平成19年2月11日 痴冗最大の作戦 イノシシ達の ザ・ロンゲストデイ
吉居ー「又兵衛岳」―天ヶ峠ー宿ー沓掛山・黒森山ー堂ヶ平(なる)ー吉居
人生 詰めが大事!!
平成19年2月11日 痴冗最大の作戦 ザ ロンゲストデイ

伝説の岩山「又兵衛岳」―別子銅山「炭の道」―堂ヶ平(なる)の権現「お不動さん」を結ぶ大いなる周回の旅
 with マーシー  最後はメロメロだ〜



カシミールソフトによるGPSトラック・ログ図
(国土地理院 50000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
吉居 07:00h、又兵衛岳山頂 09:40h 、天ヶ峠 12:50h、宿 15:10h
沓掛山 16:30h、黒森山 17:20h、堂ヶ平 17:55h、櫛ヶ峰尾根分岐 19:30h
櫛ヶ峰手前下降地点 21:00h、林道加茂・角野線下山 23:00h、林道放浪更に3時間


第一章 伝説の又兵衛岳へ  吉居―又兵衛岳―天ヶ峠 (5時間50分)


又兵衛岳 攻略ルート図 (国土地理院 25000数値図使用(承認番号 平15総使、第634)
赤線はカシミールソフトによるマーシー・エントツ山トラックログ ルート図


笹ヶ峰登山口への林道を運転していると対岸に鋭い岩峰があり気になっていた。
そこが以前「はるちゃん」よりレポートされた又兵衛岳であり、その後アライグマ一家の長「ぼのさん」や荒獅子さんがチャレンジした。この話題
を掲示板で取り上げて盛り上がっているとガクガクさんが又兵衛岳の山頂写真を挑戦的に貼ってきましたがな。う〜〜ん、ますます馬の鼻面に
ニンジン状態。そこで吉居からこの尾根を歩いて、ついでに向かいの沓掛、黒森の周回を計画し「藪の友・マーシー」に提案。異議なしとの
予想通りの快諾を得る。


伝説の山「又兵衛岳」 グランマー啓子さんの相棒 グランパ撮影
(画質は相当落としています)

朝4時に起きて5時30分四国中央市にてマーシーを拾い吉居の橋近くに駐車。下りてくるべき黒森からの尾根は霧に包まれている。
準備を済ませていつもの如く適当に尾根へ取り付く。ルートは地図上の地形で決めるから道があるか無いかは歩いてみなけりゃわから
ない。道らしい踏み後は無かったが歩き易い支尾根を選んで登って行く。

 
まあ 適当に尾根を目指しましょうや    斜面にはやはり大岩が多いわ
                      (のんびり山歩師匠! ダジャレ出来ました〜)

 
   雪が直ぐに現れる            相変わらず大岩が多いわ

暗い植林地帯を這い上がると岩が出現し、セオリー通り支尾根に沿って進む。途中電気のケーブルの様な物が尾根を這っている。その先
中腹部にはテレビアンテナがあった。そこを過ぎて更に植林と自然林の混在する尾根部を進むと三角点に到着。ここから主尾根の縦走
となる。

 
テレビアンテナがあった(現役か?)   向かいの下山すべき斜面
                         (ここに下る予定であった・・・)

 
ターニングポイント 1,155.5m 三角点   ここから南へ尾根を下る

この三角点から直角に左(南)へ下がっていく。雪が結構多いが左手が植林、右手が自然林ってパターンなどがあり快適に進む。
私の趣味、枝打ちの即席ストック選びをマーシーさんも見習ってダブル・枝ストックだ。地図を見ても分かる通り又兵衛岳を攻める
にはこの尾根からのアプローチがモアベターよ。小森のオバチャマもエントツ山のオジチャマもそう思うのよね

雪がちらついてきたと思ったら前方に又兵衛岳らしき岩峰が出現。ここまで約2時間で取り付き場所まで到着。

 
ね? 尾根にはスペースがあるでしょ     経済的ダブルストック

 
しぶとい樹や〜 見習わなくちゃね    なるほど〜 あれが又兵衛の頭か〜

大きな岩が縦や横になって転がっている。ちょっと見に左手からアプローチ出来そうなのでそちらに進む。一ヶ所少し鞍部がくびれて
切れ落ちており滑落の危険があるので慎重に渡る。この岩峰の東側は狭い岩の段差があり回廊となっている。取り付き部を探して
奥まで進むが行き詰り又引き返す。

