実録 峨蔵(がぞう)山縦走記 二ツ岳ーエビラ山ー黒岳ー権現山ー東赤石

H17年6月26日 サラリーマン「峨蔵山」日帰りヘロヘロ縦走記
肉淵林道ー峨蔵越ー二ツ岳ーエビラ山ー黒岳ー権現山ー東赤石ー筏津 16時間


峨蔵山ー東赤石縦走ルート図    国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)


カシミール3Dソフトによる東光森山南1km 上空2,100mよりの縦走略図 (黄色)

魅せられた風景 
二ツ岳より峨蔵(がぞう)山の山々を見る 平成15年冬


左奥雲に浮いている島がチチ山 正面がエビラ山、その左奥の突起が東赤石

2年前に叔父の登山ロボット・タカオさんと冬に二ッ岳へ登り、そこから見た峨蔵山の尾根に憧れる。嗚呼 あぁ〜 これを歩かな
何とする!神よ 我に機会を与え給え〜

平成17年6月26日 給料日 (でも日曜日のためお預け)ついにその日が来た!
あまりの天気の良さにこの尾根歩き中に大量消費するであろう水の心配があり500mlのペットボトル9本を持っていく。その他
エマージェンシー・ツェルトや懐中電灯3個、厚鎌、ストック2本などの装備で今まで経験した事の無い重さに・・・キツ〜〜

前日新居浜の実家に泊まり、朝3時半に起きると朝食の準備が出来ていた。この母親の愛情って何だろうね。心で感謝をしなが
らも言葉は「朝早いから食欲ないわ〜」である。このバカ息子〜〜。朝4時、不憫な親に感謝をしながら新居浜の実家を出る。
筏津に車を置いて呼んでいたタクシーで林道峨蔵線終点の二ッ岳登山口へ。

序章
林道峨蔵線登山口―峨蔵越―二ッ岳  (約 3時間 )

肉淵からその昔別子銅山の中宿で栄えた芋野を抜け05時30分過ぎに登山口に着いた。出発準備をしていると、そこへ広島から
4名の登山者が来られた。昨日は東赤石山へ登って満開のタカネバラを堪能し、今日二ッ岳に登ってから本州へ帰られるそうである。
「じゃあ私もここから東赤石のタカネバラを見に行って来ます」って得意満面の猫背を広島の山キチに向けて出発。俺ってイヤ味な
性格!!

 
二ツ岳登山口                肉淵林道の舗装が切れた所が登山口

峨蔵越までの道は最初は少し登り坂が続くが、植林と自然林の交わった良い道だった。2〜300年前まではこの道の向かい側、小箱越
から出会峠を越え仲持ちさんが土居の天満浦へと別子銅山の荒銅をリレーして行ったのだ。北側から敬天の滝を経由する浦山からの
登山道も味があるが、このルートの方が自然林が多い。

東側の大木谷を隔てた対岸の他領須(たりょうず)の稜線には木々が一杯白い花をつけている。途中水場が二箇所あり、そこにはガク
ウツギやヤマアジサイが涼しげに咲いていた。石積みの整備された道を進むと峠の標識が現れた。

 
植林と自然林が交互に現れる       水場

 
     ガクウツギ                ヤマアジサイ

 
     コナスビ                   ナルコユリ
      
  
次第に明るい自然林の登山道      峨蔵越手前は右側が大木谷で開けている

峨蔵越は北の土居側からの登山道との合流点で、土居側から2度ほど登って来ている。ここが「土佐の仙人」さんや「仙岳さん」が
先日野営した場所だ。あまり広くはないがテントは何とか張れそうだ。

     
                 峨蔵越

峨蔵越から二ッ岳は四国でも有名な急登で距離は短いものの、丁度今頃 KAZASHIさん、REIKOさん マーシーさんが前夜、
土佐の仙人さんたちの接待に二日酔いで登っているであろう石立山といい勝負だ。結構ザックの重さが堪えて峠から山頂まで
2時間近くかかってしまった。先が思いやられる〜

  
赤星山が太陽に霞む           ハネズル山をバックに登っていく

 
シャクナゲ岩にはロープがかけられていた  あと1キロの標識

以前シャクナゲの幹にお世話になりながら登った登山道の岩場はロープが設置されていてシャクナゲさんを痛めずに登りやすく
なっていた。背中から射してくる朝日が既に夏の熱さを持っている。こりゃ苦戦の一日になりそうだわい

       
        見た目にはのどかな風景だんだけど (左奥が二ツ岳)

 
この山 まだ手前のピークなんだよね  お〜 梯子がかかっている

2年前に雪で苦労し、倒木を掴んでよじ登った難所にはありがたい事に梯子が二つ掛けられていた。感謝!

