222mピークより峨蔵越がこのコースの正念場だった。直ぐに道が行き詰まり断崖に出た。元に戻って左が植林帯、右が自然林に分かれた尾根部を進む。そこを過ぎると猛烈なスズタケが現れたり、道の無い尾根道を這い上がったりの理想的なヤブ歩きになった。こうでなくっちゃ! マーシーもラーメン食ってたときのダラケタ表情が今は締まっている。

 
突然 行き詰る 向こうは崖        左から回り込んで尾根に出る

 
植林と自然林がうまく分かれた尾根道  あちゃ〜 凄いスズタケが現れた
 
スズタケの海を目の前にして突然マーシーが「この景色に記憶がある」!と叫んだ。え? スズタケのヤブがマーシーのデジャブーなの? 実は先日、来(きた)るべきこの縦走に備えて彼はハネズル山からここまで偵察に来ていたのだった。この景色ったってヤブばっかりの景色なんだけど、お前はターザンか!?

 
マーシーが記憶があるって叫んだスズタケの海  大きなヌタ場

 
もうスズタケに潜るの イヤ〜〜      潅木のヤブもポッペタを引っかく

 
お〜〜 目指す峨蔵越はこの突き当たりか?  1,307.4mの三角点

マーシーの予言どおり大きなヌタ場があった。前に来たときほどんど落ちかけたらしい。地図でみるとこの辺りが一番注意を払わなければならない場所で、小箱越からハネズル山へ続く平たい稜線とのターニングポイントだ。

幸いにして今日は視界が良いので西側に聳える二ツ岳がコッペパンの様な形で逆光に白く輝きながらこっちへおいでと招いている。慎重に峨蔵越への尾根を探し右に回りこむ。すぐに1,307.4mの三角点があった。ここの三角点は獅子舞の鼻にあるのと同じで頭にジャイロコンパスみたいなのが付けられ地中に埋められていた。

1,307.4m 三角点より峨蔵越まで 約 40分



あとは二ツ岳の壁に向かって峨蔵越を目指す最後のヤブコギとなる。所々で二ツ岳や小箱越に向かう1340mピークへの稜線が見える。先が見えたといってもスズタケや潅木のヤブは容赦してくれない。尾根を拾いながら西に進む

 
後ろは南のハネズル山へ続く尾根筋   やっぱ マーシーはヤブが似合うよ

 
まだ手前にピークがあるんか〜      スズタケに溺れそう


ターニングポイントから約40分ヤブを漕ぐと見覚えのある「峨蔵越」が眼前に現れた。赤星山を出発してから4時間かかって初めて見た標識だった。「按ずるより歩くが易し」 あっけない幕切れとなった。時刻は14時50分だった。

しばらくこのヤブコギ終焉の地で休憩して二ツ岳に登ると下山は何時か?と計算する。いくら計算してもこの峨蔵越まで帰るのに17時を越える。もう暗い山道を下りるのは止めようと大人の結論を出す。ちょっと心残りだが余裕をもって下山する事に。

    
      峨蔵越に着いちゃった  なんか物足りないよ〜

    
   アウト ♪セーフ ♪ ヨヨイノヨイ ♪ 違う〜 命のポーズです

 
峨蔵林道に15時50分 到着       マーシー お疲れさん


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「ヤブ イズ オーバー」 (原曲 欧陽菲菲オーヤンフィフィ の ラブ イズ オーバー


ヤブ イズ オーバー ♪ 
   悲しいけれど 終わりにしよう きりが無いから 
ヤブ イズ オーバー ♪
   わけなどないよ 峨蔵を目指す 旅が終わっただけ
ヤブ イズ オーバー ♪
   赤星山から 尾根を伝って 峨蔵に着いた
ヤブ イズ オーバー ♪
   バカな男達だろう 次のヤブ歩きを 企んでいる

イノシシのワナにも 掛かったけれど
   ヌタ場の沼にも 落ちそになったけど
      故郷の尾根を 最後まで 歩けたさ〜

ヤブ イズ オーバー ♪
   私はマーシーの お供でいいのさ そっと後から
ヤブ イズ オーバー ♪
   心残りは 二ツ岳まで 行かなかった事

けものみちにも ごまかされないで
   磁石と地図を じっと見つめて
      きっとヤブコギ 怖くない

ヤブ イズ オーバー
   楽しいよ 次のヤブコギは 何処にする
ヤブ イズ オーバー  元気でいよう  ヤブ イズ オーバー

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