 
   又兵衛岳 直前にあるヒメシャラとモミの大木

 
又兵衛岳北側 フロント部          大女のうなじを慎重に上がる

 
岩場にはツララが垂れ下がる       う〜ん ここならボクはOKだけど
                         エントツ山さんは無理 (うるせ〜〜)

   
    又兵衛岳 東側に伸びる岩の回廊

一ヶ所3m位の高さで木と根っこなどを介して這い上がれる場所があり、そこから尾根に取り付く。シャクナゲなどの低木がぎっしり
生い茂り雪が一杯頭上から降りかかる。立派な檜が根元から折れている。相当風を受ける場所なんだろう。そこから東側の展望
が開けているが低い雲が立ち込めて良く見えない

 
這い上がれそうなポイントを見つける   山頂部はシャクナゲなど低木の林

 
山頂斜面には天然檜の倒木がる      西側の展望所 何も見えんが〜

さらに高い場所へと進むと枝振りの良い檜が聳えている。嗚呼ここが又兵衛岳の山頂か。岩山の山頂としてはおとなしすぎる。
周りの展望が霧で見えないのが残念だ。


又兵衛岳山頂  天然檜が雰囲気をかもし出す (逆光)

 
何とかとマーシーは高い所が好きなの  又兵衛 又兵衛 来ちゃったホイ


ここで恒例の替え歌が登場〜〜〜

エントツ山の替え歌 「GANPO(ガンポー)」
原曲は ピンクレディの UFO(ユーホー)

ガンポー (岩峰) ♪

ダンダンダン ♪ ダダダ ダンダンダン  ♪

手をかざして見上げるだけで   ダダダ ダンダンダン  ♪
     その厳しさ  つぶさに分かる

天突くような岩壁    らくだの様なこぶ尾根
  私の心を揺さぶる又兵衛   ♪


はるちゃんから 聞いていたけど   ダダダ ダンダンダン ♪
     ぼのさんも西から登っていたけど

荒獅子レポート読んだら  ガクちゃんに続いてレッツゴー
    次から次へと 現る大岩   ♪


信じられない 岩山這い上がり
    もしかしたら もしかしたら 又兵衛なのかしら

キツくてもいいわ 近頃少し
    普通のお山に 飽きたところよ  ガンポー(岩峰)  ♪


これがはるちゃんが紹介し、ぼのさんが登り、荒獅子さんが3度目にほぼ到達した又兵衛岳なのか。数日前にガクガクさんが
撮った山頂の天然檜がある。マーシーさんが檜によじ登り記念写真を撮る。南側へ下りれないかと眺めるが絶望的な絶壁。
結局元に帰るしかない。


      ガクガクさん撮影  晴天の又兵衛岳山頂

例のくびれを慎重に渡り、大岩を右手に巻いて向こう側へ出ようとするが絶壁に阻まれて無理。これを少しづつ高度を下げて
数回試みるが不可能。さらに相当下に迂回して回りこむしかない。途中で正に又兵衛が隠れ住んでもおかしくない岩穴を発見
小さな涸れ沢を越えて、最後はヘロヘロになりながら雪深い急な傾斜をよじ登ると、丁度南岩峰の更に南側にある尾根の途中
に出た。

 
   西側をトラバースする          多くの岩壁と崖が立ちはだかる

 
岩棚を進むがここでも断崖に阻まれる   仕方なく更に下方へトラバース

 
         まさに 又兵衛の隠れ家 発見

又兵衛岳の南側に這い上がり少休止の後、雪深い傾斜を北に引き返すと荒獅子さんが取り付いた南岩峰フロント部へ下り立った。
まあ既に又兵衛岳の本峰に登っていたので無理をせずに眺めただけで引き返す。

 
南岩峰取り付き部 ここはロープがあれば  荒獅子さん、ガクちゃんはここから?