     
        「「鯛の頭」   ってちゃんと標識に書いていますがな

鯛の頭を過ぎるとすぐに山頂まであと500mの標識が現れるが、これからが結構堪えるのよね。以前は枝に掛かっていた「ここから
先は命がけ」ってちょっと大げさな三島警察署の看板が地に落ちていた。鳥の声に顔を上げると丁度木々の間の枝に留まってこちら
を見ている。「おはようございます」と小さな声でつぶやいて、なるべくこの格好の被写体とは眼を合わさず肩に掛けて来たキャノン
10倍ズームを取り出しゲット。(これでANちゃんに報告出来るわい)

 
二ツ岳 山頂が見える           この標識からが結構長い

 
有名な「ここから先は命がけ」の看板   鳥がいた〜〜

       
       ANちゃん!!     ヒガラが撮れたど〜〜

チャンスをくれた小鳥に感謝しながら、ヘロヘロになって二ッ岳の山頂へ着き、南側の見晴らし台に出て休憩。東赤石までのでこぼこな
縦走路を見ながら次第にテンションが上がってくる。よっしゃ〜こうなったら やるぞ〜 やらなければ やるよね おそらくやれる 気を
取り直して再び やるぞ〜

       
       二ツ岳 山頂 広島から来られた皆様と (原はネット帽子)

暫くすると登山口で会った男性1名、女性3名の広島の方が登って来られた。結局この厳しい縦走路を控えて第一段階でごく平凡な
時間で登ってきたことにショック。俺って平凡な山キチだったのだ
  
「峨蔵山縦走ルート 第一章 」  尾根ルート探しの面白さを堪能
二ッ岳(1,647.4m) ― エビラ山 (1,677m ) 歩行 約 3時間半


二ツ岳展望所より東赤石山までの縦走路を見る  

エビラ山への縦走路は、良く見ると西側へ下る小さな標識があるが、痩せ尾根の為間違いやすいらしい。事実ここで降り口を
間違って遭難された気の毒な方もおられます。霧で見通しの悪いときは気をつけて下さいよ

     
二ツ岳山頂の権現越縦走路標識 (縦走は左へ下りる) 山頂から北に向かって撮影

 
標識1)山頂の分岐標識 拡大写真  標識2)分岐を下ると突き当たりにある標識

要するに山頂から左に少し下りて、突き当りをこれまた小さな標識写真(標識2)に従って右に折れる。このあとは大岩を左に
2回迂回して途中で右にも迂回と、忙しいルート取りの尾根道が続く。この縦走路で一番変化があって面白い場所だと思った。

      
      標識2)で右に折れ、尾根に出ると今度はこの大岩の左を巻く
      正面にエビラ山が見える 

 
巻き道は全て岩の直下を巻いている   すぐに又尾根に上がる

ポイントは大きな岩を巻く極めて合理的な迂回登山道があるので、決して大きく尾根を外さない事。踏み跡の無い登山道
は存在しないので、踏み跡の無い場所に出たら「必ず引き返す」事。尾根を越えてクロスする場所では結構間違った踏み
跡があり、途中で道が消えている。冷静に引き返すと以外にテープがあったりして道が見つかります。

 
銅山川を挟んで向かいの県境山が続く  二ツ岳がまだあんなに近くかよ〜

暑さとザックの重さにダウンしていると、上でガァガァ鳥の声がする。カラスなら見向きもしないがどうもホシガラスだ。今まで
もたくさんの鳥の声がしていたが、この時の為に肩に駆けて持ってきたキャノンの10倍ズームを又肩から外し、登山道を外れた
岩場に取り付き巣に迫る。万作おじさんから言われた私の写真への冷静な指摘「ヘタな鉄砲」が脳裏に浮かび何くそ〜って
気合をいれた瞬間・・・太ももが攣った。アカン  こりゃアカンわ〜 鳥どころではない!とトリ乱す。

 
ホシガラスが沢山いた           ベニドウダンも沢山咲いていた

私の筋肉痙攣(ケイレン)は連鎖反応がその特徴で、一箇所造反をおこすと次々に暴動の嵐となり収まりがつかない。左太もも
から始まった筋肉の痙攣は、右の太もも、左のふくらはぎ、右足の向こう脛と拡大して、それをじっと耐えて横たわる。そりゃねえ
 普段何の運動も訓練もせずにいきなり無謀な労働を課す私の脳指令部に現場が反乱を起こすのも無理は無い。スマン 私の
筋肉!