又兵衛岳から天ヶ峠までの尾根道は北側のそれと違い、本当に変化に富み、厳しくも面白いルートだった。大岩やモミの大木などが
現れ、倒木が尾根を塞いてまるで障害物競走の様だ。今までの山歩きと違って腕の筋肉を一番使った様で腕がだるい。こんな山歩き
は初めてだ。

 
この尾根には天然檜が所々に現れる   ほっとする束の間の平坦地

 
   断崖で行き詰る             ここのトラバースが一番危険を感じた

    
     細尾根の頑張る檜とモミ  沢山風に倒れ伏していた

 
ツタのからまる大岩                  天ヶ峠に到着

最も厳しい岩峰を苦労して左に巻くとしばらくして峠らしき平坦地に着いた。標識は無いがケルンが積まれており「天ヶ峠」と
分かった。

第二章 歴史の古道 炭の道 天ヶ峠―宿

ここから南側にははっきりした踏み跡が下りている。これが以前はるちゃんや荒獅子さん萩生の森okaちゃんが歩いた「炭の道」だ。

これからこの炭の道を「天ヶ峠」から「宿」まで歩く。

我が故郷新居浜を発展させた別子銅山は荒銅まで地元で精錬していたから膨大な量の燃料=炭を必要とした。赤石、銅山峰界隈
の木々は伐採と煙害で禿山と化し勢い精錬の燃料となる木炭を遠く笹ヶ峰近辺まで求めなければならなかった。石炭が精錬燃料に
なる近代までこの木炭は別子銅山を支える重要な物だった。その炭を銅山峰まで運んだ道の一つがこの天ヶ峠から宿までの道で、
宿とは「宿場」を意味しあちこちからの炭や薪が集められた集積基地であった。

今で言えばヒューエル・マテリアル・ロジスティックスってとこだろうか

 
何か藪っぽいイメージが最初からする  おっかない丸木橋 腐ってるかも

そんなこたあどうでもよいが、何だ?この道は。 最初から道とは言えない藪だし、雪で尚更傾斜がキツイ。前半は自然林の中に
藪化した踏み跡が続いており、無数にある沢道はほぼ崩壊しており、又兵衛岳ほどではないが滑落の危険がある場所も数箇所出現

 
うへ〜 沢の対岸は崩壊している   マーシーとハンド・アンザイレンで泣く泣く渡る

 
うひゃ〜 何処を渡ればええの?    も〜斜面はご赦免に (出た〜ダジャレ)

 
植林が現れ出でてホッとする(川柳)    この場所には沢が多い

この道はもっとスムーズに消化できるかと思っていたが甘かった。比較的安全なルートを選んで進む。このルートの前半は寒風山
から縦走して来て最後の笹ヶ峰への山塊に入る場所(1,740m)から北側の又兵衛尾根へ伸びる急峻な支尾根を巻いているから
非常に沢が多い。周りは植林が多いにもかかわらずこの辺りは自然林が残されていて笹ヶ峰の尾根原風景と言える。

 
雪の斜面をアイゼン無しでスイスイ歩くマーシ  笹が出てきて地盤が安定〜


         霧氷に覆われた笹ヶ峰の山塊が現れた

幾つかの難所をクリアーすると治山の為にコンクリートで溝を取り付けた沢部を渡り、やっとなだらかな植林地帯に入った。笹が
現れあいかわらず右手山側には潅木の林が続いている。

 
沢には長いコンクリート溝が敷設      水が豊かな沢


  お〜〜  先ほど歩いた 又兵衛尾根が一望できる  デコボコが一目瞭然

 
   又兵衛岳をズームアップ        やっと平坦地になったよ〜


     むむっ  見覚えのあるブナじゃあ〜りませんか

やがて左へ分岐する道をやりすごし真っ直ぐ進むと、ちょっとジグザグに登って更に歩くと見覚えのある「宿」のブナ平地についた。

  
 あれ?  何か見たことのある風景       橋を渡って沓掛分岐へ下がる

時刻は15時10分。普通ならここから笹ヶ峰登山口へ下りて沓掛林道を吉居まで歩く決断をするだろう。マーシーさんとセットに
なれば「行こか?」で決まりとなった。


第三章路傍のお不動さんに会いに
宿―西山越えー沓掛山−黒森山―堂ヶ平(どうがなる)