 
二ツ岳が少しづつ遠ざかる      尾根を登り返すので赤星山も北東に見える

痙攣の嵐が治まった足を引きずりながら、なおその余韻におびえながら更なる行進は続く。なにせこの縦走尾根にはエスケープ・
ルートは存在しないのだ。トボトボと一歩づつジェイソンのように歩む。ジェイソンといえば堂森さんは元気だろうか?懐かしいな〜
 あの笑顔。


             第一目標のエビラ山が次第に近づく

尾根部に出ると視界が利き、辺りの風景が見えてくる。第一目標、エビラ山の台形が見える。山塊が大きいので近くにあるように錯覚
するが結構距離があり歩いても一向に距離が縮まらない。ましてやその遥か彼方に霞んでいる最終目標の東赤石山なんぞに到達する
のは無謀な気がしてきた。風にとまどう弱気なボクちゃんのトボトボ歩きが続く。

 
小さい尾根の突起が結構ある       大岩の直下を巻く登山道

     
     赤石山系名物の霧が北側から吹き上がって白いカーテンを作る

相変わらず日差しは暑いが、前面の尾根から霧が噴煙のように立ち昇ってくる。瀬戸内海からの湿った風が一気に1,600mの山壁
に当って上昇して霧を生んでいるのだろう。登山道は明瞭で赤テープも随所に存在するが、視界が悪いと目印の山が見えず、コンパス
が絶対に必要だ。

二ツ岳から峨蔵山の脊梁は一旦北側に婉曲するが、基本的にはコンパスは終始「西」を指す。

     
     切り立った大岩越しに銅山川に沿った道と保土野集落が見える

 
シャクナゲの多い尾根道         少し藪いている場所もあるが道は明瞭

      
  イワカガミ岳の岩峰を振り返る 岩の危険箇所を実にうまく避けて登山道がある

 
 思ったよりも快適な尾根道     木々の間を掻き分けるように進む尾根道

二ツ岳ーエビラ山間は比較的高度差の少ない尾根ではあるが、それでも途中幾つかの岩峰が突き出しており、その度に登山道を
見つけながら右へ左へと迂回を余儀なくされる。植生が豊かなため八巻山みたいな岩場歩きは存在せず、岩部付近も木々が茂っ
ているのでとても安心感がある。

石鎚東稜コースの様に直接岩場の絶壁を上がったり下りたりする箇所は皆無である。そういう場所に遭遇したら、それは登山道を
外れているので必ず少しだけ引き返して迂回路を見つけて下さいよ。このルート上で間違いやすい箇所はたった2箇所でした。それ
も引き返すと直ぐに登山道が見つかります。


   エビラ山の一つ手前のピークより二ツ岳(右)を振り返る


エビラ山 (1,677m)の姿が眼前に現れる。デカイ! 右奥は黒岳

エビラ山の全容が現れ、苦しかったこの区間の終焉を予感させる。手前に少し小高い岩峰があり、エビラ山の南稜線には先日この
ルートを歩かれた仙岳さんのレポートにあった人面岩が高知県を睨んでいる。エビラ山のボリュームで向こう側は見えない。気分的、
体力的にはエビラ山が峨蔵山縦走の半分ってイメージでしょうかねえ。それにしても暑いわ〜

 
仙岳さんのレポートにあったエビラ山    同じような尾根縦走路
南尾根中腹の人面岩

 
エビラ山へ最後の岩場          登山道は岩場の左下を巻いている

 
尾根道は快適な場所が多い        エビラ山へ向かってルートが見える

エビラ山手前の岩峰をやりすごすと、お馴染みのスズ代とタケ子(二人合わせてスズタケ)が現れた。でも背丈は低く、東温アルプス
縦走路と同じくらいでしょうか。ルートの見通しが良く効くので気分は快適です。低い笹と潅木を上がるとエビラ山頂に着いた。筋肉が
攣って休んだり、鳥を追いかけたり、間違いやすい道へわざと下りてみたりと結構ドラマチックやったなあ
でも3時間半はちょっといくらなんでも時間をかけ過ぎた。反省・・・

 
最後の登りからスズダケが現れる   低いスズタケの道を登る

     
       遠かったエビラ山 山頂へやっと到着

第一区間総括
峨蔵山縦走でこの二ツ岳ーエビラ山間が一番変化に富んでいて、木々や岩を迂回する「尾根道ルート探し」の楽しみを味わえる
区間です。昭文社発行・山と高原地図「石鎚・四国剣山」にルート図が載ってあり、危険と記されている箇所がありますが私の歩い
た限りでは登山ルート上には危険と感ずる場所はありませんでした。

また、夏場の縦走には水の確保が必須で、その為に荷物の重量が多くなり二ツ岳の急登で体力を使います。我々普通のサラリ
ーマン中高年はこの区間を慎重にルート確認しながらゆっくりと歩く必要があります。上記ルート図に記載されているこの区間
1時間50分は無理です。 2時間半から3時間は最低かかると考えてください。

今回、運動不足の為途中で足が攣ったりした為、相当休憩とノロノロ歩きに終始し、3時間半かかってしましました。でもエスケー
プルートがないので、無理をせず体調を整えながら歩くことが肝要だと思いました。これで正解!

「峨蔵山縦走ルート 第二章 」  尾根ルート探しの面白さ パートII
  エビラ山 (1,677m )−黒岳 (1,635.9m) 歩行 約 1時間40分

     
   エビラ山ー黒岳は標高差はさほどありませんが稜線は少し下がっていきます。

この辺りから視界が悪くなり、エビラ山から黒岳の写真が撮れなかった。でも稜線はあくまでも明瞭で、両山の標高が同じ位
なのに、全体的には最初は徐々に黒岳に向かい下がっていく。黒岳は円錐形をしているので目標としてわかりやすい。縦走中
はエビラの台形頭とこの黒岳の円錐頭が目標のキーヘッドだ。

     
      このあたりの岩は赤石橄欖岩とは明らかに違う色をしている

 
シャクナゲと潅木の登山道        尾根道部は相変わらず歩きやすい

     
      ここがこのルートで一番間違いやすい場所

このルート全体を通じて一番間違いやすい所はエビラ山を下りる途中の岩場だ。道は大岩を避けて尾根から左側へ下るの
だが、踏み跡は岩を外して下がって行く。おかしい?と思いながら確認のため踏み跡に沿って下りてみる。案の定途中から
道が無くなる。(結局、間違う人が多いからその踏み跡が途中まで付いているって事)

「落ち着け、落ち着け」と声を出して尾根近くの岩までUターンする事。大岩の下がテーブル上になっていて、この上を少し歩く
ので踏み跡が消えているのだ。インディアンが自分の足跡を消すのとおんなじ要領ね。大岩の直下を左側に回りこむとしっかり
した登山道が続いています。インディアン ウソつかない

このルートの鉄則は「尾根を極端に外すルートは無い」「大岩の迂回道はその岩の直下を巻いている」ですよ。お忘れなく!!

 
ルートが明瞭な尾根道      シャクナゲが生い茂っていてもルートが見えます

      
        黒岳が前面に見えてくる

 
南斜面が開けて気持ちがいい     唯一 岩を3mくらい下る場所(下から撮影)

この区間も稜線には小さな岩峰があり、二ツ岳ーエビラ山間と同じように尾根道を基本として登山道は臨機応変・優柔不断・
紆余曲折・右の頬をぶたれたら左の頬を・・・(ちょっと違う)と障害物をうまく迂回していきます。もちろんここも尾根を絶対大きく
は外しません。唯一岩壁を3m位下る所がありますが、手がかり、足がかりがあり問題は有りません

 
尾根道は相変わらず快適          スズタケが現れる場所も

       
        エビラ山(1,677m)を振り返る  どっちから見ても台形頭

       
            黒岳(1,635.9m)が眼前に現れる

黒岳手前で、まっすぐ尾根道を進むといきなり岩場に出て行き止まりになった。どう見てもこの崖は下りれそうにない。踏み跡も
尾根を真直ぐ進んでここまで続いているが、少し引き返すと左手(南側)にテープがあり、この岩を巻いて下側にでる迂回路が
ちゃんとある。やっぱキョロキョロしながら歩かないとダメね。下界では挙動不審者だけど・・・

この縦走路にはエスケープ路は無いって断言したけど、正確には泉保安夫さんが土居側の河又から大窓(熊鷹山の尾根)を
経由してこの黒岳に登られた南ルートはある。又保土野谷への沢下りルートも。でも、まあ一般的にはこんなマニアックなルート
はエスケープ道とは言えず返って危険。尾根道ルートをひたすらトボトボ歩くのが一番安全って事で。

 
このような行き詰まった岩場に出たら引き返してよ! 左手に巻き道があります。

黒岳に近づくと低木やクロズルが多くなり、登山道の土が見えなくなって来る。でも、踏み跡がしっかり付いているのでルートを
見失う心配はないよ。要は慌てないこと。尾根を歩く事。周りを良く見ること。歌を歌うこと。上司を称える事。生きてることを感謝
する事。家に帰って冷蔵庫にアズキバーが残っている事を祈る事。