さて行くとなれば話は早い。笹ヶ峰方面から下りてくる団体登山者に追われる様に宿を抜け、あっと言う間に西山越えに着き霧氷の
並木道を歩いている。ここからは今までの景色とは趣きの少し違ったオーソドックスな登山道を歩く楽しみを味わえた。道があるって
ラクチンでいいよねえ

 
西山越えから沓掛尾根の風景       ここにもええブナがおます

沓掛山が見える頃になると再び天気が悪くなり、山頂がガスで見えない。今まで約10時間の厳しい歩きだったので沓掛山への
急坂はさすがに息が切れた。振り返る笹ヶ峰はガスで姿は無かった。高度を上げると霧氷の量もそれに比例してしっかりした物
となってきた。

 
あちゃ〜 又天気悪くなったがね    笹ヶ峰方面も展望無し 我らの行く手も・・・

 
  あいつ まだ元気やな〜        沓掛山 山頂に近づくと霧氷がはっきりと

厳しい登りが終わって沓掛山の山頂で初めて休憩らしい時間を取り、ここで今日はじめての食事とする。ポットからお湯を出し
スープを二人分作る。先日は伊予富士でラーメンとウドンのお汁を嫌々飲まざるを得なくなった失敗から、今回はお汁も最後まで
無理なく飲めるカップスープに変更した。コンビニでマーシーさんがが選んだ方にはマカロニが入っていて、寒さの為十分に柔ら
かくならなかった。でも難なく鉄の胃袋に全て収められて出発。

  
マーシが初めて登った沓掛山        食欲が全ての欲を凌駕する

沓掛山からはひたすら下る。この斜面に入って二人は唖然とした。ものすごい霧氷が眼下に広がり尾根一面を美しい白で飾って
いるのだ。「うわ〜〜凄い」夕暮れが迫るのもかまわず何度も立ち止まりシャッターを切る。今日二人の歩きに山の神から愛の
プレゼントだ。  (その後さらに違ったプレゼントが待っていたのだが・・・)

  
    斜面の最初からこんな霧氷が現れる


霧氷のトンネルを下り行く  こんな景色を見れたらどんな試練が待っていようが・・・

 
   霧氷の尾根を黒森へと進む     写真を大きくしたいけどねえ

     
             霧氷の大木

尾根を詰めると白く雪を被った黒森山の狭い山頂に到着。先ほどから足跡が沓掛山から雪の上にず〜〜とついていたが、さすが
この足跡も黒森山の危険場所、山頂の東端には寄っていなかった。マーシーさんが三角点の石柱が一本離れた脇に倒れているの
を見つけて抱えて移動、これを起して他の2本と一緒の場所へ立てかけた。まだ元気が沢山残っているあるよ。

 
沓掛山の狭い広場に到着 前方は崖    三角点を一個補充するマーシーさん

さあ、黒森山から境界杭に沿って下山する。すると急にあたりがオレンジ色に輝きだした。天気が良くなり西陽があたり一面の霧氷に
注いでいるのだ。今日来て良かったなあと二人でこの幻想的な風景に見とれる。

 
 霧氷がピンクに輝いてきた         霧氷とマーシー


青空が現れ 霧氷が夕日に映える

 
下って来た黒森山を振り返る         細尾根を更に下る

   
          とても爽やかで心地よい風景


          夕暮れ前に森は美しく輝く

 
新居浜への尾根が夕日に輝いている     オラ達を無事に帰してケロ

呑気な二人のイノシシの感傷とは関わり無く時は刻々と刻まれ行く。辺りが薄暗くなってこようとする時、登山道の右側に2体の
お地蔵さんが現れた。これが「黒森の権現さん」とか「堂ヶ平(なる)のお不動さん」と呼ばれている不動明王だ。大生院の
正法寺が笹ヶ峰の山頂に祭る為にこの尾根を檀家の人たちによって担ぎ上げられたが、ここで力尽き置いてきぼりにされた
無念のお不動さんなのだ。