そうこうしているうちに 低木や草に覆われた黒岳山頂に着いた。苦労した割には地味過ぎる山頂だ。クラッカーでも鳴らして
フラダンスのお嬢さんにレイでも首に掛けて貰いたいよ〜 「アロハ〜 シャチョーサン 良く頑張ったネ」 チュって (アカン 疲労でつまらん妄想が・・・・・)

     
 エビラ山を振り返る  近くの岩の色が変わって来た 赤石山に近づいて来たぞ

     
             黒岳 山頂に到着

第二区間 総括
基本的にはこの区間の登山道は二ツ岳ーエビラ山と共通しており、尾根に沿って登山道があります。地形上必要な迂回路は尾根
を大きく外さず合理的に設定されています。迷いやすい箇所がありますが、元に帰るのも容易です。気分的にも体力的にも第一区間
の半分です。ここまで余力を持って縦走出来れば一安心。

昭文社発行・山と高原地図「石鎚・四国剣山」ルート図にはこの間1時間とありますが、1時間半を最低見てくださいよ


「峨蔵山縦走ルート 第三章 」  楽勝の笹漕ぎルート 登山道は明瞭
黒岳(1,635.9m)ー権現山(1,593.7m)−権現越 歩行 約 2時間20分

黒岳
を越すと一段と視界が開けてきて正面手前には権現山から南へ大森越へ下る稜線、更にその後ろには威風堂々とした
東赤石山
ー八巻山ー前赤石ー物住頭、 そこから南へ伸びる上兜山、下兜山のかけさこの尾が見える。この縦走路の最終
コースにふさわしい風景だ。

尾根はまず西正面の日本石までずずずい〜っと下っていく。そしてこの日本石から縦走路は南西に進路が折れ曲がっていく。
スズタケとクロズルに覆われたヤブコギ道だが、逆にコース取りがし易く快適でより安全な印象だ。

      
           黒岳から日本石までの稜線 (奥はかけさこの尾)

   
   日本石から権現山までの稜線 (奥は東赤石山) 方角は南西に伸びる

黒岳を下りて尾根を進む頃になり雨が降り出した。今日は雨具は持ってきていないが多少濡れてもそれが返って涼しい。でも次第に
雨脚が強くなり、藪漕ぎ用のナイロン・ウィンドブレーカーを出して羽織る。防水効果は無きに等しいが・・・

黒岳の西面は崩壊部があるが、正面の鞍部で止まっているので危険は無い。ごく普通のガレ場だ。

 
黒岳の西斜面はガレ場になっている ガレ場を下りるとスズタケの道に突入していく

 
あいや〜 クロズルも出てきた〜          目指す権現山 (奥)

背丈ほどある潅木とスズタケの藪漕ぎ(ヤブコギ)をしているとふいに後ろから女性の声がした。女性の声とウグイスの鳴き声は
空気を良く透(とお)るので思ったよりは結構遠くにいるものだ。ゆっくり歩いていると何とヘルメットを被った3人連れだった。「一体
どこから現れたのよ〜?」って聞くと「沢登りをしてきたの」って年配の女性が答える。 およよ、 何て人達だ。松山の沢登り・グル
ープでどうも保土野谷を遡上して黒岳の西側尾根に上がってきたらしい。

世の中には色んな物好きな趣味の人がいて、こんな意外な場所で遭遇する。彼らは命がけの沢登りをしているので普段の鍛え方
が違う。あっという間に3両の特急列車は、この3大成人病に侵されながらなおも懲りずにヤブコギに喘ぐ中年暴走機関車を追い
越していってしまった。「待って〜〜 置いてかないで〜」虚しい叫び声が辺りの霧の中に飲み込まれていった。

再び孤独になってトボトボと歩きだす。 そうそう 沢登りの人が私が落としたストック一本を拾ってくれていた。ありがとう

 
保土野谷から沢登りしてきたグループ  彼らは早い〜あっという間に霧の彼方に

 
スズタケの縦走路 だが道はある      尾根道は潅木とスズタケ

     
    権現山(左)が次第に近づき、東赤石山(正面奥)がくっきり見える

     
     権現山付近より縦走路を振り返る 正面 1,546m峰、
         黒岳(左奥)         エビラ山(右奥)

沢登り隊に追い越されてから更に二つくらいのピークを越えると、いよいよ最後のピークが見えた。これが権現山だなっす。伊藤玉男
さんの「赤石の四季」によるとこの権現山は別名「地由山」(じよしやま)とも言われるそうだ。

 
権現山 山頂近く              地味〜な権現山山頂三角点

黒岳山頂もそうだったが、この権現山ときたら寂しく三角点がクロズルなどに埋もれているのみ。恐らく近くに正式な山頂標識がどこかに
あるのだろうが、もうそんなこたぁどうでもいい。今の心境は私の通る道筋に山頂の標識が無いのが悪いんじゃ〜って完全に居直っている。

人間 疲れるとどうでもいいことが大幅に増えてくる。取り敢えず権現山の山頂辺りを通過すればそれでいいんじゃないの?この辺りは
今度床鍋からゆっくりお邪魔致しますから。

 
最後のクロズル攻撃            ひゃ〜〜 地面が見えたよ〜

権現山らしき場所を過ぎて、尚もスズタケとクロズルとおまけにアザミの棘(とげ)攻撃に泣きながら、涙に潤んだ小さな瞳はキリリと
東赤石山を見つめている。どんな事があってもあそこまでは行くんだい!! ボクは負けない !

 
      ノイバラ               ヤブウツギ

     
          足の筋肉よ あれが権現越の鉄塔だ

するといきなり足元が開けて夢のようなモーゼの道が現れた。まともな道っていいよね〜 スキップをしながら鉄塔を目指す。鉄塔と
電線ってかなり無粋な物だけど山の目印には重要な位置を占める。ここの縦走者は遠くからこの鉄塔を見て生きる希望を見出すの
だ。やっと生きてたどり着いたよ 鉄塔まで

 
    権現越と東赤石山         鉄塔付近の標識 南へ下がると床鍋

     
      鉄塔直下の標識  北に大森越とある (正面は下兜山)

  
     念願の「東赤石山を東側から見る

       
             権現越を見下ろす岩峰  権現岩

この鉄塔から見える権現越はもう地上の楽園のようだ。数はすくないがお花畑となっている。しばらく夢の東赤石山から八巻山、
前赤石の遮る物の無い山塊を眺めやる。やっぱ東赤石山はこちらから見てやらないとねえ。
冬に土居からあの東赤石山へ登ったルートを眺めながら感慨に浸る。

       
            権現越    向こうに東光森山が見える

 
カノコソウと鉄塔尾根           バイケイソウと鉄塔尾根

 
ヤマブキショウマ? トリアシショウマ?  アカショウマ?

 
   シライトソウ                 ゴゼンタチバナ

第三区間 総括:
この権現越ー黒岳区間を「くろもじさん」は東に向かって歩いていますが、藪のキツイ時期は大変だと感じました。私が歩いた
黒岳ー権現越の西に下っていくコースは比較的楽でした。
疲れたときはこの、道を探さなくていいってのがストレスがなく淡々と歩けます。天気も雨と曇りで涼しくなり味方してくれました。
確かに藪がキツイですが、道の無い藪を歩く辛さがない分平和な歩きを楽しめます。
夏場ならここから床鍋に下山すれば明るい内に車まで帰ることが出来ます。


エピローグ  もう止まらない おまけの東赤石山   
権現越−東赤石山−赤石越ー天狗の庭ー瀬場谷ー筏津 5時間40分

天国のような権現越を後にして、念願の東赤石山の東尾根を登る。古びた標識があるが良くわからん。終わりかけのタカネバラ
が咲いていた。さらに尾根道を上がっていくと綺麗な赤石山荘への分岐標識があった。惑わずサモン! 右の尾根道へ進む。

 
東赤石山への第一標識          タカネバラが咲いている

      
              赤石山荘への分岐路

暗い樹林帯を抜けると一気に視界が開けて赤石山系特有の赤石橄欖岩(かんらんがん)の岩道となる。この岩は滑りにくいので
見た目より歩きやすい。東を振り返ると朝5時半より延々と格闘してきた二ツ岳からの縦走路が一望できる。「何でそんなエライ目
をするのでごわすか?」「知るか〜 そげんなこつ!」

 
第一ピークに向かって岩場が続く    夕方の涼しい風が心地よい

                  鉄塔の見える風景
 
     日本石    黒岳         エビラ山   二つ岳  ハネズル
                            権現山 (手前)