     堂ヶ平 (どうがなる)の権現さんが物好きな旅人を見守る

今日の安全を二人でお祈りして夕暮れ迫る寂しい登山道をトボトボと進む。


終章 因果応報を悟る、ツメが甘かったイノシシ2匹 闇の彷徨
傾吹山ー崩壊地ー櫛ヶ峰分岐ー櫛ヶ峰の尾根ー林道「加茂・角野線」


「気楽」という楽天的な人生観を共有するマーシーと私だから、西の山際に日が沈み残りのかすかな残像が漆黒の闇となろうとする
風景を立ち止まってじっと眺める。地球とか宇宙とかそういう天体に生きている事を感じる瞬間だ。一人っきりだとこういう余裕は
ないだろう。

 
夕日が最後の輝きを木々の上に注がれる 山際が美しいシルエット・ロマンスに

さあ、ここからは写真も無い、景色は二人が照らすライトの世界。それでも眼がいいマーシーさんは前述の大きい足跡の先人を追う。
傾吹山(かたぶきやま)の大崩壊は相変わらずくっきりと山肌に刻まれているのを確認しているので、この先人は吉居ルートに下山
したに違いない。二人の認識が一致していた。地図を見るより位置を確認するより足跡を追う方が確実だと新興宗教の信者の様に
無我の境地で従った。

しばらく行くとあの大崩壊地がいきなり現れた。するとあっという間にマーシーが崖の雪に僅かに残された足跡を辿ってこの崩壊地
を渡ってしまった。何の相談もなくそりゃないぜ〜。崩壊地の向こう側からおいでおいでをするマーシーさんの口元にはイノシシの牙が
キラリと光ったのを私ははっきりと見た! 

いやじゃ〜と言いながらも我が五体はこのイノシシの化身にアンザイレンされて意志に反してこの崩壊地を渡ってしまった。これは
もう理屈ではない。魔術にかかったのだ。魔術に負けた自分を自己批判しながらトボトボとこのイノシシの化身に付いて行くと突然
前方に西条の町の灯が見えた。 ありゃ?こりゃイカンぜよ!。 我に帰って地図を出し一人と一匹は位置を確認する。

あちゃぱ〜〜 櫛ヶ峰の分岐まで歩いて来ちゃったよ〜
ここでお互いの家に電話をかける。「う〜〜ん ちょっとした不都合で帰宅が相当遅くなります」「晩御飯は要らんから元気で暮ら
せよ〜ブヒブヒ」 もうこうなりゃこの先人の足跡と一連托生。毒を食えば皿までじゃ!!

右手には大生院から西条、東予の暖かい町の灯が広がり余計に郷愁をそそる。左手には漆黒の闇の中にポツンと家の明かりと
自動車のヘッドライトが見える。この対照的な夜景の尾根を妙に冷静な二人の行進が続く。適当な場所があれば南側に下りたいが
チャンスは無い。櫛ヶ峰の手前で境界杭らしきものがあったのでこれに沿って下る。

途中に細い作業道があったが、更に道なき道を下る。やがて崖に行き当たり又急坂を登り返す。四足歩行に慣れているマーシさん
はさっさと這い上がるが、二本足歩行に慣れた文明人はライトを口にくわえて四つん這いで効率の悪い歩行にくじけそうだ。
実は後からGPSのトラック図を見ると、ほどんど林道近くまで下りていたのだった。

まあ、そうこうして何度かの悲喜劇を繰り返して林道に下り立った。時刻は23時 お〜〜サラリーマン週末日帰りB級登山の成立
が見えてきたぞ。二人で吉居に向けて歩き出し、マーシーがライトで照らした「加茂・角野線」という林道名を見て私が最後の大きな
間違いをしでかした。 

「加茂=西条は反対方向やで〜」 この常軌を逸した私の一言で更に2時間半この林道を無駄歩きするハメになった。大きな星が
空一杯に輝く光景を見ながら二人には又兵衛岳に行ったのは随分遠い昔の様な気がしてならなかった。


     月と又兵衛岳   グランマー啓子さん提供

最後に笹ヶ峰の夜明け写真を撮る為にやって来た車が、変な所でライトが二つ動いていると来てくれて車の場所まで送って頂いた
。救世主よありがとう。 我が車に帰りついたのは御前二時の事だった。

とてつもない長い一日だったが、多くの失敗や成功を織り交ぜたとても楽しい山歩きだった。マーシーさん ありがとう




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