 
               更に高度を上げる

     
            東赤石山  東斜面風景

    
                 倒木と縦走路

権現越から東尾根を見ると東赤石手前にそこそこのピークがある。どうも尾根を歩いていると、ここが山頂の様に錯覚するので
あるが、更に東赤石山がアカンベ〜と奥に聳えている。ただし、この辺りの景色と来たらもう一級品で何の文句も言えない。高山
植物の写真を撮ったり、風景を見たりで歩みが進まない。

 
あれ? まだ東赤石は遠いよ        何度も振り返る縦走路


最初のピークを越えて更に上がるとイヨノミツバイワガサが咲いている

 
       タカネバラ               コウスユキソウ
 
      イワキンバイ                バライチゴ

 
夕日に照らされた赤石橄欖岩       東赤石山 東尾根コース

 
東赤石山 東山頂                東赤石山 西山頂

東赤石山にもう一つ山頂があることをグランマー啓子さんに投稿登山記で教えてもらった。その見晴らしの良い山頂に立ちたか
った。そこは平たく東西に細長く伸びていた。何かわからんが四角い石材などが埋められている。(三角点?) ここから北へは
西の物住頭からの稜線が下兜ーかけさこの尾となって舟木地区に下っている。一方南側を見やれば銅山川を挟んで高知の山々
が粛々と連なっている。

う〜〜ん やっぱ来て正解!!
だあれも居ない東赤石山頂の景色を56歳?( いやまだ55歳だった)の感性で精一杯楽しむ。どうも近頃自分の歳がわから
なくなった。

 
東赤石山 山頂だぜ〜             八巻山を見る

 
    タカネバラ               赤石越 分岐標識

 
トラバース路の分岐              赤石山荘 天狗の庭 下山口
左:権現越   右:赤石山荘         ここから瀬場谷に下りていく

赤石山荘横の瀬場下山口分岐まで記憶より結構遠かった。東側の下山ルートの方近いが、暗くなると遠くても知った道が安全。
雨で滑る登山道を慎重にゆっくりと歩く。川やら道やらようわからん登山道で薄暗くなったのでライトを準備する。

夜の山は怖くないか?って。地球が太陽の反対側に回っただけですよ。道のある所、それも知った道を歩くんですから。
分岐や沢を渡る時は慎重にせにゃなりませんし、昼間の倍時間がかかりますわ。怨念?悪霊?山姥? そんなもん人間が考え出
したモンですから。道を間違えたらキツネや狸のせいにするのも彼らに失礼な話ですがな。

夜10時前に車に帰り着く。いや〜 長い一日でしたわ  又行きたい!!

最終章 総括
確かに「峨蔵山縦走」っていうテーマでは東赤石山は余分な行程じゃろうて。でも元々の目標地は、先日大永山トンネルよりピストン
縦走した「石室越」まで行く事だったのに。この点では完敗でした。普段から運動しとかなあきません。大いに反省!いずれ二ツ岳
から大永山トンネル口までぶち抜いてやるぞ〜!!

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峨蔵山縦走を安全に歩くためのエントツ山からのヒント

峨蔵越―二ッ岳―エビラ山―黒岳―権現山―権現越

縦走路の特徴
この区間の縦走登山道の特徴は次の様に二分されます
前半の二ッ岳―黒岳: 藪はほとんど無いが、縦走路が岩や障害物を迂回してルートを探しながら気を使って歩く
後半の黒岳―権現越: スズタケとクロズル、その他の低木植物により覆われ、ルート取りは簡単であるが藪に悩まされる
(笹と背の低いスズタケの違いはよくわかりませんが混在しています)

縦走登山道の存在 
縦走路は全て踏み跡があり、登山道は全ての区間において存在します 
従って踏み跡がない場所は登山道ではありません

縦走登山道の位置と場所
縦走路登山道は全て尾根か尾根のごく近くに設定されています。特に前半の区間で岩を巻く場所が幾つかありますが、左か右の
岩直下を必ず巻いてすぐ前の登山道に出ます

危険箇所 (不注意による一般的な山の危険性は除く)
縦走登山道を外さない限り、山登りの常識の範囲での危険箇所はありません
滑落の危険性がある岩場やザレ場は登山道においては存在しません
(1998年に滑落事故がありましたが、このケースは登山道を外して起こった事故と思われます。)
危険な場所に出たらそれはルートから外れています。少し引き返せば安全なルートがすぐ見つかります

黒岳ー権現岳付近の藪の存在
ひどいところでは胸から顔辺りまでスズタケやクロズルが生い茂った場所があります。でも良く見るとルートを見失う程のものでは
なく、手で藪を漕ぐと踏み道があるのがわかります。虫やササダニ(マダニ)から身を守るため絶対長袖、手袋姿、できればナイ
ロン製のヤッケ姿をお勧めします。鎌や鉈(なた)など全く役に立ちませんので不要です。虫除けのネット帽子を使いましたが、
これは大変藪漕ぎに有効でした。

縦走時間
地図やネットのレポートでは休憩時間を省いたものがあります。我々はロボットじゃないんですから休憩時間は必須です。また
熟練者の歩いた時間は参考になりません。
中年サラリーマン週末愛好者がこの区間を歩く時間はそこそこの装備の荷物をしょって休憩や余裕をみた場合
肉淵登山口―二ッ岳 3時間
二ッ岳―エビラ山   3時間
エビラ山―黒岳    1時間半
黒岳―権現越     2時間半
権現越―床鍋     2時間   合計 12時間 は見たほうがいいでしょう
 (恐らく 早ければ10時間くらいで歩けると思いますが・・・)

縦走時期
上記の縦走時間から考えて、日の出から日没まで12時間ある 
3月20日 (0612h−18:20h) から 9月20日(05:54−18:08h)の間が良いでしょう。
更に万が一のビバークなどに備えて 5月から9月の天気の良い日って結論でしょうか

縦走方向
自転車を使った一人縦走となると自(おの)ずから 床鍋―権現越―二ッ岳―肉淵林道の東向けになりますが、できれば二人
以上で車を工面して 反対の 肉淵林道―峨蔵越―二ッ岳―権現越―床鍋の西向けルートをお勧めします。 
その理由は、二ッ岳の登りと二ッ岳―黒岳間が一番体力を使いますので、先にここを余力を持って乗り切る。黒岳―権現越間
は全体的に下りとなり登山道が次第にはっきりしてきますので体力の消耗が少なくなり、安心感もあります。
夕暮れが迫ったり、夜間の黒岳―エビラ山―二ッ岳のルート取りは危険ですし、夜間の二ッ岳の下りも危険です

水場
峨蔵越手前に2箇所水場があります。
権現越から床鍋谷へ下がれば水場があります。
でも基本的には、ここでの給水はそれまで使った分の補給と緊急補給用と考えあらかじめ用意するのが無難です

体力
この縦走路はそんなに危険な箇所はないというものの、普通の登山道を10時間くらい歩ける基礎体力は必要です。私も普段
これといった運動をしていないものですから、重い水をしょって二ッ岳の登りで足の筋肉を酷使した為、二ッ岳―エビラ山の中間
地点で足が攣ってしまい往生しました。(この為もあり 縦走が約2時間予定より遅れました)
普段から運動しなければ・・・ 大いに反省
ヒザや腰に爆弾を抱えている人にはこのコースはお勧め出来ません。何せ人も通らず、エスケープルートもござらん

用具など
まずは充分なです。縦走路には水場がありません。この為夏場は厳しいと思われます。
食料はもちろん。夏場は疲れすぎて喉を通りませんので、ウィダーの様に流し込むタイプも用意した方が。
ヤブ漕ぎや崖を心配しての鎌・鉈(なた)、ロープ類は一切不要です。出来るだけザックを軽くして歩いて下され。

ストック(杖)は峨蔵越から権現越まで全く使う場所はありません。使うとすれば下山道くらいでしょうか。私もストックを2本用意
して行きましたが、ザックのサイドポケットに差し込んでいましたがヤブ漕ぎ中に一本落として、後ろから来た沢登りの人に拾って
もらいました。ほぼ不要でしょう

今回ヤブ漕ぎで役に立ったのは虫除け用の「防虫網付き帽子」でした。ササダニにも顔や首が防げるので安心感があり、笹や
枝がが目に入るもの防いでくれました。長袖シャツとナイロンのウィンドブレーカーはヤブコギに安心感を与えてくれます。

「スパッツ」
ゲートルタイプのスパッツは必携。靴に露や石ころが入らないためにも装着して下さい
今回 ワコールの筋肉補強のパンツ式スパッツなるもの(パッチのようなタイプ)を履いていきましたが、太ももの筋肉が攣った
ってことは余り意味が無かったのか・・・

エマージンシーツェルトについては何とも言えません。私は持って行きましたが、野宿に耐えられる暖かい季節に歩いてザックの
重量を減らす方が良いような気がします

ライトは絶対必要です。私は予備を含めて3つ持って行きました。当然お世話になりました。お互いの電池を共有できるライトを
用意して下さいよ〜
磁石も忘れずに! 目標の見える天気の良い日に歩いてくださいよ。でも歩行時間が長いから磁石と地図は常識でしょう

ご安全に・・・




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